Travis Fulgham。多分トラヴィス・フルガムという発音でいいのでしょう。
Old Dominion(オールドドミニオン)大出身のプロ2年目の25歳。2019年の6巡184位でDETに指名されるも、その年の9月にカット、その後PS入りして12月にデビュー。ただし、3回ターゲットになっただけでスタッツなし。その後、2020年8月にDETをカットされ、GBに拾われるも即カット、そしてPHIに拾われる。一度PHIにもカットされるが、PS入りしてから昇格、そして運命のweek4 Sunday Night SF戦へ。その後の活躍は皆さまご存じの通り。
【経歴】
両親の勤務の関係で海外生活が長く、ヨルダン、エジプト、南ア、インドに在住経験あり。これは完全に余談ながらエジプト時代はピラミッドのすぐそばに住んでいたそうな。はいどうでもいい。クリケット、水泳、野球など「その土地土地でアメリカンフットボール以外のすべてのスポーツ」を経験し、特にバスケットボールに秀でていたため、高校のJuniorの年にバスケをしようとアメリカに戻ってくるも、高校のコーチの勧めで「全くやったことがない」アメリカンフットボール部に入部。未経験者ながらその年に州代表に輝く。このあたりがNFL選手の経歴の理解できないところ。ちなみに高校のフットボール部は弱小校だったようで、「まるでアンディリードの子供のころのようだった」とのコーチの回想。問題の映像はこちら。
Chiefs head coach Andy Reid was a MASSIVE youth football player! 🤣
— MaxPreps (@MaxPreps) 2018年8月9日
He was only 13-years-old in this clip. 😲
(Courtesy of @NFLonCBS) pic.twitter.com/037SYOfrzW
【大学時代】
2年しかフットボール経験がなかったせいか、どの大学からもスカラーシップのオファーがなく、地元バージニア州のオールドドミニオン大にウォークオン(=スカラーシップなし)で入部。高校時代のコーチが「1か月以内に辞めるか、1か月以内にスカラーシップをもらうかどちらか」だと思ったとおり、すぐにスカラーシップを獲得。1年生はRedshirt(=試合出場資格のない練習生)として過ごす。
ところでオールドドミニオンといえばもちろんRick Lovato(PHIのプロボウルLS)のことが皆さま真っ先に浮かぶと思いますが、フットボールプログラムとしては、現在130あるFBS所属チームのなかで20チームしかない「一度も全米ランキング入りしたことがない」チームの一つ。要は弱小校。歴代でNFLのドラフトにかかったのも同期のOLB Oshane Ximines(2019年ドラフト3巡95位でNYG入り)とFulghamのみ。(Lovatoはポジション柄当然ドラ外)
そんな大学にいながらFulghamが注目を集めるのは、シニアイヤーの2018年の当時全米ランキング13位のバージニア工科大との一戦。誰もが認めるアンダードッグでありながら、Fulghamは9回188yds1TDの成績で、見事49-35の番狂わせの一翼を担う。
結局シニアイヤーでは12試合63キャッチ1,083yds(avg 17.2yds)9TDという立派な数字を残してカンファレンスUSAの2ndチームに選ばれ、シニアボウルに招待される。シニアボウルとはシーズン終了後にシニア(もしくは卒業学位保有者)だけが出場できる試合で、主にその年のNFLドラフト入りを目されている選手たちの見本市であり、ODUのような弱小校出身の選手としては強豪校の選手と渡り合うことでプロスカウトにアピールする絶好の機会。シニアボウルでは1回7ydsのスタッツ。まあ練習でアピールできたのでしょう。
その後スカウティングコンバイン(NFL主催のドラフト候補生による大体力測定会)にも招待され、見事弱小校からドラフトにひっかかる。
【プレースタイル】
大学時代のコーチによると「でかくて的が広いうえにルートランも正確でQBにとってストレスが少ない」との評価。
実際コンバインの身体測定によると、
身長:6-foot-2(188cm)
体重:215 pounds(98kg)
でわりと大柄。それに加えてWRの上位8%に入った33 3/4-inch(84cm)という腕の長さの持ち主。的としては非常に大きそう。40ydsのスピードは4.58と取り立てて速いわけではないが、立ち幅跳びが10-foot-6(320cm)となかなかに優秀。ドラフト時の評価は「フィジカルツールとして優れた特徴はないものの、密集地域での爆発力はあるのでNo.3(WRはフィールドの外側から順番にNo.1・2と数えますので能力の話ではありません)レシーバーに適任」というもの。
そのフィジカルツールもAlshon Jeffery・JJAWと酷似しているのでこのタイプを探していたんでしょう。
実際Pedersonも「ドラフトの時から気に入っていた」とのコメント残しておりますし。
キャンプの時点ではDeontay Burnett(現在PS)の評判のほうがよかった記憶があるし、Fulghamと同期のドラ2で、同タイプのJJAWも投資額の関係でロスターに入れざるを得ないという事情から、Fulghamが残るとは全く想定できなかったことは白状しておきます。
プレータイプとしては、特にセパレートのスタッツがよいわけでもなく、めちゃくちゃ捕球力が高いようには見えません。しかし方向転換は割とスムーズなことに加えて、DBとボールとの間に身体を入れるのはうまい印象があります。
Ladies and gentlemen, his name is Travis Fulgham.#PHIvsSF | #FlyEaglesFly
— Philadelphia Eagles (@Eagles) 2020年10月5日
📺: NBC pic.twitter.com/CmuohIejHF
キャッチングもうまくはないけど妙に集中力があるというか。色んなスポーツを嗜んできた経験からか、身体を扱うのが上手いというか。身体能力とかスタッツからは見えにくいところに能力があるのでしょう。そういう選手が一番信頼できる。
Thursday Nightを終えて357ydsレシーブでリーグ28位(1試合多いけど)。
デビュー3試合であっさりと同期ドラ2の通算成績を抜いてしまうなどこの先が非常に楽しみな25歳。加えてフットボール経験の短さからまだまだ伸びシロがありそう。高校時代のコーチが「スポンジのように吸収していった」という向上心、「生い立ちからか置かれた環境に適応することに長けている」という母の証言から読み取れる性格の良さを存分に発揮して、是非フィラデルフィアにも適応していただきたいところ。
AJが長いIRから復帰しても「人が増えてきたからお役御免とは言えない」とPedersonのコメント。当たり前やろ!ずっとFulghamでいけ!
Wentzの信頼もすでに勝ち取ったようで、ますますこの先が期待できる選手。末長い活躍を期待しています。
GO!BIRDS!!