鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2020シーズン査定(OL編)

J.J. Wattのニュースが流れてくるたびに、一回JJAWと空見してしまうのが全PHIファンの宿痾。今回のニュースは特に“Release”というワードがつくのでこちらの期待値的にも腰が浮く回数が多い。Justin James Wattと本名で呼んであげてほしい。
そしてキャップ的にもPHIはこのニュースと一切関係ないが、私の予想はGBへの里帰り。リング獲れそうなQBがいて幼少の頃から応援していたチームならそこにいきたいと思うのが自然だという理由。GNはバクティアリの契約再構築でキャップスペース作ったみたいですね。本当にあるのかな。

では2020PHIの低迷の大部分を担うといわれるOLの振り返り。

 

【2020開幕前】
Stay:Andre Dillard(19/1:IR)・Isaac Seumalo(16/3)・Jason Kelce(11/6)・Brandon Brooks(16/UFA/HOU:IR)・Lane Johnson(13/1)・Jason Peters(09/T/BUF)・Matt Pryor(18/6)・Nate Herbig(19/UDFA)・Jordan Mailata(18/7)・Sua Opeta(19/UDFA)
OUT:Halapoulivaati Vaitai(⇒DET)
IN:Jack Driscoll(20/4)・Prince Tega Wanogho(20/6)・Luke Juriga(20/UDFA)・Brett Toth(20/ARI/PS)・Ross Pierschbacher(20/WAS/PS)・Jamon Brown(20/Street FA)

これで勘弁してください。
ドラフトでいうと、毎年毎年引退がちらついているKelceの後釜がそろそろ必要な感があったのでInterior、特にCが欲しかったのだが、指名されたのはAuburnコンビ、4巡のDriscollと6巡のWanogho。それぞれAuburnではRTとLTだったようなので当初の目論見とは違った。DriscollはPHIが好きなバーサティリティを備えているという噂だったのでこいつにCとかGとかやらせるのか、と思っていたがそのままRTとしてシーズンイン。
Cの後釜にはUDFAのJurigaを据えた。彼はWestern Michigan出身のドラ外。カレッジのフィルムでは機動力が売りなのがよくわかるKelceタイプだったので彼でいくというのは納得できた。

まあなんにせよ開幕前からいろいろあったユニット。Brooksのアキレス腱断裂とかDillardの二頭筋断裂とかPetersの復帰とコンバートをめぐるゴタゴタとかLaneの足首の手術とか。
詳しくは確か一度書いたことがあるのでそちらに譲りたい。
とにかく開幕前から不安しかなかったユニット。結果して、想定していた先発を3枚欠いた状態で開幕。

【2020成績】
Jason Kelce
16試合(先発16試合) 1,125スナップ(99.6%)/7.4M
Nate Herbig
15試合(先発12試合) 893スナップ(79.0%)/0.7M
Matt Pryor
15試合(先発10試合)775スナップ(68.6%)/0.8M
Jordan Mailata
15試合(先発10試合)733スナップ(64.9%)/1Tackle(1ソロ)1FF/0.7M
Isaac Seumalo
9試合(先発9試合)588スナップ(52.0%)/2.3M
Jason Peters
8試合(先発8試合)508スナップ(45.0%)/4.5M
Lane Johnson
7試合(先発7試合)404スナップ(35.8%)/10.3M
Jack Driscoll
11試合(先発4試合)300スナップ(26.6%)/0.7M
Sua Opeta
8試合(先発2試合)170スナップ(15.0%)/0.5M
Brett Toth
6試合(先発1試合)97スナップ(8.6%)/0.5M
Jamon Brown
2試合(先発1試合)72スナップ(6.4%)/0.4M
Luke Juriga
13試合(先発0試合)14スナップ(1.2%)/0.5M
Ross Pierschbacher
1試合(先発0試合)1スナップ(0.1%)/0.1M

圧巻の総勢13名。50スナップ以上でも11名。
上記試合数はSTのスナップカウントでも加算さえるようなのでJurigaとかの数字が膨らんでおりますが、お察しください。全員追いかけるのは無理でした。

細かい数字は途中からカウントをやめたので記憶していないが、先発OLの組み合わせは14か15通りにおよび、これまでの12通りとかの記録を更新して歴史的なNFL記録。
それでもスタッツ的にはNFLで19位だとか。意外と悪くない。サラリーが1M超えるのが6名いたうち、最後まで働いたのが1名、DillardとBrooksの合計で10Mが無駄になっていると思うと悪くない。
明確に「こいつ下げてほしいな」と試合中に感じたのは、Pryor・Peters・今は亡きJamon Brownぐらい。ほとんどが若手であったが、試合を積むにつれて成長していっている様がよく見えて、巷で「OLが悪い」と言われるほどに不快ではなかった。
実はweek1から一番ひどかったのはLTに入っていたPeters。あいつがケガで抜けてやむを得ずMailataを入れてから非常に安定した印象。キャンプではMailataと競っていたPryorは、終盤にRTに入っても本当に何もできていなかったので、彼とは明確に差がついた形。
大量のサックもQB・WR・HCの責によるものが多かった。OLを責めるんじゃない。
しかし一つOLが悪かったのは、CG間の受け渡しというかアジャスト。特にSeumaloがいなかった時期は本当にひどかった。これも終盤になるにつれてHerbigとKelceのコミュニケーションも確立されていったように思うので最終的にはあまりストレスにならなかった。

そして上記スタッツで異常な数値が入っている奴がいますが、やはりMailataの1タックル1FFはお見事。最高だったので貼っておきます。タックル後の振る舞いも含めて完璧。

 

彼の経歴についても過去に書いていますのでそちら(上に貼ったリンクと同じ)をご覧いただければ幸甚。

 

【2021への願望とか】
これだけのメンツをやりくりして、それでもなんとか形にしたのは完全にOLC Jeff Stoutlandの功績だと思っているので彼が一瞬BAMAに戻ると見せかけて残留したのは最大の朗報。
そんなOLユニットですが、2021を迎えるにあたって懸念は3つ。

