鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2020シーズン査定(DL編)

オフェンスの振り返りでひと段落ついてしまったので、ネジを締めなおしてD#に取り掛かっていきます。
D#はまずこの高額ユニットから。

 

【2020開幕前】
Stay
:Brandon Graham(10/1)・Fletcher Cox(12/1)・Derek Barnett(17/1)・Malik Jackson(19/CC/JAX)・Josh Sweat(18/4)・Vinny Curry(12/2)・Genard Avery(19/T/CLE)・Hassan Ridgeway(19/T/IND)・Joe Ostman(18/UDFA)
In:Javon Hargrave(20/UFA/PIT)・Casey Toohill(20/7⇒その後Waiver)・T.Y. McGill(20/Street FA)・Raequan Williams(20/UDFA)
OUT:Shareef Miller(⇒CAR⇒PHI PS⇒ARI PS)・Timmy Jernigan(⇒JAX⇒DEN⇒Street)・Bruce Hector(⇒CAR PS)・Anthony Rush(⇒SEA⇒CHI⇒GB)
Malikの“CC”は”Cap Casualty”の略。Cap要因でのCutとお考え下さい。Ourlads.comを参照しておりますゆえご了承ください。
しかし美しいほどに生え抜きが多く、そしてFAも高額。
OUTのメンツのその後を詳細に書いているのは、いかに2枚目以降が貧相だったかをご理解いただきたかったため。そして念のため補記しておきますが、その筆頭のShareef Millerは2019年の4巡です。この貴重なストックは1年で紙くずになりました。

2017シーズンの活躍で期待が高まっていたJerniganについては、17シーズン中に4年48Mの契約を結んでおきながら、ケガとパフォーマンス低下でチーム側のオプションを破棄する形で18オフにUFAに。その後1年契約を結んだが結局19シーズン限りでサヨナラ。
Jernigan離脱で層が薄くなっていたDTをどうするのかと思っていたら市場の大物・Hargraveと3年39Mで契約。「どこにそんなキャップが…?」と思っていたら、39Mのうち12M弱をサインボーナスとし、それを(契約期間を超える)4年に分割し、初年度(’20)は3.5M弱のキャップヒット、’21・’22はそれぞれ15M強のキャップヒットに。はいマジックマジック。
その他、毎度のことながらVinny Curryと契約し、32歳のおじさんを残すために7巡で指名したCasey ToohillをWaiverにかけ、WASに拾われるハメに。

主力としてはPIT最強DLを支えた男・Hargraveを確保し、期待していたのに19シーズンは1試合の出場でIR行きとなったMalik Jacksonの復帰もあってInsideは2019より期待できるし、DEはおじさんになっても毎年キャリアハイを伺うGrahamと毎年不満なBarnettというおなじみのメンツ構成。
まあToohillの動きなんかもデプス要員のところだったので、「またやりやがった」とは思いながらDL全体としては楽しみにしていた。というか、CoxとHargraveのコンビとかどうなるものかとワクワクしていた。
そして地味に楽しみにしていたのが、キャンプから非常に評判が良かったJosh Sweat。19シーズンは初の全試合出場を果たし、4サックの実績を積んで迎えた3年目、キャンプもケガなく順調に過ごしていたので、「今年こそ大ブレイクを」と、数少ない若手への期待は高かった。

 

【2020成績】
<DT>
Fletcher Cox

15試合(先発15試合) 41タックル(28ソロ)6.5サック 9TFL 9QBヒット 1FF 1PD
Javon Hargrave
15試合(先発11試合) 38タックル(16ソロ)4.5サック 5TFL 8QBヒット 1FR 1PD
Malik Jackson
15試合(先発6試合) 28タックル(15ソロ)2.5サック 6TFL 13QBヒット 1FR 2PD
Hassan Ridgeway
7試合(先発0試合) 11タックル(9ソロ)1サック 2TFL 1QBヒット
T.Y. McGill
7試合(先発0試合) 9タックル(3ソロ)0.5サック 1TFL 3QBヒット
Raequan Williams
6試合(先発0試合) 5タックル(3ソロ)1サック 1TFL 1QBヒット

