鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

Tight End界隈

このオフにおいて最も確実視されていた動きである3年連続4回目のRichard Rodgersとの“再契約”により、TEデプスが飽和状態に。
OTAにも参加しなかったErtzの放出は決定的な状況となっているが、その割に動きが見えない。まあけどやはり出ていく前提でないと話が進まないので彼はいないものとして考える。
そしてロスター入りの第一希望も挙げておきます。

 

【現ロスターと序列と実績】
1.Dallas Goedert(3年137捕球1,465yds12TD:26歳)
2.Richard Rodgers(7年145捕球1,518yds15TD:29歳)
<以下横並び>
Hakeem Butler(‘20CAR PSより強奪⇒WRからコンバート:25歳)
Jason Croom(‘20Street FA:27歳)
Tyree Jackson(’21Street FA⇒QBからコンバート:23歳)
Jack Stoll(’21UDFA:23歳)
Caleb Wilson(’20WAS Waiver:24歳)

完全なる競争体制。
序列と言いながら実績があるのは上位2名のみ。PHIは通常TE3人体制でシーズンに臨んでいることもあり、横一線で1枠を争う勝負。とはいえ、この中でJack StollはPHIのUDFAにおいて最多の保証額と契約金であるためもしかすると頭一つ抜けている可能性はある。

去年なぜか2枠でファイナルカットを実施したことでPS入りを目論んでいたNoah Togiaiを攫われたことはまだ忘れていないので今年の3枠は必須。絶対に間違わないように。

 

【スキーム】
ここで実は1枠に絞る前に結果が出ているような気がする。
SirianniのINDでは2TE隊形の比率がPedersonのPHIに次いで高かったが、一方で2TE隊形にしたらPHIと違ってランの比率が高かったという話は前にした気がする。
となると、やはり3枠目の候補筆頭はNebraskaにおいて優秀なランブロッカーでもあったと聞いているJack Stollなのか。
参考映像はこちら。

他方彼はプロデイで(下に掲げる数字とは違うが、)40yds4.60、3-Cone6.86というなかなかの数字を残しているようで、レシーブ能力も割と高そう。その点でも期待はあるが、プロでセパレートができるのかはどのハイライト映像を見ても非常に不安が残る。
小さくまとまっていて、爆発的な存在にはなれなそうな印象というか偏見。

 

【第一希望】
というわけで最後の1枠に滑り込んでほしい第一希望はこちら。
Tyree Jackson(Baffalo大⇒BUF)6’07” 249lbs

Baffalo大のQBとして3年間スターターを務めたあとアーリーエントリーした2019ドラフトでは3-4巡の評価もあったようだが、コントロールと判断力が不安視されてドラフトにはかからず。
UDFAとしてBUF入り。結局BUFもその年の8月にはリリース。その後2019はNFLチームとの契約はなく、2020にXFL入り。そこでバックアップQBを務めるが、シーズン半ばの2020年3月にCOVIDでXFLが再度消滅。その後は所属チームなし。
2021年1月7日にTEとしてReserve/Futures contract(オフのPS契約)を結んでPHI入り。
ブランクがあるので不安はあるが、身体能力は高い。



当然ブロッキングという点では不安しかないし、時間がかかりそうな気はしているが、Stollと比べると身体能力と元QBという頭脳面で天井は高そうというのが推す理由。そしてまだ23歳。
Mailataの存在というか成功を見ていると、こういう投資に大きな夢を見たくなってしまう。

この春のOTAにおいて、PHIのロスターにおいてそのMailataの次に高身長である彼はやはり目立っていたよう。
しかしその目立ち方は、残念ながら今はサイズだけ。
ただ、新TECのJason Michaelによると、OTA期間中のJacksonの成長には目を見張るものがあったよう。リップサービス的なところはあろうが、彼には引き続き期待したい。

QBからTEへのコンバートというのはよく聞くルートの一つ。それほどQBという、業界の頂点に位置するポジションでカレッジぐらいまでやれていた人間はそこから落ちこぼれても融通が利くのでしょう。目指せLogan Thomas早咲き版。

現実的には2021はPSで過ごす可能性が高そうだが、そうであっても冬ぐらいには一度お姿を拝見したいところ。まかり間違ってRodgersを追い落としても別に構わない。

Goedertのサラリー高騰が予想される2022はJacksonが戦力になることで、Rodgersの再々々々々契約がないという展開になってくれるように祈っております。

2021ドラフティ紹介(その3:Kenneth Gainwell)

9人は多い。終わるのか。
ドラフティ紹介第3弾。McPhearsonを忘れたわけではありませんが、先に5巡のGainwellから。

5-150 RB Kenneth Gainwell(Memphis)5-8 201lbs

 


