鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2021のお仕事振り返り(LB篇)

ニュースがない。だから粛々と2021の振り返りを実施してきます。
今回は「いつになったらRosemanは1巡を使うのか」と外野から批判されているLBポジションの振り返りです。
ドラフティをPFFの値だけで判断するとPHIピックは予想できるがバスト、ということになりかねませんのでご留意ください。

 

■2021開幕前
Stay:Alex Singleton(19/Street FA)・TJ Edwards(19/UDFA)・Davion Taylor(20/3)・Shaun Bradley(20/6)・Genard Avery(19/T/CLE)

OUT:Nathan Gerry(17/5)・Duke Riley(19/T/ATL)・Joe Bachie(20/NO PS)・Rashad Smith(20/Street FA)・Rashad Smith(20/Street FA)

IN:Eric Wilson(21/UFA/MIN)・Patrick Johnson(21/7)・JaCoby Stevens(21/6⇒PS)・Christian Elliss(21/Street FA⇒PS)

では近年の惨憺たるPHIのLBポジションの歴史を振り返るところから始めましょう。
遡ること2年半前、2017のSBシーズン周辺のD#を支えたMychal Kendricks・Nigel Bradham・Jordan Hicksたちを流出するに任せた結果、実績のあるメンツがNigel BradhamぐらいしかいなくなったLBルームにRosemanが連れてきたのがWASをクビになったZach BrownPFF的には前年の成績は全LB中3位とかなり良かったがなぜかWASは3年契約の1年目で放出)であった。
しかし彼は中途半端なパフォーマンスを披露し続けたのち、MIN戦で舌禍事件(試合前に”Cousinsが弱点”と煽った結果4TDを投げられて20-38で完敗)を起こした直後にカット。
そしてそこからBradhamとGrugier-Hillまでいなくなって本当に層が薄く見えた2020のLBルームを託したのはなんとNathan Gerry(ドラフト時にはSSとしてだがPFFから相当に高い評価を受ける。どれぐらいかというとJamal Adamsの次でMarcus Williamsの上)。これは紛うことなき悪夢であった。ケガで7試合の出場で済んだが、こいつはゴミのランストップに加えてパス被成功率84.4%・レーティング139.8という圧倒的レコードを残して去っていった。

迎えた2021シーズン。サラリー的にも恐らくエースLBに据えられたのは新LBC Nick Rallis(元MIN)のコネクションがあったであろうRoseman補強の最高傑作・Eric WilsonPFFはパスカバレッジにはまあまあの評価を下していたという話。それにしても60台だったようだが。)。
プレシーズンの段階からタックルミスばかり目について超不安ではあったが、蓋を開けると…

Wilsonの脇を固めるのはUDFAでの加入以来着実に成長していったT.J. Edwardsといつの間にか欠かせない存在になったAlex Singleton
そしてスピードだけは一人前だったがそれ以外の要素が粗すぎた一方でその輝きの片鱗をルーキーイヤーにちらりと見せていたDavion Taylor

そしてDCがGannonになって新たに出来たポジションがSAM。簡単に言うとStrong SideのEDGEに陣取ることが多い半DL半LBの役割でたまにパスラッシュ、たまにパスカバーという要員。
ここにハマるのが、トレードでの獲得以来どうやって使えば最大化できるのか全く見えていなかったGenard Averyとこのドラフトで獲得したPatrick Johnson。ご両名ともパスラッシュはそれなりに出来るがパスカバーは未知数。さてどうなることか。

