え??というピックも特になく、暴れまわるチームも出ず、総じて穏やかな2日目だったはず。
では振り返りを。
展開
初日にダウンしまくっていろいろな疑念を巻き起こしたBUFは結局素直に妥当にWR Keon Colemanを指名。
そこから始まって極めて妥当な指名が続いたところで突如飛び込んできたニュース。
<Trade!!!!>(以下、それぞれ渡したものです)
PHI:2巡50位+2巡53位+5巡161位⇔2巡40位+3巡78位+5巡152位:WAS
そしてこの40位で、今日も陽気なBrandon Grahamさんが大学時代を過ごしたDetroitに凱旋して高らかに読み上げたのがこちら。
2-40 PHI CB Cooper DeJean(Iowa)
情報量が多いので整理すると、このタイミングでのリアクションは2つあった。
まず1つがトレードの対価について。
多かろう。出しすぎであろう。
古典的な"Jimmy Johnsonモデル"と言われるバリューチャートを参照すると、
PHIが出したバリューが797ポイント
WASが出したバリューが731ポイント
となる。
その差は66ポイントで、これは4巡全体114位の指名権の価値と同等であり、この分WASが追加してくれてようやく理論上トントンということになる。
要はPHIの大負け。
これだけ負けていることをもちろんRosemanが承知していないわけがないので、つまり彼はこれほどWASに有利な条件を提示してでも、どうしても成立したかったトレードおよび指名、ということになる。
ちなみに、この負け分の66ポイントを、実際にDeJeanを指名した40位のバリューに足すと、566ポイントとなり、これは2巡先頭の33位(580ポイント)と34位(560ポイント)の間に来る。
RosemanはDeJeanに対してこれぐらいの評価をしていたということでしょう。
そしてもう1つが肝心の指名対象について。
初日に引き続きCBの指名。
Top-30 Visitでも接触していたので気にいっていたのは知っていた。
現地ではファンも専門家もこぞって"1巡"という評価を下していた。
不届き者の中には"22位から16位までトレードアップしてDeJean"というモックを恥ずかしげもなく晒している者まで出ていた。
しかしはっきり申し上げてCBとしてそこまで評価されるほどの良さは、例えば初日のQuinyonを上回るようなCBとしての能力は一切感じなかったし、"Sもできる"という触れ込みではあったが、ちゃんとSとしてプレーしている映像なんか残っていないものをどう評価したら"1巡”なんて言えちゃうのか。
という選手が来た。
うわっ、というのが最初の正直な感想。
もう少し酷いリアクションだったかもしれない。
彼らを推している人間たちへの不信感がマイナス側に膨らんでのリアクションだったかもしれない。申し訳ない。
というのがこのトレード。
ちなみに現地のファンは大喜びである。
専門家たちも悪くは言わない。
唯一悪く言うのはアナリティクスの面々であり、彼らに言わせると、"事前のビッグボードから明らかにスリップしている選手をトレードアップまでして獲りに行くことは愚かしさの極みである"とのこと。
まあ言わんとしていることは何となくわかる。Rosemanはこれするのすんごい好きだが。
ちなみにではあるが、この後の並びが
2-41 NO CB Kool-Aid McKinstry(Alabama)
2-42 HOU CB Kamari Lassiter(Georgia)
2-43 ARI CB Max Melton(Rutgers)
2-47 NYG S Tyler Nubin(Minnesota)
2-50 WAS CB Mike Sainristill(Michigan)
というDB祭りであったため、50位まで待っていたらDeJeanを獲ることはできないと思ってジャンプしたRosemanの判断は間違いではなかった気がしているところ。
引っかかるのはDeJeanで良かったんでしたっけ、に尽きる。
こんなトレードを消化するのに時間がかかっていたところで2巡が終了。
この時点で3巡は78位を持っている状態。
DeJeanをSと見做すと、残る大きなニーズはEDGEとLB。
そして始まった3巡ではどうも目当てをさらわれたかのような気配が漂うトレードを連発。
<Trade①!!!!>
PHI:3巡78位⇔3巡86位+4巡123位:HOU
さらに、
<Trade②!!!!>
PHI:3巡86位⇔3巡94位+4巡132位:HOU
いずれもバリューチャート上はトントンとなる健全なトレード。
これにて1つしかなかった4巡を3つに増やして、満を持して3巡94位で指名したのがこちら。
3-94 PHI EDGE Jaylx Hunt(Houston Christian)
素材。
原石。
