褒めるにしても貶すにしても、それぞれの選手がどういう背景を背負っているかを知っていた方がいいのではないかという信条のもとお送りするドラフティ紹介第2弾。
今回は賛否が分かれそうで、実際にフロントオフィス内で賛否が分かれたのが全米に晒されちゃった男。この選手の背景はあまり出てきませんでした。
3-73 DT Milton Williams(Louisiana Tech)6-3 284lbs
【生い立ちからLouisiana Techまで】
Texas出身でどうやらSEAファンとして育った男。
高校時代はDEとしてキャリアを積み、バスケットボールでも活躍。
最終的には2-starリクルートとして2017の127位のDEという評価で、Texas A&MやTexas Techなどからも関心を寄せられたようだがオファーはなし。オファーがあったLouisiana Tech、New Mexico、Stephen F. Austin、TulsaからLouisiana Techへの進学を選択。
Louisiana Techではレッドシャツのあと2年間DEとしてプレーし、2019には先発として5.5サック(13試合)でチームのサックリーダーとなりオールカンファレンスUSAにも選出。
しかし、2020に新DCの就任とスキームの変更に伴い、3-4ベースのDLのBギャップにコンバート。
このコンバートが功を奏し、10TFL4.5サック(10試合)でいずれもチームリーダーとなり、オールカンファレンスUSA 1stチームに選出される。
プロデイに際し、本人は目標として「Aaron Donaldの数字を超える」ことを目標としていたそう。その結果、プロデイではスピード面を中心にAaron Donaldを超える化け物級の数字を残し、ドラフトストックを爆上げ。
【人柄】
努力の人。勤勉。
今年なんとも聞きなれた謳い文句。
チームのサックリーダーかつオールカンファレンスUSAに選ばれた翌シーズンに(少し説得しただけで)コンバートを受け入れたのだからそれだけでも評価としては十分。
チームメイトからもキャプテンに選ばれたが、本人に言わせると「あまりしゃべるのは得意でない」とのこと。行動で引っ張っていくタイプだとか。そんな顔してらっしゃる。
フィールド外でのトラブルは面白くないぐらいなさそう。
【選手としての評価】
<長所>
・デカさ、まだまだ鍛える余地があるフレーム
・非常に高い運動能力
・クイックネス
・爆発的な下半身と横への動きのスムーズさ
・ギャップに入り込むボディコントロールの上手さ
・真面目さとか勤勉さ
・オフフィールドの問題のなさ
<弱点>
・腕の短さ
・体重軽い
・ランブロックに対してパッドレベルがやや高くてやられがちで膝が怖い
・カレッジ時代でパスディフレクションは1回だけ。パスルートを見つけるのがちょっと苦手
・パスラッシュもあまり一貫性がない(ハマらなければ消える)
以上が、ドラフト前の評価。
【惚れた理由と懸念と期待値】
プロデイの圧倒的な数字を見てめちゃくちゃ欲しくなった選手。
本人も言っていたが、比較対象はAaron Donald。
ドラフト直前に見たのが以下。2008以降のドラフトにおけるDTのプロスペクトを40ydsのタイム順に並べたもの。この表の最上段がMilton。その下がAaron Donald。
Milton Williams is the fastest defensive tackle ever in my database.
— Marcus Mosher (@Marcus_Mosher) 2021年4月12日
I just wish he had more production.
Only 10 TFLs at LA Tech is concerning. pic.twitter.com/AH2X1KsPot
Miltonは40yds・Short Shuttle・3-Cone・Vertical Jump・Board JumpでDonaldに勝利。10ydsスプリットはDonald。プロデイとコンバインの違いはあるけどなかなかすごい。
ただし、Donaldの傑出具合は一番右の2列に表れている。1試合平均TFL2.19回ってどんな化け物。
もちろん、フィールドでの成績までDonaldに似ていれば1巡上位のはず。
DTにコンバートされて1年。真面目な性格もありどんな技術も吸収してくれそうだしそれをできる土台としての身体能力は非常に高い。そして昨年はコロナもありほぼ練習もできないまま臨んだシーズンでそれなりの結果を残しているのでここからの成長には大いに期待できる、という理屈。
懸念される腕の短さについて。Miltonは身長6-3のアームレングスは31.5”。前述のAaron Donaldでいうと、身長自体は6-1とMiltonより低いが、腕は33"弱なのでMiltonより長い。
マッチアップするOGの平均的なサイズをどこと取るかによるが、最上級の仮想敵としてDALのオールプロGであるZack Martinを例とすると、彼のアームレングスが大体33”なのでその差は1.5"弱で大体4cm弱。これをどう思うか。
パスプロテクションとパスラッシュという場面を想像していただきたいが、先にアタックできるリーチの長さがない以上、Miltonの284という重量を考えた場合、300を超えるC・Gと組み合うとその時点で終わり。これは285のDonaldも同様。
だからリアクションスピードと1歩目で、組み合う前に何とかするしかない。
ここでDonaldがすごいのは、極端に小さいことを最大限に利用してむしろ長所としているところ。Donaldのハイライトでよく見かけるのは低いところからGの腕をかいくぐって下から当たって押し込むようなプレー。あれができると幅が広がる。Gとしても対処が面倒になる。Miltonは中途半端に身長があるのでそういう引き出しを持てるかが課題になりそう。とはいえ、まずはC・Gに「超速い」という印象を植え付けられるかどうかが最優先事項。
真面目な性格ゆえOTA時点で既に体重は290超までバルクアップされているようだが、ここからパスラッシュのテクニックをどこまで伸ばすことができるのか、新DLコーチのお手並み拝見といきたいところ。
使われ方としては、まずはローテーション要員。できれば2020の負担があまりに大きかったCox先生の負担を減らす方向に働いてくれれば一番良いが、現状パスシチュエーションでCoxを下げるという選択肢は採りえないと思うと、お休みシリーズを設けるのか。どちらにしてもランディフェンスで使える目途が立たないと中途半端になりそうなので増量という方向性には異議なし。
ちなみに、フロントオフィスが分裂した要因であるDETに行ったAlim McNeilについては、いずれ調べるであろうTuipulotuの時に覚えていたら述べたいと思う。
「サイズと運動能力」というドラフトにありがちな思考でいくと上記のようになる。そしてその延長線上で、PHIファンの皆さんにおかれては、頭の片隅に置いていただきたい比較対象が、Milton を調べていて浮かび上がってきたXavier Cooperという選手。
2015の3巡96位でCLEに指名された6-4、300の選手で、身体能力や腕が短いという身体的特徴がMiltonに酷似。
そしてこの選手は結局2シーズンで追い出され、その後1シーズン、通算3シーズンでプロの世界から姿を消している。Milton も今見えている「カタログの割にプレースピードが取り立てて速くない」という点を早めに直せなければ最悪の場合はこれ。
Cooperのことはカタログでしか知らないが、Miltonの天井はDonald並みに高いと信じているので大いに期待している次第。