鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

FA市場開幕前準備

「出ていけて(PHI・Wentzの)双方にとって良かったんでしょう」というJason Petersの述懐。PHIにとっても放出できてよかったという人物だったんでしょうね。それに乗っかることでWentzへの感想はおしまい。
そろそろ1週間後に控えるFA市場の開幕に向けて一旦自軍の状況を整理とかしてみたいというものです。

 

【カット】
DeSean以降目立ったカット情報はなし。AlshonとMalikの件がよくわからないけど変わらないけどカットっぽい。
P Cameron JohnstonへのRFAテンダーを行使しないとのこと。最安テンダーでの2.4Mのキャップヒットになるところ、それぐらいの金額も出せないだろうと思っていたので妥当な判断。現地ではミステークだという声もあるが、まあやむなし。どうしてもキープしたいレベルではなかったというのが試合を観ての感想。
一旦放出しておいて安価での再契約を狙っているのではないかという推測。
これはカットではないが、ERFAになっていたWR Greg Ward、LB Alex Singleton、RB Boston Scottの3名にはテンダーオファーを出したとのことで確保完了。金額は知らないけど超お安いミニマム契約。

 

【現役続行】
毎年オフの懸案事項であるC Jason Kelceが現役続行を決意したとのこと。PHIの公式発表あり。これは朗報。だけれどもどうやら2021がラストイヤーになりそうだという雲行き。そろそろちゃんとした後任が欲しいけどどうしてやろうか。6巡ぐらいでいきましょうかね。Kelceも6巡ですし。
そしてKelceとは契約の再構築を実施した様子。詳細はようわかりません。けどなにか匂う。また変なことをしたわけでないことを祈る。

 

【契約再構築】
CB Darius Slay。
はいやりやがった。こいつでやりやがった。願望はトレードだったというのはDBの振り返りでも述べた次第。さすがにこの失敗補強を1年で認めるのはRosemanの度量的には無理だったという理解。11Mをサインボーナスにすることで2021のサラリーキャップを9M作った次第。これで2025までダミー契約が残るもの。2022のキャップヒットが22Mとかになるんですけどどうするつもりですかね。

 

【契約延長】
ここからは噂。
DE Derek Barnett。5年目オプションを行使済みのためこのままだと約10Mのキャップヒット。前年5.5サックでランストップの達人でもない男に到底それだけの価値はない。選択肢としては、単年10M・カット・契約延長の三択。個人的にはカットでいいと思っていたが、残るJosh Sweatにはやっぱりケガの不安があり、安価なFA補強もしづらいポジションだと思うと、まあ契約延長という結論に落ち着くのもわからんでもない。嫌だけどね。超アップグレードしたいけど延長してしまうと来年のドラフトでも行きづらい。こういう動きづらさを誘発するからRosemanの先延ばしキャップ戦略は嫌いです。じゃあどれぐらいの相場が妥当かと問われてもなんとも言い難い。実は来季開幕時にまだ25歳になる程度とかの若さであること、D#スキームも変わる、等々の状況を勘案すると3年ぐらいはいいのかな。5M×3年ぐらいでいかがか。夢見すぎか。けど10Mからの削減だけが目的だと思うと初年度は3Mぐらいのヒットにしたい。どうせ後年度にえげつないキャップヒットをもたらすような契約にするんでしょうね。できるだけ安くお願いしたい。

 

【その他の候補者一覧】
Slayでの契約再構築によって、現状約34Mのオーバー(180Mという情報に基づく)。Overthecapでは34M、spotracでは35Mなので詳細はわからないけれどもそれぐらいの水準。
それに対してアプローチしそうな上記を除くと、
RT Lane Johnson(2021:17.8M)
DT Javon Hargrave(2021:15.2M)
DE Brandon Graham(2021:17.9M)
DT Fletcher Cox(2021:23.9M)
ぐらい。この全員で36Mぐらい捻出できる様子。このうち、Grahamとは具体的な話をしている様子。
残りはErtzとGoodwinとか。

Laneなんて既に38歳になる2028まで契約ある状態なんですけどこれ以上どうするつもりなのか。
そうこうしているうちに来オフにはMailataとかSingletonとかGoedertとかに金払わないといけないんですけど。短期的にバックロードの契約を何個か作って当面の戦力を膨らませるのはわかるけど、再建中のチームがやることではどう考えてもない。

 

ここまで書いてわかったけど、FA市場の準備なんか全然できてなかった。まあこのFA市場では第一波でErtzがどこに行くか、そこでできたスペースにどのCBを獲ってくるか、というところだけが注目点でしょうか。だと思ってたけどSlayがいることでCB獲得の目も薄そう。ドラフトまで何を楽しみに過ごそうか。

2020シーズン査定(ST編)

PHIファンなら「知ってた」としか言いようがない「Jefferyカット」の報が入ってきた。
ただし、これまでの読みと異なるのは、「リーグ年度開始(3月17日)と同時にカットする」というもの。この1月5日(現地4日)に明らかになったJefferyとの契約再構築の内容がspotracにもoverthecapにも反映されていないので真相は藪の中ですし、ここから先は推測ですが、どうやらこの再構築は、「従来は2021のデッドマネーが大きすぎて『6月1日カット』しかできなかったが、それを3月17日にカットできるようにした」というものだったよう。
こんな再構築を選手側が呑むのは、「どうせカットされるなら早い段階から他チームと交渉したい」という希望を叶えるためだろ推測される。詳細はわからないし2022に膨大なデッドマネーを計上することになるような気がするが、これで11Mぐらい節減できるのではないかという噂。こういう行動を避けるために、リーグはレギュラーシーズン終了後の契約再構築を禁じているようだが、再構築を行った日付はまだレギュラーシーズン中であったためセーフという判定のよう。Malik Jacksonも同タイミングで再構築を行っているがこちらについての報道はなし。たぶん同じ動きになるのでしょう。この辺の動き次第ではこのオフの動きが変わるので詳細な続報を待ちたいところ。

 

【2020開幕前】
Stay

K Jake Elliott(17/CIN PS)
P Cameron Johnston(17/UDFA)
LS Rick Lovato(16/Street FA)

なんやかんやで安定していたSTについては、2019からメンツの変動なし。
K Jake Elliott は、2019年11月に5年19M(10M保証)で契約延長。2020シーズン入り時点で、年平均3.8M超はリーグ11位。保証額10Mはリーグ2位という金額規模。50yds超を5/6成功、61ydsサヨナラFG成功などSB進出への大きな貢献があった2017ならまだしも、以降は50yds超が大体半分の成功率であったこともあり、頼りなさは少しあった。とはいえあんまり不満もなく、まあ長期的にほどほどのKickerが確保できているのは悪くないか、ぐらいに思っていた次第。

P Cameron Johnstonは、鼻息荒そうで眉がない顔が好きだったので文句なし。

LS Rick Lovatoに至っては毛ほどの文句もなかった。

 

【2020成績】
K Jake Elliott
16試合出場 エクストラポイント:24/26(92.3%) FG:14/1973.7%
パント:2回77yds(平均38.5yds)
<FG内訳>
0-19:記録なし
20-29:1/3(33.3%)
30-39:6/6(100%)
40-49:5/5(100%)
50+:2/5(40%)

P Cameron Johnston
16試合出場 71回 LNG:66yds グロスAvg:46.7yds ネットAvg:40.6yds Inside20:26回 ブロック1回
LS Rick Lovato
16試合出場

<Kick off Return>
Boston Scott:28回590yds(Avg. 21.1yds)LNG 46yds 0TD
Jason Huntley:2回36yds(Avg. 18.0yds)LNG 20yds 0TD
Corey Clement:1回22yds(Avg. 22.0yds)LNG 22yds 0TD

<Punt Return>
Greg Ward
:21回134yds(Avg. 6.4yds)LNG 22yds 0TD
Jalen Reagor:4回94ydsAvg. 23.5ydsLNG 73yds 1TD
DeSean Jackson:1回2yds(Avg. 2.0yds)LNG 2yds 0TD