【生い立ちからMemphis】
ミシシッピ州生まれ。偉大なるFletcher Coxのいとこ。
FletchのPHI入りとは関係なくMcNabbとかVickとかに憧れてずっとPHIファンだったそう。
高校時代はQB。陸上でも活躍。100mは11.35。
3-starのリクルートとしてMemphis入り。オールミスからも打診はあったそうだが最初に奨学金を打診してきたMemphisに忠誠心を示したもの。
初年度の2018は4試合の出場後にレッドシャツ。迎えたレッドシャツフレッシュマンの2019、FBS唯一の1,000ydsランと500ydsパスレシーブという成績(231回1,459yds Avg.6.3yds 13TD+51捕球610yds Avg.12.0 3TD)を残し、ハイズマン候補に一瞬あがるほどの活躍。見事にMemphisのAAC初戴冠に貢献し、本人はAAC 1st TEAM等に選ばれる。
2020の3-66でWASに行ってルーキーRBとしてそれなりの結果を残したAntonio Gibsonを2019はWRに追いやった、というと言いすぎな気もするが、Gibsonを差し置いてエースRBとして君臨したことは事実。

ClemsonのTravis Etienne(JAX)やOklahoma StateのChuba Hubbard(CAR)と同ランクで期待された2020、シーズン開幕直前に叔父さんをはじめとして家族4人をCOVIDで亡くしたこともあってオプトアウトを選択。これは誰も責められない。

 

【人柄】 
兄がいる。彼はウォークオンでSouthern Missに進んでフットボールをしていたが、そこでウエイトトレーニング中に脳卒中を起こしたそうな。字面だけで怖い。都合4回脳外科手術を受け、今も後遺症は残っている状態。
夢を泣く泣く諦めざるを得なかった兄の無念も背負っているKenny青年は、兄の分まで努力を惜しまないタイプの人間だそう。泣ける。
控えめなところもあるようで、まあ彼にしてもフィールド外の懸念はなさそう。

 

【選手としての評価】
<長所>
・パスレシーブが上手い
・クイックネスとカットバック
・視野が広く判断も早い


<弱点>
・カラダが小さく、コンタクトには強くない
・耐久性も不明
・カレッジ時代も上手く起用されていたのでオールダウンバックとしての素養は不透明
・活躍が1年だけであり、きっちり対策を施されたときにどうなるかわからない
・プロテクションもあまり上手くはない

以上が、ドラフト前の評価。

 

【希望】
このドラフトでいうとタイプ的にはDENに行ったJavonte Williams(NC)の下位互換的な存在だと思っているところ。
ポジティブに捉えると、2020をオプトアウトしたことによって脚を使わずに済んだことが好材料

RBとしての実績は2019の1年だけだが、個人的にRBは消耗品だと思っているので、この辺りの懸念はすべて「伸びシロ」という言葉に変換できる。レシーブ能力等技術の裏付けがあるのでさほどの心配はないと思っているところもある。
もしか2020もプレーして2019の活躍を続けていたらストックをもっと上げていた可能性もあり、その結果が5-150だと思うと本人としては不本意だろうが、PHI的にはラッキーだったと思っている。

PHIへのフィットという意味では、どういう理由か全くわからないが2020にパスレシーブとプロテクションの面で急激に劣化したMiles Sandersを補完する存在として最高のピースだと思えているもの。パスレシーブのセンスが溢れている。

下手だとされているプロテクションの参考映像としてはこちらをご覧いただきたい。Micah Parsonsを一撃で殺している酒のお供にもってこいの映像。Week3からこれを見せてくれても良い。

 

スローモーション版はこちら。

 

うむ期待しかない。
家族のことも含めて彼には精一杯働く理由がある。こういう選手は応援したくなる。
絶対ケガするくせにうるさい気がするMilesに代わるエースRBになっていただいても構わない。
長く活躍していただきたい。

 

2021ドラフティ紹介(その2:Milton Williams)

褒めるにしても貶すにしても、それぞれの選手がどういう背景を背負っているかを知っていた方がいいのではないかという信条のもとお送りするドラフティ紹介第2弾。
今回は賛否が分かれそうで、実際にフロントオフィス内で賛否が分かれたのが全米に晒されちゃった男。この選手の背景はあまり出てきませんでした。

 

3-73 DT Milton Williams(Louisiana Tech)6-3 284lbs


【生い立ちからLouisiana Techまで】

Texas出身でどうやらSEAファンとして育った男。
高校時代はDEとしてキャリアを積み、バスケットボールでも活躍。
最終的には2-starリクルートとして2017の127位のDEという評価で、Texas A&MやTexas Techなどからも関心を寄せられたようだがオファーはなし。オファーがあったLouisiana Tech、New Mexico、Stephen F. Austin、TulsaからLouisiana Techへの進学を選択。

Louisiana Techではレッドシャツのあと2年間DEとしてプレーし、2019には先発として5.5サック(13試合)でチームのサックリーダーとなりオールカンファレンスUSAにも選出。
しかし、2020に新DCの就任とスキームの変更に伴い、3-4ベースのDLのBギャップにコンバート。
このコンバートが功を奏し、10TFL4.5サック(10試合)でいずれもチームリーダーとなり、オールカンファレンスUSA 1stチームに選出される。

プロデイに際し、本人は目標として「Aaron Donaldの数字を超える」ことを目標としていたそう。その結果、プロデイではスピード面を中心にAaron Donaldを超える化け物級の数字を残し、ドラフトストックを爆上げ。

