いつの間にか2試合が終わっていましたね。
ちょっと長めのオフを経てナイトゲームで対戦するのは1勝4敗でスタートしながらそこから4勝1敗と盛り返して現在5分となっている上り調子のLARです。
直近2戦の収穫と懸念
さすがに同地区2連戦を無視するわけにもいかないということでサクッと。
収穫
- 同地区2連勝の立役者となったのは間違いなくDefense。
この2試合を経てとうとう喪失ydではリーグ1位にのし上がった。
さすがのFangioさん。
そしてそのFangioさんのスキームにおいて非常に重要な役割を果たしているのがZack BaunとCooper DeJean。
前者はそのスキームにおいて不可欠なフィールド中央での守備範囲の広さと変幻自在なプレッシャーの出所となっており、後者は2023のPHI Defense最大の泣き所であったSlotエリアをようやく埋め、さらにはそのサイズとランストップの力強さからLB的起用も増えることでランフィットへの幅をもたらすというドデカい貢献ぶり。
DAL戦での4ターゲット2レシーブ14yd(うち、CeeDee Lambに1回5yd)に引き続きWAS戦では25回のパスプレーでマッチアップしながら大エースMcLaurinを"0キャッチ"に抑えてしまったQuinyonはDPOYとAll Proにふさわしい活躍をしているのでなんとも比較はしにくいが、DeJeanの貢献ぶりもQuinyonに劣らない。
これほどの使い勝手の良さを考慮したうえでトレードアップして獲りに行ったのだとしたらフロントは有能だしトレードに応じてくれたWASには頭が上がらないが、PHI界隈お前らはDeJeanを”外CBとして1巡"と言っていたんだから許されてないぞ。
- こちらもAll Proに選ばれて違和感ないほどの活躍を見せているBaunとの契約延長がまだなのが何とも腹落ちしないが、フロントがまだなにかを見極めようとしているのであれば、それはタックルミス。
DAL戦はまだしもWAS戦で一発RobinsonにタックルミスをかましたのがしっかりTDになっていた。
ああいうところで仕留められるのが超一流のLBということなんでしょう。
今季はまだDerrick Henryというモンスターを仕留める仕事が残っている。
そこではしっかり結果を残してください。
- やっぱりSaquonがいるとゲームのクロージングが非常に簡単。
最高です。
- 気のせいかもしれないが、HurtsとDotsonのコンビネーションが出来てきた気がする。
まあWAS戦では序盤の落球以外目立っていなかったが。
- ここ2試合で6つとTOを量産しているDefenseだが、その陰にはどうもSirianniがいるとのこと。
過去からずっとそうしているのかはわからないが、全体ミーティングで前週に発生したTurn Overの映像を、プロカレッジ問わずまとめてチームに見せているのだそう。
全部というわけではないとのことだが、なぜこれが起こったのか、どういう状況だったのかということをOffense・Defense問わず全体に見せているとのこと。
こういうことをするからこの男は捨てがたい。
懸念
- Offenseはパスがいま一つすぎるが、Saquonが輝いているうちは問題ないはず。
だが、そろそろ対戦相手がBox内の人を増やしてPHIのランOffenseに備えるようになってきているという傾向が出つつあるということなので、これまでのようにSaquon一辺倒にならぬようしっかりプレーは散らしてください。
A.J.の持ち腐れということにならないようお願いします。
- Defenseはフラットエリアでやられすぎではないか。
RBのパスがメインだが、ここを早急に閉じていただきたく。
何が起こっているかまではわからないが、ちょこちょこストレスになるやられ方をしているように見える。
まああれだけそれ以外のエリアを完璧に絞められていたら文句もないんですがね。
- 大問題なのがK Jake Elliott。
WAS戦では必要以上に試合をもつれさせたFG2本(44yd・51yd)とXP1本という大量の失敗Kick。
技術がどうこうというわけではないんだろうが、さりとてメンタルの問題なのだとしてもそう簡単には対処できなさそう。
我々に出来るのは祈ることだけ。
頼むぞElliott。
ということで2試合の振り返りを終わります。
WAS戦は"WAS戦特有のなんかモタモタしてたらよくわからないうちに負けていた"という試合にならなくて本当に良かった。
同地区3戦3勝という結果は大変すばらしい。
ケガ人
PHI
Friday's Injury Report#PHIvsLAR pic.twitter.com/hEyV5JAj0Q
— Philadelphia Eagles (@Eagles) 2024年11月22日