1.LT問題
 個人的にはMailataが成長したことで、ここにはもはや決着がついているものだと思っているが、一方で19年1巡の投資をしたDillardがいるのも事実。彼は“ノーパワー”というドラフト時の評価が的中して19年シーズンにおいてもシーズン換算22サックという驚異的な被サック率を残していた逸材。
20年キャンプイン時にはそれなりに身体も大きくなっていたようだが、やはり不安は残る。
 シーズン中に「もうMailataが来年以降もLTのファイナルアンサーでいいよね?」と聞かれたPedersonは「そう評価するにはDillardを見ていなすぎるからなんとも言えない」との回答を残していた。
まあ投資との関係でそう言いたいのもわかるのでもう一回キャンプで競わせてもいいけどもう決めちゃえば?ちなみにMailataはまだ23歳でDillardは25歳。
というわけでDillardは売りに出したいところ。できれば21ドラフトの指名権に変えたいけど、まあキャンプで他チームに不測の事態が起こったときに売ってもいい。というか統計的にはその“不測の事態”が起こる確率が圧倒的に高いのはPHIなわけですが。じゃあステイでもいいか。「弾にはなりえる」という程度の認識でいます。

2.Kelce
 毎年恒例ではあるが、やはり引退するか現役続行するかで悩んでいる様子。
現在33歳。Stoutland体制という意味では変更がないが、Pedersonもいなくなるしこの環境をどう思うか。同世代のCとしてAFCで名を馳せていたPouncey Twinsがそろって引退したことは彼の心にどんな影響を与えているのか。ちなみにPouncey TwinsはKelceより2つほど若い。
 個人的には2020シーズン中に100試合連続先発という節目も突破したこのおじさんには一日でも長く現役を続けて、チームのcultureを支えていって欲しい気持ちが強い。
能力的にはDLとのマッチアップという点で衰えも見えているものの、その分ますます鋭くなっている戦術理解によって、SandersのロングゲインのほとんどのキーブロックをLBないしSFに決めていたのが非常に印象的。このいぶし銀の活躍は未だに捨てがたい。
なんとか現役続行を決めて、オフシーズンにはしっかりスナップの練習してください。お願いします!

3.JP
 Jason Peters。今オフにおけるPHI OL陣唯一のUFA。なので再契約の動きさえなければ自動的に放出。そして本人は、どういう世界線に生きているのかわからないが、「まだできる」と宣っているとのこと。
 将来的には殿堂入りもできる可能性あるんでしょうし、これまでに積み重ねた経歴には敬意を表するが、いかんせんこの2年間の印象が悪すぎる。

 そして、完璧に見えるStoutland唯一の欠点が、このJPの扱い。
LTでいい成長曲線を描いていたMailataを、Petersが復帰する際に追い出してみたり、その後LTをMailataに追い出されたJPを、たった1週の準備でLT⇒RGというトリッキーコンバートで試合に出して失神パフォーマンスを披露していたこともあったが、とにかくJPへの評価が過大で甘い。

 これには理由がある。
 2013にPHIのOLCになるまで一貫してカレッジの世界にいた彼。実はその時から学生に“理想のLT”としてPetersのフィルムを教材にして指導していたそう。
そのためPHIに来た時もJPを指導できることに興奮していたし、愛犬が亡くなって沈んでいた時には、JPの声掛けでOL陣から新たな犬を贈られるなど、JPともいい関係を築いている様子。
 だけどもうそろそろ限界なことには気づいてほしいところ。これ以上贔屓が過ぎると貴様も同罪ということになる。
 希望は、“JPと絶対に契約しないこと”
 こんなことをいう日が来るとは思わなかったが、JPがいるとStoutlandは使ってしまう。だけどチーム的にはプラスにならない。だから絶対に契約しないでください。

 

というわけで、2021年の理想の布陣は以下の通り。

LT:Mailata(24)・Dillard(26)
LG:Seumalo(28)・Herbig(23)
C:Kelce(34)・Juriga(24)
RG:Brooks(32)・Opeta(25)
RT:Johnson(31)・Driscoll(24)
(カッコ内は来シーズンの年齢)
なまじ2枚目の選手が経験を積んでしまっているのでドラフトでは少し動きづらいところもあると思うが、希望としては下位でInteriorのデプス要員がほしい。上記メンツのなかでは一番弱いし取り替えたいのがSeumaloのところなのでここの入れ替え、もしくはアキレス腱断裂が癖になっているBrooksの控えという意味でも。
間違ってもFAは要りません。

2020シーズン査定(TE編)

Sirianniとつながりが強いLVのWR Tyrell Williamsがクビになるとか。PHIメディアはSirianniの指導でSD時代にキャリアハイを迎えたこの選手にPHIが興味持つのではないかと報道というか推測をしているようだが、個人的にはいかないでほしい。11Mは高いし今年ケガで働けてないし。ならばDeSeanでいいよ。

さて、HCが変わり、Offenseの流派が微妙に変わっても相変わらず重視されそうなこのポジション。スーパーTEというのはグロンク以来10年ぐらいトレンドになりそうでなってるようでなってないんじゃないかという微妙な存在。現役ではグロンク以下、Kelce・Kittle・Wallerぐらいしか思いつかない。
扱いが難しいのか、そもそもそんな身体能力を備えていながらOffenseの理解力が高くてキャッチもできるなんていうスーパーマンが少ないのか。たぶん後者なのではないかと踏んでいるところ。
ではPHIにおける当該ポジションの振り返り。

 

【2020開幕前】
Stay:Zach Ertz(13/2)・Dallas Goedert(18/2)・Richard Rodgers(20/Street FA)・Joshua Perkins(18/Street FA)
In:Caleb Wilson(20/Waiver/WAS)・Jason Croom(20/Street FA)・Noah Togiai(20/UDFA⇒のちに放流・INDへ)・Hakeem Butler(20/PS/ARI)
OUT:なし

上記で言うと、Richard RodgersはStreetから拾ったし、19シーズン後にPHIからUFAになって一瞬WASにも所属しているので正しくは20の新加入だがまあStayという位置付けでいいでしょう。だからOUTはなしという嘘みたいな整理になっておりますが、2019が盤石だったとかそういうことではありません。
9月に一瞬所属していたJordan Franksという選手もいたようですが、まあ無視。