 

【人柄】 
努力の人。勤勉。
今年なんとも聞きなれた謳い文句。
チームのサックリーダーかつオールカンファレンスUSAに選ばれた翌シーズンに(少し説得しただけで)コンバートを受け入れたのだからそれだけでも評価としては十分。
チームメイトからもキャプテンに選ばれたが、本人に言わせると「あまりしゃべるのは得意でない」とのこと。行動で引っ張っていくタイプだとか。そんな顔してらっしゃる。
フィールド外でのトラブルは面白くないぐらいなさそう。

 

【選手としての評価】
<長所>
・デカさ、まだまだ鍛える余地があるフレーム
・非常に高い運動能力
・クイックネス
・爆発的な下半身と横への動きのスムーズさ
・ギャップに入り込むボディコントロールの上手さ
・真面目さとか勤勉さ
・オフフィールドの問題のなさ


<弱点>
腕の短さ
・体重軽い
・ランブロックに対してパッドレベルがやや高くてやられがちで膝が怖い
・カレッジ時代でパスディフレクションは1回だけ。パスルートを見つけるのがちょっと苦手
・パスラッシュもあまり一貫性がない(ハマらなければ消える)

 

以上が、ドラフト前の評価。

 

【惚れた理由と懸念と期待値】
プロデイの圧倒的な数字を見てめちゃくちゃ欲しくなった選手。
本人も言っていたが、比較対象はAaron Donald。
ドラフト直前に見たのが以下。2008以降のドラフトにおけるDTのプロスペクトを40ydsのタイム順に並べたもの。この表の最上段がMilton。その下がAaron Donald。

 Miltonは40yds・Short Shuttle・3-Cone・Vertical Jump・Board JumpでDonaldに勝利。10ydsスプリットはDonald。プロデイとコンバインの違いはあるけどなかなかすごい。
ただし、Donaldの傑出具合は一番右の2列に表れている。1試合平均TFL2.19回ってどんな化け物。
もちろん、フィールドでの成績までDonaldに似ていれば1巡上位のはず。

DTにコンバートされて1年。真面目な性格もありどんな技術も吸収してくれそうだしそれをできる土台としての身体能力は非常に高い。そして昨年はコロナもありほぼ練習もできないまま臨んだシーズンでそれなりの結果を残しているのでここからの成長には大いに期待できる、という理屈。

 

懸念される腕の短さについて。Miltonは身長6-3のアームレングスは31.5”。前述のAaron Donaldでいうと、身長自体は6-1とMiltonより低いが、腕は33"弱なのでMiltonより長い。
マッチアップするOGの平均的なサイズをどこと取るかによるが、最上級の仮想敵としてDALのオールプロGであるZack Martinを例とすると、彼のアームレングスが大体33”なのでその差は1.5"弱で大体4cm弱。これをどう思うか。

パスプロテクションとパスラッシュという場面を想像していただきたいが、先にアタックできるリーチの長さがない以上、Miltonの284という重量を考えた場合、300を超えるC・Gと組み合うとその時点で終わり。これは285のDonaldも同様。
だからリアクションスピードと1歩目で、組み合う前に何とかするしかない。

ここでDonaldがすごいのは、極端に小さいことを最大限に利用してむしろ長所としているところ。Donaldのハイライトでよく見かけるのは低いところからGの腕をかいくぐって下から当たって押し込むようなプレー。あれができると幅が広がる。Gとしても対処が面倒になる。Miltonは中途半端に身長があるのでそういう引き出しを持てるかが課題になりそう。とはいえ、まずはC・Gに「超速い」という印象を植え付けられるかどうかが最優先事項。

真面目な性格ゆえOTA時点で既に体重は290超までバルクアップされているようだが、ここからパスラッシュのテクニックをどこまで伸ばすことができるのか、新DLコーチのお手並み拝見といきたいところ。

使われ方としては、まずはローテーション要員。できれば2020の負担があまりに大きかったCox先生の負担を減らす方向に働いてくれれば一番良いが、現状パスシチュエーションでCoxを下げるという選択肢は採りえないと思うと、お休みシリーズを設けるのか。どちらにしてもランディフェンスで使える目途が立たないと中途半端になりそうなので増量という方向性には異議なし。

ちなみに、フロントオフィスが分裂した要因であるDETに行ったAlim McNeilについては、いずれ調べるであろうTuipulotuの時に覚えていたら述べたいと思う。

 

「サイズと運動能力」というドラフトにありがちな思考でいくと上記のようになる。そしてその延長線上で、PHIファンの皆さんにおかれては、頭の片隅に置いていただきたい比較対象が、Milton を調べていて浮かび上がってきたXavier Cooperという選手。
2015の3巡96位でCLEに指名された6-4、300の選手で、身体能力や腕が短いという身体的特徴がMiltonに酷似。
そしてこの選手は結局2シーズンで追い出され、その後1シーズン、通算3シーズンでプロの世界から姿を消している。Milton も今見えている「カタログの割にプレースピードが取り立てて速くない」という点を早めに直せなければ最悪の場合はこれ。

