鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2022シーズンのお仕事(LB篇)

全く追えないままにコンバインも終わってしまったのが残念でなりません。
あれのポジションドリルはとても魅力的なのに。

 

DBC Dennard Wilsonが出て行きそうだとかCJGJとの長期契約が難しそうだとか空席のLBC候補に挙がっているのがSlayの天敵・Matt Patriciaだったりとこうもいいニュースがないものかと呆れる日々ではあるが、まあ全部噂ですし。
確証はないですし。
しかしあのヒゲが来たらどうしようか…

 

というわけで今回は2023シーズンからPatriciaに率いられることになるかもしれないLBの振り返りです。
人数が少なくて非常によろしい。

 

一応最近の風潮に従って、このポジションは"Off-Ball"LBと"Sam"LBに分けて振り返っていきます。

 

”Off-Ball”LBというのはパスラッシュに重きを置かないLBの人たちのことで、ランストップからパスカバレッジまで万能さを求められる、いわゆる古き良きLBのことです。

 

"Sam"というのはStrong SideのLBの愛称のことなので厳密には対義語になっていませんが、GannonとDesaiも使用するFangioスキームにおけるパスラッシュの専門家である"Sam"のようなLBについて"On-Ball"LBと呼んでいる例をあまり見ないのでこうした次第です。

 

では中身について。

 

 

2022シーズン開幕前

開幕前の陣容は以下の通り。

 

Stay
<Off-Ball>
T.J. Edwards('19/UDFA)・Shaun Bradley('20/6巡)

<Sam>
Patrick Johnson('21/7巡)

 

OUT
<Off-Ball>
Alex Singleton('19/Street FA・CFL)・Tarron Jackson('21/6巡→PS)

<Sam>
Genard Avery('19/Trade←CLE)

 

IN
<Off-Ball>
Kyzir White('22/UFA/LAC)・Nakobe Dean('22/3巡)

<Sam>
Haason Reddick('22/UFA/CAR)・Kyron Johnson('22/6巡)

<シーズン途中加入>
Christian Elliss(Off-Ball:'21/Street FA/PSから昇格)

 

昨オフ、一番入れ替えが多かったのはたぶんこのポジション。

 

どうしてもちょっと運動能力的に足りなく見えたSingletonWhiteに、何ができるのかよくわからなかったAveryReddickに、という明確なアップグレードを達成。

 

FA市場でそれなりの手当が出来たと思っていたところに、さらにドラフトで全米王者UGAからNakobe Deanを確保。
さてこのメンツをどう扱うのかとワクワクしていた気がする。

 

その時の気持ちは以下の通りだったようです。

 

 

OLB(3)

 

DEと同じようにほとんどを1線目で過ごすが、基本は2ポイントでセットしており、結構頻繁にパスカバーに回る印象があったのが2021のこのポジション。
さすがにもう少しパスラッシュの比率を増やしてほしいがさてどうなるでしょう。

 

#7 Haason Reddick(Temple)6'1"(185cm)240lbs(109kg)27歳 6年目(3.9M・1/3)
2021(CAR):16試合(先発16試合)68タックル(37ソロ)11.0サック 12TFL 18QBヒット 2FF 1FR

 

サック数がリーグ31位だったPHIにCARからやってきたスペシャリストは地元出身。
2017ドラフトの全体13位指名。そうですBarnettの1つ前で指名されております。
指名されたARZでは使い方を間違われた節があるが、4年目にパスラッシュに専任させてもらえて開花。
本人は地元凱旋を非常に喜んでいるようで、なんとかうまくいってほしいと思っている。
カギはやはり正しい使い方されるかどうかだが、キャンプでは結構パスカバーに回されていたようです。 さてどうなることでしょうか。

 

 

#48 Patrick Johnson(Tulane)6'2"(188cm)248lbs(112kg)24歳 2年目(0.9M・2/4)
2021:17試合(先発2試合)17タックル(11ソロ)1TFL 2021のドラ7。

 

優等生っぽいがあまりプレーの印象はない。
なにか記憶に残るプレーを1つぐらいお願いしたい。
STでは頑張っていたはず。

 

 

#58 Kyron Johnson(Kansas)6'0"(183cm)235lbs(107kg)24歳 ルーキー(0.8M・1/4)
2021:なし

 

