鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

出血が止まらないポジション

このオフの初めからチームにとって最重要ポジションの出血が止まっておりません。
果たしてどう埋めるのかのイメージも全くわかないなか、いよいよ重要人物の流出のカウントダウンが加速しております。

結局のところ、良い選手を見つけてきてその選手を育て、その選手を核に据える、もしくは高値で売って新たに安くて良い選手を獲得する権利を手にし、そしてその権利で良い選手を見つけてくる、というサイクルにハマらなければ厳格なサラリーキャップが適用されるリーグでチームが強くあり続けることは困難だと思うと、その良い素材を発掘し、評価する能力はチームにとって最も重要な力の一つだと思わざるを得ない。
ではそんなフロントオフィスの危機的状況について。

フロントオフィスの体制

まずは2021シーズン中のPHIのフロントオフィスの中核の体制から。
英語の役職名がよくわからないので若干曖昧ですが順番は間違ってないはずです。

Howie Roseman
 :GM(=フットボールオペレーション部門のボス)
Andy Weidl
 :選手人事担当部長(=スカウティング部門のボス)
Brandon Brown
 :選手人事担当共同ディレクター(プロ)
Ian Cunningham
 :選手人事担当共同ディレクター(カレッジ)

クソみたいな2020シーズンの反省を経てRosemanが人の言うことを聞くようになった2021のドラフト以降、割とというかかなりまともなチーム作りをしているように見えたフロントオフィスの主な体制は以上の通りだった。

止まらない出血

このリーグでは引き抜きが常でありそれは選手やコーチに限ったものではない。
フロントオフィスについても同様。
近年はPHIのフロントオフィスからの引き抜きが激化。いまやGMファクトリーである。

・2019、Andy Weidlの前任だったJoe DouglasがNYJのGMへ。
・2020、フットボールオペレーションの部長だったAndrew BerryがCLEのGMへ。
・同じく2020、フットボールオペレーションの部長だったPatrick StewartがCARの選手人事担当ディレクターへ。

そしてこのオフにおける、2021のフロントオフィスの中核からの流出が以下。
Brandon BrownがNYGのフロントオフィスへ。たぶんNo.2に。
Ian CunninghamがCHIのフロントオフィスへ。たぶんNo.2に。
フットボールオペレーションの部長だったCatherine RaicheがBerryがいるCLEのまあまあ偉い役職へ。

BrownとCunninghamはドラフト前のタイミングで引き抜かれたことに憤りを覚えたし、なによりも上述3名(Raicheは女性)はマイノリティなのにGM職への引き抜きじゃなかったからルーニールール(GM・HCにマイノリティ出身者が引き抜かれた場合、抜かれた元のチームは2年間に亘って3巡の補償指名権を貰える)の適用外であることへの怒りが止まらない。(BerryはマイノリティだがルーニールールがGMにも適用される直前の引き抜き)

そして追い打ちをかけるニュースが以下。
"Casey Weidl(スカウティング部門のディレクター)をカット"の一報。理由は不明。
Caseyさんは名前からわかるようにAndy Weidlの弟
そしてAndy Weidl自身はこのオフの間中ずっとPITの新GM候補のフロントランナー。

Andy WeidlのキャリアはPITのフロントオフィスでスカウトとして始まっているので里帰りの可能性は結構あると思っており、弟のカットもあって流出はほぼ確定的と言われている。

その他、Casey Weidlに加えてT.J. McCreight(選手人事関連の役職者。上級スカウト?的な役どころ。ベテランの偉い人。)・Shawn Heinlen(Southwestエリアのスカウト)・Evan Pritt (スカウティングアシスタント)の3名もチームを離れることが発表されており、合計7名の流出。可能性が高いAndyも入れると8名の流出。

こうなるともう総入れ替えの様相。2021の中核メンバーはRosemanを除いて全員いなくなるということになる。
そうなるとその後任が非常に重要。

ではなぜこのようなGMファクトリーと化したのか、という歴史のおさらいから。

レジェンドスクール

ここまで被害者として流出を嘆いてみたが、実はPHIも軒並み引き抜いてきた側であり歴とした加害者であることを忘れてはならない。
他チームの振る舞いに怒る資格はない。

HCの例を見ても明らかなように、常にNFL各チームは成功したGMとフロントオフィスを人材の供給場所とみている。
2010年代、GMファクトリーというか人材の供給場所は主にGB(GM Ted Thompson)・NE(HC Bill Belichick)・SEA(GM John SchneiderとHC Pete Carroll)だった。