Cooperのことはカタログでしか知らないが、Miltonの天井はDonald並みに高いと信じているので大いに期待している次第。

1年目から使えそうだが、ワーストシナリオは鳴かず飛ばずで2年後にウェイバー、ベストシナリオではプロボウラー

6月1日

現地が6月1日を迎えた。我々の世界では別れの季節である。
この日の特別さは、サラリーキャップの計算方法によるもの。そして、我らがPHIがいよいよNFLトップに立ったものがあります。

 

【6月1日の意味】
この日以降、NFLではデッドマネーの扱いが変わります。これ以降、保証サラリーを除いて、残りの契約年数でのデッドマネーの分散計上が可能になる。

PHIの例でいうと、ちょっと変化球ではあるがErtzがわかりやすい。
彼のキャップヒットは以下。
2021:ベースサラリー8.5M+再構築サインボーナス4.2Mの合計12.7M
2022:契約なし。ただし、再構築サインボーナスがあり、それが3.5M
うち、デッドマネーは再構築サインボーナスの4.2M+3.5Mで計7.7M

こいつの場合、契約は2021のみだが、度重なる契約再構築により、2022にも3.5Mのキャップヒットがあることによるややこしさ。これが変化球の理由。

5月31日までのカットもしくはトレードの場合、この7.7Mの全額を2021のデッドマネーとして計上する必要があるが、6月1日以降のカットもしくはトレードであれば、
2021・4.2M、2022・3.5Mという分散計上が可能になり、2022に移る3.5Mだけ2021のキャップセーブが可能になるというもの。

単に先送りしただけですが。

 

【Zach Ertzの行方】
PHIのキャップ状況の話を続ける。
NFLの場合、各チーム2人まで指名できる「6月1日指定カット(post-June 1 designation cut)」という制度があり、要はサラリーキャップの計算上は上記6月1日以降のカットとして後年度に分散計上を行うが、身柄はFA市場開場と同時にリリースする、というもの。
PHIの場合既にCLEと契約済みのMalik Jacksonと未だ転職先が見当たらないAlshon Jefferyがそれにあたる。
この2人分のキャップが6月2日に合計4M程度空くことになり、それをもってPHIのキャップスペースは6Mとかになる予定。これで恐らくドラフティー全員と契約は可能になるため、当面はこれで良さそう。

 

つまり、現地報道のサヨナラErtzムードとは裏腹に、ファイナルカットが近づけばまたサラリーの状況は変わるが、現時点では無理にErtzを放出する理由が見当たらない。
UDFAを1枚追加しただけでドラフトでもFA市場でも誰も獲得しなかったことを見ると、意外とこのままシーズンインという可能性もなくはない。

ちなみに、Sirianniが2TE隊形を好むという話もあったが、PHIというかPedersonの2TE隊形からパスをとにかく投げるスタイルとは違い、INDの場合2TEからのラン比率が非常に高かったようで、実はSirianniにとってレシーブ型TEのプライオリティはそこまで高くないのではないかと睨んでいるところ。
というわけで、Ertzに拘ることもなさそうだが、一方で残留ももしかしたらもしかするかもしれない。

そして、これがそう見せかけるための動きなのであれば、つまり、「PHIは絶対にErtzをカットする」ということが他チームに見透かされていれば当然トレード価値などない(単年8.5MでErtz、という契約が安いと映る場合はこの限りではない)ところ、トレードの対価を引き出すためにErtzありきっぽい状況を作り出しているのであれば、そして実際にこれで対価を引き出すことができれば、Rosemanは悪魔の化身かなにかと思わざるを得ない。

嘘みたいな話だが、実は今のPHIに明確な補強ポイントはないと思っている身からすると、来年の指名権をもらえるなら良し、選手とのトレードなら却下、と考えているところ。
もちろん補強ポイントがないというのはそんなに浮かれたものではなく、「高額おじさんさもなくば評価が定まっていなかろう若手」という極端なロスター構成になったことによるもの。
高額おじさんポイントに欲しい選手などいないし、じゃあLBとかCBは?となっても、TJとかMcPhearsonの出番を奪わないでほしいと涙を流して懇願したい。この辺りはもう好みの問題ですし異論は多々あるでしょう。この感情が贔屓だということも理解しているつもりです。
結論としては、Ertzで指名権が対価としていただけるならなんでもありがたい。最高で2022の5巡ぐらいでしょうか。

 

【祝・NFL首位】
もうお気づきだとは思いますが、もちろんそうですデッドマネーです。
気が早いOverTheCapさんによると、Malik(3.6M)とJeffery(5.6M)のデッドマネーを追加したことにより、PHIのデッドマネーはNFL首位の49Mになりました。めでたいですね。というかまだ確定ではないですが、歴代最多でしょう。
2位は42.7MのCARだそうです。ここは再建とKuechlyの引退の影響が効いているようですね。
意外と僅差でぼやけてしまいますが、この差の6Mとかで今年なら大物CBが一人入りますからね。それぐらいシリアスな差です。最下位のINDは0.2Mだそうです。この差。

