鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

コーチ陣のお仕事

常識は変わる。
Manning兄やBradyを筆頭とする純正ポケットパサーは、カバーの読みとパスの精度で勝負するが、新時代のQBたちはカバーの読みとパスの精度が多少粗くとも自らのモビリティでパスラッシュを交わし敢えてプレーを崩すことでD#のレシーバーへのカバーを外してパスを通す。そういうことなんでしょう。

 

充分脅威になるモビリティがあるQBがポケットから出たらD#としては無視するわけにはいかないが、そっちに気を取られると快速レシーバーたちのカバーが外れると。確かにそれが出来ればD#の幅は狭まるから効率はあがるしよね、とも思う。
D#のカバーの多様化とスピードの向上によりこういう流れになったのか、Offense戦術の進化によるものなのかはよくわかりません。いずれにしてもここ何年かはその潮目を目撃しているのではないかと、そんな気がします。

 

MahomesにしてもAllenにしても、特にMahomesだがどんな体勢からでも空いたレシーバーを見つければそのタイミングで即座に投げられるのは本当にすごい。

というか2人とも弊社のQBであれば”空いてない”と判断するようなタイトウィンドウにでも平然とパスを通してくる姿にはただただ呆れるばかりでした。
果たしてHurtsにアレができるのか、という問いにただただ立ち尽くしておりますが、その答えは今すぐでるものでもないのでとりあえずシーズン振り返りから始めます。

 

GMのバカ野郎から始めようと思っていたが、どうにもGannonの動向が怪しく、さっさと出て行かれそうな気配が濃厚に漂っているのでこっちから始めます。

 

サラリーキャップがあるリーグにおいては、ドラフトでいくらいい素材を獲得したとてそいつの価値が高騰してしまうといつまでも確保することは難しいため、長期的にいいチームを構築していくためには有能なポジションコーチの存在が必要不可欠だというのが私見ですのでその(以下略)

 

■HC
Nick Sirianni:1年目
2021年1月24日にDoug Pedersonの後任としてPHIの第21代HCに就任。


前職はINDのOC。先方のHCでありPHIでは伝説的存在であるFrank Reichの右腕。
これでHC採用が5人目(Ray Rhodes・Reid・Chip・Pederson・Sirianni)となるLurieのお眼鏡にかなったその最大の理由が”情熱”だったそう。
きっかけになったのが以下の動画。2020ドラフトにおいてJonathan Taylorの獲得が叶った際のもの。

 

<HC業>
就任挨拶を兼ねた記者会見で緊張からか失敗したが、その後は選手やフロントとの関係も良好そのもの。彼が強調した点は以下の5つ。
・人間関係(相互の繋がりと信頼)
・競争
・説明責任
・賢いフットボール
・ファンダメンタル
そして壊れかけたフランチャイズを引き継いだHC未経験の1年目にしては上出来だったのではないでしょうか。

 

特筆すべきは上の筆頭に挙げていた人間関係のところ。

あっさりロッカールームのベテランたちの心を虜にした結果、2勝5敗という途中経過にも不満じみたことはチーム内からほぼほぼ出なかった。

そしてスケジュールが緩くなった後半の逆襲とプレーオフ進出。

あっぱれ。見事な手綱捌きであったとお見受けします。

 

 

<プレーコーラー業>
Offenseのプレーコールも兼ねたが、こっちはイマイチ。

2ポゼッション差がつくかつかないかぐらいで急にキャッチアップモードに入ったり特に序盤はWRへのスクリーンばっかりだったり、相手の弱点にこっちの強みをぶつけるということもあまりせず妙に裏を搔きにいくプレーに偏ったりとまあ微妙。

 

全く何の工夫も見えなかった前任者と比べるとまだマシではあったが、結局プレーオフでも試合中の工夫の少なさとかは変わらず。
ただ、序盤Hurtsの低い天井にぶつかってOffenseが全く進まなかった時から、自分がやりたいことにチームとして得意なことを優先させてラン中心の全く毛色の違うOffenseに仕立てたのは立派。
もしかしたらこのあたりはSteichenの手腕もあるのかもしれないが、クセが強いHCたちにあってこの柔軟さは捨てがたいもののような気がする。

まあこの人はたぶん天才肌ではないのでいろいろ勉強するのに時間がかかるのでしょう。来季はよろしく。


総じて満足いく人選であった。

 

 

■Offense
OC Shane Steichen:1年目
前職はLACのOC。

LACでは2014-17の期間Sirianniの同僚。

Herbertのルーキーレコード樹立に寄与したお人である。

LACではラン偏重のプレーコールが批判に晒されてきたと聞いていたが、あの時はHC Anthony Lynnの意向が強く反映されていたと聞いていたのであまり心配はしていなかった。LynnはDETのOCもクビになったようですし。

 

PHIにおいては試合中のプレーコールはSirianniがやっているという話なので、この人のお仕事はIND時代のSirianni同様に試合前のゲームプラン作成とインストールとかになるんでしょう。
序盤、Hurtsにできもしないパスを強要していた時期は頭カチ割りたくなったがそれ以降は比較的安定。
ランでいい、という試合に裏をかいたのかパス偏重で臨むことがたまにあり、このあたりが不安要素だったしそれは最後まで取れなかったが、まあいいお仕事をしていたんではないでしょうか。


