鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

QB交代について考える

いよいよというかやっとというか、全く衰えない勢いでNFL最多ターンオーバーを積み重ね続けているWentzの周りが非常にキナ臭くなってきたので、QB交代に関していつものように結論がない文章を連ねていきます。毎度のことながら文字ばっかりで恐縮です。

 

【前提】

・Wentzの契約内容: 2019年シーズン開幕前に4年の契約延長に合意、契約期間は最長2024年まで。 契約構造上、2021年まではあまりにもカットした場合のデッドキャップが大きいため、カットするにしても2022年6月1日以降のカットが現実解。ということで、2021年シーズン終了までは我らがQBであることが確定済み。

 

【現状の理解】

・地を這うかのように低迷しているPHIオフェンスにおいて、メディアの論調や個人的な理解からすると、大きな原因は2つ考えられる。

①Wentz個人のパフォーマンス
②オフェンスのスキーム構築やプレーコールを担うOC兼任HCであるPedersonのパフォーマンス

 

その他、「OL等にケガ人が続出しているからだ」という意見もあるが、そのあたりの影響は、相次ぐケガ人の復帰でもはや局地的であることや、そもそもOLはそれなりに結果を残していることがスタッツ上証明されてしまっている(プロテクションが3秒以上持っていることを「OLの勝利」として一般的に定義するが、その勝率はweek11前でNFL8位とか。そして数えたくないぐらい大量のサックを浴びたweek11でも2.5秒以内のサックはなし。)のでここでは論点としてあげない。

「Wentzを下げろ」という結論自体に変わりはないが、そこに至るプロセスとしては、上記①に重きを置くか、②に重きを置くかによって見方が分かれる。

 

【①Wentzのパフォーマンス重視派】

・Wentzに対する批判

主にはシーズン序盤から指摘されていた「正確性」「ディシジョンメイキング」「視野」等に加え、最近では「練習サボってる疑惑」等も浮上中。最後のものについては「練習においてメディアがいていい時間帯についてはそれなりに取り組んでいるが、そうでない時間帯においては適当にやっている」というもの。
昨年途中にAlshon Jeffery(と思われる人物)が「匿名の情報筋」としてPedersonとWentzを批判する記事がESPNから出たことで、全PHIファンが、当時はWentz擁護と、当時もAlshon批判に、燃えたことがあったが、その際も批判の対象はTE偏重気味であったPedersonのスキームやWentzの正確性等に対するものであり、練習態度云々の話はなかったと記憶しているところ。
まあ正直こんな練習態度云々的なもんは眉唾物であり信憑性は低いが、まあそれほどまでにいろいろとうまくいっていないことの証左ではある。
そういった状況を踏まえて、Wentzに一回ベンチから試合見させることで頭冷やさせなさい。そして練習へも気持ち入れて取り組むきっかけにさせなさい。来シーズンまでは頑張ってもらわないといけないのだから。というのが主な論旨。
まあ、ここまでうまくいっていないのだから何かを変えたほうが良いのではないか、というもの。

 

・成功体験

そして、その論旨をバックアップする成功体験がPHIにはある。

それが、Andy Reid時代の2008年シーズン。 序盤から不振に苦しんだ(といっても今年のWentzほどの災害級ではない)McNabbは、5勝4敗1分で迎えたweek12のBAL戦前半に18回試投中8回成功で59yards 2INTという散々な成績を残し、とうとう後半はベンチを温めることに。その試合こそ惨敗したものの、のちに彼とチームは復活を果たし、以降4勝1敗でワイルドカードに滑り込み、第6シードからNFC決勝まで進出した、というもの。

果たしてリードとピーダーソンが同レベルなのか、という議論は一旦横に置くが、McNabb自身の成績もベンチに下げられた試合後から改善していることから、心理的なのか効果があったという主張。

そもそも当時McNabbはプロ10年目で既に5度のプロボウル選出経験やスーパーボウル進出経験もあった完全無欠のフランチャイズQB。その彼でもパフォーマンスが悪ければベンチに下げられるのが当然の世界にあって、なぜ実績が足元にも及ばないWentzがMcNabbをはるかに下回る成績で当然のように先発するのか、という過去の教訓を踏まえた指摘。
指摘自体は全くもって妥当なものだと理解するし、そしてこの指摘は後述するHC Pedersonへの批判にもつながる。

 

【②Pedersonのパフォーマンス重視派】

・OCとしてのPedersonに対する批判

個人的にはこの要素が一番今季のオフェンスを苦しめているのだと思っているが、ゲームプランを含めたスキーム構築が本当にいただけない。

先週のCLEというかStefanskiが徹底的にラン、ラン、ランのあとのプレーアクションパス、という哲学を持ったプレーコールで道を切り拓いていったのに対して、そういうものがPedersonのコールやスキームからはまるで見て取れない。

記者から問われれば「プレーアクションパスを増やす」とか「Wentzをポケットの外に出す(ロールアウト)パスを増やす」とかは単発で回答するものの、蓋を開けてみれば次の試合も前の試合の焼き写しのような内容。たまにランを増やしてみたかと思えば次のシリーズからは出ていたランプレーをぱったりコールしなくなる。そしてパスをコールするにしても、出ていたランプレーをディフェンスに焼き付けてそこからプレーアクションパス、というようなものは一切ない。なんなのかこのOCは。という批判が主な内容。