今回調べて初めて気づきましたが、LSってスタッツ的には試合出場とタックル数ぐらいしか残らないんですね。なんか可哀そう。

Elliottを生かしておくわけにはいかない。エクストラポイントの成功率92.3%は20位(36人中)、FGの73.7%は29位(36人中)である。重ねて申し上げるが、年俸は11位である。
もうロングの正確性については諦めた。50yds超は半分以下の成功率という性能なのでしょう。
そこよりも20-29ydsの範囲の1/3が辛い。こういう確実な計算をしたいところで外されるのが本当に痛かった。
いわゆるイップスなんだと思ってしまったぐらい。大丈夫だろうか。
仮に一つ擁護できるところがあるとすると、そもそもアテンプト回数が少なすぎませんかね?というところ。19回アテンプトは少ない気がする。Pedersonがギャンブルお化けだったことの余波を一番受けた形だったのではないかと推察する。0-19ydsがアテンプトなしというのも極端(訂正:0-19ydsってBall onがGoal前2ydsですのでこのエリアはアテンプトなしでいいです。失礼しました。)。こういった短いFGでリズムを作っていけなかったことが低迷の一因なのではなかろうかと。完全に当てずっぽうですし真偽のほどは定かではありませんが。

Johnstonについて。今年はクソオフェンスのおかげでパントの回数自体はリーグ3位だとか。
ネットAvgが若干低下した気がするが、ハングタイムは4.32でリーグ21位。そして2018以降のPFFランクは30位⇒31位⇒23位です。ちょっと良くなっているものの、リーグでいうと下1/3に入っているところ。
微妙。だけど文句を言うなら去年から言っておくべきだった気がするので、成長が見られただけでまあよしとする。

LSのLovatoについて特に文句はないが、week15のスナップミス。正ホルダーであるJohnstonが負傷退場している間のエクストラポイントにおいて、代理ホルダーがErtzだったときのスナップミス。同点に追いついた直後のエクストラポイントだったのでこの1点はしっかりとっておきたかったところ。まあ結果普通に負けたのでなんでもいいけど。

そして、リターンゲームについて。ここへの不満は大きい。
Kick Offについては、もうリターンすな。タッチバックだと25ydsというルールだと聞いている。Puntのリターンと合わせて、平均攻撃開始位置が自陣27.2yds地点でリーグ26位だったことの一因だと思っている。
だけどこれは、今は亡きSTCのDave Fippに向けたもの。
スタッツを見ていただけるとわかると思うが、なぜReagorにもっとパントリターンをさせないのか。
確かにweek1にマフったシーンはあったが、それにしても頑なにWardだけを使い続ける意味がわからない。Reagorはweek13のGB戦のリターンTDのあと、直後のweek14は出番なし。以降はweek16の1回だけ。その1回も15ydsのリターン。どうなっているのか。
そしてDeSeanはここでも魅せられず。
まあFippがいなくなったからいいけど。

 

【2021への願望とか】
Elliott
については、そのFGアテンプト数が少ないこともコストパフォーマンスを悪くしている一因であるが、本当は代えたい。
ゴミなのに代えられない。それがRosemanクオリティ。保証額のデカさが仇となり、3.3Mのキャップヒットに対して5.3Mのデッドマネーになるため、今オフのカットは不可。ということで自動的に2021も彼。

JohnstonはERFA。UDFA出身のため、オリジナルテンダーでは見返りなし。だけど2Mもスペースがないし、それほどの価値があるとも思えないのでいったん再契約はなしでFA市場に出すのでしょう。
彼の後釜候補として、Arryn SipossとReserve/Futures Contract(新シーズン開幕までのPS扱い契約)を結んでいるのでキャンプでは当然新P探しがあると思われる状況。

Lovatoはまあ残留で結構。

2020のSTについては、STCがDave FippからMichael Clayに代わることへの期待しかないので、どんな指導力と哲学をお持ちなのかはわかりませんが、リターンチームも含めて大幅な改善を期待しております。

 

以上、長々と全positionの振り返りを行いましたが、結論としては「そりゃリーグの下から6番目になるチームでしかない」というもの。
どういうチーム作りをしたらこういうことになるのかわからないが、これが実態。
FA市場開幕⇒ドラフト、という将来への期待が高まる今後2か月、できる範囲で希望とか期待とかを整理していきたいと思います。

2020シーズン査定(DB編)

NFL Filmsが作ったKuechlyのハイライト的な動画を見ていると、やっぱりD#サイドにこういうスーパースターが欲しくなる。フィジカルに優れているだけでなく、頭脳面でもチームをけん引していける寡黙な男。素敵です。
ただし、こういう男はすべてにバランスが取れているので必然選手生活は短くなる。引退して2年経つ2021のCARにおけるKuechly分のデッドマネーは7M超だとか。

本題は、スター選手を獲って欲しくて、それが実現したものの期待とは全然違う仕上がりになったこのユニット。

 

【2020開幕前】
Stay
:Avonte Maddox(18/4)・Rodney McLeod(16/UFA/LAR)・Jalen Mills(16/7)・Cre'von LeBlanc(17/W/Det)・Marcus Epps(19/W/MIN)・Rudy Ford(19/T/ARI)・Craig James(19/Street FA)・Blake Countess(19/ Street FA)
OUT:Malcolm Jenkins(⇒NO)・Ronald Darby(⇒WAS)・Sidney Jones(⇒JAX)・Rasul Douglas(⇒CAR)
IN:Darius Slay(20/T/DET)・Nickell Robey-Coleman(20/UFA/LAR)・K'Von Wallace(20/4)・Trevor Williams(20/Street FA)・Michael Jacquet(20/UDFA)・Grayland Arnold(20/UDFA)・Kevon Seymour(20/Street FA)・Will Parks(20/UFA/DEN⇒のちにカット、DEN出戻り)・Jameson Houston(20/Street FA)・Elijah Riley(20/UDFA)

確かこれぐらい。DBの出入りはなぜこんな頻繁なのか。


2019D#は結構酷く、パスD#でNFL19位という出来映え。なによりスタッツには表れない勝負所でのやられ方とかになかなか悲惨なものがあった。
2017ドラフトにおいて大ケガ中にも関わらず2巡の投資をしたSidney Jonesもものにならず。とにかくなぜか投資はしているのにリターンがないCB陣にテコ入れを図るべくDETと契約延長で揉めていたDarius Slayをトレードで獲得。その後当時CB最高値(年平均16M程度)で3年の契約を延長。当時29歳。Slayに代償で出した3巡85位はその後INDに渡ってS Julian Blackmonに代わってた。なかなかのご活躍をされたと聞いている。

そしてMalcolm Jenkins。2018オフから契約延長について揉めていたが、Jenkinsが折れる形で2019もSTも含めてフルスナップ出場。ロッカールームリーダー兼地域のロールモデルとして大車輪の活躍。その後迎えた2019オフ、フロントと決裂してチームが7.85Mのオプションを放棄する形でリリース。高かったのかな?と思ったら、その後古巣NOと4年32M(単年8M)で契約。いやいや。高くないですやんなにそれ。
その後、Jenkinsは「金額じゃなかった。リスペクトが欲しかったんだよ。それにPHIのフロントは一切答えてくれなかったね。」とのコメント。当時32歳の男に対して長期契約を結ぶことに抵抗はあったのだろうし、そのリスクは十分に理解できるが、残留を熱望している男に対してならフロントロードな契約のやり方もあったろうに。そしてこの男の貢献度合いからするとそれぐらいのリスクは飲んでしかるべきではなかったか。またしてもRoseman。

Malcolmで空いたSSの席にはCBからMillsを移すことに。契約切れだったMillsと1年契約を結んでSSにコンバート。CBとしてはスピードが足りないもののタックルはまあまあできると思っていたMillsならSSは割といけると思ったのが実態。そもそもMalcolmにも2019にはカバーミスがあったりちょっと守備範囲狭くなった気配もあったりで、リーダーとしての素養はうかがい知れないが、その点以外はそんなにマイナスがないと思っていた。

そしてドラフトではClemsonからK’Von Wallaceを指名。守備範囲は狭いがタックルは堅実な完全にMillsと同タイプ。PHIの4巡と言えば未だかつて一人も当たりがいない呪われたポジションであったのが何とかモノになってほしいという気持ち。

その他、“NCBとしてリーグ最高”という触れ込みでLARからUFAで市場に出てきたNickell Robey-Caleman(以降NRC)を確保。そして2017の2巡のJonesと3巡のDouglasをファイナルカットだったかで放出。ほんにドラフトが下手。
ということで2020の陣容は以下の通り確定。
CB1:Slay/Trevor Williams
CB2:Maddox/NRC
NCB:NRC/Cre'von LeBlanc
FS:McLeod/Marcus Epps
SS:Mills/Wallace

 