OUT
WR DeVonta Smith:ハムストリング
WAS戦後に足を引きずっていたというDeVontaがOUT。
その後、この2週ほど手首を傷めていたEDGE Bryce HuffがIR入りし、空いた枠にWR Britain Coveyが昇格。
上記ではQuestionableとなっていたCoveyだが、日本時間日曜朝時点では無印に変わっているので出場が見込まれる。
WRとしてDeVontaの穴を埋めるほどの活躍は見込めないだろうが、少なくともPRとしてDeJeanのケガのリスクを抑えるという大事なお仕事が待っている。
がんばってください。
そしてPSからは2試合続けてCJ Uzomahの昇格が発表されている。
そろそろPSのTEの弾が尽きそうなんだがさて誰をアクティブロスターに入れるんでしょうかね。
LAR
OUT
QB Charles Woods:足首
OG KT Leveston:足首
Doubtful
OT Rob Havenstein:足首
IR
TE Tyler Higbee
CB Derion Kendrick 他
いたって健康。
スターター級のケガ人はHavensteinのみ。
対決軸
極上のチェスマッチ
- 因縁の対戦。
現代の名工であるSean McVay vs Vic Fangio。
- 最初にしてこれまでの唯一の対戦が2018シーズン。Week14のLAR@CHI。
McVayとGoffのLARはFangio相手にわずか214ydしか稼げず、得点は2FGにとどまり6-15で敗退。
全くうまくいかなかったその試合を振り返り、今週の記者会見でMcVayは" 僕らにとっては最高の夜だった。 いい勉強になったけど、とても屈辱的だった"と振り返っている。
- 当時リーグを席巻していたWide ZoneベースからのTodd Gurleyのランと、そこからのプレーアクションを武器とするMcVayに対してFangioが敷いたのが、6-1のDefense。
6人のDLのペネトレートによってまずはGurleyを封殺。
そしてプレーアクションの脅威を消したうえで、Passは先ごろBALをカットされた彼ではない全盛期Eddie Jackson・Kyle Fuller・Prince Amukamara・Adrian AmosというDB陣と、守備範囲に優れたLB Roquan Smithを最大限に活用することで合計4INTに仕留めてチェックメイト。
OPOY獲得の翌年でキャリアの全盛期にあたり、このシーズンも結果的にAll Pro 1stチームに選ばれることになるGurleyだが、この試合は11回でわずか28ydとシーズン最低の成績を記録している。
- そしてこのFangioの対McVayの戦術を完全に模倣してそしてそれをさらに完璧に遂行したのがこの2018シーズンのSBでのNEとBelichick。
この試合でNEのDCが名を上げたことでのちのちリーグとPHIに災厄をもたらすことになるが、それはまた別の話。
この文脈から考えたらあの戦術を踏襲する発想は絶対にBelichickの頭から出ただろ。Patriciaがこんなこと思いつくわけない。
話が逸れた。
McVayが6DLに対してなす術なく3-13で敗北した映像は記憶に新しいが、あの戦術の下敷きとなったのがFangio。
ちなみにこのシーズン後にMcVayはWide ZoneベースのOffenseからは決別。
現在ではWide Zoneに必要な機動力を犠牲にしても、重量級のOLを揃えてDuo(雑に言うと、組めるところ全部でダブルチームを組むInside Zoneの派生形)をベースにしたOffenseを展開するようになっている。
それほどに、彼の哲学に深く影響を与えた試合だった様子。
- その後、McVayはFangio Defenseを攻略することに執着。
翌2019シーズン限りでこちらも名手であったWade PhillipsがDCから退いたのに伴ってMcVayがLARのDCに雇い入れたのが、2017・2018をCHIでFangioに仕え、2019にFangioがDENのHCになった際にもかの地に伴った、OLBCのBrandon Staley。
そのシーズンでいきなりリーグNo.1 Defenseを構築したStaleyも大したものだが、それほどまでにFangioのエッセンスを取り入れることに執着したMcVayだもんで、もちろんこのオフにはFangioに接触したと言われている。
結果はPHI入り。残念でした。
- 対するFangioも当時の彼ではない。
よく言われる2-HighベースのDefense、という代名詞ではあるが、厳密には2-High比率は結構下がっている。