そんな言葉が似合うEDGEの獲得。
スピードはあるのでBGあるいはSweatの後継者としてぴったりな選手。
大変よろしい。
DeJean指名に混乱しすぎたのか、この指名にはこんなあっさりした感想しか浮かびませんでした。
これにて2日目終了。
2巡40位 CB Cooper DeJean
こいつに関しては、指名当初のアレルギーはだいぶ収まったものの、もう少し時間をかけたい所存ですので今日はパス。
ただ、思ったより良い選手だし、SlotもSも標準以上に務められそうな悪くないツールをお持ちだと拝見しました。
少なくとも、それなりにしっかりタックルできるという点で、1年前の時点の3巡指名であるSydney Brownよりはすぐに戦力になりそうな気配です。
少し考えを改めました。
ごめんなさい。
指名後の会見では、Rosemanは、
"我々のボードでは1巡。それを2人も指名できたので非常にいい2日間"
とおっしゃっていたとのこと。
まあ狙い通りならいいか。
3巡94位 EDGE Jalyx Hunt
歴史
読めないですよね。「ジェイリックス・ハント」で良さそうです。
スポーツ全般とサクソフォンが得意な少年は、小さいころから陸上では全米規模の競技会でメダルを集めまくっていたらしい。
高校時代は背も低くてガリガリだったこともあってWRとCBをプレー。
無星のプロスペクトだったため特に奨学金のオファーもなく過ごす。
シニアイヤーになる前に各地で行われるリクルーティングキャンプに2ケタ以上参加して名を売り、その冬にようやくアイビーリーグ・コーネル大からのオファーを受けて進学を決定。
しかしその時にはまだ6'2"で195lbsの、やや大柄なSという位置づけ。
それから3シーズン在籍(厳密には2020シーズンは開催されなかったのでプレーは2シーズン)し、トランスファーポータル入り。
残念ながらFCSクラスしか声がかからず、この度プログラム史上初めてドラフト指名選手を輩出することになったほどのスモールスクール・Houston Christianに転校。
そしてこのタイミングでハイブリッドOLBへのコンバートが行われる。
これが2022シーズンなので、EDGEラッシャーとしての活動はたったの2年。
素人目にも粗削りな彼だが、EDGEとしては圧倒的経験不足と聞かされるとすべてに説明がつく。
Top-30でも接触済み。
この3月に23歳になっている。
評価
いいところ
- 運動能力
フレームは平均よりやや腕が長い仕様。
そして元は陸上のエリートだけに、走ること、跳ぶこと、走って止まってまた走り出すことが大の得意。
そしてパスラッシュの出足も速いし、なにより全般で速いので守備範囲も広い。
ドラフト前に見たときにも思ったが、プレー全般にもう少しパワーをつけてもらいたいシーンが多く目に付くのはこのチャートの体重とベンチプレスのところがへこんでいるからだと思い込んでいます。
- カバレッジスキル
これはもちろんそう。
元DBだけあってオープンフィールドでのパスカバレッジは並みのEDGEのそれよりよほど滑らか。
NFLネットワークのDaniel Jeremiahによると"ドラフトプロセスを通じてFangioのお気に入り"という話だったのだがこの辺りを評価してのものなのかもしれない。
- 映像とカタログ値の一致
技術的に下手とか上手いとか以前の問題で、まっすぐ走れば速いのにフィールドでのプレースピードは全くそう見えない選手、というのがいる。
彼の場合、技術はさておきプレースピードはそれなりに速い。
出来たOLの隙間を見逃さないところとかに思い切りの良さも感じる。
心技体のうち、心は良さそう。
あとは技と体だ。
- 伸びしろ
OLBへの転向2年で13.5サックである。レベルはさておき。
初年度から7.0サックである。
身体はあと10キロ程度つけたところで問題なさそうな長さである。
伸びしろの塊。
- 人柄
めちゃくちゃいいやつらしい。
ロッカールームでも非常に"ポジティブ"と評判だとのこと。
そしてコーチに対しても真摯に教えを乞うことができ、それを消化することができるという評判。
さらに、STの汚れ仕事も厭わないし元DBだけあってカバレッジへの理解も深い。
いいですね。
不安なところ
- すんごい下手
さすがに3巡で指名される選手なんだからSeniorBowlでもそれなりにやれているだろうと思うと大間違い。
すんごい下手なのである。
いや、下手というのは失礼。すんごい未熟なのである。
意思がないわけではない。
DB上がりだからといってコンタクトを忌避するところは全然なく、たまにハマれば効果的なパスラッシュを仕掛けることもできている。
ただ、その確率が極めて低いということである。
アウトプットの品質が安定しないというのはやっぱり下手と表現するしかなかろう。
- 軽さとパワー不足
これも致し方ない。