【2020成績】
<Corner Backs>
Darius Slay

15試合(先発14試合)59タックル(53ソロ)2TFL 1INT 6PD/90回 69rec(76.7%)851yds 3TD QBレーティング111.9/ミスタックル5(7.8%)
Avonte Maddox
10試合(先発8試合)40タックル(36ソロ)1TFL 0INT 3PD/49回 33rec(67.3%)429yds 2TD QBレーティング108.3/ミスタックル3(7.0%)
Nickell Robey-Coleman
15試合(先発7試合)44タックル(37ソロ)2TFL 0INT 1PD/52回 41rec(78.8%)490yds 3TD QBレーティング125.2/ミスタックル10(18.5%
Michael Jacquet
7試合(先発2試合)18タックル(12ソロ)0TFL 0INT 3PD 1Sack 1FF/28回 20rec(71.4%)380yds 2TD QBレーティング137.5/ミスタックル1(5.3%)
Cre’von LeBlanc
9試合(先発1試合)22タックル(19ソロ)1TFL 0INT 2PD 1FF 1FR/32回 25rec(78.1%)243yds 1TD QBレーティング108.7/ミスタックル5(18.5%
Craig James
4試合(先発0試合)2タックル(2ソロ)0TFL 0FF 1FR/1回 1rec(100.0%)2yds 0TD QBレーティング79.2/ミスタックル0(0.0%)
Kevon Seymour
2試合(先発0試合)8タックル(6ソロ)0TFL 0INT 0PD/4回 3rec(75.0%)79yds 1TD QBレーティング156.2/ミスタックル0(0.0%)
Trevor Williams
2試合(先発0試合)3タックル(2ソロ)0TFL 0INT 1PD/4回 1rec(25.0%)15yds 1TD QBレーティング82.3/ミスタックル0(0%)
Blake Countess
2試合(先発0試合)3タックル(3ソロ)0TFL/2回 2rec(100.0%)25yds 0TD QBレーティング118.7/ミスタックル0(0%)

(スタッツはPFRより)
サンプルが少ないながら比較的優秀なスタッツを残していたTrevor Williamsをシーズン中にカットした意味がわからない。
Slayに期待していたのは、シングルカバーでエースWRをシャットダウンするアイランド系CB。全盛期Darrelle Revisまではいかないにしても、それに近い働きを期待しなければCB界最高峰の金額を払うわけがない。
そしてその仕上がりが上記。被スタッツをご覧いただきたい。これ、エースWRの数字である。少なくともPHIのWRでこの数字を残せてはいない。つまり、「エースWRにマッチアップしたけれども、相手OffenseがエースWRに期待する数字以上でも以下でもないものを残された=相手のゲームプランを一切変えられなかった」ということ。なんじゃそれ。そんなやつに年16M強は払い過ぎ。
Slayより3歳ほど若くてCARからFAで3年45MでNYGに行ったJames Bradberryはプロボウルのご活躍だったと聞き及んでいる。

一つSlayを擁護するなら、あのスタッツの大半は
10/13(76.9%)168yds 0TDのweek12 SEAのDK Metcalf
8/9(88.9%)121yds 2TDのweek13 GBのDavante Adamsの2連戦で稼がれたもの。後者についてはレーティング満点のやられ方。
シーズン前半はSlayが効いているな、というシーンも散見された。
にしても結局相手QBの成功率が50%を下回る試合はシーズンを通して1回もなかった。もちろんある程度避けられたところはあったのだろうが、貫禄みたいなものは感じなかった。まごうことなき失敗補強である。

CB全体でいうと、結局試合に出たCBの大半がシーズントータルでレーティング100を超えるやられ方となった。

Slayにエースを押し付けておいてその反対サイドでのMaddoxNRCのやられ方はやっぱり許せない。MaddoxはさておきNRCで許せないのはレーティングに加えてミスタックルの多さ。この多さ。小さくて腕が短いからかスティフアーム一発で吹っ飛ぶシーンが多すぎる。そしてなによりパシュートが下手すぎる。非常にストレスが溜まる出来であった。
Maddoxはやっぱり小さい。大外の屈強なWRをマンカバーするのは無理。

しかしここまでのスタッツが残ると、Slay以外は全部DC Schwartzの責任だと思う。Slay1枚の補強だけであまりにもマンツーマンカバーが多い。できないやつが多いのに。途中Slay(に加えてMaddoxとMcLeod)が離脱したweek15は見た感じゾーンカバーが増えた気がする。その試合は406yds3TD1INTのやられ方であったが、CB陣が前を向いてプレーできるシーンが増えたからか1INTに加えて2ファンブルの計3ターンオーバー。こういうD#でよかったのではないかと。これをSlayで見たかったというところはある。

 

<Safeties>
Jalen Mills

15試合(先発15試合)74タックル(59ソロ)4TFL 1INT 3PD 1FF 0FR/59回 34rec(57.6%)391yds 2TD QBレーティング82.0/ミスタックル9(10.8%)
Rodney McLeod
13試合(先発13試合)66タックル(43ソロ)3TFL 1INT 7PD 0FF 2FR/29回 14rec(48.3%)117yds 1TD QBレーティング56.2/ミスタックル6(8.3%)
Marcus Epps
14試合(先発5試合)47タックル(35ソロ)0TFL 2INT 4PD/21回 17rec(81.0%)152yds 0TD QBレーティング72.7/ミスタックル5(9.6%)
K’Von Wallace
15試合(先発3試合)21タックル(15ソロ)0TFL 0FF 1FR/9回 6rec(66.7%)53yds 0TD QBレーティング82.2/ミスタックル2(8.7%)
Will Parks
6試合(先発3試合)13タックル(11ソロ)2TFL/9回 5rec(55.5%)26yds 0TD QBレーティング60.4/ミスタックル3(18.8%)
Rudy Ford
8試合(先発1試合)15タックル(13ソロ)1TFL/6回 3rec(50.0%)27yds 0TD QBレーティング62.5/ミスタックル1(6.3%)
Grayland Arnold
6試合(先発1試合)11タックル(6ソロ)1TFL 1PD/4回 3rec(75.0%)15yds 1TD QBレーティング119.8/ミスタックル4(26.7%

スキーム的にCBに負担が多かったことはあったでしょうが、こちらのほうの成績は良かったと言いたい。

McLeodの成績は見事。CBに負荷が寄った分、Sとしては比較的やりやすかったであろうが、それにしてもこのQBレーティングは素敵。昨年の被レーティングが81.6だったことと比べると56.2は成長の爪痕が見える。Malcolmがいなくなったあと、DBというかD#全体のリーダーシップを担おうとしていることもあった。だからこそweek14のACL断裂は非常に残念。2021の開幕は間に合わないかもしれないし、その時には31歳。契約は2021までだが果たしてどうなるか。

SへのコンバートになったMillsもケガの懸念はあったが、Covidリザーブに入って出場できなかった最終週以外全試合先発はよくできました。そしてスタッツ的にも見事。印象としてはミスタックルがちょいちょいあった気もするが、スタッツ的にはそれほどでもなかった。欲を言うと、もう少しタックル数を増やしていただきたいところ。Box内への絡み方はもう少し成長してほしいです。

Wallaceはそんなに悪くなかったがあまり印象に残らなかった。Millsの契約がどうなるかわからないなか、2021にはますます成長した姿を見せていただきたい。リーダーシップ要素も兼ね備えている様子でこの地獄のようなチームにおいて若手の成長はまぶしいので今後も期待しております。

McLeodの不在を埋めたのがEpps。あまり注視していなかったので印象にも残っていないけれどもスタッツ的にもやはり足りないところ。2021は出番増えるでしょうからしっかりしていただきたい。

 

【2021への願望とか】
UFAが以下の4名。
CB:NRC・LeBlanc
S:Mills・Ford
CB陣はNCBの二人がUFA
上述の4人が市場で高騰するとは思えないので、安くなるのであれば確保でもいいかな、と思いながら、だけれどもやはりNRCは要らない。LeBlancは値段次第。

DCがGannonに代わることによって、スキームとしてはCov.2がメインになりそうな情勢。
それを考えると、Millsはもうちょっと活きるかもしれないので確保してほしいところ。
だけれどもキャップ情勢的にそれを許されるのか。

現在支配下にいるのが、
CB:Slay・Maddox・Jacquet・James・Shakial Taylor・Seymour(PS)・Lavert Hill(PS)・Houston(PS)
S:McLeod・Wallace・Epps・Arnold・Elijah Riley・Countess(PS)
残念ながら失敗補強となったSlayだが、その将来は不安定。
2021は15.75Mのキャップヒットになるが、6月1日までのトレードであれば6Mのセーブ(9.75Mのデッド)。というわけで予想はトレード。3月17日のFA市場開場までに何等かの情報が入るのではないかと思っているところ。