ロスター構成としては、上位2枚にしっかり投資して、それ以外はパッチワークでやっていくという姿勢が明確。これはずっとそうだしまあ妥当なものだと思います。
そういう意味でもブロッキング能力が高いと思っていたUDFAのTogiaiには期待していたのだが無念のファイナルカットでの脱落。たぶんPSに入れたかったんではないかと想定しているが、同じくTEには目がないINDに攫われて終了。というかこの時点でロスターにTEが2枚(PerkinsはIR)しかいなかったんだからそりゃその狙いはバレる。彼を守るためにもJefferyで浪費した1枠は貴重だったんですよ。
そしてErtz。前になんか書いた気はするが、開幕直前になって、KittleとKelceで高騰したTE相場に現行契約が釣り合ってないという理由で契約に関してゴネだした。「今年が最後かもね」的なことをちらつかせてシーズンイン。

 

【2020成績】
Dallas Goedert
11試合(先発9試合) 65ターゲット 46捕球 524yds(avg. 11.4yds) 3TD
Zach Ertz
11試合(先発11試合) 72ターゲット 36捕球 335yds(avg. 9.3yds) 1TD
Richard Rodgers
14試合(先発4試合) 31ターゲット 24捕球 345yds(avg. 14.4yds) 2TD
Jason Croom
4試合(先発0試合) 1ターゲット 1捕球 3yds(avg. 3yds) 1TD
Hakeem Butler
1試合(先発0試合) 1ターゲット 0捕球 0yds(avg. 0yds) 0TD

ゴネた割にErtzは初戦から散々だった。4thDownでのクラッチドロップに加えてWentzからもターンボールの数々。ゴール前でのTDキャッチはあったものの、ゴネた割に…という内容。その後もそもそも彼に対して不満に思っていた「セパレートできない」という点が如実に出たシーズン。実績的にも当然エースとしての期待をかけていたが、球際の勝負強さも鳴りを潜め、仕上がりはなんとRodgersにも獲得ヤードで及ばないありさま。そしてその効率は驚愕の捕球率50%。酷かったWeek1以降、彼は反省して契約に関することは口にしていない様子。

だけども彼だけが悪いというつもりはさらさらない。
Pedersonという男は、もとより2TEの隊形を非常に好むところがあり、今シーズンで言うとその比率は38%とか確かそんなもの。そうまでしてTEを置いておきながら、使い方はあまり上手くない。
例えばKCみたいにKelceをアイソレートさせてそこのミスマッチを徹底して衝く、とかそういうことは別にしない。アテにしているのは密集での競り合いとか空いているZoneを的確に衝くとか、そういう能力。いわゆる一般的なTE。
Ertz自体もKelceとかKittleほど身体能力に優れているわけではないので、キャッチのアベレージが10yds近辺になるのは平常運転。だとしてもこれまで70%ぐらいはあった捕球率(この言い方は少し雑なような気もしますが、要は捕球数÷ターゲット数)が50%というのは異常事態としか言いようがない。
気になったのは、特に2017なんかでは非常に有効だったTEスクリーンが、2020については全く機能しなかったこと。そりゃ対戦相手もディープの脅威が薄いTEのスクリメージライン近辺のプレーなんか見やすいに違いない。そしてそれが来る可能性が高いとなればなおさら。この点もやはりPedersonの限界だったのではないでしょうか。
主にEtrzが浅いゾーン、Goedertがより深めのゾーン、という使い分けだったかと思うが、QBのリズムを作るという上でより重要になるアンダーニースのErtzの不振はWentzにも若干の影響を与えたのではないかと思う次第。
そして例年野戦病院化するPHIにあって、意外とTEだけはその難を逃れていた印象はあるが、今年はその大波をこのポジションがモロに被る形に。Ertz・Goedertの両方がいない期間もあったが、そこで輝いたRichard Rodgers。
彼が輝いた理由が全く分からない。なぜかオープンになっていたというシーンが非常に目についた。一時、NFLのレシーバー陣におけるセパレートキングの座に就きそうな勢いであった。そして平均14ydsというなかなかの大砲ぶり。しかしどちらかと言うとパスターゲットとしてのタイプはGoedertと被るのでそこがちょっと面白くないところ。

 

【2021への願望とか】
まずはコーチ人事から。このパッチワーク軍団を6年間にわたってまとめていたTECのJustin Peelleがいなくなるのが実は最大の不安要素。SirianniがTEにも強いこだわりがある様子なので新TECのJason Michaelにも期待は持てそうなものだが、蓋を開けてみないとなんとも。
個人的には選手補強よりコーチ補強のほうがチームを長く強く保つためには重要だと思っているところもあるので、彼への期待は大きい。

では選手の契約関係。上位3人の状況は以下の通り。
Ertz:2021年まで(2021:12.5M/7.8Mデッド)+ダミーサラリーが2022年に3.5M・23年に1.8M発生
Goedert:2021年まで(2021:1.8M/0.5Mデッド)
Rodgers:単年契約のためUFA

Ertzは2020の成績をもってゴネるなんてことはないし、このまま契約満了までキープできるかとは思うが、このオフのキャップ状況を考えると、7.8Mのデッドマネーでも飲んでトレードせざるを得ないのではないか。30歳で迎えたシーズンに下降傾向を見せてしまった男のトレード価値はいかに。本来的には11月のトレード期限までに放出してしまいたかったというかオファーはあったようだが、そのタイミングでIR入りしていたため残念ながらトレードは実現せず。5巡ぐらいが妥当なんでしょうかね。そう思っておきます。4巡が取れれば御の字なのでしょう。

Goedertの3年目が完全に期待通りだったかといわれると非常に微妙なところではある。こんなにケガするとは思っていなかったし、ちょいちょい重要な場面で落球しはる。だけれどもブロック能力とかスピードとか、トータルでいうともはやErtzよりはいいのではないか。そうなると、2ndTEとしては高すぎるErtzにはサヨナラと言わざるを得ない。Goedertの契約終了年が2021に迫る今、最終判断として2021はいよいよ独り立ちさせる必要があるのではないか。
いや、けどちょっと物足りないけども。TEの二人目どうしようか…という問題が出てくる。

そしてこのErtz離脱前提の文脈で出てくるのが、全体6位でKyle Pitts(フロリダ大)という選択。
Pittsについて。と言っておきながら、この問題は実はPittsがどうかということではなく、単にTEというポジションを全体6位で指名することについて自分を納得させたいだけのことです。
非常にいい選手であることは衆目の一致するところだが、投資価値に見合うかどうか。スカスカのロスターを再構築せねばならない立場にあるPHIが6位で指名する価値があるかという問題。