そしてこれはWentzをベンチに下げろという批判からは直接結びつかないように見えるが、それがそうとも言い切れない。この派閥の主張は、Hurtsが先発になるのであれば、Wentzと同じプレーブックにはならないと考えられることもあって、「(その評価に値するかどうかは別として)Wentzに頼れる」という状況を敢えてなくすことによって「Pedersonもっと頭使え」というというもの。

個人的には、他チームの試合を見ていると、PHIオフェンスのレシーバーが「スキームの上手さでオープンになる」という場面が少なすぎる気がしていて、それはOCの責任に依るところが大きいと思っている次第。

 

・HCとしてのPedersonに対する批判

そもそもベテランを重宝しすぎではないか。なぜ特定の選手に対してHCが選手起用において異常なまでの「忠誠心」を見せるのか。という批判。

ロスターにベテランは多かったものの、昨年まではそんな批判はあまり聞かなかった。端緒となったのが、Jason PetersのPHI復帰からLTへのコンバートへの顛末と、その後の彼に固執する選手起用。詳しくは過去にさらっと書いた気がするのでそちらに譲るが、先に復帰したAlshon Jefferyに対しても同様の文脈で批判が集まっている状況。

確かにこのHCの保守性には個人的にもうんざりしているところ、過去のAndy ReidとMcNabbでの成功体験や、「信賞必罰」というもっともらしい理由も添えて、HC権限として当然持ち合わせているはずの「先発QB交代」という権力を発動させることによって、「何ならPetersもJefferyも出すな」というのがこの論の主張。

折悪しくというか、MIAのフローレスが試合途中にパフォーマンスが悪かったTuaを下げたという出来事がweek11にあったこともそれを加速している状況。

 

【状況を複雑にしている要因】

Pedersonが決断するうえで、それを難しくしている要因が3つあると思っている。

Hurtsの存在
何をどう考えたのか、GMローズマンがこのドラフトで2巡なんていう高位でHurtsを指名したことによって、Pedersonには一つ枷ができたのではないかと推察する。それが、「先発QB Wentzを絶対的なものにしないと外野からの“Hurts先発”コールが鳴りやまないのではないか」という懸念。指名当時、確かPedersonは、Hurtsは「ネクストWentz」ではなく、「オフェンスの選択肢を広げるもの」という説明をしていた。それが超限定的な起用にとどまっていることで「2巡を使ってまでやることだったかね」「Van Jefferson獲れたじゃないか」、という不信感はぬぐえないものの、まあWentzにとって代える気がなかったのは伝わった。

だからこそ「Hurtsが通用しちゃったらどうしよう」というHurtsへの恐れがあるのではないか、というもの。だとしたら意味が分からない。なに自軍の戦力に怯えるって。と思うけどまあそんな意見もある。

 

・全くチームはうまく回っていないのに未だ地区首位であること
これが難儀。確かに「NFC東のなかでは相対的にうまくいっている」から何も変えなくていいんでねえかと。んなわけあるか。

 

・自分のクビが危ないこと
以前にも述べた通り。「来シーズンなんか関係あるか今勝つことだけが必要なんじゃ」となり、Hurtsが未知数なのであれば、「現時点で一番信頼できる」カードとしてWentzを使い続けるしかない。

たぶん下二つの要因が絡み合って、Wentz先発はしばらく揺るがないのでしょう。なにせweek10の試合後に「Wentzを下げないのか」と記者から質問されて「(そんな質問が出たことに)ショックを受けていたように見えた」と言われるHCですから。

 

 

【結び】

例えば先日のCLE戦では35回の試投中、なんと10回までもリーグ最高CBであるDenzel Wardがマッチアップするレシーバーに投げたそう。これは何かがおかしいとしか言いようがない。 昔、「リービスアイランド」で名を馳せた元NYJの当時リーグ最強CB Darrelle Revisが現役だった頃、NYJと対戦したNOのHC Sean PaytonとQB Drew Breesのコンビは、Revisのマッチアップ対象には1回しか投げずに試合を終えたこともあるとか。
たぶんこういった例は枚挙にいとまがないであろうこのリーグにおいて、なぜチームどころかリーグNO.1のCBに向かってわざわざパスを大量に投げるなどということが起こり得るのか。
「全部Wentzのせいだ」と言うつもりはない。「スキームが終わっている」か「Wentzの目には投げたいターゲットしか映っていないから必然的に相手のNO.1CBに投げてしまっている」かのどちらかだと思う。

そしてそれを、Wentzでやっていくしかない来シーズンのためにも早めにはっきりさせておきたい。だから一回Hurtsでやってみようよ、と言いたい。

 

先週のCLE戦でベイカーのハンドオフの丁寧さにしびれた者としては、同じOklahomaでリンカーン・ライリーの薫陶を受けたHurtsがどんなもんかを見たい気持ちが強い。別にうまくいかなくてもいい。パサーとしてはベイカーに届かないところにいるでしょうから。

 

だけど…今よりは何かが起こるかもしれないと考えると…Hurtsが見たいなあ。