2022ドラフト6巡。40ydを4.39で走るスピードが持ち味。
とりあえずSTで頑張るところから始まるのでしょう。
努力家だという評判なので終盤ぐらいから出てきてくれれば結構です。
目標1サック。

 

 

Off-Ball LB(4)

 

32チームのなかでもPHIファンはこのポジションの重要性を身をもって知らされている部類であろう。
長らく苦しめられてきた我らにとって、このポジションに欲しいのは"ちゃんと当たれる奴"という基本的なところ。
そういう意味では2017以来の陣容である。やっと揃った。
AJの加入は確かに派手だが、このオフに一番レベルが上がったのはこのポジション。

 

#57 T.J. Edwards(Wisconsin)6'1"(185cm)242lbs(110kg)26歳 4年目(1.2M・1/1)
2021:16試合(先発14試合)130タックル(64ソロ)1.0サック 5TFL 2QBヒット 1FR/1INT 5PD

 

世界中が誤解しているが、TJと言えばEdwardsである。Wattでは断じてない。
まあこの2人はWisconsinでもかぶってるみたいだしオフには一緒にトレーニングする程度に仲は良いみたいですが。
ようやく見つけた俺たちのエースLBなのである。UDFAから這い上がってきた努力の人なのである。
40ydを4.8で走っちゃったせいで2019のドラフトにはかからなかったが、プレースピードはそのタイムを感じさせない。
というかホールを見つけたときのプレースピードはびっくりするほど速い。
パスカバーが課題だと言われて久しいがその点も順調に向上中。
無限のレンジを守れるタイプではないが、クイックネスは十分あるのでそれほど不満なし。
ちゃんとプレーを見て評価してやってほしい。
なによりOLにしっかり当たって処理できるLBが中央にいるだけで周りはみんな動きやすいのである。
そういう意味ではWhiteとかDeanという派手な補強はあったが、一番替えがきかないのはこの人。
今季もそのヘルメットにはシグナルコーラーの証明である緑のシールが貼られている。
Gannonはよくわかってる。プロボウルに選ばれても全く驚かない。
早く長期契約結べ。

 

 

#43 Kyzir White(West Virginia)6'2"(188cm)234lbs(106kg)26歳 5年目(1.8M・1/1)
2021(LAC):17試合(先発17試合)144タックル(90ソロ)1.0サック 7TFL 4QBヒット 2FF/2INT 3PD

 

このオフの補強で一番噛みしめれば噛みしめるほど味がでるのがこの人と言って過言ではない。
2018ドラフトの4巡。ありがたいことにLACが放流してくださった。
落ち着いて正確なプレーリード、リード後の速いクロージングスピード、広いフィールドでSlotとかTEを消せるカバー能力、ボールへの嗅覚、どれをとっても素晴らしい。
OLが漏れてきたときの対処という意味ではTJより劣るが、横にTJがいると動きやすかろう。非常に好ましい。
スピードへの自覚があるからだろうか、最初のプレーリードがとても丁寧。
プレーアクションに無駄にひっかかってジタバタしないところがEricなんとかとは全然違う。
プレシーズンでも素晴らしいINTがあった。 ああいうのが何度見られるのだろう。本当に楽しみである。

 

 

#17 Nakobe DeanGeorgia)5'11"(180cm)231lbs(105kg)21歳 ルーキー(0.9M・1/4)
2021:なし

 

このドラフトの3巡。超強かった全米王者UGAの鉄壁のDefenseをDavisと共に支えた立役者。
事前評判では1巡指名は固そうだったが、結果して3巡までスリップ。あの時は大ニュースだった。
スリップした理由は、そのサイズと"手術しないといけないケガを抱えてるのに手術してなくて下手したらシーズンエンド"という嘘情報。蓋を開けてみるとキャンプも全日程元気に参加。個人的には1巡指名なら大反対だったが、3巡ならおおあり。
選手としての特徴は、やはりそのスピード。SECというパスハッピーなカンファレンスで鍛えあげられたパスカバーの能力に加えて、オープンフィールドでも爆発的なスピードで確実にタックルできる能力。
フィールドでの振る舞いもリーダーとして非常に好ましいものがある。
懸念はやはりそのサイズによるOL処理。
この点が個人的に1巡指名に反対した最大の理由。
プレシーズンでもこの懸念は発露した。ただ、あのときに横にいたのはTJではなかった。全くOL処理が出来ず結果してカットされたDavion Taylorだったからセーフ。
UDFA上がりのTJを見ている我々からすると、正しい努力は正しい成長につながることを知っているから現時点での心配はあまりない。
今季への期待は、限定的な出番でよいので1INT。