サイズは6-6(198cm程度)で、40ydsは4.4台という噂。このプロフィールでいうと、近いのはLVのDarren Waller(LV)である。
彼のようにミスマッチを起こせて、スーパーワイドアウトみたいな使い方ができるTEであれば、WRが巨大なニーズとなっているPHIが指名すると、TEとWRの両方の穴を埋めることができちゃうということになりこの指名も悪くないような気がする。

一方で、懸念はやはりそのサイズ。このサイズのスキルポジションはNFLでも規格外であるがゆえに、当たりはずれもばらつく。
似たようなサイズでいうと、当たりが、先ごろ殿堂入りしたCalvin Johnson、Darren Wallerなど。外れの筆頭はあの忌まわしきDorial Green-Beckham、Ladarius Green、微妙なのがKelvin Benjaminとか。
前述のWallerにしても、実は最初にWRとして指名されたBALでは薬物問題等もあってあまり働けず。2018にBALのPSから拾われた先のOAKでTEにコンバートされてから活躍が始まる。ブレークアウトは2019。彼の場合はそもそもが6巡指名のためあまり比較対象にはならないが、Grudenと出会わなければどうなっていたかはわからない。

そして、もう一つの懸念がSirianni。彼もPedersonに輪をかけて2TE隊形が大好きという噂だが、実はReichにもこのテのタイプのTEをうまく使いこなせるイメージがいまいちわかない。身体能力的にもINDにいた選手ではちょっと違うし、Sirianniが被っているLACのHunter Henryともやや違う。
しかしここについて一つ注釈をつけるなら、今回のコーチ人事。2020にフロリダ大でOCを務めた新QBC Brian Johnsonの存在がある。彼の存在を、Hurtsコネクションということだけでなく、フロリダでPittsを使いこなせたようなOffenseの新風を取り入れるためだと説明するのであれば納得感がでてくる。そして安心できる。安心した。

そもそも、「TEが6位は高すぎる」とか、このテのサイズの選手は当たりはずれが大きいとかいう選手個人を見ない一般論的な議論はいかがなものか。良くないと思う。ゴール前のみならずフィールドのどこでもミスマッチを作れるモンスターがいればOffenseのあらゆる問題は解決するのである。QBだって困ったときのターゲットがいれば落ち着くだろうし、WRだってカバーが緩めばルートを走りやすくなる。初年度はまだGoedertがいるから負担も軽かろう。
脳震盪問題は怖いが、こういう素材が落ちてきたら絶対手放してはいけない。彼は絶対当たりなのである。そう思い込むことにしたい。

PHI地元民であり、ブロッキングへの情熱も十分にあり、素行もよく、性格も穏やかで後輩の面倒見もよくてFootball IQも高いという非の打ち所がないPitts君。是非PHIへ凱旋したまえ。


もしPittsがいなくなっていた場合、どうせストリートにいるはずのRodgersを拾ってきてUDFAなりドラフト下位なりで若くて安いのとってきて最後の1枠に追加するだけでよい。

2020シーズン査定(RB編)

SB観戦の大きな目的が、「Devin Whiteの全体5位指名は妥当だったのか」の確認だった。個人的には、プレミアポジションと呼ばれるQB・LT・パスラッシャー(DEでもOLBでも)・CBあたりの、スキームではどうしようもないタレントが要求されるポジション(最近はWRも入りつつある)以外でTop10Pickを使うことにちょっとした抵抗があるというマイナー宗教に帰依しており、現代NFLにおいてILBがゲームに与えうる支配力に比してTop10Pickというのは過剰な投資なのではないかと思っていた。しかし、ポストシーズンを観戦するにしたがい、TBの強力D#におけるWhiteの神出鬼没ぶりに触れるにつれ、己の世界観に対してどうも疑問を抱きつつあったところ、昨夜、帰宅後に問題のSBを観戦し、とうとう宗旨替えに至った。Hill対策にDBを多く割いて深くまで押し下げておき、パスラッシュはほぼ4menを割くことでがっぽりと空いたあのスペースをLavonte Davidと2人でとはいえあれだけ綺麗に消してしまうとは。なんて素敵なんでしょう。Runに対しても反応は素早いし、そもそもKC相手にはRPOはPassからリアクションすればいいんですね。なんていいD#なんだ。ただし、このD#にはやっぱりLavonteの存在が欠かせませんね。願わくばWhiteにはKuechly(2012全体9位)ぐらい1人で試合を支配するぐらいになってほしい。
というわけで、長々と申し上げましたが、結論というか収穫は1つだけ。「全体6位でMicah Parsonsはアリ」。GannonがILBにDarius Leonardを求めるならなおさら。だけど2-37でJabril Coxでももしかしたらいいかもしれない。本当はDALにCaleb Farleyが落ちるのは嫌だしどっちかでCB行きたいけど。だけどFAでRhoseが取れるなら当面のニーズは下がるかな。逸れました。

 

【2020開幕前】
Stay
:Miles Sanders(19/2)・ Boston Scott(18/PS/NO)・Corey Clement(17/UDFA)
OUT:Jordan Howard(⇒MIA⇒11月にwaiver、PHI再加入)・Elijah Holyfield(⇒PS)
Retire:Darren Sproles(14/T/NO)
IN:Jason Huntley(20/Street FA)・Adrian Killins(20/UDFA)

確かこんな感じだったはず。出入りが激しすぎて漏れがあるかもしれませんが総括においてはメンツのチェックが一番難しいのでご寛恕ください。

2019シーズン後半から、当初はエースだったHowardの負傷による出番減少とルーキーSandersの台頭が重なり、Sandersの出来もよかったことから、独り立ちが期待された2020。既に使い減り感が出ていた新人契約切れのHowardをそのまま放流(MIAへ)し、FAでも補強をせず、ドラフトもUDFA以外手当をせずに迎えたキャンプ。チームのSandersにかける期待の大きさを感じていた。
こちらとしても、Sandersの「ペンステートで『1学年上の』Saquonの控えだった」という経歴は、彼の実力がSaquon以下であるということの証明にはならず、いまだに天井は見えていないと思っていた。そして、SandersというかMilesの素晴らしいところは、キャリー以外の小技というか基本的な部分の出来。ここはSaquonもなかなかやるが、パスキャッチも抜群(2019はターゲット時80%程度のキャッチ率。素敵。前回のWRどもの数字を思い出していただきたい。)であったこと、そして、地味ではあるがパスプロテクションは絶品であった。もう絶品としか言いようがない。この点、レジェンドOBであるTiki BarberやHCのJoe Judgeに「パスプロテクションがソフトである」という批判というか指摘を受けているSaquonに対してはもはや圧勝であった。(というかSaquonの弱点はたぶんここだけ)
そしてこの、大エースへの一歩目を順調に踏み出したように見えた若者を大黒柱に据え、周りを“NYGキラー”として名を馳せた器用なBoston Scott、SB52のスーパーレシービングTDが記憶に新しい(というかこれ以外あまり記憶なし)、唯一といっていいパワー系のCorey Clement、その他、で固めた若干控えが心配な陣容でスタート。
そしてキャンプではMilesが負傷し、開幕戦は間に合わずとの報道。