というわけで2021の陣容予想は以下の通り。
CB1:FA(Xavier Rhodesが第一希望だけどお値段次第)
CB2:ドラフト(2巡ぐらい)
NCB:Maddox
FS:McLeod(完治まではEppsとか)
SS:Wallace
非常に弱い。というかCBの2枠がばっこり空いてる。度重なるドラフト失敗のツケでしかない。こんなもんでDALの凶悪WR陣と戦えるのだろうか。
不安しかないのでGannon先生におかれましては、是非ともスキームの妙を存分に見せていただきたいと存じます。

2020シーズン査定(LB編)

TJというと一般にはWatt三兄弟のあいつを思い浮かべられるのでしょうが、PHIの文脈では全然違う選手のことを指します。

 

【2020開幕前】
Stay
:Alex Singleton(19/Street FA)・TJ Edwards(19/UDFA)・Nathan Gerry(17/5)・Duke Riley(19/T/ATL)
OUT:Nigel Bradham(⇒NOのちにカット⇒DEN)
IN:Davion Taylor(20/3)・Shaun Bradley(20/6)・Jatavis Brown(20/UFA/LAC⇒のちにカット)・Joe Bachie(20/NO PS)・Rashad Smith(20/Street FA)

2016にBUFから加入して以来、LBの柱として活躍してきたBradhamのオプションを破棄してリリースした2019オフ。FA市場でもパスカバーできないタックルできないLBである元LACのJatavis Brownだけを補強というか獲得しただけに留まったので、ドラフトの主眼としては“WRの補強”に加えて“LBの補強”が明確にあった。特にLBでいうと、“パスカバーができる”LBが欲しかった。
それが、蓋を開けると1巡のReagorのあとまだまだ即戦力LBと思わしき候補が残っていた2巡ではQBを指名。そして3巡でやっと指名したLBはコロラド大の“Davion Taylor”。LBプロスペクトのなかでは面談回数が一番多かったと記憶しているので指名の気配はあった。ここで来るとは思っていなかったけど。彼は高校時代、宗教上の理由で金曜にはプレーできなかったようで、そのため試合にはほとんど出場できていない男。その後短大を経てコロラド大でプレーするも、評価は「速いが経験不足。素材型。パスカバーが下手。STでは貢献しそう」であった。即戦力が欲しかった。
その後、6巡で地元テンプル大からBradleyを指名。こちらもドラフト時の評価は「速いけどちっさいし、そもそもLBとしてのプレー範囲は広くないからデプス要員。STは優秀。」とのこと。即戦力が欲しかった。
結局、キャンプではGerry→TJという序列が決まったようで、パスカバーが苦手(遅いという評価)なツーダウンプレーヤーとしてのTJが抜けるパッシングダウンでSingletonが絡む、というLBの陣容に固まる。
この時点では「キャップ的にはリーグで1番安い」という事実があったが、もちろん評判も32位。超不安な開幕。

【2020成績】
Alex Singleton
16試合(先発11試合)120タックル(75ソロ)2サック 5TFL/1INT 1TD 1PD
T.J. Edwards
12試合(先発12試合)70タックル(37ソロ)2サック 5TFL 2FF/1INT 1PD
Duke Riley
13試合(先発8試合)55タックル(30ソロ)0.5サック 2TFL 1FF/1INT 1PD

Nathan Gerry
7試合(先発7試合)57タックル(32ソロ)1サック 4TFL/0INT 2PD
Davion Taylor
12試合(先発1試合)10タックル(7ソロ)
Shaun Bradley
15試合(先発0試合)15タックル(9ソロ)1TFL
Joe Bachie
4試合(先発0試合)2タックル(1ソロ)
Rashad Smith
2試合(先発0試合)3タックル(2ソロ)

序盤のD#崩壊の立役者は間違いなくNathan Gerry。この出来を表現する適切な日本語を知らない。平たく言うと、クソ。
文脈として、この人は元々SSとしてドラフト5巡指名されている人である。つまり、期待されていたのはパスカバーである。その男が残した、7試合出場平均の被ターゲット時のQBレーティングが139.8である。ちなみに敢えて補足しますが、QBレーティングの合格点は100で、満点は158.3です。ちなみに、Gerryさんにおかれましては、week2 vsLARとweek5 @PITにおいて、なんと二度も、満点158.3を叩き出しておられます被パス成功率100%についてもweek1~3と5の計4試合で達成しております。すごいですね。よく生きていられますね。とにかくTEのカバーができない。LARの時はブーツレッグに全部引っかかってからの動き出しになるので、Higbeeの尻を追いかける場面ばかりが目に付いた。
その後、Week6のBAL戦では今度はランのホールを盛大に間違えてリアクションしてLamarの独走TDを招いたりド派手なタックルミスを起こしたりと、それはもう凄まじい地獄を演出してくれていた。
彼については、何というか「フットボールが下手」という表現しか見当たらない。S出身ということでHitに自信がなく、OLと勝負しても到底太刀打ちできない⇒急いでリアクションする⇒結果プレーアクションには全部引っかかる、という悪循環。
そしてWeek7を最後にケガ⇒IRというPHI恒例の流れでフェードアウト。さようなら。名前すら聞きたくありません。

その後のPHI D#を救ったのはカナディアンフットボール上がりのAlex Singleton。最初にインパクトを残したのはweek4 @SFのPick6であったが、あの試合の出番は20%そこら。week8以降はほぼ出ずっぱり。体格的にはGerryと同じながら、Hitができるのでリアクションに余裕がある。パスカバーも上手いとまではいかないが、可もなく不可もなし。なによりあのタックル数のスタッツを見る限り、ボールがあるところにしっかりリアクション出来ていたのでしょう。心強く見えた次第。

そして、2年目のT.J. Edwards。Wisconsin大で4年間MLBのスターターを務めながら、プロデーにおいて40yds走で4.87を記録してしまったことでスピード不足を懸念されてUDFAまで落ちた男。しかし期待通りやはりよかった。まずこちらはGerryで見慣れてしまっているので、中央のランでOLを処理してRBを後ろに倒すというタックルを見せてくれただけでお腹いっぱい。
正しくプレーリードができるということはLBにとって非常に重要な資質であると同時に、そこが正確であればプレースピードは十分に補えるのではないかと思っており、4.58で40ydsを走り抜けるどこかの下手クソよりよほど安心してみていられた。
パッシングダウンになると下げられてしまうところはあったが、個人的にはもっと出場時間を確保してほしかった選手。
ゲームプランによってはほぼ90%のスナップで出場していたこともあったので、大きな成長が見られた2年目と言っていいでしょう。最終的にはハムストリングのケガで12試合の出場に終わったが、来年以降への期待は大きい。

Rileyはいいプレーも見ましたがあまり印象がありません。
BachieSmithの二人は途中加入なので大目に見てあげていただきたい。ミシガン州立から2020のUDFAでNO入りしたBachieにはT.J.と被るところもあり期待していたが、まだ何かを見せてもらったわけではない。タイプ的にTJとフィールドで両立することは難しそうなので、まずは来年のキャンプから。

【2021への願望とか】
今後の展開が地味にしんどいユニット。まあ毎年ロクな補強を受けていないのでこうなるのも納得だが。今オフで契約が切れるのが、
Singleton(ERFA)
RileyUFA
GerryUFA
の3名。
一番下のやつは文句なく切ったらよろしいが、SingletonとRileyを残そうにもそもそも彼らが入るキャップスペースがない。なにせ現在43M超過中。
ERFAのSingletonはこうなった以上絶対に残ってほしいし、ミニマムで確保可能。だけど繰り返すがキャップスペースがない。もとが一番安いユニットなのにミニマムで一人もキープできんのか。なんという絶望。

シーズン開幕当初はOffenseの体たらくもどこかで直ると思っていたので、懸念はGerryのところであった。この明確な穴を埋め、なおかつグレードアップもしたかったのでMicah Parsons(PSU)が本当に欲しかった。
ところが、中盤以降まあまあSingletonとT.J.が上手くいっていたので一瞬ここは後回しでいいかとも思っていた。
しかしながら、SBでTBのLB陣を見てしまった。素敵すぎる。ああいうユニットが欲しい。