サック数はそれなりの数字にまとめたHargraveだったが、ソロタックル数はPIT時代の半分。
期待していたランストップのほうがからっきし。というか全般的に期待値を大幅に下回った。
PHIのDTというのは、常時ダブルチームを食らうCoxの相方であり、シングルブロックになる確率が非常に高くなるため、スタッツは稼ぎやすいはず。なのにシングルブロックでも全然外せない、たまにダブルチームを食らうと地の果てまで押し込まれるなど散々。先に述べたサラリーキャップの関係で、2020については大目に見てやるし厳密には給料泥棒でもないけど2021以降もこのパフォーマンスなら完全なるハズレ。さすがに終盤になって持ち直してきてコンスタントに複数回のソロタックルが出るようになったので、2020については初戦欠場したケガの影響ないしは4-3というか初め体験するシステムへの戸惑いがあったのだと思いたい。システム移行の影響受けるようなタレントに年13Mは払い過ぎだと思うが。彼も27歳なのでじわじわ下降線をたどる可能性も十分にある。

序盤にCoxの相方として輝いたのはむしろMalik Jackson。序盤6試合で11QBヒットはなかなか。後半は沈黙したが。とはいえこやつも3年30Mの契約の2年目であり、このスタッツでは到底満足できない。

そして、この二人について一番許しがたいのが、そのペナルティの数。
Hargrave:5回25yds(全部プレスナップ系)
Malik:8回57yds(プレスナップ系4回+ラフィングザパサー1回+アンネセ3回)
(参考情報として、リーグ最多ペナは11回70ydsのCLE OTのWills、次いで10回114ydsでARI CBのPeterson他。もちろんMalikの8回はチーム最多、リーグでは13位タイ。)
“ボールに反応してスタートする”というのは小学生でも知っている、DLになったら最初に教わることである。億万長者になってまでそんな反則をしている場合ではない。あとMalikは振る舞いが悪すぎる。もう少し成熟してください。
ちなみにPHI D#陣のハードカウントによるプレスナップ系ペナルティは12回でリーグ8位タイ。1位のKC(22回)の約半数ではあるが、それでも多い。そしてその割にサック数は少ない。2021はもう少しマシになることを期待しております。

そして問題はCox。スタッツは例年通りにまとめたし、これまで築き上げた功績でプロボウルには選ばれているが、明らかに衰えている。悲しい。
相対的に若者である相方二人(訂正。MalikはCoxよりおじさんでもうすぐ32歳でした。)がスナップ数を分け合う中、彼はほぼ7割以上のディフェンススナップを記録、そのスタミナたるや本当に尊敬に値するし、大好きな選手であることに変わりはない。けどよく考えたらサラリーは前述二人の合計分ぐらい貰ってたな。
2020については明確にシングルブロックでやられる頻度が増えた。とくにDALのZach MartinとかNYGのZeitlerとかの一線級にはびったり止められたし、一線級とは言い難いNYGのHernandezとかロン毛のShane Lemieuxにもやられていた。年2回対戦がある同地区でのこの完封劇はなかなかに衝撃であった。
タイプ的には卓越したテクニシャンでもなく、あのサイズにしては非常に出足が速いという、スピードとパワーの融合型。つまり、どちらかが衰えると途端に輝きを失うタイプ。スピードもパワーも出所は下半身であるが、自宅にフルサイズのジムを保有している関係で春のロックダウンの影響もあまり受けずにトレーニングを積めていた様子だったので、言い訳の要素が少なくて心配は募る。

その他、ローテーション要員たちはそれなりでしたが、非常に物足りなかったのは事実。特筆すべき点はなし。

<DE>
Brandon Graham

16試合(先発16試合) 46タックル(35ソロ)8サック 13TFL 16QBヒット 2FF 1FR
Derek Barnett
13試合(先発10試合) 34タックル(21ソロ)5.5サック 6TFL 16QBヒット
Josh Sweat
14試合(先発3試合) 38タックル(24ソロ)6サック 9TFL 12QBヒット 3FF 2PD
Vinny Curry
11試合(先発3試合) 16タックル(12ソロ)3サック 3TFL 10QBヒット 1FR
Genard Avery
11試合(先発0試合) 12タックル(6ソロ)1.5サック 2TFL 7QBヒット 1PD
Joe Ostman
3試合(先発0試合) 1タックル(1ソロ)

まずはGraham。プロ11年目にして初のプロボウル選出、本当におめでとう。もはや名誉しかないプロボウルも、あれだけ喜んでいる選手を見ればその価値はあるのだと思える。たぶんプロボウル選出が決まってからは1サックぐらいしかしてないけど。
彼について何より特筆すべきは、そのTFLの多さ。13個はリーグ11位。23TFL+15サック+41QBヒットのT.J.が意味不明なだけで、十分に胸を張れる数字。
まず目の前のOTにしっかりヒットして勝負するスタイルで、必然ランストップへの反応も良くなる。OTの長い腕をかいくぐって下から下から攻めていくタイプでアンダーサイズ(6-2)のDEのお手本のようなプレーぶり。そして何より年々パフォーマンスが上がっているのが心強い。年齢的にあと5年とかは無理でしょうが、せめて2021シーズンはよろしくお願いします。