 

【2020成績】
Miles Sanders
12試合(先発11試合) 164回 867yds(avg. 5.3yds)6TD LNG 82yds/52ターゲット28捕球 197yds 0TD/4Fmb 2FL
Boston Scott
16試合(先発4試合)80回 374yds(avg. 4.7yds)1TD LNG 56yds/36ターゲット25捕球 212yds 1TD/2Fmb 0FL
Corey Clement
15試合(先発0試合)21回 75yds(avg. 3.6yds)1TD LNG 7yds/6ターゲット5捕球 25yds 0TD/0Fmb 0FL
Jordan Howard
2試合(先発1試合)7回 27yds(avg. 3.5yds)0TD LNG 11yds/0Fmb 0FL
Jason Huntley
5試合(先発0試合)5回 19yds(avg. 3.8yds)0TD LNG 10yds/2ターゲット1捕球 0yds 0TD/0Fmb 0FL
Adrian Killins
1試合(先発0試合)1回 -12yds(avg. -12.0yds)0TD LNG -12yds/1ターゲット1捕球 2yds 0TD/0Fmb 0FL

いつの間にかSandersは劣化していた。やはりケガが多く4試合の離脱。
2つのファンブルロストはいずれのゴール前のクラッチな場面。そしてドロップ。これもTDパスをフリー落球した場面まであった。ターゲット時の捕球率も79.4%⇒53.8%に急降下。何を思ったか絶品であったパスプロテクションまでが非常にしょっぱい出来に。なんなんだこの2年目は。
ラッシングのアベレージは5.3ydsという立派なものだったが、50ydsを超えるぶち抜きのゲインが非常に多かったのも特徴で、長距離砲としての期待は十分に持てるが、「この3ydsが欲しい」という場面や明確なショートヤードではこんなこと言いたくないが、完全な期待外れ。PHI現地は「もっとMilesに持たせろ」の大合唱であったが、Offenseの軸に据えるにはなにか足りなかったのではないかとPedersonの心中を察してみる。ショートヤードの弱さは確かにちょっと使いづらそうではあった。
なぜか。
彼のランでの獲得ヤードはNFL14位であったが、この近辺のRBと比較したときにMilesのスタッツで突出しているのが、「相手D#がBox内に8men以上で構えている率」というもの(Next Gen Stats参照)。例えば2,000yds以上を獲得したOPOYのTEN Henryでいうと、その率は27.78%になる。ランヘビーなOffenseを展開したCLEのChubb & HuntやBALのGus Edwardsでは30%を超えてくる。そのスタッツが、なんとMilesの場合は“8.54%”にとどまる。つまり、Milesは、WRをワイドに配置することでD#のBOX内の人数を極力減らしてOffenseを展開していくRPOをベースとしたPederson Offenseに非常によく適応したRBであるということ。これはRBにとどまらず、OLについても機動力を重視したロスター構成になっているのだから、例えばショートヤードをゴリゴリ取っていきたい、という場面で結果が残せないのは実は当然の話。Zone blockingでのDTやLBの処理では老いてもなお未だにNFLトップに君臨していると思っているC Kelceも、非常に小柄なこともあり、ショートヤードではDTにしっかり押し込まれている場面も散見された。
ではSirianni体制でどうなるか考えると、参考になるのはやはりINDのスタッツ。NFL3位のラッシングヤードを獲得したJonathan Taylorの同スタッツは29.74%。ちなみにOCとなったShane Steichenの古巣であるLACのEkelerの場合は9.48%であり、こっちの要素が入るとちょっと期待はできる。とはいえLARのランオフェンスは機能していない部類に入るので、期待しているのは非常に効率的だったとされているプレーアクションのほう。こっちの方面でなんとかMilesを機能させる方法を見つけていただきたい。
ここまで並べるともう言わずもがなかもしれませんが、Sirianni Offenseへの適応が非常に懸念される。数少ないOffenseの武器であるためMilesの戦力は最大化させたいが、来年以降はこれまでのスタイルでは難しいことになるか、大幅なスタイル変更が求められそう。しかしこのスタイルに合わせてドラフトされているのだからなかなか厳しいものもあるのではなかろうか。ただし、どんな考察をしてみてもあのクラッチファンブルロストとクラッチ(というかコンスタント)ドロップについては擁護できるものでもないので改善を要求します。とにかくまずはパスキャッチをもう一度立て直すところから始めていただきたい。SirianniはRBへのパスを好むようですので。Milesは地味にキーマンかもしれない。

その他、BostonはやはりNYG戦では燃える様子。week7のホームでのNYG戦では決勝レシーブTDをほとんど視野が取れなかったであろう角度から曲芸のようなキャッチで挙げるなどランも含めて大活躍。やはりショートヤードのキャリーは物足りなかったがMilesの離脱時にはしっかりと穴を埋めていた印象。

HowardとかClementにはMilesに欠けているショートヤードに期待していたところはあったが、まあ期待通りにはいかず。この点がPedersonのOffenseで2020に一番苦労していたところに見えたのでパワー系のRBが欲しかったが、結局機能しなかったのは残念。

 

【2021への願望とか】
RBCは2020まで2年間CINにいたJamal Sigletonに決定。Assistant HCの肩書とともに招聘。1月にケンタッキー大のRBCに就任したばかりの引き抜き。
CINの前にはOAK(現LV)・IND等に所属。INDにいたのは2016-17だったのでSirianniとのラップはなし。ちなみにCINでは「なんでSingletonを放流したのか本当にわからない」と言われるぐらい惜しまれていたようなので期待は大きい。ただし、しつこいようだが前述のスタッツでいうと、CINのJoe Mixon・Giovani BernardはいずれもMilesと似たような数字を残しているので、Sirianniのスタイルへの順応はコーチという点からも不明。まあ有能そうなので期待しておきましょう。