だけどまあ全体バランス考えるとやはりオフェンスで6位は使いたいのでParsonsが来てくれることはなさそうですが、3巡ぐらいで一番いい選手が欲しいです。やはりパスカバーが重要。1年キープするSingletonの出番を奪うような柱になる選手。
だけれども、くれぐれも申し上げたいのは、“LBとしてのパスカバー能力”が重要だというところ。決してSを持ってきたらいいというものでもない。
その失敗はGerryで十分。
やはりLBにはランストップから入っていただきたいという所存です。

しかし何年続けて「3巡ぐらいでいいLBが欲しい」と思わされるのか。いい加減にしてほしい。

Wentzのトレードとデッドマネー、終わらないQB論争

今更感が過ぎますが、WentzがINDにトレード。

内容は
PHI:Wentz⇔2021年3巡(85位)指名権+2022年2巡指名権(条件付き):IND

条件というのが、Wentzが「2021シーズンにINDでオフェンススナップの75%以上をプレー」もしくは「70%以上でプレーかつINDがプレーオフ進出」で1巡になるというもの。


当初「2巡×2個」と言われていたのが若干トーンダウン。
しかしながら、この3月19日に保証されるはずの2022の保証額15MをPHIが引き受けるという報道は聞かないので、キャップも引き受けていただいたことも考慮するとまあまあの取引。
INDはPHIほどイカれたフランチャイズではないでしょうから、貴重な指名権+25Mのサラリーを食うQBを先発させないとは思えないので、問題はWentzの健康面と「本当にあいつは直るのか」という点に尽きる。まだ2021のスケジュールが出ていないので何とも言えませんが、どこかでくるバイウィークまでには「悪いのは全くサポーティングキャストを用意しないRosemanと代わり映えしないスキームしか準備しないPederson、つまりPHIだった」ことをWentzが証明することが必要。その点については信用している。OLさえしっかりしていれば(しっかりしているとWentzが思えれば)あの男はまだまだエキサイティングなプレーを見せてくれるはず。WRも、全くオープンにならないPHIと比べればINDのほうがだいぶマシでしょうし。
ちなみに健康面についても、50サックを浴びて無事だった2020を見たところ、だいぶ改善されていると思います。


Wentzくんへ。5年間お疲れさまでした。
最後こそああいう終わり方でしたが、特に2019最後の4連勝などカレッジのほうがマシなWR陣しかいなかったところ、一人でチームを背負っての活躍、いいものを見せてもらいました。頼れる相棒を見つけて長く活躍されることを祈念しております。


【経緯】
結局正式なオファーを出したのはINDだけだった様子。
RosemanとしてはCHIとかその他チームを引き出すことで対価の吊り上げを狙っていたようだが、肝心のWentzが「INDがいい」という強い意向を持っていたため、CHIとしてもオファーは出せず。結局INDに落ち着いたという経緯。

体制の安定度、OLを含むサポーティングキャスト等を勘案してのWentzの希望だったのでしょうが、個人的にはReich>DeFilippoという側面も彼にとっては大きかったのではないかと思っているところ。
「WentzはDeFilippoの指導スタイルが嫌いだった」という噂もあった。
まあこの辺りは終わった話。注目度とかフランチャイズの大きさとか何かにつけて比較されるFolesの存在を考慮してもINDのほうがフットボールに集中できるでしょうから彼にとってもいい結論だったのではないでしょうか。

 

【PHIに残ったもの】
Wentz一人でNFL史に燦然と輝く33.8Mというデッドマネー。(金額では2位のGoffを11M超えて歴代1位。キャップに占める割合でも2位の2001年のTroy Aikmanを5ポイント程度上回る歴代1位。)
個人的にはWentzとチームの関係が悪化しようが、ホールドアウト的なところまでいかない限り2021はWentzでいくと思っていた理由がこのデッドマネー。

デッドマネーとは、平たく言うと「チームにいない選手に払う金」のこと。
Goffトレード(22.2M)とGurleyカット(8.4M)に喘ぐLARの全体でのデッドマネーが30.8Mということでいかに桁違いかはご認識いただけるはず。
加えて、日本時間本日土曜早朝に発表されたDeSeanのカットで5.8Mのデッドマネーが発生しているので、これらを合わせて現時点で40.2Mのデッドマネーだそうです。現時点では、になりますが、2位LARを10M引き離してダントツのリーグ1位です。
現在報じられているところによると、2021のサラリーキャップは最低180M。もうちょっと増えるかもしれません。あと20Mぐらい増えろ!
そこに、PHIは2020からのロールオーバー(繰り越し)が22.8M弱あるので、2021のキャップは207.8M弱。手元の電卓がはじいたところによると、チームにいない2人のために約20%強のサラリーを抱えることになる。もちろんその分戦力は低下。そしてそれでもなお43Mほどキャップをオーバーしているので、ますますのリストラが必要。そうだとしてもデッドマネーなしで切れる契約になっている選手が限られるため、将来にわたって重荷を背負う契約再構築が必須という情勢。言葉にならない。

 

【ドラフト全体6位の行方】
前にもRosemanの項で述べたが、Hurtsをドラフト2巡で指名した経緯は、簡単に言うと「HurtsがWilsonのように見えたから」。しつこいようだが、この前提を押さえておかなくてはならない。
そして、この件をきっかけに、全く整わないサポーティングキャスト、貧弱コーチ陣等々の一連の不満がWentzの退団と現在のデッドマネー祭りを招いた。
それほどまでに入れ込んでいたHurtsしかロスターにQBがいない状況になったら、当然Hurts中心のチーム作りをしていくのではないかと思う。
しかしそうではないかもしれないと。6位でQBに行くかもしれないと。

この論争はこのオフずっと続いているものだが、個人的には反対の立場。
Fieldsが6位に落ちてくるなら考えないでもないけれども。

状況としては2016にトレードアップの末に全体2位まで上がってWentzを指名したときと同じで、武器がない、という状況は変わらないと思っている。
まして今年のFAで何かできる金はどこを探したって出てこない。
そんな状況下でまたしてもQBだけ指名したところで何も変わらないのではないかと思っている。

もちろん、例えばKCのMahomesのように一人で3人分ぐらいのプレーをするQBであれば真っ先にそこだけ指名したらチーム作りはできそうなものだが、さりとてそれだけでは勝てないことが証明されたのも今回のSBだったと思っており、「QBの重要性」について理解はするものの、それで失敗したばかりのチームには周りをしっかり作るところからやっていってほしいところ。
特に当面のキャップ状況が惨憺たる有り様になりそうなチームではなおさら。
幸いHurtsも大いにシーズン中に成長していたので、QBフレンドリーな新オフェンスのもとでとりあえずHurtsに託してみてもよいのではないでしょうか。
ドラフトストックという意味ではWentzの置き土産で2022のほうが豊富になりそうですし。


その他、DeSeanの退団については、昨オフに反ユダヤ的な発言をソーシャルメディア上でしたことによってユダヤ人のオーナーとGMから不興を買い、その時点で解雇という噂もあった男でもあり、さすがにこのキャップ状況とあの働きぶりでの解雇は既定路線であったため、驚きはなし。
これがどれほどコストパフォーマンスの悪い買い物であったかはWRの振り返りで触れた気がする。

2020シーズン査定(DL編)

オフェンスの振り返りでひと段落ついてしまったので、ネジを締めなおしてD#に取り掛かっていきます。
D#はまずこの高額ユニットから。

 

【2020開幕前】
Stay
:Brandon Graham(10/1)・Fletcher Cox(12/1)・Derek Barnett(17/1)・Malik Jackson(19/CC/JAX)・Josh Sweat(18/4)・Vinny Curry(12/2)・Genard Avery(19/T/CLE)・Hassan Ridgeway(19/T/IND)・Joe Ostman(18/UDFA)
In:Javon Hargrave(20/UFA/PIT)・Casey Toohill(20/7⇒その後Waiver)・T.Y. McGill(20/Street FA)・Raequan Williams(20/UDFA)
OUT:Shareef Miller(⇒CAR⇒PHI PS⇒ARI PS)・Timmy Jernigan(⇒JAX⇒DEN⇒Street)・Bruce Hector(⇒CAR PS)・Anthony Rush(⇒SEA⇒CHI⇒GB)
Malikの“CC”は”Cap Casualty”の略。Cap要因でのCutとお考え下さい。Ourlads.comを参照しておりますゆえご了承ください。
しかし美しいほどに生え抜きが多く、そしてFAも高額。
OUTのメンツのその後を詳細に書いているのは、いかに2枚目以降が貧相だったかをご理解いただきたかったため。そして念のため補記しておきますが、その筆頭のShareef Millerは2019年の4巡です。この貴重なストックは1年で紙くずになりました。