確認しておくと、2021のサラリーキャップは182.5Mで、2020からの繰り越し22.8Mを加えたりしたPHIのキャップ総額は207Mとかそれぐらい。そのうち約50Mがいない選手への支払いです。つまり戦力の25%が無駄遣いになりますね。
ドラフトやらなにやらで浮かれがちになってしまいますので、自戒も込めて以下もう一度貼っておきます。

 
上のチームの戦績を平均してみると今年はやっぱり4勝とかですかね。そういう腹の括り方をしておきたいと思います。

 

以上、水を差して終わります。

2021ドラフティ紹介(その1:Landon Dickerson)

特にニュースもない週末、ドラフト前から言われていたJulioの移籍はPHIと関係ないものとしてとらえている次第。トラウマがあるのでAFCに行っていただきたい。NEとかでどうでしょうか。

他チームのドラフティの紹介などしてだいぶ時が経ってしまいましたが、PHIのドラフティの紹介を。全員分終わるかはわかりません。

褒めるにしても貶すにしても、それぞれの選手がどういう背景を背負っているかを知っていた方がいいのではないかという信条のもと、そのあたりを厚めに。
プレーがイケてるかどうかの判断はプロにお任せしたいし、結果はシーズンが始まればわかるのでそっちは薄めに。そういう具合でやっていきたいと思います。
まずは、今ドラフトの成否のカギを握る男から。

 

2-37 C Landon Dickerson(Alabama)6-5 330lbs


【生い立ちとFSUからAlabama】
ノースカロライナ州シャーロットから北へ1時間ほどのところにあるヒッコリーで育ち、地元の高校から移籍したりなんかして、最終的にはOG・OTで経験を積んで卒業時には4-starリクルートに。
NC内では、Clemsonから2019全体17位でNYGに行ったDT Dexter Lawrenceに次ぐ第2位の評価。Auburn・FSU・Georgia・Tennessee・Virginia Techという錚々たるオファーの中から選んだのはJimbo FisherのFSU。
FSUのOLでTrue Freshmanの開幕戦から先発したのは1982以来の快挙だったとか。

2年次のプレーをちょっと見たが、BAMAのPayne(WAS)相手にいい勝負をしていた。余談ですが、この2017開幕戦のAlabama – FSUで感じるのは、よくぞここから、と感動してしまうぐらいのHurtsの下手さ(当時)と、FSUのSweatの出足の速さ。あと、ちょっとしか出番がなかったDeVonta Smithはやっぱりガリガリ

 

以前にも少し触れたが、FSU時代の3年間でRG・LG・LT・RTでスタートしているが、どの年もシーズンエンドのケガを負うケガ耐性のなさ。そして、2019年5月にスポーツマネジメントの学位を取得してFSUを卒業。FSUが2017のJimbo Fisherの途中解任から2018にかけてゴタゴタしたことに見切りをつけたのか、トランスファーポータルに登録してAlabama入り。
そしてAlabamaのビジネススクールに入学。

BAMA初年度の2019は、Cで9試合、RGで4試合をこなし、5年間で初のシーズン完走、全試合出場を達成。
そして続けて順調に進んでいた2020シーズン。
ガシガシとドラフトストックを上げていき、全米No.1のOL陣のなかでも出色の出来を残すが、SEC championshipにて無念のACL断裂。

 

【人柄】 
これはもうこのドラフトにおけるPHIの選択として完全に共通していることだが、とにかくロッカールームでの評判が良い好人物。
相手を痛めつけたい気持ちが先行して、若かりし頃は不必要なプレーがフラッグを投げられることもあったようだが、成熟してそれも改善。規律はしっかりある。
いかにチームメイトから慕われていたかはこの負傷時の映像からも窺える。ちなみにこの映像より前に一番早く声を掛けていたのがDeVonta Smith。

 SEC championshipでの負傷から数週間後のNational ChampionshipのVictory Formationに参加したこと、あの有名な側転映像などからもいいやつに見える。

 

 

【選手としての評価】
<長所>
・上のスパイダーチャートでもわかるが、デカい。骨太。
・手の使い方が上手く、パスラッシュに対する処理に有効
・テコンドー経験があることと関連があるか知らないが、身体の使い方が柔軟というかまあそういうところがあるそう
・クイックネスも十分
・2線目でのLBのブロッキングも上手
・経歴からもわかる通り知的で、OL陣のアジャストメントの統率も問題なし
・OL陣の統率という点ではフィールド外でも同様
・キャプテン
Mac Jonesを筆頭にBAMAの選手が絶賛する、とにかくいいチームメイト
・OLの5ポジション全てで先発経験のあるバーサタリティ

 
<弱点>
膨大な負傷歴
 

以上が、ドラフト前の評価。

 

【希望】
ケガさえなければプロボウルもしくはオールプロレベルという評判の逸材。
個人的にはドラフトの成否は1巡2巡ぐらいで決まると思っているところ、Smithは大満足だが、本当に正解のドラフトだったかどうかの大きな要因を握っているのがこの男だと思っている。というかこの男のたくましい膝。
この呪われたフランチャイズ+負傷がちという経歴がどう出るか。Josh Sweatという良い方に転んだ前歴もある。