その当時の期待は以下の通りだったようです。

LB(7):
#49 Alex Singleton(Montana State)6-2 240lbs 27歳 3年目(0.9M・1/1)
2015にUDFAでSEA入り。ファイナルカットは生き残るがその後カット。3日後にNEのPSに拾われるが1週間でリリース。12月にMINのPSに拾われるが翌4月にカットされ無職に。その後2016から3年間CFLでプレー。2017・2018とCFLのオールスターに選出され、2019年1月になってPHIのPSに、このファイナルカットで落とされたMarken Michel(Sonyの兄)と一緒に拾われる。 2019のプレシーズンは最終戦の4Qまでプレーし、ファイナルカットで落選。ただ、PSに残され、とうとうシーズン中にアクティブロスターに昇格。 彼を一躍有名にしたのは今は亡きNick MullensからのPick6。2020は結局LBのエースとして16試合出場(11試合先発)で119タックルと大活躍。 そして今年はいよいよSTのキャプテンに選ばれる。なんという苦労の人。 単年契約のため、今年の活躍如何では長期就職の機会もあろう。何かが苦手という印象もない。プレシーズンでもド安定であった。 目指せミリオネア。

#50 Eric Wilson(Cincinnati)6-1 230lbs 26歳 5年目(1.4M・1/1)
MINからFA加入。PHIのLBの課題であったパスカバーに定評があるとのこと。一方でプレシーズンでもちょくちょくタックルミスを披露していらっしゃった。 これがストレスになる前に改善をお願いします。 LBエースとして期待してます。

#58 Genard Avery(Memphis)6-0 250lbs 26歳 4年目(0.9M・4/4)
2019シーズン中にドラ4を差し出してCLEから獲得したはいいけれども加入時の懸念通り使い道がよくわからなかった男。 正式にLBにコンバートされて迎える契約最終年。 GannonのD#ではSAMを務めるようで、多分その1枚目。プレシーズンではCの前にセットしてランプレーを潰すという姿が見られた。 Blitzにランストップに大忙しになると思われるが、ヒマよりはましだと思って走り回っていただきたい。

#57 T.J. Edwards(Wisconsin)6-1 242lbs 25歳 3年目(0.9M・3/3)
UDFAの3年目。Singletonブレーク以前はLB陣で一番安心できるランストッパーであった。パスシチュエーションでは"遅い"という印象だけで使われていなかった気がしており、まだまだデカいポテンシャルを秘めているのではないかと睨んでいるところ。 プレシーズンでのパスカバーは非常に良かったと記憶している。 だんだん上が詰まってきたが、是非とも出場機会を増やしてほしい選手。

#52 Davion Taylor(Colorado)6-1 230lbs 23歳 2年目(1.0M・2/4)
2020疑惑のドラ3。ドラ3で指名されておきながら32スナップしかプレーしていないのが納得いかない。絶対5巡ぐらいまで残っていたろうと睨んでいる。 ただ、身体能力は高く、ケガで出場が少なかった2020もよく見るとプレーアクションにいいリアクションをしていることもあった。 去年の不振については"プレーブックの理解不足"と弁明しており、春先からプレーブックへの理解を深めた今年は違うというのが本人の言い分。それを確かめようと思ったらケガでプレシーズンは出場なし。 ケガが一番困る。本当に成長しているのかどうなのか。早くプレーを見てみたい男です。

#48 Patrick Johnson(Tulane)6-2 248lbs 23歳 1年目(0.7M・1/4)
ドラ7ルーキー。使われ方としてはAveryの控えっぽい位置。元DEだけあってBlitz時のパスラッシュはなかなかイケるという評判。 プレシーズンでは結構ボールに絡んでいる印象があったので開幕後も楽しみな選手。 LB唯一の40番台であるため見分けはつきやすいはず。

#54 Shaun Bradley(Temple)6-1 240lbs 24歳 2年目(0.8M・2/4)
2020のドラ6。Taylorを超える76スナップの出場。ゴール前でなかなか良いランストップをしているところを見たような気がする。 スピード豊かでSTでも貢献度は高かったが、FA補強とDLからのコンバートで結構厳しい立ち位置に。元より多いLBの中の多分最下位なのでケガ人等の復帰次第ではすぐいなくなるかも。

2021最終53名紹介 - 鷲の巣

 

■2021成績
Alex Singleton
16試合(先発8試合)137タックル(81ソロ)0.0サック 4TFL 2QBヒット 1FF 1FR/1INT 1TD 4PD