なにやら展望というか願望というか、そういうものはほとんど前段で書いてしまっているようなので、さらっといきます。
現陣容でいうと、BostonがRFA、ClementとHowardがUFAとなる。後ろの二人はリリースでいいとして、Bostonに2巡のテンダーオファーを出して残そうとするかが焦点。
現時点でエースであるMilesがようわからん成績を残してくれたため、ドラフトニーズとしても実は上がっていると言わざるを得ない。今オフのRBの舵取りは本当に微妙。

 

そして、ここまで掘ってみて気づいたけど、Milesの2年目の下降を止められなかったDuceは本当に有能だったのか。好きな男ではあったが、RBCとしては本当に有能だったのかがよくわからなくなった。DETに行ったからにはどんな作品を作り上げるのか注視しておきたい。

2020シーズン査定(WR編)

この振り返りは心に悪い。今回はWR編。明日のSBは何年かぶりに休暇取得が不可となったため観戦できず。その腹いせに今日かけるところまで書いてやりたい。しかしこのユニットが本当にひどかった。
途中に挟んでいますが、このユニットしか用意してもらえなかったWentzには同情してしまう。苛立ちのあまり長編となってしまったので早速本題に。

 

【2020開幕前】
Stay
:DeSean Jackson(T/TB/19)・Alshon Jeffery(UFA/CHI/17)・Greg Ward(17/UDFA)・JJ Arcega-Whiteside(19/2)・Deontay Burnett(19/Street FA)
OUT:Nelson Agholor(⇒LV)・Robert Davis(⇒LV PS)
IN
:Jalen Reagor(20/1)・John Hightower(20/5)・Quez Watkins(20/6)・Travis Fulgham(PS/GB/20)
Opt Out:Marquise Goodwin(T/SF/20)

この区分にするとPSをウロチョロしていたり途中加入の連中(Fulgham・Burnett)がうまく表現できないのでもう少し考えてみます。PSにしかいなかった人は割愛しております。
度重なるケガ人の発生によってNFL最低ユニットとなった2019のPHI。最終のチームスタッツで、レシービングヤードのリーダーはErtz、Goedert、Sandersと続いてWRはJefferyが490ydsでようやく登場。不在にもほどがある。最終戦プレーオフでは「Greg Ward/Deontay Burnett/Robert Davis/JJAW」という全くと言っていいほど実績がないメンツになったこともあって2020に向けてリームの明確な最重要課題はWRユニットの改善、特に「若返り」と「スピードアップ」とされていた。まあ確かにな、と思っていた。そして結果してこの「スピードアップ」の部分はあらゆる手を尽くしても改善されず深い謎を残すこととなった。

2019シーズン序盤から逆クラッチ落球を繰り返したNelson AgholorはLVへ。あんな集中力ないイップス感まであるレシーバーと契約するなんてGrudenとMayockは何を考えているのだろうかと思っていたらLVにてキャリアハイのご活躍。ロッカールームではリーダーの風格まであるそうな。おみそれしました。というかPHIにWRコーチはいないのか?まあいないか。
そしてAgholorと同じく産廃のにおいがしたJJAW。ルーキーだったから大目に見たけど彼は19ドラフトにおいてWRとして6番目に指名された男。彼の後で指名されたWRは、Parris Campbell(IND)・DK Metcalf(SEA)・Diontae Johnson(PIT)・Terry McLaurin(WAS)などなど。現地民がRosemanにキレている象徴的な出来事がこれ。結果論になるためドラフトの当たりはずれのことはあんまり言いたくないけどまあわかる。それでも指名してしまったJJAWについては、初のオフを順調に過ごしているという噂も流れていたため、あと1年ぐらいは期待してもいいかな、と思っていた。

そして迎えたドラフト初日。全体21位で指名したのはTCUのJalen Reagor。層が厚いと言われていた2020ドラフトクラスのWRにおいて、1巡候補ではあったものの、40ydsもReagorより速かったJustin Jeffersonをパスするほどかね?という思いはあった。フィルム的にもピンとくるものはなかったし。とはいえ、本当のことを言うと、当時PHIが欲していたのはNo.1を務められるWRであったが、Jeffersonは若干スロット寄りに見えていたので、まあそういうとこか、と無理矢理納得しようとしていた記憶がある。
そしてその後、ゴミみたいな2日目を過ごして、3日目は5巡161位でBoise Stの俊足WR Hightowerを指名、更に6巡190位をSFのこちらも俊足スプリンター・Marquise Goodwinとトレード、最後に6巡200位でSouthern MISSのQuez Watkinsを指名。明確にスピードの向上を意識しているさまが伺えた。

迎えたキャンプでは、Reagorが小さいケガで離脱するも、Burnett・Hightowerが非常に印象的だという現地報道で一喜一憂などしていた。Goodwinは奥様が妊娠中だったこともあり家庭の都合でOpt Out。
そしてJefferyは2019からのケガでキャンプはパス。Rosemanが2019シーズン開幕直前に行った契約再構築により2020のデッドキャップが26Mに達した関係でクビにはできないけれど、Reserve/PUPに入れると6試合パスすることになってその間空いた1枠で若手も試せるしまあいいかと思っていたらなんと開幕ロスター入り。

 

【2020成績】
Greg Ward
16試合(先発10試合) 79ターゲット 53捕球 419yds 6TD/2rush -4yds 0TD/0.7M
Travis Fulgham
13試合(先発8試合) 67ターゲット 38捕球 539yds 4TD/0.6M
Jalen Reagor
11試合(先発11試合) 54ターゲット 31捕球 396yds 1TD/4rush 26yds 0TD/0.6M
DeSean Jackson
5試合(先発5試合) 26ターゲット 14捕球 236yds 1TD/1rush 12yds 0TD/6.2M
John Hightower
13試合(先発4試合) 29ターゲット 10捕球 167yds 0TD/1rush 1yds 0TD/0.6M
Quez Watkins
6試合(先発0試合) 13ターゲット 7捕球 106yds 1TD/0.6M
Alshon Jeffery
7試合(先発2試合) 13ターゲット 6捕球 115yds 1TD/9.9M
JJ Arcega-Whiteside
7試合(先発2試合) 13ターゲット 6捕球 115yds 1TD/0.7M
Deontay Burnett
2試合(先発0試合) 4ターゲット 3捕球 19yds 0TD/0.1M
(ターゲット数と捕球数の関係については、これだけではよくわからないと思いますので判断材料を提供しておきますと、GBのDavante Adamsの捕球数÷ターゲット数は、115÷149で77%に達します。サンプルが少ないBurnettを除いたPHIの最高はWardで67%です。)