2017シーズンの活躍で期待が高まっていたJerniganについては、17シーズン中に4年48Mの契約を結んでおきながら、ケガとパフォーマンス低下でチーム側のオプションを破棄する形で18オフにUFAに。その後1年契約を結んだが結局19シーズン限りでサヨナラ。
Jernigan離脱で層が薄くなっていたDTをどうするのかと思っていたら市場の大物・Hargraveと3年39Mで契約。「どこにそんなキャップが…?」と思っていたら、39Mのうち12M弱をサインボーナスとし、それを(契約期間を超える)4年に分割し、初年度(’20)は3.5M弱のキャップヒット、’21・’22はそれぞれ15M強のキャップヒットに。はいマジックマジック。
その他、毎度のことながらVinny Curryと契約し、32歳のおじさんを残すために7巡で指名したCasey ToohillをWaiverにかけ、WASに拾われるハメに。

主力としてはPIT最強DLを支えた男・Hargraveを確保し、期待していたのに19シーズンは1試合の出場でIR行きとなったMalik Jacksonの復帰もあってInsideは2019より期待できるし、DEはおじさんになっても毎年キャリアハイを伺うGrahamと毎年不満なBarnettというおなじみのメンツ構成。
まあToohillの動きなんかもデプス要員のところだったので、「またやりやがった」とは思いながらDL全体としては楽しみにしていた。というか、CoxとHargraveのコンビとかどうなるものかとワクワクしていた。
そして地味に楽しみにしていたのが、キャンプから非常に評判が良かったJosh Sweat。19シーズンは初の全試合出場を果たし、4サックの実績を積んで迎えた3年目、キャンプもケガなく順調に過ごしていたので、「今年こそ大ブレイクを」と、数少ない若手への期待は高かった。

 

【2020成績】
<DT>
Fletcher Cox

15試合(先発15試合) 41タックル(28ソロ)6.5サック 9TFL 9QBヒット 1FF 1PD
Javon Hargrave
15試合(先発11試合) 38タックル(16ソロ)4.5サック 5TFL 8QBヒット 1FR 1PD
Malik Jackson
15試合(先発6試合) 28タックル(15ソロ)2.5サック 6TFL 13QBヒット 1FR 2PD
Hassan Ridgeway
7試合(先発0試合) 11タックル(9ソロ)1サック 2TFL 1QBヒット
T.Y. McGill
7試合(先発0試合) 9タックル(3ソロ)0.5サック 1TFL 3QBヒット
Raequan Williams
6試合(先発0試合) 5タックル(3ソロ)1サック 1TFL 1QBヒット

サック数はそれなりの数字にまとめたHargraveだったが、ソロタックル数はPIT時代の半分。
期待していたランストップのほうがからっきし。というか全般的に期待値を大幅に下回った。
PHIのDTというのは、常時ダブルチームを食らうCoxの相方であり、シングルブロックになる確率が非常に高くなるため、スタッツは稼ぎやすいはず。なのにシングルブロックでも全然外せない、たまにダブルチームを食らうと地の果てまで押し込まれるなど散々。先に述べたサラリーキャップの関係で、2020については大目に見てやるし厳密には給料泥棒でもないけど2021以降もこのパフォーマンスなら完全なるハズレ。さすがに終盤になって持ち直してきてコンスタントに複数回のソロタックルが出るようになったので、2020については初戦欠場したケガの影響ないしは4-3というか初め体験するシステムへの戸惑いがあったのだと思いたい。システム移行の影響受けるようなタレントに年13Mは払い過ぎだと思うが。彼も27歳なのでじわじわ下降線をたどる可能性も十分にある。

序盤にCoxの相方として輝いたのはむしろMalik Jackson。序盤6試合で11QBヒットはなかなか。後半は沈黙したが。とはいえこやつも3年30Mの契約の2年目であり、このスタッツでは到底満足できない。

そして、この二人について一番許しがたいのが、そのペナルティの数。
Hargrave:5回25yds(全部プレスナップ系)
Malik:8回57yds(プレスナップ系4回+ラフィングザパサー1回+アンネセ3回)
(参考情報として、リーグ最多ペナは11回70ydsのCLE OTのWills、次いで10回114ydsでARI CBのPeterson他。もちろんMalikの8回はチーム最多、リーグでは13位タイ。)
“ボールに反応してスタートする”というのは小学生でも知っている、DLになったら最初に教わることである。億万長者になってまでそんな反則をしている場合ではない。あとMalikは振る舞いが悪すぎる。もう少し成熟してください。
ちなみにPHI D#陣のハードカウントによるプレスナップ系ペナルティは12回でリーグ8位タイ。1位のKC(22回)の約半数ではあるが、それでも多い。そしてその割にサック数は少ない。2021はもう少しマシになることを期待しております。

そして問題はCox。スタッツは例年通りにまとめたし、これまで築き上げた功績でプロボウルには選ばれているが、明らかに衰えている。悲しい。
相対的に若者である相方二人(訂正。MalikはCoxよりおじさんでもうすぐ32歳でした。)がスナップ数を分け合う中、彼はほぼ7割以上のディフェンススナップを記録、そのスタミナたるや本当に尊敬に値するし、大好きな選手であることに変わりはない。けどよく考えたらサラリーは前述二人の合計分ぐらい貰ってたな。
2020については明確にシングルブロックでやられる頻度が増えた。とくにDALのZach MartinとかNYGのZeitlerとかの一線級にはびったり止められたし、一線級とは言い難いNYGのHernandezとかロン毛のShane Lemieuxにもやられていた。年2回対戦がある同地区でのこの完封劇はなかなかに衝撃であった。
タイプ的には卓越したテクニシャンでもなく、あのサイズにしては非常に出足が速いという、スピードとパワーの融合型。つまり、どちらかが衰えると途端に輝きを失うタイプ。スピードもパワーも出所は下半身であるが、自宅にフルサイズのジムを保有している関係で春のロックダウンの影響もあまり受けずにトレーニングを積めていた様子だったので、言い訳の要素が少なくて心配は募る。

その他、ローテーション要員たちはそれなりでしたが、非常に物足りなかったのは事実。特筆すべき点はなし。

<DE>
Brandon Graham

16試合(先発16試合) 46タックル(35ソロ)8サック 13TFL 16QBヒット 2FF 1FR
Derek Barnett
13試合(先発10試合) 34タックル(21ソロ)5.5サック 6TFL 16QBヒット
Josh Sweat
14試合(先発3試合) 38タックル(24ソロ)6サック 9TFL 12QBヒット 3FF 2PD
Vinny Curry
11試合(先発3試合) 16タックル(12ソロ)3サック 3TFL 10QBヒット 1FR
Genard Avery
11試合(先発0試合) 12タックル(6ソロ)1.5サック 2TFL 7QBヒット 1PD
Joe Ostman
3試合(先発0試合) 1タックル(1ソロ)

まずはGraham。プロ11年目にして初のプロボウル選出、本当におめでとう。もはや名誉しかないプロボウルも、あれだけ喜んでいる選手を見ればその価値はあるのだと思える。たぶんプロボウル選出が決まってからは1サックぐらいしかしてないけど。
彼について何より特筆すべきは、そのTFLの多さ。13個はリーグ11位。23TFL+15サック+41QBヒットのT.J.が意味不明なだけで、十分に胸を張れる数字。
まず目の前のOTにしっかりヒットして勝負するスタイルで、必然ランストップへの反応も良くなる。OTの長い腕をかいくぐって下から下から攻めていくタイプでアンダーサイズ(6-2)のDEのお手本のようなプレーぶり。そして何より年々パフォーマンスが上がっているのが心強い。年齢的にあと5年とかは無理でしょうが、せめて2021シーズンはよろしくお願いします。

残り、良かったのが二人と悪かったのが二人。
良かった人たち
Josh Sweat。FSU卒の3年目は6サックでブレイクしたと言っていいでしょう。NO戦の大爆発(4ソロタックル・2サック・1FF)はお見事。あのストリップサックで試合は決まった。
大外をスピードで捲る動きに、テクニック面での成熟も見られたことが飛躍のきっかけ。スナップ当たりのサック効率ではリーグ10位とかそんなもの。課題は明確で、ケガ。この不安からドラフトも4巡130位までスリップしたと記憶しており、実際week14のNO戦で負傷した後は翌週に4スナップ出てその後IR行きでシーズン終了。強くなってくださいとしか言いようがない。
Joe Ostman。スタッツ的にはなにもしていないし、プレーの記憶もない。彼はMailataとの関係性だけ。Mailataがデビューすると決まったあと、全体練習後に彼の個人練習に練習台として延々付き合い、パスプロテクションのイメージ作りを手伝っていたそう。Mailataはその試合後のインタビューで真っ先にOstmanの名前を挙げて感謝の気持ちを伝えていた。
泣ける。けどそれだけ。