大事なのは相手に合わせて様々な顔を見せるDefenseであり、カバレッジにしてもパスラッシュにしても変幻自在がモットーであるということ。
そして何よりも2023シーズンにはMcVayと同門のMIA Mike McDanielのもとで1年を過ごしており、Wide Zone一辺倒以降の現代的なShanahanツリーへの理解も深まったであろうという想像もつく。
- 両方とも何をしてくるかわからない程度には策士。
さて、どんな極上のチェスマッチを見せていただけるのでしょうか。
全米、あるいは世界中のオタクが注目する一戦となりそうです。
マッチアップ
PHI Offense
- 基本は無名で、Day3やUDFA上りが多い構成。
全体的に小柄で軽量だがスピードあふれるタイプが多く、そして何よりどいつもこいつもハードワークを厭わないという見ていてとても楽しいのがLARのDefenseユニット。
だもんでデプスチャートを眺めていてもその強さはよくわからない。だがチーム作りをしていることは確か。
- DCはChris Shula。
その名字から分かるように、祖父は言わずと知れた名コーチ Don Shula。
あまり存じ上げないが、MIAのパーフェクトシーズンを演出した、NFL史上最も勝利を収めたHCです。
スキームは知らん。
だが長らくLARにいるのでWade PhillipsやらBrandon Staleyやらいろんなものがごちゃ混ぜになっている。
OutputとしてはどうもPHIに似ているものになっているとのこと。
プレッシャーをかける際のルックには結構種類がある。
そしてそこからのプレッシャー率はなかなかに高く、10試合中5試合で45.0%を超えているようで、これはリーグベストタイ。
プロテクションに如何に混乱をきたしているかというのは4men以下のパスラッシュでのプレッシャー率が39.4%とリーグ2位の数字を残していることからもうかがえる。
どうやら有能DC。
- LARのDefenseにおける最大の強みはやはりEDGE陣。
Quinyonを獲ったもんでなんの不満もない2024ドラフトにおいてLARが19位で指名したのがEDGE Jared Verse(Florida State)。
そしてこれが大当たり。
4.5サックと山ほどのQBヒットを積み重ねており、現在はQuinyonを上回ってDPOYレースのフロントランナーである。
特筆すべきはそのPass Rush Win%。
EDGE陣において全体で8位になるという19.1%という数字を残しており、これはもう十分に脅威。
そしてランストップもそれなりにイケる。
しかしシーズンエンドしたとはいえAidan Hutchinsonの38.3%という数字は異常だな。何食ったらこうなるんだ。
1年前のドラフトでもByron Young(Tennessee・PHIのDTとは別人)という当たりを引いており、メインはこの2名。
だがまあここまで書いたが、MailataとLaneが揃っているので問題なかろう。
洗礼の時間です。
- 懸案はランストップ。
127.3ydという1試合平均のラッシングでの喪失ydはリーグ18位。
そろそろSaquonに頼らない試合を見せてほしいものだがこの試合もSaquonに頼るしかなさそうですね。
- パスラッシュが厳しいのはさておき、WASにいたS Kam CurlをLBに入れるというのが3rd Downでよく使う5-0-6パッケージ。
これが相当に厄介そうなのでできれば3rd Downの長いシチュエーションを作りたくないところ。
やるとしたらA.J.。
- だができればDotsonをいっぱい使ってほしい。
DeVontaの穴を埋められるのはこいつのはずだ。
- 若いDL陣からのプレッシャーを避けることで余計なFumbleとかINTを避ける。
Derion KendrickもいないCBはあまり強くなさそうなのでA.J.を最大化する。
変幻自在にプレッシャーをかけてくるのでプロテクションルールをしっかりすること。フリーラッシャーを許すな。
Saquon。
ぐらいがGamePlanでしょうか。
PHI Defense
- 問題はこっちだが、ここはFangioに任せるしかないところ。
- モーションがすんごい多い。
およそ8割。
その複雑さについては、QBのMatthew StaffordがLARのモーションについて"いろんな異なる理由でモーションを入れている。たぶん。"と述べているように、全部を完璧に把握しているのはMcVayだけなのだろう。
- ヤバい映像をみた。
それが、Puka NacuaをモーションさせてC Gap、つまりTEの内側からリリースさせることによりLBとのマッチアップを強制的に発生させるというイベント。
This was such a fun play call.