上述したOffenseのスタイルの大転換に一役買っていたのだとしたら影の殊勲。

外からはよく見えないけど。

まさかGannonに引き抜かれるなんてことがないようにお願いします。

 

PGC Kevin Patullo:1年目
前職はINDのPass Game Specialistという役職。SirianniがCOVID感染時には臨時HC的な立ち回りを任されたようだが正直よくわかりません。保留で。

 

QB Brian Johnson:1年目
元カレッジのスーパースターだった男で前職はFlorida大のOC。
幼少期からHurtsを知る人物ということでメンター的な役割だと思っていた。そしてそのお仕事ぶりはよくわからないままだった。
だが、Hurtsのパス能力が終盤に向けて順調に向上していたことからするといいお仕事をしていたのでしょう。来季もよろしく。

 

RB/AHC Jemal Singleton:1年目
前職はCINのRBC。よくわかりませんが、RBについてはファンブルが減った。ただしその裏でビッグゲインも減った。Staleyが有能だったということなのか。特にコメントできませぬ。

 

WR Aaron Moorehead:2年目
前職はVanderbilt大のWRC
その前はTexas A&Mの同職で指導したプロはJosh Reynolds(DET)とDamion Ratley(元CLE)そしてChristian Kirk(ARZ)。
特にKirkはこのMooreheadのカレッジ時代の指導に非常に感謝している様子。FA戦線で使われそうなコネクション。

Moorehead自身は2003から5年間INDでプレーし、Marvin Harrison・Reggie Wayneと言った殿堂入りコンビ(Wayneは予定)と共にプレー。
SB41にも出場している。カレッジの経験は若手育成に役立ちそうだし引き出しは多そうな人。

PHIのWRCというのは非常に厄介なポジションで、Pederson時代には5年間で5人という継続性のなさであった。それを危惧してか知らないがSirianniは新WRCを雇うことなくMooreheadを継続。

そしてそのお仕事だが、まあはっきり申し上げてよくわからぬ。
Quez Watkinsはそれなりの結果を残したが、それとてブレークというまでには至らないしDeVontaはもとからあれぐらい出来たんだろうしJJAWとかReagorとか言った連中に成長の跡は見えない。
ここはSirianniとRosemanに任せたいが、ポジションコーチ唯一ぐらいの異動があっても全然不思議はないところ。
残留でも別にいいけど、そのお仕事にはやや不満です。

 

TE Jason Michael:1年目
前職はINDの同じくTEC。GoedertよりどちらかというとルーキーJack Stoll育成に功があったっぽいがTyree Jacksonはあまり育たず。まあ総じて不満はありません。

 

OL Jeff Stoutland:9年目
俺たちのビッグファーザー。
Chip Kelly唯一の功績と言っても良い人物で、AlabamaのOLCから引き抜かれてPHIのOLCになったのが2013シーズン。そこからChip→Pederson→Sirianniと政権は変わったが誰にもこの男を挿げ替えることは出来なかった。
なぜか。
そう、この上なく有能だから。


シーズン前に予定していた先発がC Kelceしか残らず先発OLの組合せが14通りというリーグ記録を出した2020シーズンは、さすがに被サック65というレベル違いの数字を叩き出してリーグ最多献上サック(2位タイがHOU・WAS・NYGで50)となったが、その時に経験を積んだUDFA上がりとかドラフト下位上がりとかが軒並み残り、先発陣も帰ってきた2021シーズンのランオフェンスがリーグ1位だったことには何の驚きもない。

ちなみに2021シーズンのサック数は31です。少ない方から6位タイです。

 

1つ謝らなければならないことが。
確かシーズン序盤だったか、”Run Game CoordinatorとしてのStoutlandは微妙”だと申し上げたことがあった。
伏してお詫び申し上げます。
古今東西の戦術に精通しているという話通り中盤以降のランオフェンスの多彩なこと。あれに目をつぶって”Hurtsが走るチームだからラン中心なんでしょ”と知ったようなことを抜かす人間を私は信用しません。本当に素晴らしいお仕事でした。
そういえば、こんなことは日常茶飯事なので言わずもがなではありますが、オールプロに2名輩出しましたね。来季はMailataとDickersonが加わるので4名になりますか。
あなたの場合、不安は健康面だけです。オフの間はしっかり休養とってリフレッシュしてください。長く健康でお願いしたい。

 

 

■Defense
DC Jonathan Gannon:1年目
前職はINDのDB/CBC。まだ何の実績もなかったキャンプの時点から”次のBrandon Staley"と言われていたからリーグ内での評判は相当高かった様子。
シーズンが始まってみると超コンサバなCov.2ばかりで大ケガはしないがアンダーニースのパスが全く止まらず結果して非常に退屈なD#を構築した張本人。

ただ、中盤以降はそれなりにプレッシャーをかけることやディスガイズを覚えたようでまあ見ていられるD#には仕上がった。”Deepのパスがある一流QBに対しては引くしかないから延々にやられ続ける”という疑念はまだ完全に払拭できていないが。