 

カレッジでは5年間で結局38試合の出場にとどまってこのレベルだと思うと、リハビリに明け暮れた日々から解放されたらどこまで成長してしまうのかワクワクする。
Stoutland先生もいらっしゃいますし。
現時点ではプレー的にも似ている部分があるので少々スケールダウンさせたQuenton Nelson(IND)ぐらいだと期待しているところ。現時点ではね。

 

Kelceと遜色ないほどプルアウトもスムーズで、Kelceよりもスナップは上手そう。
少し懸念しているのは、BAMAのパスプロテクションがスライドプロテクションばかりだったこと。PHIの映像を見直してみると、1テクをマンツーマンでシングルブロックしなければならないシーンも多いようで、その点似たようなシーンがBAMAではあまりなかったのでそこだけが心配。
2019シーズン時点では、vs AuburnでDerrick Brownのカウンタームーブにちょいとやられていたので、超一流のクイックネス相手にどこまでできるのかは蓋を開けてみなければわからない部分。

 

とはいえまずはリハビリから。
膝のことゆえPHIとしても慎重には進めていくのだろうし、厳密なタイムテーブルはないのだろうが、9月の完治を前提として、’21シーズンに彼の姿を拝めるパターンとしてはIOL3人衆のどこかにケガ人が出た場合の穴埋めもしくは全員健康なのであればLG Seumaloの出番を奪うかのどちらか。

後者であっても、シーズン中の組替えはやめていただきたいので、キャンプから超順調に進んだ場合のみLGのSeumaloの出番を奪うことを認めたい。
というかそうなれば'22でベースサラリーが倍増してしまうSeumaloはヤバいし潤沢な指名権を持つ'22ドラフトでLG指名まであるかもしれない。

 

ケガ人が出るにしろSeumaloの出番を奪うにしろチームとしてはあまりよくない状況なので、彼の’21シーズンは未知数のまま終わってしまうことが理想。たまにあるゴール前とかでのエクストララインマンとしての少ない出番を期待したい。そういう心持ち。

Roster周りとLT問題、オフシーズンプログラム

何個かニュースがたまっているのでまとめて。Transactionの話とキャンプの話。

 

【Transaction】
5/14に7名のUDFAとの契約を完了。まだ9名のドラフティとの契約は行っていない。
そして、同日のRB Kerryon Johnsonのクレーム以降、こちょこちょと動きがありました。
時系列順に、
5/14 CB Nate Meadors(2019UDFA MIN⇒JAX)とサイン
5/17 DE Ryan Kerrigan(2011D1 WAS)と1年最高3.5Mでサイン
5/18 JAXとのトレードでCB Josiah Scott(2020D4 JAX)を獲得(対価:CB Jameson Houstonと2023 6巡指名権)
5/18 OT Casey Tucker(2019TryOut PHI⇒DET⇒PHI⇒IND)とサイン
5/19 OT Le'Raven Clark(2016D3 IND)とサイン

大物はWASのレジェンド、Ryan Kerrigan。市場に残っていたパスラッシャーとしてはJustin Houstonの次ぐらいの実績。通算95.5サックはWASのフランチャイズレコード。’21シーズン開幕時には33歳。
2017以降4年連続でDLを1巡指名(’17 Jonathan Allen→’18 Da’Ron Payne→’19 Montez Sweat→’20 Chase Young)し続けたWAS DL陣にあって、’18シーズンの8割弱というスナップ数から’20シーズンでは4割弱のプレーにとどまっており、12M強のサラリーと釣り合わなくなったことで、契約切れによってUFAに。それを3.5Mなのでまあなかなかおいしい。
スナップ数の減少にもかかわらず、’20でも5.5サックという数字を残している点は非常に期待できるところ。というか'20もめちゃくちゃやられた記憶しかない。まだまだ燃料は残っていると信じたい。
そしてリーダーとしての振る舞いにも定評がある御仁。PHIファンが期待しているのは、’16に加入したLongアニキの再来。WASと同地区かつ再建モードのPHIを選んだことについて、「WASに復讐できる機会が多いからか?」との問いに対しては「復讐?そんな気持ちはないよ。WASに悪い感情はない。とてもよくしてもらったと思っている。」との回答。いいね。爽やかだね。
‘19・’20と、スナップ数は減りながら、パスラッシュシチュエーションではまだまだ働けるところを見せているこの男との契約は、即ちパスディフェンスの向上を狙っているのではないかと睨んでいる。
CB補強より安く済み、成長を見てみたい若手のスナップ数を奪う心配も少ないポジションであることなどが主な理由。
契約内容の詳細が出ていないので何とも言えないが、Kerrigan補強でまたキャップスペースが4.2Mから減ったことを思うと、巷で噂されているようなSteven Nelson(前PIT)とか一瞬欲しかったRichard Sherman(前SF)とかいう大物CB補強はないと踏んでいます。