だがその状況において、Lurieが目を付けたのがBAL。というかOzzie Newsome
バマで活躍してプロ入りしたCLEでも大活躍。カレッジ・プロそれぞれで殿堂入りした名選手にしてその後CLEでフロントオフィス入りし、移転先のBALでGMとして2度SB制覇を達成するというケタ違いの実績を残したこの異能の持ち主のスクールから大挙して人材を引き抜く。

引き抜かれた!と憤ってみた人たちのうち、Joe Douglas(2016)・Andy Weidl(2016)・Ian Cunningham(2017)・T.J. McCreight(2017)の4人までもがOzzieスクール出身。
4人合計で40年間以上というBALでの経験を一気に手にしたことになる。
全員を直接BALから引き抜いたわけではないのでBALファン各位にはお許しいただきたいが、この2016-17のタイミングでLurieがOzzieスクールに目を付けたことは間違いない。

Ozzieスクールの特徴としては、ドラフト、特にカレッジスカウトを非常に重要視したチーム作りをするところだと言われている。
しかしそんなことよりも、かつてWeidlが述べていたように”Ozzieは本当にいろんな人の話をよく聴いた”というレジェンドの帝王学というか薫陶を受けていることが組織づくりという意味で重要なのだと思っている次第。

というわけでRosemanがGMファクトリーなのではなく、もとはOzzieがGMファクトリーなのだということがよくわかる。

後任候補者

結局のところドラフトで誰をピックするかの決定はRosemanが行っているということは、このドラフト初日の終わりの会見でRosemanが”Weidlとその部下に(トレードで)ピック使いすぎて怒られた”と述べていることから明らか。
多分スカウティング部門はビッグボードを作るところまでがお仕事で最後誰を選ぶかはRosemanの選択なんだろうと思われる。

Weidlはビッグボード作りという仕事を完璧にこなしていたと個人的には思っているのでその後任は非常に重要。
残念なことにこの仕事は人柄とか哲学とかがこの仕事には重要なんだと思われるため、お仕事ぶりを見てみるまで何とも言えないところはあるし、そもそも後任とは誰のものか、というぐらい穴は多いがまあ並べてみます。

Jim Nagy

候補者の中で一番なじみがある名前。
今週の初めにインタビューを受けたことが報じられている。
Senior Bowlの責任者を務めていることもありそのカレッジコネクションは確か。
現職の前にはNE・KC・SEAで合計18年間フロントオフィスでの仕事経験あり。

Brandon Hunt

こちらもPHIのインタビュー実施済み。
現職はPITのプロスカウト。PITのGM職の有力な内部昇格候補とも言われている。このオフはLVのGMのインタビューも受けている結構人気の人。
PHIは2016にもインタビューをしているとのこと。多分第一候補。どこに充てるのかはわからない。

Morocco Brown

ここから2名は噂どまり。インタビュー実施の形跡はない。
現職はINDのカレッジスカウト。
このオフはPITとCHIのGMインタビューを受けておりこちらも人気。もちろん2016にPHIは接触済み。だからこそ噂が出ているのでしょう。

Ran Carthon

現職はSFのプロ選手人事絡みのお仕事をしている。もちろんPITのGMインタビュー実施済み。

Dave Caldwell

あまりにも穴が多すぎるため、Andy Weidlの穴にはそれなりに経験がある人材を持ってくるだろうという観測があり、そこを内部昇格で埋める場合この人が候補。
2021にPHI入りしているが、前職は8年間JAXのGMという大物。
PHIでは"Personal Executive"という謎の役職で、ロスターの評価とプロ・カレッジそれぞれのスカウトにちょいちょい噛んでいるとのこと。
うむこのチームのことを勉強するにはもってこいの立ち位置じゃないか。
JAX時代の仕事ぶりを存じ上げないので何とも言いようがないが、こういう人選もあるのではないか。

 

誰がいい、という希望はあまりないが、Jim NagyがPHIのフロント入りしたらちょっと面白そうだとは思う。
結論としては、良いビッグボードを作って良いドラフトをしてくれればそれでいいです。

その他、UDFAにちょっと動きがあったりそろそろルーキーミニキャンプだったりNYGがCB James Bradberryをカットしそうだというニュースがあったりしますが、そっち方面はもうちょっと固まってからにします。