T.J. Edwards
16試合(先発14試合)130タックル(64ソロ)1.0サック 5TFL 2QBヒット/1INT 5PD

Genard Avery
16試合(先発12試合)43タックル(21ソロ)1.0サック 4TFL 2QBヒット

Eric Wilson
7試合(先発2試合)43タックル(18ソロ)1TFL 1QBヒット/1INT 1PD

Davion Taylor
9試合(先発6試合)41タックル(24ソロ)1TFL/2FF

Shaun Bradley
15試合(先発1試合)23タックル(15ソロ)1PD

Patrick Johnson
17試合(先発2試合)17タックル(11ソロ)1TFL

Christian Elliss(PS)
1試合(先発0試合)3タックル(2ソロ)

JaCoby Stevens(PS)
2試合(先発1試合)3タックル(1ソロ)

序盤のD#崩壊の立役者はプレシーズンから不安材料だったEric Wilson。上のスタッツを見ていただいてもわかるが、ソロタックルが少ない。開幕前の不安など軽々と超えていく下手さ。もうとにかく下手。プレーリードが遅い、OLが来たら当たれない、パシュートのコースも悪い、タックルが出来ない。全部が落第点。最後はヘルシースクラッチを食らってWeek8後にウェイバー。こいつはGerry超えの被パス成功率85.7%という偉大な記録を残した。ゴミ以外の言葉を知らない。唯一の救いはウェイバーでHOUが拾っていただいたことによってちょっとだけPHIのキャップを肩代わりしてくれたということ。ありがたや。

中盤以降は主にT.J.Taylorが主戦。そしてTaylorはそれなりにミスも犯しながらではあったが順調に成長。TaylorのWeek10DEN戦の出来は素晴らしかった。SlayのファンブルリカバーTDを演出するFF。TEごとRBを潰しに行ったさまは圧巻であった。
しかし悲しいかなTaylorはルーキーイヤーに続いてケガにて離脱。これがあるのがこやつの今ひとつ信頼できないところ。今季の成長には目を細めたし期待はまだまだあるが計算できないことこの上なし。

T.J.は文句なくエース。細かいところを言い出せばキリがないが、彼が主戦にハマったこととランD#が改善したことは決して無関係でないと信じているところ。OLが上がってきてもしっかり当たれるところがPHIが近年経験してきたゴミLBたちと大きく違う。そしてプレーリードも早い。RBとQBがどれだけバックフィールドでごにょごにょ動こうが、OLのヘルメットだけを見てパスカバーに下がるのはとても素早くて無駄がない。4.8という平凡な40ydsのタイムと秀抜なプレースピードとがいかに無関係かを全世界に知らしめる働きぶり。素晴らしい。契約最終年だったがシーズン中に1年の契約延長を獲得。UDFA上がりのたたき上げへの期待値は下がらない。今後もよろしく。

Singletonはシーズン中にも思ったが、悪くないけどT.J.よりちょっと動き出しが遅くてこやつの場合その身体能力のなさが明らかに天井となっている悲しさ。バックアップとしては悪くないが主戦で出続けるのは違うという何とも悲しい指標的存在。

SAMではAveryが終盤に良くなったのは良かった。だけど…プレシーズンに見せた彼をCの前にセットさせたりするのは悪くないと思ったがこうも大外にばかりセットさせると、その代りにDEを中の方に動かすのが何とも割に合わない。これがパスラッシュのかからなさとサック数を激減を招いた要因ではないかと思う次第。であればSAMを維持する意味はなんなのだろう。Averyの契約切れと同時にこのポジションごと消滅してしまっても違和感はない。

Patrick Johnsonは…まあ、頑張ってたよね。インパクトという点ではまるでなかったが。来季はSAM自体存在するかわからないので消滅すればさようなら。普通に考えればそんなことはないはずなので引き続き頑張ってください。

BradleyはD#で見たくない。何もできないままじゃないか。Stevensも同様。

 

■2022への願望とか
<2022契約関係整理>
〖LB〗
LB1 T.J. Edwards:最終年。キャップヒット1.3M
LB2 Davion Taylor:2023まで。1.2M
LB3 Alex Singleton:RFA
LB4 Shaun Bradley:2023まで。0.9M