その他、控え対控えという謎トレードとなったCB Josiah Scottの獲得。こちらはJAXの体制変更の犠牲者と見て間違いないでしょう。4巡指名選手を1年で手放すとかどっかのShareef Millerのような外れ方だったのか。後者は初年度のディフェンススナップがゼロで体制変更もなかったのにリリースされているので単純にGMの見る目が絶望的だっただけですが。
ScottはMichigan State出身で3年間スターターを務めた選手。サイズは5-9の185lbs。小さい。腕が短い。

2020には6試合の出場にとどまっており、今回の獲得もドラフト時の評価に基づくものだという見方が専ら。それによると、「タックルは上手く、ボールスキルも高い」とのこと。どこかのNRCみたいにタックルができないNCBなんて見たくないのでこれが前評判通りなら期待したいところ。だけどまあ腕も短いしスティフアーム一発で吹っ飛び倒してたNRCの二の舞になることはなんとなく想像つく。あまり興奮しない。
さて、この男の獲得をどう見るのか、というところですが、多分単なるcompetition要員でしょう。何かの答えになるようなムーブではない。同じことはMeadorsにも言えそう。
Slay以外誰もいないと言ってよいPHIのCB陣にあって、Scottはサイズ的にNCBを巡ってMaddoxと競争することになるものと思われます。それはそれで結構。PHIファンでもある様子なので頑張っていただきたい。

そしてD#サイドの補強が落ち着いたのか、今度はOTを二人。
Tuckerはいつものキャンプ要員でしょう。頑張って這い上がっていただきたい。目の上の奴らはだいぶブ厚いけど。
問題はLe'Raven Clarkのほう。スウィングタックルとのことで、左右両方できるとのことだが、主戦場はLTだという。
もちろん彼にしたってScottと同様に単なる競争要員だという見方もできるが、ここは今PHIにあってセンシティブな部類に入るポジション。INDから来たということもあり、Sirianniとは旧知。それなりに計算できるとするなら、控えLTを獲得したことにならないか。そして、RTもできるとなると、あいつより汎用性は高いということになる。なにせRTのLaneにしてもDriscollにしても手術明けですので。
ということで、この動きはいよいよDillardの尻に火をつけるものだと推察しているところ。このキャンプでもし振るわなければ、2019のドラ1は見事トレードブロックに乗ることになり、そして他チームのキャンプでのケガ人状況に合わせて売り飛ばすことになりそう。もちろん、そのケガ人が出るチームの第一候補はわれらがPHIであり、残留という線も十分にある。その場合、Hurtsにとっては厳しいシーズンになりそう。

 

【オフシーズンプログラムの変更】
Covid関連で、今オフの強制参加でないミニキャンプのボイコットを表明していたPHI選手会だが、Sirianniが数人のチームリーダーと会談し、方針を変更。
変更内容は以下。

・この18日(火)から21日(金)までを「フェーズ2」とし、このセッションではコンディショニング・ミーティング・フィールド上でのインストールとウォークスルーを実施。
・その後、6月中に予定されている10回のワークアウト「フェーズ3」では、フェーズ2よりフィールドでの練習量を増やす。
・フェーズ2も3でも、7on7や11on11は実施しない。
・当初予定していた強制参加のミニキャンプは取りやめ。

というもの。CBAで定められた範囲以内であれば練習量等は変更できるようでこの変更は問題ない様子。

もともと強制参加のミニキャンプだけの参加であったことを考えると、新体制になるチームにとっては非常に大きな前進なのではないかと捉えている次第。7月のトレーニングキャンプまでにちゃんとした練習時間が取れることは好ましいのではないのでしょうか。
そして、現在のフェーズ2セッションでのSirianniの評判が非常に良い様子。
順調順調。


ここまでは。

Tyler Shelvinの長い道のり

今回はPHIに全く関係がない一人の選手のお話。

きっかけは、確かJaCoby Stevensの研究でした。そして、なんで2020のLSUのディフェンスはこんなにひどいのか、というところに至り、そうかBo Periniという人がいるのか、となって、そして見つけた一つの記事に心を奪われたものです。

 

 【Tyler Shelvinの物語】
始まりは2020年8月のある木曜日。Deborah Silasという一人の女性のもとにLSU Tigersの“Coach O”ことEd Orgeronから一本の電話が入る。

 

「悪い知らせがあるんだ。Tyler(Shelvin)がオプトアウトするそうだ。」

 

知らせを受けたこの女性は、Tyler青年の祖母に当たる方で、ほぼ育ての親。Coach OはTyler青年に問題が起こるたびにSilasさんに相談していたとか。

 

焦ったSilasさんが何度Tyler青年に電話をかけてもつながらない。やきもきしていた直後、Tyler青年から折り返しの電話が。
「いまコーチと話して大学に戻ることにしたよ。心配ないよ。」

 安心してSilasさんは電話を置いた。

 

しかし翌日。人種差別問題などに揺れていたLSU Tigersは練習をボイコット。ロッカールームには緊張感が漂い、選手たちも口々に、今シーズンは開催されないからドラフトの準備のために練習をやめる、というようなことを言っていたそう。

そして週が明けた月曜日。Tyler青年は一度固めた意思を翻し、オプトアウトを決断。どうも最初の決断も二度目の決断も、もはや2021ドラフトにおける地位を圧倒的なものにしていたJa‘Marr ChaseのTylerへの影響力が大きかった様子。