 

 

#54 Shaun Bradley(Temple)6'1"(185cm)240lbs(109kg)25歳 3年目(0.9M・3/4)
2021:15試合(先発1試合)23タックル(15ソロ)1PD

 

2020のドラ6。PHI近郊で育ち、PHIでのプレーを夢見た地元民。
プロボウル候補生。STerとして。
DEN戦でのFGブロックの立役者であり、CAR戦でのTJのPuntブロックでリカバーしたのはこの男。
STでのビッグプレーにはほとんどこいつが噛んでいる。
LBとしてはプレースピードが遅いところはあるが、絶賛成長中。
できればその曲線をもう少し持ち上げていただきたい。

2022シーズン53紹介 - 鷲の巣

 

 

2022シーズン結果

Defenseに関する数字はレギュラーシーズンのみです。

*Haason Reddickプロボウル・All-Pro 2ndチーム選出

中央の安定感が増したDT陣の恩恵を受けた形でランストップが安定。
というか、正直に申し上げてユニットとしての不満は2021比で言うとほぼゼロ。
それほどには機能していたはずです。

 

確かにDavisが傷んで以降、Josephがしっくりくるまでの間のランD#には酷いものがあったが、これは主にスキーム及びDT陣の問題だと思っているのでLBへの不満はそれほどない。
あれだけDLが押し込まれちゃえばどうしようもないですよね、というぐらい。

 

では個人について。
というか上の表でもわかるように、ほぼ3人しか出ていないし結果も残していないのが悲しい。

 

Off-Ball LB
  • T.J. Edwards
    UDFAから成り上がったタックルリーダーは、貫禄のエースLB。
    相変わらずタックルが堅実で、Singletonと比べると最後の数ヤードを許すシーンが少なかったのが本当に頼もしかった。
    プロ入り以来ずっと懸念だったパスカバレッジでも確実に成長している様が窺えてとても頼りになった。
    が、SBでもKelceにやられていたように一流のクイックネスを持ち合わせているわけではないし、広いエリアでRBと向かい合ってしまったときもちょっとしたスピード不足感は否めなかった。

    ランのときのvs OLが非常にお上手で、ランストップには欠かせないんだがパスを考えると…というジレンマがどうしても抑えられない選手。
    結果的に、Gannonがしっかり彼を信用していた結果が94%というスナップ率。
    これは、Epps・Bradberryに次ぐチーム3位の多さ。
    要としてしっかり活躍してくれた1年だった。

    そして、期待はしていたが、シーズン中の契約延長はなし。
    ということで、UFAとなるこのオフはマーケットに出て行くことがほぼ確実。


  • Kyzir Whiteは、正直よくわからない。
    期待していたようにパスカバレッジでの輝きが目に付いたが、それも序盤のみ。
    以降、出番自体はTJの8割程度という水準を維持していたが、目立ったプレーは少なくなっていった印象。
    こちらの目が節穴だっただけで実にいい仕事をしていた、ということなら否定はしないが、TJより高かった給料を考えるともうちょっと出来ても、という期待値との差はあった。

    が、不満には当たらない。
    良い補強だったと思います。


  • ずっと渇望していたのに、結局非常に限定的な場面(大量リード時)での起用に止まったのがDean
    ただ、そこでの動きはやはり際立ったものがあったし、彼がエースになる分への不安はない。
    長くがんばれ。

 

 

Sam
  • 大当たりだったのが、Reddick
    バランス型のSweatはまだしもGraham・Barnettとパワー寄りのメンツが多かったPHIの守備EDGEに持ち込まれたスピードという異物。
    これがもう綺麗にハマることハマること。

    単なるスピード狂でもなく、小さな体で活躍するために不可欠な技術もしっかりお持ちだったようで、OLを外すムーブは非常に上手かった印象がある。
    16サックに何の文句もない。
    SBではツルツル滑っちゃってたけどね。

    AveryがReddickに替わる効果については懐疑的だったが、まさかこれほどの効果につながるとは。
    Reddick本人は言うに及ばず、獲ってきたRosemanも使いこなしたGannonもお見事でした。


