通算対戦成績が絶望的に悪いことに加えて敵地で過去全敗、おまけに相手方は過去全勝の縁起のいいユニフォーム、とまあ双方の現在のチームの実力とは関係ないところでほぼ勝負は決まっていた試合。
フリがききすぎていたのだろうか。
とはいえ想像以上に上手くはまったのは事実。
最大の要因は、元CINのあの人でしょうね。
展開と結果
直前の練習でケガをしたという先方のWR Tee HigginsがOUTで迎えた試合
序盤はその役割を担ったであろうTE Mike Gesickiが全然止まらず最後はChase vs Nolan SmithというQBが中学生でも決まっちゃうようなマッチアップを作られてあっさり先制を許す。
実に25シリーズぶりのTDだったのだとか。この長さはフランチャイズ記録。
PHIも返しでしっかりFGまではもちこんだが、残念その時には既に2Qに入っており1Q無得点記録は継続。いいぞいいぞ。もうこの記録はだんだん縁起が良く見えてきた。
ただ、この最初のシリーズ以降、Defenseは比較的安定。
途中はちゃんとやられるが、大きなタックルミスもなくなったため締めるところはしっかり締められている印象。
パスラッシュも、Burrowの早投げの影響もあってサックまでは届かないがプレッシャーはしっかりかけられている状況が続き、結局前半は10失点。
その間にOffenseがSaquonへのハンドオフあるいはプレーアクションを効果的に使ったことで、中央で空き続けたCalcaterraや、いつものA.J.なんかでじわじわ進み続けて最後はTush PushあるいはBrotherly Shoveで仕留める形で前半は同点で終了。
そして後半開始から怒涛。
PHIボールで始まったOffenseはまたしてもCalcaterraが躍動し、最後はHurtsの脚でTD。
返しのCINはGesickiとChaseが止まらずTDで応戦。
ここでHurtsがいいプレーアクションからA.J.をおとりに奥に走りこんだDeVontaに久しぶりに長いのを通してTD。
そしてここからDefenseの出番。
3Q終盤から4Q終盤にかけての3シリーズを、ダウン、INT、ファンブルリカバーという圧巻のパフォーマンスで完封。
OffenseもそのDefenseの裏で、Saquon加入の真骨頂である時間消化と前進というこの時間帯で最大の難事をご機嫌にやり遂げて無事に試合は終了。
結果:PHI 37-17 CIN
2試合連続となる大勝。
過去の記録はガチガチにPHIの敗北を指し示していたが、CINの今季ホーム全敗というジンクスが全てをひっくり返した形。
そして2試合連続で今季ベストパフォーマンスを更新。
ハイライトは以下YouTubeからどうぞ。
主なスタッツ
- 地味なスタッツではあるが、Hurtsはこれで3試合連続となるTOなし。
加えてDefenseに待望のボール奪取が2回も出れば試合は落ち着く。
大変よろしい。
良かった人たち
- QB Jalen Hurts
文句なく良かった。
なんて美しいんだ。
上のチャートで場外近くまで伸びているのがDeVontaへのTDパス。
これが59.3ydというAir Yardとなり、キャリアロングを更新。
いいプレーコールと見事な落としどころであった。
これに限らず、EPA/DropBackの+0.67はキャリアハイだったのだとか。
見た目のパフォーマンス全般もキャリアハイに近かったのではないでしょうか。
フィールド中央へのパスがちょっと増えた気がしたが、上のチャートで見るとさほどであった。やはりA.J.が目立つだけか。
やっとBurrowに勝てたね。本当に良かったと思います。
だがそれもこれもすべては彼らのおかげである…
- パスプロテクション
この試合最重要ミッションであったHendrickson封じという仕事を任されたのが元CINの控えOT Fred Johnson。
相性がいい可能性はあったがまさかこんな完璧にこなすとは。
おみそれしました。
CIN Defense最高のタレントであるHendricksonが0サック2QB Pressure(11%)という数字に終わればHurtsもご機嫌にプレーできるというもの。
Sirianniが試合後に称賛を惜しまなかっただけでなくTDレシーブ後のDeVontaに"あいつが8秒プロテクション"してたぞ言われてDeVontaはすぐ感謝を伝えに行っていた。
それがTE Jack Stoll。
Jalen Hurts' 45-yard TD pass to DeVonta Smith traveled 59.3 yards in the air, the longest completion of Hurts' career.