 

一方Coach OはなんとしてもShelvinに残ってほしかったようで、その週末にはShelvinの周囲の人々に11回もの電話をかけていたとのこと。

このCoach Oの必死さは、ひとえにTyler青年が抱えていた大きすぎるフットボールの才能と、同じぐらいの精神的な不安定さに起因する。

彼の将来がどれだけ嘱望されていたかは、高校卒業時には四つ星のルイジアナ州No.1リクルートであったことからも窺えるというもの。その時のNo.2リクルートが、われらがDeVonta Smithであることを見ても明らか。

そして選手としての能力をそれほど嘱望されていながら、一方で彼になんとかフットボールに集中してほしいと、周囲が祈るような気持ちを持たざるを得なかった不安は、地元LSU進学後、初年度である2017シーズンを学業の関係でAcademicレッドシャツとして過ごすことを余儀なくされたことで的中。続く2018シーズンも規律と体重管理の問題により、チームから出場停止を食らうありさま。
要は体重管理というか規律というか、いわゆる自己管理の懸念。

幼少期にはピザを買い過ぎないようにクレジットカードを追跡されていたという経歴を持つ男の周囲にとって、Coach Oのもとでフットボールに集中している、という状況は非常に望ましかったようで、Coach O本人もそれを望んでいたと。じゃあクレジットカード渡すなよというツッコミは心に仕舞ってください。

ようやく2019になり、一時は390lbsぐらいまで膨れ上がった体重もなんとか適正の350lbs近辺にコントロールでき、全米チャンピオンのディフェンス陣を支える存在として本来の実力を発揮。このままもう1年スターターとして体重を管理できることをNFL各チームに証明し、フィールドで実績を積めば全体50位以内、あるいは1巡での指名も十分あり得るという、そんな輝きを放った矢先のオプトアウト。

文字通り親身に支えてくれる家族の近くで、理解あるコーチがいるという望ましい環境でフットボールに集中してほしかった周囲の心中は察して余りある。

その絶望はSilasさんに特に色濃かったよう。Michigan Stateを卒業した最初のアフリカ系アメリカ人の一人であり、長年看護師を務め、ビジネスオーナーでもあったSilasさんは、要は金に困っているわけでもなく、つまりTyler青年がNFLで成功して大金を得ることを期待していたわけでもなく、ただただ彼のことを第一に考えていたと。
そしてそのSilasさんはオプトアウトを決めてから数か月、Tyler青年とは絶縁状態になったそうな。 

 

しかし、Tyler青年にとってこのオプトアウトは別の意味があったそう。

つまり、周囲に支えてもらうばかりだった自分からの脱却。
そしてまた、Covidのことも。350を超える巨漢である彼の場合、感染時のリスクは凡人のそれとは桁が異なる。愛する家族を、そのリスクから遠ざける、そういう内なる思いを抱いた男の決断。

「Chaseとお前とでは立場が全然違うだろ」という周囲の嘲笑も彼は理解していたと。自分のことを世間に対して証明しなければいけないという並々ならぬ覚悟を抱いての行動であった。

 

人知れず親元を離れてダラスに移りドラフトへの準備を始めた彼は、ひたすらトレーニングに打ち込み、栄養のことも勉強し、そして自分で料理もし、とにかく自分を律する日々だったとか。

こういう「体重管理が課題」であるという選手が通常多くの周囲からの助けを必要とすることに比べて、Tyler青年は「とにかく俺が一人でできるところを見てくれ。やり遂げて見せる。信じてくれ。」というスタンスだったそう。

そしてそんな日々を過ごし、2021年3月31日。Tylerの大本番。LSUのPro Day。
Tylerは見事に適正とされた350lbsで計量をパス。垂直跳びでも28.5”というなかなかの結果を残す。

そのフィールドには、Tylerのパフォーマンスを眩しそうに見つめ、傍らに立たせた5つ星リクルートで天才新入生であるDT Maason Smithに、Tylerの印象的なパフォーマンスのたびに話しかける恩師Coach Oの姿もあった。

 

Tylerはその後4巡122位でCINへ。

このサイズにしてプールにバックフリップで飛び込んだり、高校時代はキッカーまで務めたスーパーアスリートであるTyler Shelvin。

傍から見ると、「プロデーに適正体重で現れた」ということは何のニュースでもないかもしれない。しかし彼と彼の周囲からするとこの日こそが紆余曲折に満ちたTyler青年の成長の物語に一つのピリオドを打つものであったのでしょう。

 

フィルムが証明するように、プロでも2ギャップを喰うことは彼にとって容易なはず。
奇しくもChaseとまた同じチームになることがどう転ぶのか。興味は尽きない。

 

プロ入りしてちやほやされ、DTの層が薄かったドラフトでの4巡として名を聞かぬまま終わるのか。はたまたすべての懸念や評価を覆してVince Wilforkになるのか。
願わくば、後者へと至る長く険しい道の一歩目を踏み出したところを目撃したのだと思いたい選手ではあります。

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