鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2023ドラフティ紹介(Tyler Steen)

"It was a goal that I set for myself and I think more importantly, it's something that I started and it's something I had to finish."
(自分で決めた目標だし、何より自分が始めたことだから、最後までやり遂げなければならなかった。)
Jalen Hurts

 

上はOklahomaでの修士号を修めたことに関する感想だが、ここにもこの男の完璧主義は一貫しているようで。

大型契約が成立したときさえその報告を受けたのはトレーニング中だったようだし、その際にもLurie以下数名と電話でしゃべってトレーニングを継続、派手なパーティなんかは一切行ってないというのだから全く以って呆れるしかない。
もちろんいい意味で。

 

刺激的な伝記なんかは書かれなそうな類の人間であるが、さりとて華がないわけではないという、フランチャイズQBとしてはいいバランスに見える。

 

こんな前置きにしたのは、DeVontaA.J.からの刺激によってバージョンアップしようとしているけどA.Jをオンラインゲームに誘ってくれないとか、BradberryのPHI復帰の理由は"充実したカフェテリア"だったとか、まああまりにもニュースがないことによるもの。

PHI現地民からするとみんな大好きDoc Rivers解任というニュースはあったのだろうがこちらはあまり興味もない。

 

というわけでドラフティ紹介でもやっていきましょう。

とはいえ1巡の2名(Jalen Carter・Nolan Smith)についてはなんかもう語られ尽くされている感もあるのでもう少し下位から始めていくこととします。

 

手始めは3巡65位での指名となった"OG" Tyler Steen君についてです。

 

 

遍歴

コンバインでもDaniel Jeremiahが述べていたが、祖父は海兵隊員として従軍したベトナム戦争にて味方を守るために敵軍の投げた手榴弾の上に身を投げうつという壮絶な最期を遂げて米軍の最高勲章である"Medal Of Honor名誉勲章)"を受けている御仁。
もちろん英語版にはなるが、Wikipediaにも記載されている英雄。

 

父親ももちろん軍人。

 

その、さぞ厳しかろう父親がコーチを務めるチームでフットボール歴をスタート。

若かりし頃に染みついたものは長じても残り続けるとしたら、Hurtsと同様に厳格な父親のコーチングのもとで育つというルート、もしかしたらいいかもしれませんね。

フロリダでの高校時代は、最終年に転校してElijah Moore(NYJ→CLE)・Asante Samuel Jr.(LAC)・Nik Bonitto(DEN)らとチームメイトに。

 

転校後のプレーで名を上げ、結局3-Starの評価を受けることとなり、オファーがあったLouisville・Vanderbilt・Kentucky・Wake Forestから学業方面にて名を馳せるVanderbiltを選択。

 

"OL・DLどっちもやります"ということでVandy入りしたようだが、1年目だけDLをプレーし、2年目以降はOLに専念。
サイズの大きさと運動能力もあって2年目はRT、3~4年目はLTとして3年間先発を務め上げる。

4年次には学位を取り終わっていたが、1年次がRed Shirts扱いになっていたためプレー資格最終年度には他チームでのプレーを目指すべくトランスファーポータル入り。

 

そこで声をかけてきたのが、長年SECのライバル(Vandyの22連敗中という記録を考えると"ライバル"は言い過ぎ)としてSteenのプレーを見てきたであろう、そしてEvan Neal(NYG)を喪ってLTに穴が開いたばかりのAlabama。

 

このリクルートに大活躍したのが高校最終年のSteenのチームメイトで、Alabamaの先発Sでありこのドラフトでは3-95でCINに指名されたJordan Battle

彼の熱烈なリクルートもあり、Alabama入りを決断。

Sabanも"サイズとパワーはもちろんだが、賢さと手の強さが印象的だった"というような発言でSteenの獲得を回顧している。

 

Sabanが欲しがったVandy時代のSteen君のプレーが以下。
画面左端でボコボコにしているのは両人ともまだ知らないがいずれチームメイトになることになるNolan Smith君です。
そして真ん中でプレーを壊している選手も同じ境遇。Jalen Carter君です。

 

Sabanも後悔はなかったであろう。
夏の間の競争相手2人をあっさり退け、Steenは先発LTに定着。

 

"BAMAの先発LT"というブランドを引っ提げてドラフトプロセスに突入したが、彼の評価を上げたのはSenior Bowl。

 

1-15でNYJに行った、こちらもSenior Bowlで名を上げたWill McDonald IVが"Senior Bowlも含めてカレッジで対戦したOTの中で一番強かった選手"としてOklahomaのAnton Harrison(1-27でJAX)と並んでSteenの名を挙げていた。