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2024年10月27日
🔹 Target Separation: 0.8 yds
🔹 Completion Probability: 21.6%
🔹 Win Probability Added: +16.5%#PHIvsCIN | #FlyEaglesFly pic.twitter.com/JwrKg8CPblシームに出ていたのにやっぱりHurtsにはターゲットにされなかったね。
だがブロッカーとしてなら有能なのがStoll。
ケガで退場していたが軽かったようで。引き続き頼む。
MVPはFredなんだろうが、いつもどおりLaneは完璧だったし中の3人も破綻しなかった。
今季初の0サックゲーム。お見事です。
- Defense全員
この試合も浅いところでボールを頻繁に持ち脅威となり続けたJa'Marr Chaseに1試合果敢に挑み続け、最後に仕留めたCooper DeJeanはもちろん、3試合連続サックをマークしたNolan Smith、いつものようにタックルリーダーになるだけにとどまらず試合を終わらせるファンブルフォースを記録したZack Baun、ようやく初INTを記録したCJGJに、そのプレーでナイスなカバーとチップを見せたIsaiah Rodgers、そしてDeJeanほどは目立たなかったもののマンツーマンでChaseとでもちゃんとやり合えるところを見せたQuinyon Mitchellまで、どいつもこいつも最高であった。
特にうれしいのが、バストとはもう呼ばせない活躍を見せ始めたNolanを筆頭に、DeJeanと2年間投資し続けた若手たちが順調に成長しているところである。
CarterとQuinyonはもう別格ですらある。
この試合前までリーグトップの7.3ydものYACをマークしていたJa'Marr Chase相手に、Fangioが選択したのは、"取り立ててなにもしない"。
言い換えると、"外につけばQuinyon(もしくはSlay)に、中につけばDeJeanに任せる"。である。
その結果、Chaseには9回レシーブを許したが、獲得は54yd(平均6.0yd)にとどまり、肝心のYACはたったの2.7ydを許したのみである。
最高なのである。
FangioはほかにもDeanをChaseにマンツーマンでカバーさせるという意表をついたコールをしながらしっかりBaunのBlitzを届かせてプレーを壊すというコールもあった。
前任者のようにCov.2で引くしかできないわけではない。
腹を括った場面で時折見せる攻撃性の高さには感服するしかない。
本当に見事な指揮ぶりですこと。
バイウィーク以降のDefenseの長足の進歩ぶりには驚かされるばかりである。
そしてその原動力は間違いなくQuinyonとDeJeanの2人。
特に悩まされ続けてきたSlotエリアを完璧に埋めているDeJeanのプレーぶりには頬が緩んで仕方ない。
実にいい。大変いい。非常にいい。
- 代役たち。
OT Fred Johnsonもそうだが、Goedertの代役であるCalcaterraに、鼠径部を傷めて途中退場したSlayの代役であるIsaiah Rodgersも。
みんな良かった。
シーズンは長い。
こういう時にこんな素敵な活躍を見せてくれる選手がいるというのは非常に心強いことで。
CJGJのINTに貢献した単年契約のRodgersは、"なんとかしてこのチームに長く残りたいからアピールを続けていきたい"という殊勝なコメントを残している。
TB戦のSTではとんでもないプレーを見せてくれたが、本職のCBはやはりなかなかのレベル。
残っていただきたいのはこちらも同じだ。
SlayのJAX戦欠場が発表されている。
引き続き頑張ってください。
その他
- Fangioだけではなく、Kellen Mooreも徐々にらしさを見せてきた様子で。
アンダーセンターからのプレー数も増加中だし、モーションもしっかり増えてきたしでOffenseが効果的に動くようになってきた印象がある。
もう1つの課題であるフィールド中央への攻め方だが、頻度としては物足りないものの、たまに使うと実に効くのでまあ今はこんな感じでいいんでしょう。
もちろんこのOffense全体の核はA.J.でありこの日も先方のエースCBであるCam Taylor-Britt相手にその脅威を遺憾なく発揮していた。
だが、A.J.だけではない。
この試合後にLaneが言っていたことが結構印象に残っている。
それが、"Saquonがいることで、リードした試合のクロージングがスムーズになる"ということ。
確かにリスクを冒したくないこの時間帯に優秀なRBがいるということは、プレーアクションの囮になることと同じぐらい重要なことなんでしょう。
そしてさすがにDALでRBの扱いに習熟してきたMooreさんにおかれてはこの辺りの運用が非常にお上手。
FB起用しているBVSもこの日もいいブロックを見せていた。
リードした展開で、時間を潰しながらボールも進めて得点まで取れちゃうOffense。
実によろしい。
これからもStoutland先生とともにいい仕事を続けてください。
- 冷静さを保ち続けるSirianni。
丸坊主にした試合(CLE戦)はまだ生臭さがこびりついており、試合後にファンと揉めるというひどい姿を晒した男だったが、その後の2試合では冷静さを保てている様子。
まあ試合がそれほど切迫していないというのもあるのだろうが。
感情を出すなとは言わない。
だが今ぐらいの出し方でいいんだろうと思いますよ。
地味ではあるが重要極まりないStollのプロテクションへの称賛を惜しまないような、ああいうところがやっぱり選手からの信頼にはつながっているんでしょうね。
どうか今ぐらいの感じでお願いしたい。
今季ベストの試合だった。
良すぎてあまり言うことがない。それぐらい最高だった。
これがどんどん更新されていくことを願ってやまない。