残り、良かったのが二人と悪かったのが二人。
良かった人たち
Josh Sweat。FSU卒の3年目は6サックでブレイクしたと言っていいでしょう。NO戦の大爆発(4ソロタックル・2サック・1FF)はお見事。あのストリップサックで試合は決まった。
大外をスピードで捲る動きに、テクニック面での成熟も見られたことが飛躍のきっかけ。スナップ当たりのサック効率ではリーグ10位とかそんなもの。課題は明確で、ケガ。この不安からドラフトも4巡130位までスリップしたと記憶しており、実際week14のNO戦で負傷した後は翌週に4スナップ出てその後IR行きでシーズン終了。強くなってくださいとしか言いようがない。
Joe Ostman。スタッツ的にはなにもしていないし、プレーの記憶もない。彼はMailataとの関係性だけ。Mailataがデビューすると決まったあと、全体練習後に彼の個人練習に練習台として延々付き合い、パスプロテクションのイメージ作りを手伝っていたそう。Mailataはその試合後のインタビューで真っ先にOstmanの名前を挙げて感謝の気持ちを伝えていた。
泣ける。けどそれだけ。

悪かった人たち
Derek Barnett。ランストップは成長しましたよね。以上です。パスラッシュもたまにはかかるけどSweatに比べたらその遅さが際立つ。じゃあGrahamぐらいランストップもできるのかといわれると、スタッツでいうと彼の半分程度。そして何よりケガが多い。計算できないことこの上ない。
2017の1巡14位。この年のパスラッシャーで4番目に指名され、通算サック数は19.5で同期7位。3位が21.5個でJamal Adamsなのは気になるけど、まあイマイチ。既に5年目オプション行使済みで’21のサラリーは10Mちょい(デッドマネーなし)。さあどうするか。

Genard Avery。21年4巡と交換で19シーズン途中に加入した男。CLE時代にはいい数字も残していたが、トレード時の懸念通りやはり使い道がない。3-4のLBとかだったらもしかしたらやりようもあったのかもしれないが。というか、このタイプをSchwartzが欲しがる訳なくないですか?あのDefenseでどうやって活かせと?どうせRosemanの暴走だったんでしょうね。本当に双方にとって不幸なトレード。ルーキーイヤーに4.5サックを挙げた男は、PHIの1年半で2サック。
Rosemanさんへ。才能溢れる若者の将来を潰して飲む酒は旨いですか?本当に4巡を出すべきでしたか?
願わくば、Gannon体制で彼が生きる道があることを祈っております。

 

【2021への願望とか】
UFAとなるのはCurryRidgewayMcGillのデプス3人衆。引き留め不要。安いのであれば再契約して結構。
チーム全体として、サラリー総額で259Mとかになっており、2020からの繰り越しを考慮した想定キャップ(208M弱)からの超過は現在42M強。
その状況下において、DLにつぎ込む予定にしているのが、75M超。DLとエースQBだけでチームのキャップの半分を食うことになる。なんじゃこの異常事態。

イチファンとして放っておけないので、いろいろ考えてみたが、
Derek Barnett:リリース 10Mセーブ
Malik Jackson:リリース(6月1日以降) 2Mセーブ
以上しか思いつかない。
ていうかこれは単純に疑問なんですが、3月17日の新年度開始の時点でサラリー総額はキャップ以内に収まっていないといけないのかな?だとしたらMalikのカットは遅すぎるのかな?

ちなみに、例の契約再構築を行っている関係で、Malikはこのオフにカットしても2024まで3.6M・3.6M・3.6M・1.8Mのデッドマネーが発生します。はいマジックマジック。

あと方法があるとしたら高額なFletchとかGrahamとかHargraveの契約再構築ぐらいしか手がない。
かくしてまた高齢不良債権は溜まっていき、オフの補強の選択肢は制限されるのである。そして虎の子のドラフト指名権は無駄なトレードに浪費され、選手を指名しても1年でいなくなるようなやつを連れてくる。
以上、負の循環を体現したかのようなユニットでした。

到底FAでは動けない状況で、かつ上位指名権はこのユニットにだけには使いたくないので、なんとか下位指名でデプス要員を探し当てたいところ。

このオフ、この高額ユニットをどう持っていくのかは興味深く見守っていきたい。