悪かった人たち
Derek Barnett。ランストップは成長しましたよね。以上です。パスラッシュもたまにはかかるけどSweatに比べたらその遅さが際立つ。じゃあGrahamぐらいランストップもできるのかといわれると、スタッツでいうと彼の半分程度。そして何よりケガが多い。計算できないことこの上ない。
2017の1巡14位。この年のパスラッシャーで4番目に指名され、通算サック数は19.5で同期7位。3位が21.5個でJamal Adamsなのは気になるけど、まあイマイチ。既に5年目オプション行使済みで’21のサラリーは10Mちょい(デッドマネーなし)。さあどうするか。

Genard Avery。21年4巡と交換で19シーズン途中に加入した男。CLE時代にはいい数字も残していたが、トレード時の懸念通りやはり使い道がない。3-4のLBとかだったらもしかしたらやりようもあったのかもしれないが。というか、このタイプをSchwartzが欲しがる訳なくないですか?あのDefenseでどうやって活かせと?どうせRosemanの暴走だったんでしょうね。本当に双方にとって不幸なトレード。ルーキーイヤーに4.5サックを挙げた男は、PHIの1年半で2サック。
Rosemanさんへ。才能溢れる若者の将来を潰して飲む酒は旨いですか?本当に4巡を出すべきでしたか?
願わくば、Gannon体制で彼が生きる道があることを祈っております。

 

【2021への願望とか】
UFAとなるのはCurryRidgewayMcGillのデプス3人衆。引き留め不要。安いのであれば再契約して結構。
チーム全体として、サラリー総額で259Mとかになっており、2020からの繰り越しを考慮した想定キャップ(208M弱)からの超過は現在42M強。
その状況下において、DLにつぎ込む予定にしているのが、75M超。DLとエースQBだけでチームのキャップの半分を食うことになる。なんじゃこの異常事態。

イチファンとして放っておけないので、いろいろ考えてみたが、
Derek Barnett:リリース 10Mセーブ
Malik Jackson:リリース(6月1日以降) 2Mセーブ
以上しか思いつかない。
ていうかこれは単純に疑問なんですが、3月17日の新年度開始の時点でサラリー総額はキャップ以内に収まっていないといけないのかな?だとしたらMalikのカットは遅すぎるのかな?

ちなみに、例の契約再構築を行っている関係で、Malikはこのオフにカットしても2024まで3.6M・3.6M・3.6M・1.8Mのデッドマネーが発生します。はいマジックマジック。

あと方法があるとしたら高額なFletchとかGrahamとかHargraveの契約再構築ぐらいしか手がない。
かくしてまた高齢不良債権は溜まっていき、オフの補強の選択肢は制限されるのである。そして虎の子のドラフト指名権は無駄なトレードに浪費され、選手を指名しても1年でいなくなるようなやつを連れてくる。
以上、負の循環を体現したかのようなユニットでした。

到底FAでは動けない状況で、かつ上位指名権はこのユニットにだけには使いたくないので、なんとか下位指名でデプス要員を探し当てたいところ。

このオフ、この高額ユニットをどう持っていくのかは興味深く見守っていきたい。

GMへの手紙

何かしらの決断をする上で、哲学があるということは良いことだと思います。
無限にある選択肢の中から、自らの哲学に則った選択肢を抽出して検討し、決断することは、“なんとなく”何かを決めるよりも一貫性があり、振り返って教訓にできるという意味でも合理的に思えます。

しかし、その哲学を、明らかに良くない結果が積み重なっても修正しないとなると、これは問題。ましてやそれが絶対的な権力を有する人間の所業なのであれば、害悪でしかない。
というわけで、論語にいう「誤って改めざる」こととされている“過ち”を繰り返すGMについて。
辞めてほしい100の理由を認めてみました。だけど長くなるし書きながらとんでもない徒労感に襲われたので理由は3個に絞っております。人格攻撃はできる限りしません。彼の業績について思うところを述べます。

 

事実

GM:2010~2014・2016~現在

大事な注釈)2010~2012は実質的に当時HC兼フットボールオペレーションの副社長だったAndy Reidが決定権者

 

1年間だけブランクになっている2015は、Chipが権力闘争に勝利して全権を奪ったもの。

 

この時のChipの扱いと、それに付随するRosemanの扱いについては、LurieオーナーがChip解雇時の記者会見で「非常に後悔している」と述べたこともありその後のチーム運営に大きな影を落としている。

 

GMとしての勝率
<Reid時代(2010~12)>22勝26敗45.8%(地区優勝1回)
<Chip時代(2013~14)>20勝12敗62.5%(地区優勝1回)
<Pederson時代(2016~20)>42勝37敗1分53.1%(地区優勝2回・WC1回+SB制覇)
<合計>10年間 84勝75敗1分52.8%(地区優勝4回・WC1回+SB制覇)

 

先ごろのSB前の期間に話題になった「Andy Reidの長いHC期間において、組んだGMの中でRosemanとの時代の勝率が一番悪かった」というのが上の事実に基づくもの。

事実なのでこれ以上は言わないが、一つRosemanを擁護するなら、上に述べたようにこの期間のフットボールオペレーションの統括者はReid自身。

ただ、その直下の人間として成績に一部責任を問われることは免れ得ない。

 

しかし10年間もの長期政権を築きながら、勝率は5割そこらである。
これだけでも有能とは言い難い。
とはいえ、それぞれの期間において何らかの言い訳(Reid時代は決定権者でない、Chip時代はChipだから、Pederson時代はSB制覇、など)が成り立つのがこの男の強運。

 

 

お仕事

1.Draft

各チーム均一のサラリーキャップで戦力構成が限定されるNFLにおいて、若返りの貴重な選択肢であるドラフトの重要性を強調してしすぎることはない。

もちろん即戦力たるFAとのバランスは必要だが、長期的に戦力を維持するためには安く戦力を確保できるドラフトで的確な指名を行うことは絶対条件。

参照したのはこの記事。“Football Outsiders”にて2010~19のドラフトの評価を行っているもの。

こちらの考え方としては、ドラフトには「資本(懸けたピックの価値の合計)」と「リターン(指名した選手のバリュー)」があって、その「バランス」が所謂「ドラフトの上手さ」になるのではないかというもの。

「資本」と「リターン」は、各年のドラフトにおいて各チームがそれぞれどれぐらいを占めたかの割合で算出しているので平均は100%÷32チームで3.125%。
そして総合効率といってもいい「バランス」は「リターン」÷「資本」で算出するので基準は100%。

それによると、Rosemanが最終決定権者になった2016~19の4年平均で、
資本:29位
リターン:30位
(両方とも低レベルなので)総合効率:22位
という結果。酷い。


もちろん、例えば選手のバリューなんかそう簡単に数値化できるものではない上にコーチ陣の指導力も結果して反映されているのでこの指標も完全だとは言いきれないが、「諸々考慮したチーム作り」という観点からは十分に参考指標になり得る。

HCであればSB優勝⇒ワイルドカード⇒地区優勝という実績でも、翌年にたった一度リーグの下から6位の成績をとっただけでクビにされる世界であることを忘れてはならない。(皮肉)

ちなみに、良い方の外れ値は、3巡でWilson、2巡でWagnerを当てた2012のSEAとか、4巡Bakhtiari、Tretter、2巡Lacy、5巡Micah Hydeを当てた2013のGBとか。

後者はピックしたチームへの恩恵という意味では少し違うかもしれないが、これも一面的な指標である証。

 

そのうえで、2016以降の指名選手を掲載すると以下の通り。

 

2016

2017

2018

2019

1巡

Carson Wentz*

Derek Barnett

Andre Dillard

2巡

Sidney Jones

Dallas Goedert

JJAW/
Miles Sanders*

3巡

Isaac Seumalo

Rasul Douglas

4巡

Donnel Pumphrey/Mack Hollins

Josh Sweat/
Avonte Maddox

Shareef Miller

5巡

Halapoulivaati Vaitai/
Wendell Smallwood

Nathan Gerry/Shelton Gibson

Clayton Thorson

6巡

Blake Countess

Elijah Qualls

Matt Pryor

7巡

Joe Walker/Alex McCalister/Jalen Mills

Jordan Mailata

*がプロボウラーで、薄い文字にしているのがもうロスターにはいない選手。

 