  • Patrick Johnsonは、印象なし。爪痕もなし。
    Kyron Johnsonも同様。

 

 

Patricia問題について

ここで少し脱線して、急に降って湧いてきた"空席のLBC候補にMatt Patricia(前NE OC)の名前が"という報道について。
真偽は不明だが、事実の整理などについて。

 

  • Patriciaは、その顔からも想像がつくように性格に難があるとのことで特にDETのHC時代にはスターCBのDarius Slay(を筆頭とするベテラン選手たち)とソリが合わず、結果的にSlay放出の最大の要因となる。

    すなわち、肩書がLBCであってもPatriciaがSlayと同じ建物のなかで上手くやっていくことは想像しがたく(噂の段階でSlayは嫌悪感を表明)、これは事実ではないが、PatriciaがPHIに来るのであれば、Slayの放出とはセット。


  • そんなのはイヤだ。
    Slayのアニキはいてくれなきゃ困る。


  • Slay放出なら何があってもBradberryをとどめようと動くことは想像に難くないが、これは別の話。


  • OLBとDEにはJeremiah Washburnが専任のコーチとしているので、PHIのLBCの責務はOff-Ball LBのコーチにとどまっているはず。
    Off-Ball LBCとしてみるなら、Belichick D#がLBに求めるものとFangioスキームがLBに求めるものは割と近しい気がしているので、その能力単体でならまあ魅力的。
    特にT.J.とWhiteが両方とも去りそうなことを考えるとここのコーチ人事は非常に重要。


  • だが、果たしてケミストリーを重視するSirianniがこんな人選をするだろうか。
    この点が甚だ疑問。


  • 結論:来るな。

 

 

2023シーズンに向けて

契約的には以下。(数字はキャップヒット)



誰もいなくなるのはここも同様。
特に、両Off-Ball LBの先発が離脱することが濃厚。

RBに対して金を払わないのと同様に、Rosemanはここに金を払わない。
少なくともDeanはいるので、スピードあふれるこの男に1枠を任せる(Whiteの後任)として、問題はもう1枠。

 

TJの跡を襲わせることになるのでそりゃあランストップができてもらえるとありがたいが、もしかしたらここもDTへの投資で賄おうと、Rosemanならばするかもしれない。

ということで、LARを放流される見込みのBobby Wagnerとか、キャップ都合でMINを放出されたKendricks弟が来てくれることはなさそう。
Devin White(TB)のトレードも同様。
だってこの辺に触手を伸ばすのならTJで良かったから。

 

その他FAでの希望選手を挙げるなら、Azeez Al-Shaair(SF)とかでしょうか。

が、やはりここに大金をはたくとはどうしても思えない。

 

Deanの相方に相応しい男のチーム内の候補者を挙げていくと、

  • このシーズンを通して成長を見る機会すら与えられなかったShaun Bradleyはどうなっているのか、
  • PSにいたのにいつの間にかBradleyを追い越したChristian Ellissはそんなにいいのか、
  • そしてEllissにも追い抜かれてずっとPSにいたいにしえの3巡指名選手Davion Taylorはマシになっているのか、

ということが気になるが、このあたりの経験値皆無の選手をいきなり先発に抜擢することはなさそう。



というかまたしてもLBが不安材料のDefenseに戻るのか。

 

フラストレーションは溜まるが、正直補強優先順位はだいぶ下の方にありそうなので、現実的にはFAでもWhiteパターンの、第1波やり過ごし後に安く買う動きしかなさそう。
ドラフトでも3日目以降になってしまうでしょうか。
まあTJもUDFAだと思うと希望がなくはないが。

 

やっぱりパスカバレッジが得意なLBにこそ価値があり、そして下位に残りそうなプロスペクト、という前提での、(調査が足りていない現状での)希望は、コンバインでスピードを示したOwen Pappoe(Auburn)とか、Marte Mapu(Sacramento State)・Mohamoud Diabate(Utah)・Mikel Jones(Syracuse)あたりの小兵系が気になっているところです。

オールマイティを望まないのであればこのあたりが面白そう。

 

プロスペクトは調べていきますが、どうにも先行きに関する不安が大きいポジションです。
とりあえずは固唾をのんでコーチ人事を見守っていきたい所存です。

 

 

GO BIRDS!!