鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2020シーズン査定(QB編)  

同期のGoffのブロックバスタートレードがあって自らの身の回りにも煙が立ちこめているのに本人がなにも話さないものだから憶測がとまらないあの男。そしてとうとうインスタのBioから“QB for the Philadelphia Eagles”を外すことで旗幟を鮮明にした。トレード秒読みとなり緊張感あふれる日本時間土曜。
今オフ、Pederson解雇から新HC選びまで、フロントはWentzの再生を最重要視していたはずが、先発を外す決定を容認したフロントまで含めてWentzにとっては信用ならないものだったと。どこまで下手なのか。いつまでRosemanなのか。未だ去就の答えは出ていないが、一旦見るもおぞましい2020シーズンのPHI QB陣の振り返りを。

 

【2020開幕前】
Stay:Carson Wentz(16/1)・Nate Sudfeld(17/Street FA)
OUT:Joshua Treadwell "Josh" McCown(PHI PS⇒HOU)
IN:Jalen Hurts(20/2)

前年にメガディールで先発QBの契約延長をかましながら、そのQBのケガが怖いという理由でドラフトにおいて2巡という高順位でのHurts指名とRosemanの「QB factory」宣言から幕を開けた2020シーズン。当時は確か「Wentzのケガに備えること」「Offenseのオプションを増やすため」という指名理由だった気がする。だからモデルはNOのテイサムヒル。だけどあっちは7巡ぐらいの指名だったはず。全然効率が違う。というかそんなにケガが怖いならもっと安く契約できたでしょうが。
表向きはWentzも歓迎しているように見えたのでまあ安心できるのかな?と思っていた。もちろん、その分もっといい選手獲れたはずだけどね、という気持ちはあったが。
コロナで変則的なオフシーズンとなった2020に、選手が報道陣の前に初めて現れたのが7月のトレーニングキャンプ時。そしてそこでの今年のWentzは違った。デカい。10ポンド以上バルクアップしたという噂もあり、2019の脳震盪はクラウニーのチープショットのせいだとしても、例年“スクランブル=長期離脱”というケガのしやすさに対して根本的に対処しようとしているような印象を受けた。期待は高まるキャンプイン。だけどキャンプ終盤に小さいケガで離脱していたりして、本番どうなのかな?という例年通りの不安はあった。そして開幕。1Qまでは順調順調。

 

【2020成績】
Carson Wentz
12試合(先発12試合) 251/437 57.4% 2,620yds 16TD 15INT Rating72.8 Sack:50
Jalen Hurts
15試合(先発4試合) 77/148 52.0% 1,061yds 6TD 4INT Rating:77.6 Sack:13
Nate Sudfeld
1試合(先発0試合) 5/12 41.7% 32yds 0TD 1INT Rating:14.6 Sack:2