めでたい。補強の甲斐があったというもの。2年ぶりに500ydsレシーバーが誕生しましたね。そこは原資を突っ込んだところではなかったけど。WRがレシービングヤードのチームリーダーになったのは2015のJordan Matthews(997yds)以来というのだから実に5年ぶり。これも主にはTE陣の負傷離脱によるもの。
腹が立つからサラリーを最後に追記してみましたが、こう見ると誰が穀潰しかは一目瞭然。よく見ると1捕球で2M近くを稼いでいる人がいますね。そしてこいつは1枠を潰し続けたまま、結局バイウィーク明けのweek10から試合出場。一体どういうチーム編成なのか。

ドラ1のReagorについて。彼はD#のストレッチと、クラッチなレシーブという全盛期D-Jaxばりの活躍を嘱望されて21位で指名(ちなみにDeSeanは2巡49位なのでほぼJJAWと同じ位置)されたわけだがはっきり言ってからっきし。カタログ上のスピードはあるが、40ydsのタイムで劣るGreg Wardのほうがプレースピードは速い。そしてルートランが全然ダメ。CBのプレッシャーを受けて勝手に広がったり、キーとなるLBの位置を確かめずにカムバックしてくるものだからルートの目指すところがQBと合わなかったりとやりたい放題。挙句、これはドラフトの時から言われていたようだが、手を抜く。すごいサボる。week1のブチ抜き50ydsレシーブはよかったが、その後にも似たようなプレーがあったのを、しっかりサボってボールに追いつけていなかったものも見た。ここらへんは多分に無意識の部分もあるのではないかと思っており、しっかり指導していけば改善の余地はありそうだった。現にあのどうしようもなかったAgholorはそれなりに立ち直ったようですし。しかし、なにやらTwitterでの振る舞いとかにプロ意識のなさとかが取り沙汰されるものもあったとかで現地評価はゴリゴリ下落中。そして一番腹立たしいのが、彼の指名経緯。噂によると、スカウト陣は21位でJeffersonの指名を強く推していたようだが、Rosemanは「直下のMINは絶対Reagorを気に入っているから」というほぼ嫌がらせのような理由でReagorを指名。結局MINの狙いはしっかりJeffersonで、その後の活躍は周知の事実。一体何をやっているのか。自分のところの戦力をどうするかを第一に考えないのであれば何のためにその座にいるのか。早く退きなさい。

そしてFulgham。途中、week4から8まで5試合で435ydsを稼いでプチ旋風を巻き起こしていたが、以降バイウィーク明けから後半戦は姿を消して100ydsの加算でシーズン終了。出番をJefferyに奪われたという側面はあったが、冷静にみて、後半戦はフリーになる機会が非常に少なかった。この原因について確かなものはないが、現地報道によると、相手D#が本腰を入れてカバーしてきたところまでを跳ね返す力はなかったとか、そもそも練習サボっているとか。そんな奴ばっかり。前者の意見を信じるのであれば、このオフさえしっかり過ごせばまだまだ期待はできそう。

Greg Wardは素晴らしい。相変わらずスタッツ的には地味だが、いてほしいところにしっかりいるというか、ルートラン的にも十分。敢えて注文を付けるなら、その捕球半径にしてはもうちょっとキャッチ力が欲しいところ。タイトカバーでもうひと踏ん張りできれば十分なスロットレシーバーになりそう。目指せHunter Renfrow。そして彼のなにより素晴らしいところは、その人間性。ベテランたちが案の定ケガで抜けたPHI WR陣にあって、まだ2年目(実質4年目)にも関わらず最年長者として若手たちをよくまとめあげていたそう。試合中も直前のプレーに一喜一憂するちびっ子たちに次のプレーに集中するように声を掛けていたシーンが印象的。よく見かけた。苦労を重ねたからこそなのか、こういう人材をこそ大切にしてほしいと思います。

そして5巡と6巡のルーキーたち。40ydsのタイムは非常に速いと聞いていたけど全然Deepでもフリーになれていなかったね。この辺り、メリハリのないPedersonのパッケージも影響していたようであり判断が難しいが、プレースピードを判断するうえで40ydsのタイムが全くアテにならないということはよくわかった。大事なのはゲームにおけるプレースピード。これに尽きる。彼らについては、技術的にも、カムバックが甘くてINTになっていたシーンも見たし、シンプルな落球も見たしでもう少し時間がかかりそうですね。

 

【2021への願望とか】
しかしここまで書き連ねてみると、だんだんWentzが可哀そうになってきた。先に述べたように、Wentzがプロ入りした2016以降、PHIにはロクなWRがいなかったわけですから、そりゃこんな連中しか用意してくれないならフロントに見切りをつけても不思議はない。

さて、2021シーズンに当たって、PHIの最重要課題は、なんと、「WRユニットの改善」(2年連続)。
その前に現人員で契約が切れるのはGreg Wardのみ。ERFAのため、ミニマムでの1年契約で確保可能。
その他については、キャップが厳しくなることもあって、見通しは、
Alshon Jeffery:クビ(6月1日以降)
⇒1.0Mセーブ(’21/5.5M、’22/5.0Mのデッドキャップ)
DeSean Jackson:クビ(6月1日以降)
⇒8.7Mセーブ(’21/1.9M、’22/3.9Mのデッドキャップ)
Marquise Goodwin:クビ(いつでも)
⇒4.5Mセーブ
JJAW:産廃処理(できればトレードに使って7巡でもいいからほしい)