〖SAM〗
SAM1 Genard AveryUFA
SAM2 Patrick Johnson:2024まで。0.9M

LB高速化の前の時代のせいもあろうが、Rosemanの師匠であるJoe BannerにLB軽視の形跡は見られなかったと記憶している。なのでこれはRoseman特有の性向だとは思うが、なにせLBに金をかけない。さすがにJordan Hicks放流以降同じ過ちを3回繰り返して身に染みたとは思いたいのだがどうも今ドラフトでもLBの上位指名はなさそうな印象。
個人的にはDavion Taylorがケガしないならそれでもいいのだが、さすがにそうも言ってはいられない。なにせ強いD#・速いD#の重要性を見せつけられたのがこのプレーオフであったから。

Gannonが導入した2Highのスキームは実は時代の最先端をいくものだったようで、これによって強肩QBと高速WRによるBig Playを防ぐというのが今のトレンド。課題は広大に空くSFからDLまでのスペースをどうやって埋めるのか、という部分。これが流行るとますますLBの軽量化とスピードアップは図られていくのだろうが、一方でパスカバーだけを考えているとGerryとかWilsonのようなランに後手を踏む自覚があるためにプレーアクションに丁寧に引っかかるタイプのLB(そもそも2人ともパスカバーも下手だったがそれはさておき)ばかりを積み上げてしまうことになる。実に難しい。
個人的には終盤ちらほら見られた5DB(両CB+両SF+Nickel Maddox+Dime Epps)で良いのではないかと思うが、そうすると2枚残ったLBにはランストップの要求が高まる。当然機動力はある前提で。
繰り返すが実に難しい。

現陣容を振り返ってみると、T.J.は、ランストップは秀逸だし狭いスペースでのパスカバーは悪くないが、クイックネスよりもスピードが要求されるようなパスカバーはやはり苦手で広いところを任せられるタイプではない。
Singletonは、悪くないがタックルは弱いしそもそもの運動能力が低いこともあって全般的になにか足りない。言い方は悪いが小さくまとまっているタイプ。
結局、こんなことを認めたくないが、今一番PHI D#に欲しい人材は運動能力も秀抜でランストップも成長してきたDavion Taylorということになる。Rosemanの見る目が確かだったことを認めることになるためこれを認めるほど悔しいことはない。だが現実はそう。一方でTaylorに全幅の信頼を置けないのが、やはりそのケガの多さ。

残りのメンツが話にならないことを考えると、とりあえずT.J.を1年確保したのは非常に効果的。だが当面注視すべきはSingletonの動向。
Singletonと契約を結ばないとなると、ドラフトでの即戦力指名の可能性が高まるし、Singletonを確保するとなると、もしかしたらTaylorの成長をもう1年待つ、ということになるのかもしれない。

補強という観点で言うと、さすがにもう中途半端なFAを連れてくるのはやめていただきたいポジション。
頼みの綱のドラフトでPFF信者のRosemanがどう采配を振るうかは未だ読めないが、現地が興奮しているのが、1巡でのNakobe DeanUGA)とかDevin Lloyd(Utah)といったアスレチックタイプ。個人的には上記2人ともランストップに懸念が残るのでちょっと怖いがまあ、という感じ。

あるいは、RosemanのSenior Bowlを重視する性向からすると、そこでも名が挙がった(+個人的な大本命)WyomingのChad MumaとかLSUのDamone ClarkとかBrian Asamoah(Oklahoma)とかか。まだちゃんと見てないがこの3人なら前2人はありな気がする。Asamoahはまだ知らない。Channing TindallUGA)はアホそうなのが非常に怖いので上位では要りません。

しかしSの方が来季の陣容は厳しそうなのでドラフトストックは優先的にそちらに振り分けられる可能性もあり、はっきり申し上げてまだ何もわからない。
わかっているのは、2巡までに指名がなければ2022シーズンはDavion Taylorと心中、ということだけである。