はい開幕戦の1Qまででした。
おさらいしておくと、吐き気を催すほどのサックとINTを積み重ねて、Wentzはweek13のGB戦途中からお役御免。それ以降1試合も出場せず。上にサックをQBのスタッツとして計上しているのは、個人の思想と信条によるもの。OLの責も半分強はあったが、この数字になるためにはQBの寄与も大きかった。
そして、お気づきいただけたであろうか。一番下のあいつは別として、WentzとHurtsは試合数を勘案するとほぼ同じスタッツ。生き写し。そして最重要スタッツである勝敗をかぶせてもほぼ同じ。Wentzが3-8-1(29%)、Hurtsが1-3(25%)。Hurtsは最終戦下げられているのでまあ1-2だと思うと若干マシという見方もできる。5勝ペースだけど。
ちなみにRushingのスタッツは、
Wentz:52回276 yds(5.3yds)5TD LNG 40yds 25FD 3Fum 1Lost
Hurts:63回354yds(5.6 yds)3TD LNG 24yds 24FD 6Fum 2Lost
これも一緒。
しかし、微妙に違うのが、Rushingの数。この点、Hurtsのほうがプレッシャーに対して頻繁にスクランブルを発動していた印象で、それがOffenseの局面打開に寄与したシーンもちらほらあった。「安易にポケットを飛び出してしまう」というルーキーQBにありがちなミステイクだという疑惑もあろうが、試合を見る限り、というかHurtsの全スナップを見る限り、辛抱が足りないと感じるスクランブルはほとんどというかなかったと記憶している。むしろ辛抱が過ぎたために、あの機動力にして13ものサックを浴びたのだと理解している。主には目の前がガッツリ空いたために走り出したというパターンが多かった。これはサック数と表裏一体なのではないかと考えている次第。つまり、Pedersonのスキームは(ウエストコーストオフェンス出身のはずなのに)Deepにとにかく人を飛ばせてHigh-Lowコンセプトをメインにするもの。しかし、そうすると、当然と言っては何だが、投げるまでの時間は長い。2017のMVPモードのWentzでも、NGSによるとTT(Time To Throw)は2.72で、下から数えて15番目のリリースまでの時間の長さ。大体全QBの中央値ぐらいの値。
じゃあ2020はどうだったのかというと、Wentzが2.91(128ATT以上のQBで下から6番目)でHurtsが3.11(同最下位)。そりゃサックも増える。
当然これだけ時間がかかればスクランブルする隙は見える。おそらく2017と2020の違いという点では、2017のWentzはストレッチしたD#の緩みを有効に衝いて走れたけど、2020については度重なるケガでスクランブルを自重せざるを得ず、奥を探し続けた結果がサック数の激増と無茶投げINTの積み重ねにつながり、そしてとうとう完全に壊れてしまった、ということではないでしょうか。もちろん、そのコンセプトにあってベースとなるべき、盤石だったOL陣が失われたことも非常に大きな要因となったでしょう。
だけどWentz(というか二人とも)をそんなに責められないのは、「WRが全然空かない」こと。そして二人に共通して責められるべきは「プレーリードが下手(空いていても見つけられない)」なこと。これはダラーっとタテにWRを飛ばせるだけのPedersonのコンセプトの行き詰まりと、WR陣の能力の低さと、QBコーチ周りの指導力のなさの複合要因がなせる業。だからWentz再生というコンセプトが消えたとしても毎年ゴミみたいなアシスタントしか揃えられない、かつ発想が枯渇したように見えたPedersonの解雇は理にかなっていると個人的には思っている次第。(今年のINDで何度か、全く、完全に、一分の狂いもなく、PHIと同じパスパッケージを見てしまったので後任への懸念もなくはない。)
Wentz個人でいうと、どういう事態なのかわからないが、正確性が極端に落ちた。逆リードのボールを何度放っていたことか。バルクアップした身体が原因なのか、度重なる負傷で2017の彼はもう失われてしまって二度と戻ってこないのか。新天地ではいいOCとQBCとWRに出会えるといいね。
どこかで、「同じように2020にQB(Jordan Love)を指名したGBというフランチャイズがあったが、実績を確立して未だ衰えることなくトップクラスに君臨するRodgersと、よく考えたら実績がほとんどないWentzではそのメッセージに対する受け取り方が全く異なる」という記事を読んだ。おっしゃる通りだと思う。だから根本的に、Wentzの不満は“Hurtsを指名した”ところから始まっているのでしょう。だからこれはもう完全にRosemanの失態。
ちなみに、トレードですが、見返りがあるなら何でもいいです。見返りは高い方がいいけど。Goffトレードを見る限り、やはりキャップ処理にはお金を払う必要がありそうだという印象があるので、見返りに指名権があるだけでうれしい。なんならErtzとセットで出してもいいですよ。即使える仕上がったコンビネーションをパッケージで売りつけるという商売、いかがでしょう。これなら1巡1個ぐらいは欲しい。
まあどんな見返りを貰おうがどうせRosemanがしっかり外すんでしょうけどね。スーパー制覇以降3年間で2回プレーオフに出たHCを解雇し、全体2位で指名して3年後に契約延長したQBをその2年後に放出するって組織的な失敗に他ならないように見えるんでしょうが、その責任者はどうするおつもりなんでしょうか
ちなみにWentzのキャップは、一番起こりそうな3月19日までのトレードでいうと、2021のPHIに、NFL新記録となる33.8Mのデッドキャップ(853kのセーブ)で、新チームは4年100.4M(25.4M(全額保証)/22M(15M保証)/27M/26M)のキャップヒットとなるそうな。お互いにとって重いし、PHIは20%のキャップを放棄して2021シーズンを戦うことになり、シンプルに考えると戦力は20%低下。アホらしい。

 

【2021への願望とか】
このゴミみたいな2020シーズン、スタッツ的にはほぼ同じ二人だったが、それでも勝利への期待感という意味では段違いでHurts先発時のほうが高かったのは事実。
それは多分に彼の若さによる錯覚。ではなかったと信じたい。
初先発時もチームメイトが軒並み「落ち着いていた」と評価した彼の人間性。そして大学時代からずっと全米のトップにいた場慣れ感。そういう無形の部分をこそ評価したい。Wentzでの失敗は、最終的にフランチャイズQBに一番重要なのは人格、という結論を出したくなっているところ、フィールド外の地域貢献活動にも熱心なこの男に2021は託したい、と個人的には思う。
技術的には、Zone Read以外のパサーとしての能力は、実はOU時代の2019から本格的に磨かれているのではないかと勝手に推測しているところ、2021年のコーチ陣は少なくとも2020年よりは期待できそうなので、伸びシロはありそう。Hurts個人とのつながりが強いQBCも来たわけですし。
現時点では、NFLトップ10QBに入れそうな能力とか、一人でスーパーボウルまでチームを導けそうな力については片鱗も見せていないが、だからと言ってWentzトレードでの見返りと今ある全体6位あるいは将来の指名権まで注ぎ込んでトレードアップして今年のQB狙いに行くのはやめてほしい。なぜならまだサンプルは4試合分。今はこのボロボロのロスター全体を若返らせていくところに注力してほしい。もちろんQBから始めないといけないという気持ちもわかるが、このキャップ地獄にあっては、今のうちに若い戦力をかき集める方がいいような気がする。せっかく新首脳陣も若いことですし。

その他、SudfeldがUFA。あのweek17の出来では再契約はなし。そうなるとQBがHurts一人になるので、できればMcCownばりのベテランQBが欲しい。もう一人ドラ外で誰か指名してほしいけど。
もしかしたらHurtsまでサヨナラとなる可能性もあるため、考えたくもないが、Wentzの後釜を2021ドラフトで探すとなった場合、絶対にWentzの後輩であるNDSUのTrey Lanceだけはやめてください。それだけはナシでお願いします。