— Wyatt Miller (@wymill07) 2024年11月18日
Puka takes his at-snap motion through the “C” gap for a crosser against zone coverage. He gets lost in the shuffle, Stafford threads the needle and it’s a 37-yard gain after the broken tackle. pic.twitter.com/YT9JthE7pO禁止すべきだ。
DeJeanとBlankenshipが特に対応を間違えられないポイントになろうと思われるが、まあこの2人なら大丈夫でしょう。
Blankenship今週もINTよろしく。
- 1年前のLAR戦で爆発したのが2サックのCarter。
今回も頼みます。
パスラッシュについてだが、スタンツが結構効くそうで。
多用していきましょう。
そしてプレッシャーがかかった場面では今季のStaffordはあまり輝けていないらしい。
チャンスだ。やったれCarter。
残念なことに離脱してしまったBryce Huffの代わりに出番が増えると予想されているのがNolan SmithとJalyx Hunt。
2人ともここまで非常にいいシーズンを過ごしているが、さらに一段のぼるためにこの試合で爆発してもらえると大変うれしい。
がんばれ。
- とはいえ結局Cooper KuppとPuka Nacuaをどう止めるかが問題。
序盤からCJGJが積極的に口で仕掛けてNacuaのパンチ→退場を誘発するという手もあるが、さすがに2度目はなかろう。
ということでここでもQuinyonとDeJean頼み。
1年前にだいぶ手を焼いたのが、Slotエリア。
ここを守る選手が見つかっていなかったことがあの試合での流血を防ぐことが出来なかった最大の要因。
あれとは違うということをみせてやりましょうがんばれDeJean。
- ランプレーは前述したとおりDuoからのものが多い。
RBのKyren WilliamsとBlake Corumといえばいずれもコンバインで失敗してしまった(前者は4.65で後者は4.53。前者はともかく後者を"失敗"と括るのは失礼かもしれないが、思ったより速くなかったのは事実なのでセーフ)2人。
両方ともZoneスキームで走るのが上手かった気がするが、それにしても両方とも同じチームに指名されるとは。
エースはKyren Williams。
パワフルでMiss Tackleの誘発率も高いが、とはいえ1年前と比べるとその脅威はちょっと落ち着いているはず。
ちゃんと仕留めなさいよLBの2人。
そしてそのためにもでっかいOLたちに押し込まれないよう頼んだJordan Davis。
CはBeaux Limmer。
Arkansas時代の映像とSenior Bowlを観てこのドラフトで欲しいと思った選手だったが結局来なかった。悔しいので活躍しないで欲しい。
押し込めJD。
そういえば、WRのランブロックがめちゃくちゃいい。
特にNacua。
Quinyonよ、新たな試練だ。
- StaffordにCarter中心に絶え間なくプレッシャーをかけること。
モーション時のZoneカバーのルールを絶対に間違えないこと。
実は今季のLARは3rd/4th DownとRed Zoneで苦戦しているようなのでここで仕留めろ。そのためは1st Downでのランストップが重要です。頼んだぞJordan Davis。
ちょっといい話
今でこそ確固たる地位を築いているSlayの、若手時代の苦労したプレー集が、まとめられて全体ミーティングで流されたのだとか。
テーマは"長い過酷なシーズンを通して、如何に精神的にタフであり続けるのか"
Sirianniに言わせると、
「困難を克服できなかった選手や、悪いことが起こった時にそれを乗り越えられなかった選手は12年目のキャリアを迎えられない。
だからそういう選手の話を聞くというのはいつだって勉強になる。マイケルジョーダンでもロジャーフェデラーでも誰でも良かった。
それを同じチームにいるそういった経験をしてきた選手に聞くことにした。」
そしてSlayはSlayで、流れた映像について事細かくどういう失敗だったのかを皆の前で語ったそう。
「みんなの旅路は同じじゃないから、俺の場合の経験という視点を与えたかったんだ。
俺の旅路ももちろんみんなとは違う。
ルーキーイヤーに俺を2回もベンチに下げたHCは、俺をここPHIにトレードさせるためにテーブルについていたここのDCだった。
明らかに彼は俺の成長を見てくれていた。 ありがたい話だよ。
そんなことをチームと分かち合った。
このリーグでは誰もが多くの逆境を経験するが、特にCBのポジションでプレーするなら、それはより一層大きくなる。
一人でやられても次のプレーに飛びつかなければならないからね。
俺はキャリアの初期に多くの逆境に立たされ、その泥沼から抜け出す方法を見つけなければならなかった。
そんな話をしただけだよ。」
得難いリーダーだよあんたはほんとに。
結び
- 強いんだか弱いんだか全くわからないのがLAR。
- Fangioへのリベンジに燃えるMcVayを如何に手玉に取るかを楽しみにしておきたい。
- LAR遠征が終わったら次は@BAL。
移動時間を含めるとだいぶ不利だと思ったらBALは翌日の月曜試合を@LAでやるのか。
いいぞ。
- 勝て。
GO BIRDS!!