いっぱいメシくってトレーニングするしかあるまい。
こういうのはある程度時間をかけないと改善しないはずなので長い目で見守ることにする。
どうでしょうか。
これは結構思い切った案件です。
ただ、正直素材が欲しいとは思っていたところなので、Huntという人選には驚いたものの、いずれは通らなければいけなかった道。
期待するのは、ちゃんと育ててね。育ってね。ということだけ。
彼に光るものをみた関係者各位の目を信じるだけです。
新DLC Clint Hurttさんにおかれては力の見せ所。頑張ってください。
なお、Hunt指名について少し加えると、コンセンサスビッグボードでは134位で4巡から5巡相当の選手なのでリーチといえばリーチ。
欲しかった選手をトレードダウンあるいは40位へのアップの反動(53位→78位への2つ目の指名順位のダウン)で相当数喪っていないとこういうことはしないでしょうよ。
Hunt自身の成功も重要だが、残念ながらDeJeanはこのダメージも背負ったことになる。しっかり戦力になりなさいよ。
ちなみに、WASに渡した53位が78位に落ちた間に発生したPHIも気にいっていた気配が濃厚にあった選手に関する疑わしい指名は以下の通りです。
2-56 DAL EDGE Marshawn Kneeland(Western Michigan)
3-67 WAS G Brandon Coleman(TCU)
3-73 DAL G Cooper Beebe(Kansas State)
同地区ばっかりじゃないか。
そしてやっぱりDALか。いい指名しすぎですね。あのトレードダウンでこんなに得したのか。
許さぬ。
3日目のターゲット
飽きることなく繰り返した(2回だけ)貰い物の3巡78位指名権のトレードダウンにより3日目の指名権は充実。
しかし今年の層の薄いドラフトでこれをやる必要があったのかはどうしても疑問。
<残る指名権>
1巡全体22位:オリジナルピック→CB Quinyon Mitchell
2巡全体40位:WAS由来→CB Cooper DeJean
3巡全体94位:SF由来→Jaylx Hunt
4巡全体120位:Pickettトレード(LAR→PIT→PHI)
4巡全体123位:HOU由来
4巡全体132位:SF由来
5巡全体152位:WAS由来
5巡全体161位:2023ドラフト時のトレード(TB由来)
5巡全体171位:補償ピック(Isaac Seumalo分)
5巡全体172位:補償ピック(Andre Dillard分)
6巡全体210位:補償ピック(T.J. Edwards分)
こう見るとなかなか楽しそうな3日目なんですけどね。
そういうので補えない才能というのが見送った3巡の選手たちにはあったのではないかと思えて仕方ないのです。
残るニーズとしてはこれぐらい。
LB>WR>OT>IOL=DT=TE
6ポジションに対してピックは7つ。
2つぐらいを束にしてそれなりの来年の順位に変えたいところですが無理ならこのままで。
ここから3日目の指名権を増やす、はあまり意味がないと思います。
明日の希望ですが、2日をとおしてあまりにもOL、特にOTが売れてしまった(Matt Goncalvesまで3巡で消えてるのは想定外すぎる)ので、こっち方面から動くのも一興かと。
ちなみに、3巡までにOLが25人も指名されたのは過去最多だそうです。
狙いどころは以下でしょうか。
OT
★ Tylan Grable(UCF)
Javon Foster(Missouri)
OG
★ Christian Mahogany(Boston College)
★ Tanor Bortolini(Wisconsin)
Beaux Limmer(Arkansas)
ーー
Gottlieb Ayedze(Maryland)
Mason McCormick(South Dakota State)
LB
★ Jeremiah Trotter Jr.(Clemson)
Cedric Gray(North Carolina)
ーー
Curtis Jacobs(Penn State)
Jordan Magee(Temple)
★ Aaron Casey(Indiana)
Tyrice Knight(UTEP)
WR
★ Javon Baker(UCF)
★ Devontez Walker(North Carolina)
★ Jha'Quan Jackson(Tulane)
Malik Washington(Virginia)
ーー
Jacob Cowing(Arizona)
Ainias Smith(Texas A&M)
TE
★ Tanner McLachlan(Arizona)
ーー
Jared Wiley(TCU)
Rosemanよ。
もう何してもいいです。
最終日もよろしくお願いします。