ポジション別に言うと、PHIが悩み続けたCBの運用がだいぶ改善されたようでSlayは久々のプロボウルにも選ばれた。
一方でDLはあんまり。
ただ、ワイルドカードでもそうだったが、やろうとしていることはわかるが圧倒的にタレントが不足していたせいであとちょっとが届かなかった印象。T.J.を独り立ちさせたことも含めて功は大きい気がする。なので2022の第一希望は”もっとプレッシャーをかけるなら”という条件付きでGannonの続投。これは非常に個人的な嗜好が強く出ているものです。初年度ということを考えると悪くなかったのではないかと思っております。

 

DL Tracy Rocker:1年目
前職はSouth Carolina大のDLC。コーチ歴は30年でカレッジフットボールの殿堂入りも果たしている伝説的な選手。主にカレッジでコーチを務めており、プロでは2011-13にTENでの指導経験がある。その時にD#の末端として働いていたのがDCのGannon。たぶんその縁での入閣。

今季でいうと新人のMilton WilliamsとTarron Jacksonの2名が思いのほか早く成長したのはこの人のおかげだと思いたい。カレッジ畑だけあってそういうのを育てるのは上手いのではないでしょうか。ベテランたちは勝手に上手くなりなさい。

ちなみに、2020のSouth Carolina大時代の愛弟子が2022ドラフトでの上位指名が期待されるDE Kingsley Enagbare。彼のキャリアハイイヤーを演出したのがRocker。
プロとの比較という点でも一番的確にできるであろうから、Rockerの評価次第ではもしかしたらEnagbare君が意外と早くPHIに指名されるなんてこともあるのかもしれない。非常に楽しみ。

 

LB Nick Rallis:1年目
前職はMINのAssistant LBC。Mike Zimmerが出し渋ったという伝説の男。その2020のMINのLB陣でKendricksを抑えてタックル数トップだったのが忌まわしきEric Wilson。こいつが連れてきたのではあるまいな。
シーズン途中で忽然と姿を消したWilsonのことを置くと、LB育成という点では非常に好印象。

T.J. Edwardsをエースに仕立て、素材感丸出しだったDavion Taylorをそれなりに育てたのはなかなか。終盤にTaylorがIR入りしなければこの2枚のまま2022に突入しても個人的には文句なかった。メインのポジションコーチはこれが初なのでここからの成長には大いに期待できるというもの。
仮にGannonが抜けた場合、DC Zimmerという選択肢も十分視野に入ると思うので、その場合はちゃんとリクルートするように。
ちなみに兄貴はプロレスラー。

 

DB Dennard Wilson:1年目
前職はNYJのDBC。ただしくはWilsonの前にJay ValaiというDBCがいた。しかし彼はチームから発表された翌日にAlabamaに引き抜かれるという"プロのクソチーム<カレッジ最高峰"の力関係を明確にした前代未聞のイベントを発生させてチームを去った。その穴を埋めてくれたのがDennard Wilson。本当に感謝しかない。ちなみにValaiさんはOklahomaに移るようです。
Dennard Wilsonは、Jamal AdamsのAll-ProおよびPro Bowlシーズンを演出したことで名を上げた男で、その他の作品はMarcus Maye。Strong Safety育成が上手い印象だが結局今季もK'Von Wallaceは何の成長も見せなかったですね。
ただCBはMaddoxの覚醒もあったように良かったとは思っているためまあ好印象。
実はGannon亡きあとを内部昇格で埋める場合はこの人が筆頭だとされている。ただ、いかんせんよくわからない。コンサバな人ではないことを祈ります。

 

■Special Teams
STC Michael Clay:1年目
前職はSFのAssistant ST Coach。
問題はこいつ。このプレーオフでもSTの重要性が注目されているが、STが目立つのはほぼ悪い方向。
そういう意味では前任のDave Fipp(現DET)が稀に見るクソSTCだと思っていたので誰でもいいやぐらいに思っていたが、こいつは…

 

<良かったところ>
・CAR戦を勝利に導いたPunt Block
・K Jake Elliottの復活

 

<悪かったところ>
・全く出ないリターンゲーム
・飛距離がないうえにシャンク病にかかったP Arryn Siposs

 

総合評価はギリギリ落第点でしょうか。パントリターンが下から6位・キックオフリターンが下から4位という壊滅的なSTにおいて最終的に見つけたHuntleyという救世主候補もプレーオフではインアクティブだったし。

Elliott復活は非常に良いニュースだったがReagorも1回の例外を除いておぞましいマフ含めクソリターンしかなかった。何より俺たちの希望の星Tyree JacksonのACLを奪ったクソPunt。案の定ワイルドカードでもやりやがったし。やっぱりダメだ。クビにしよう。
STCをどうするかとは全然別の話としてPの新規獲得は必須です。

 

なんで個別のコーチについてまで言及しようとしたのか今となっては全く思い出せない。”Clayをクビにしてくれ”だけで良かった。
疲れた。来年からはやらない。