評価が終わっていない2020を除き、4年間で26名を指名、現時点でチームに在籍しているのが、13名。

プロボウラーは最近補欠で選ばれたSandersと2017のWentzの2名。

白眉は2017。2019も酷いけど。
個人的には5年目オプション行使済みのBarnettもカットでいいと思っております。10M浮くし。

擁護するなら、「2018みたいに当てる年もあるよ小粒だけど」となるか。

ちなみに前述の指標によると、この指標自体が1年前のものであり古いことは否めないが、その時点での2018のリターンはブービー賞の31位。ブービーメーカーはKC。

確かにこの年のKCの指名はDerrick Nnadiしか知らない。

 

彼がこうまでにドラフト下手であることには理由があるらしい。
内部情報によると「とにかくスカウトの言うことを無視しはる」とのこと。
この辺りは推測というか憶測も入っているだろうものであまり断定はできないが、まあそういう告発をもとにした記事はよく見た。

 

物議を醸した2020における2巡でのスカウトの反対を押し切ってのHurtsの指名もそう。

実は2012のドラフトの時に3巡で本気で狙っていたのがRussel Wilsonであり、それが75位で攫われたから仕方なく指名したのが88位のNick Foles。
今となってはFolesにも恩義があるのでなんとも言えないが、それがあったので「欲しいと思ったQBにはいかないといけない」という『哲学』を持ったのだとか。ちなみにこれは本人が仰っているので事実です。

 

いやまあね。
そらWilsonの結果みたらそうでしょうけど、下り坂を転がりだしていた32歳のVickと将来が嘱望されていた27歳のWentzとでは状況が全然違うでしょうに。

 

 

2.FAとロスター構成

これはドラフトと表裏一体になるのだけれど、ドラフトで外した穴に、とにかく高いおじさんをよう獲ってくる。

彼を称して「サラリーキャップの扱いがうまい」というものがあるが、これは「サラリーキャップは右肩上がりになっていくものだ」という『哲学』というか想定のもと立てられた戦略。

彼が良くやるのが「契約再構築」。
これは何かというと、ベースサラリーをサインボーナスに変換する、というもの。

 

これは、対象の選手にはサインボーナスとして一括でキャッシュが入る一方、チームはその分のベースサラリーを将来にわたって(最大5年)均等配分することが可能になる、というもの。

これをよくやったのがErtz。
TEの振り返りでも述べたが、彼はもともと2016年1月に、2017~21までの5年42.5Mの契約延長を行ったが、その後2017(3.225M)・2018(7.21M)・2019(7.195M)と毎年のように契約再構築を実施。その結果として、2019の契約再構築によって、現行契約終了が2021にもかかわらず、ダミーイヤーとして2022・2023にそれぞれ1.8M弱のサラリーを食う結果に。

契約再構築自体は、浮いたキャップを翌年に持ち越せるルールがある以上、悪いことではないし使い方次第では非常に有効な手段だと思うが、ここまでくるとやりすぎ。

こうなった結果、何が起こったかというと、ロスターの高齢化。「こいつは長いこと働いてくれそう」という選手に対して再構築を持ち掛けるのだから、その選手はたとえ衰えようがそのサラリーがネックになってトレードもカットも難しくなる。そして高齢化の結果が、ケガの増加と不良債権

 

2016から2020まで、ロスターの平均年齢は若い順位で28位23位11位31位19位である。そりゃ平均以上にケガも増える。

 

そしてロスター構成は極めていびつ。
この文脈で頻繁に例に挙げられるのがLBとDL。
LBについては、2020シーズンインの段階で試合経験があったLBはNate GerryとSTとして獲ってきたDuke Rileyのほぼ2名。残りはルーキーとUDFA2年目とCFL上がり。

なんでこんなことになるのか。それは「強いLBは必要ない」という彼の『哲学』によるもの。

DC SchwartzはDET時代からLBを非常に大事にしており、実際、2019まではPHIにもBradham(2016にBUFで一緒だったSchwartzの伝手で契約)がいたし、2018まではHicks(2015にChipが指名)もいたし2017まではKendricks(2012にReidが指名)もいた。

この3人がいたからSBに勝てたときのD#は良かったのだと信じている。
ところがスキャンダルがあったKendricksは別として、そのあたりの選手は流出するがまま放っておいてスッカスカに。
Schwartzもやりにくかったろうと同情する。
ちなみに彼には選手に関する決定権はなかったよう。
これも本人が明らかにしているので事実。

 

あまりに酷いからさすがに2020ドラフトでは3巡でLB指名したけど。Davion Taylorて。速いだけの超素材型ですやん。
3巡でこの事情をかかえるチームが指名する選手ではないでしょうに。
STスナップは多かったけどそこじゃない。

 

一方でDL。ここにはとにかくふんだんに金をかけはる。
お高いCoxがいるところにMalik JacksonにJavon Hargraveに。

確かにDLへの投資が最高の結果となって返ってきたのが2017だった。
それは事実なのだが、もう少し自分が雇ったプロのコーディネーターの意見を取り入れたロスター構成にしてはいかがか。あなたは万能の天才なのか。

 

 

3.権限

これが衝撃。

2020のシーズン中に出た情報として、「誰が試合に出るかは週末にRosemanが決めているから(本気の練習をする)水曜時点ではコーチは誰が試合に出るか知らない」というもの。

通常、NFLチームでは、水曜時点でラインナップをあらかたHC以下コーチ陣で決定し、当然各ポジションコーチもそれを認識したうえで練習では指導にあたっているのだとか。それはそうでしょう。

 

しかしPHIにおいては、そうではないと。
いやいやいやいや。素人やん。あんた素人ですやん。
そらPedersonも「来週はHurtsか?」って聞かれても「なんとも言えない」って返すしかないですね。
さすがにここまでくると俄かには信じがたいし、程度の問題もあるのでしょうけど、そりゃWentzかて出ていきたくなる。

 

 

経歴とオーナーとの関係性

Howie Roseman。本名Howard Roseman。


幼い頃からNFLチームのGMになることを夢見ていたRoseman少年は、高校生時分から各チームに非常に熱心に自分を売り込んでいたそう。

フロリダ大卒業後、悪名高い?フォーダム大ロースクールを出て、1998年にめでたく無給インターンとしてPHI入り。
実にPHIでのキャリアは人生の半分に達する。最初はサラリーキャップを担当、その後メキメキと頭角を現し、2010年にGM就任。

 

オーナーのJeffery Lurieという男は、実に部下への要求が厳しい人物なようで、ボストンでの幼少期の頃からの友人であり、Eagles買収の時からLurieの傍にいてReid体制下でも功があったJoe Bannerであっても、最終的にはうまくいかなくなった様子。

 

そんな仕えにくい男から、叩き上げのRosemanは非常に深い信頼を勝ち取っているとのこと。
この絆は外から理解しがたいものがあるが、Lurieが今欲しがっているものを察して差し出す能力が極めて高いというか、平たくいうと取り入るのがうまいというか、まあそんなところでしょうか。
どんな組織にもそういう人っていますよね。

 

Chip時代の2015の失敗と、その後のSB制覇を経て、どうやらLurieの信頼はますます高まった様子。

今回のSirianni体制がうまくいかなくてもRosemanのクビは揺らがないまであるのではないでしょうか。

 

これ以上Roseman体制が続くと、他のチーム内のスカウトとかへの影響が心配される。

俺たちが仕事してもあいつは聞かんじゃないかとなってしまえば元も子もない。実際、PHIから出ていったexecutiveが成功するたびに嫌な気持ちになる。最近でいうとKCのBrett VeachとかCLEのAndrew Berryとか。

 

ここまで書いておいてなんだが、特にドラフトにおいて、Rosemanに全くセンスがないとは実は思っていない。

なぜならReidが去った最初のドラフトである2013、Lane Johnson・Zach Ertzと今に至るまで柱となっている選手を当てているのはRoseman。

 

この時がどうだったのかわからないが、まずは謙虚になって、ピックを増やし、スカウトの意見を聞いてやっていってほしいとは思う。

というか、本当は退場願いたいが、やっぱりいるとなったらそれぐらいしかファンとしてはすがるところがないのである。

 

なんとかいい方向にやっていっていただきたいというのが切なる願い。