 

そのマッチアップがこちら。

 

結構器用なタイプとお見受けした。

 

 

プレーと指名順位

賢さ、というSteenへの評価はVanderbiltで学位を取ったということだけからくるのではなさそう。

プレーを見ていると、その視野の広さが非常に印象的。

前にも書いたが、スタンツへの感度がとても高く、さらにフットワークもスムーズなので容易に対処できちゃう。

OGをやるからにはスタンツ対処は必須の能力のはずなので、Steenのプレーを見るたびに心が高鳴ってしまうのはこのあたりの能力の高さによるもの。

 

懸念はやはりそのリーチの短さに起因するところ。

リーチが短い分相手の攻撃が先に届いたときにバランスを崩すことがちらほらあり、パンチからパワーラッシュに移行されたときに若干弱めだったり、まだコントロールできない遠い距離から左右に振られたりするのにちゃんと弱い。

 

が、フットワークは滑らかなので一瞬外に顔を出されることもあるがその後のリカバリーで事なきを得ているのが大半。

 

OGをやる分にはさほど影響なさそうな気はするが、もしかするとOTの控えでの出番もあり得るのでこのあたりは早急に修正というか上達が必要。

まあStoutland先生に任せれば安心。

 

 

まとめると、ただ速いとかただ強い、は問題ないが、リーチが長くてその武器を有効に使えてかつスピードとパワーがあるタイプにはちょっとやられるかもね、というもの。
どうだろう"問題なし"という結論にはならないだろうか。

 

実際、このあたりの不安要素は全てAuburnのDerick Hall(2-37でSEA)に対して出ていたものなので、現時点での立ち位置は恐らくこのあたり。

 

一部では"2巡もありえる"という評価もあったようだが、総じて"3巡下位から4巡"という評価が一般的だったのは、"現時点の実力値は充分2巡以上だがリーチの短さという割と致命的なハンデを抱えてOTとしてどこまでの成長が望めるか"という観点に立てば極めて妥当な判断だと言えるでしょう。

 

そしてその彼をリーチの短さをあまり懸念しなくて良い"OG"として指名するのであれば"3巡上位"という指名位置も極めて妥当だと言えるのではないでしょうか。

 

OGとしてなら、

2-36 LAR Steve Avila(TCU)

2-48 TB Cody Mauch(North Dakota State)

2-59 BUF O'Cyrus Torrence(Florida)

に次ぐ4番目(Skoronski除く)なのでこちらも妥当。

 

ランブロックのパワーは問題ないはずで、課題はやはりSenior BowlでもLT・LG・RTでのプレーにとどまっていることからもわかるように、RGに適合できるかどうか。

 

とはいえStoutland先生のことである。
LTとして先発になれなかったDillardをいつのまにかRGでプレーさせていたStoutland先生のことである。

移行はスムーズに進むはず。
やはり賢い選手というのはとても良い。

 

 

期待

問題は彼をどう処遇するかというところ。

まずはRGでJurgensとの先発争いが待っているはずだが、さてOGにするのがいいのかOTとしての道も残すのか。

 

恐らく現時点でRGとしての完成度が高いのはJurgensな気がしており、現実的にはRGの控えとしてのシーズンインになるはず。

 

信頼できる控えがDriscoll(RG・OT)とOpeta(OG)となっている現状、G/Tいずれもプレーできる控えを確立することは急務で、この線から考えると、

先発:Jurgens・控え:Steen(G/Tプレー可能)

先発:Steen・控え:Jurgens(C/Gプレー可能)

のどちらを採るかということになり、OTの層が比較的にしても薄いことを考えると前者の方が収まりがいいというか危機回避の選択肢は増えそう。

 

個人的に21世紀最高のOTだと思っている殿堂入りOT Joe Thomasがおっしゃっていることが正解だと思っており腕の長さも技術で充分補えるものだと思っているが、この路線でいずれLaneの跡を襲うことになる優秀な控えOTを目指すかRGとしてプロボウルを目指すかはStoutland先生次第。

 

まあ"両方やってみる"ということにしかならないんでしょうが。

 

個人的には2日目までに欲しかった"腕の短いOT"という希望が叶って万々歳というところ。

 

Stoutland先生の厳しい指導にもしっかり応えられそうなバックボーンに賢さ。

起用で万能な、息の長い活躍を期待しております。

 

 

GO BIRDS!!