残る人員はWard・Reagor・Fulgham・Hightower・Watkins・Burnettというメンツ。つまり、またしてもゼロからの積み上げが必要。FAでいいのを獲れるキャップもないチームにあって、これが全体6位でWR指名シナリオが多い一番の理由。そして、希望は一番早く練習に来るという熱心な練習態度で若いながら人間性の評価も高い、Ja’Marr Chase(LSU)。Smithでもいいけどね。両方残っていたらChaseでお願いします。
というか、そもそも戦力補強に期待する前に、そろそろ自前の育成で何とか結果を残してほしいというのが希望の大本命。そういう意味ではWR育成に定評があるSirianni以下、新体制には期待しているし、そのSirianniが残留という判断を下したWRCのAaron Mooreheadさんにおかれましては、PHIとしては奇しくも2015以来となる2年連続のWRCとなるわけで、2年目の結果には大きな期待をいただいております。よろしくお願いします。

最後に、DeSeanについて。2008のドラフト以来大好きな選手ではあったけどそろそろ限界なんでしょうね。2019の復帰初戦ではこれがまたしばらく拝めるのかと晴れやかな気持ちになりましたが、結局あれがほとんど最後の雄姿になりましたね。お疲れさまでした。あのNYG戦での決勝パントリターンTDはSB52のGrahamのサック&ファンブルフォースに次ぐ最高のプレーでした。いい思い出をありがとう。

ちなみに、以降は結果論ですが、どうしてもRosemanさんに申し上げたく。
DeSeanの成績は2年間で8試合23捕球395yds3TD、サラリーは2年で17Mです。さらに将来にデッドキャップも残します。そして、DeSeanを得るためにトレードでTBに渡した2019の6巡指名権は、Scott Millerという選手に化けました。NFCのチャンピオンシップでもいい活躍でしたね。ちなみに彼の2年間のスタッツは26試合46捕球701yds4TDで、サラリーは2年で1.3Mだそうです。お安いですね。SBでの活躍も楽しみですね。

2020シーズン査定(QB編)  

同期のGoffのブロックバスタートレードがあって自らの身の回りにも煙が立ちこめているのに本人がなにも話さないものだから憶測がとまらないあの男。そしてとうとうインスタのBioから“QB for the Philadelphia Eagles”を外すことで旗幟を鮮明にした。トレード秒読みとなり緊張感あふれる日本時間土曜。
今オフ、Pederson解雇から新HC選びまで、フロントはWentzの再生を最重要視していたはずが、先発を外す決定を容認したフロントまで含めてWentzにとっては信用ならないものだったと。どこまで下手なのか。いつまでRosemanなのか。未だ去就の答えは出ていないが、一旦見るもおぞましい2020シーズンのPHI QB陣の振り返りを。

 

【2020開幕前】
Stay:Carson Wentz(16/1)・Nate Sudfeld(17/Street FA)
OUT:Joshua Treadwell "Josh" McCown(PHI PS⇒HOU)
IN:Jalen Hurts(20/2)

前年にメガディールで先発QBの契約延長をかましながら、そのQBのケガが怖いという理由でドラフトにおいて2巡という高順位でのHurts指名とRosemanの「QB factory」宣言から幕を開けた2020シーズン。当時は確か「Wentzのケガに備えること」「Offenseのオプションを増やすため」という指名理由だった気がする。だからモデルはNOのテイサムヒル。だけどあっちは7巡ぐらいの指名だったはず。全然効率が違う。というかそんなにケガが怖いならもっと安く契約できたでしょうが。
表向きはWentzも歓迎しているように見えたのでまあ安心できるのかな?と思っていた。もちろん、その分もっといい選手獲れたはずだけどね、という気持ちはあったが。
コロナで変則的なオフシーズンとなった2020に、選手が報道陣の前に初めて現れたのが7月のトレーニングキャンプ時。そしてそこでの今年のWentzは違った。デカい。10ポンド以上バルクアップしたという噂もあり、2019の脳震盪はクラウニーのチープショットのせいだとしても、例年“スクランブル=長期離脱”というケガのしやすさに対して根本的に対処しようとしているような印象を受けた。期待は高まるキャンプイン。だけどキャンプ終盤に小さいケガで離脱していたりして、本番どうなのかな?という例年通りの不安はあった。そして開幕。1Qまでは順調順調。

 

【2020成績】
Carson Wentz
12試合(先発12試合) 251/437 57.4% 2,620yds 16TD 15INT Rating72.8 Sack:50
Jalen Hurts
15試合(先発4試合) 77/148 52.0% 1,061yds 6TD 4INT Rating:77.6 Sack:13
Nate Sudfeld
1試合(先発0試合) 5/12 41.7% 32yds 0TD 1INT Rating:14.6 Sack:2

はい開幕戦の1Qまででした。
おさらいしておくと、吐き気を催すほどのサックとINTを積み重ねて、Wentzはweek13のGB戦途中からお役御免。それ以降1試合も出場せず。上にサックをQBのスタッツとして計上しているのは、個人の思想と信条によるもの。OLの責も半分強はあったが、この数字になるためにはQBの寄与も大きかった。
そして、お気づきいただけたであろうか。一番下のあいつは別として、WentzとHurtsは試合数を勘案するとほぼ同じスタッツ。生き写し。そして最重要スタッツである勝敗をかぶせてもほぼ同じ。Wentzが3-8-1(29%)、Hurtsが1-3(25%)。Hurtsは最終戦下げられているのでまあ1-2だと思うと若干マシという見方もできる。5勝ペースだけど。
ちなみにRushingのスタッツは、
Wentz:52回276 yds(5.3yds)5TD LNG 40yds 25FD 3Fum 1Lost
Hurts:63回354yds(5.6 yds)3TD LNG 24yds 24FD 6Fum 2Lost
これも一緒。
しかし、微妙に違うのが、Rushingの数。この点、Hurtsのほうがプレッシャーに対して頻繁にスクランブルを発動していた印象で、それがOffenseの局面打開に寄与したシーンもちらほらあった。「安易にポケットを飛び出してしまう」というルーキーQBにありがちなミステイクだという疑惑もあろうが、試合を見る限り、というかHurtsの全スナップを見る限り、辛抱が足りないと感じるスクランブルはほとんどというかなかったと記憶している。むしろ辛抱が過ぎたために、あの機動力にして13ものサックを浴びたのだと理解している。主には目の前がガッツリ空いたために走り出したというパターンが多かった。これはサック数と表裏一体なのではないかと考えている次第。つまり、Pedersonのスキームは(ウエストコーストオフェンス出身のはずなのに)Deepにとにかく人を飛ばせてHigh-Lowコンセプトをメインにするもの。しかし、そうすると、当然と言っては何だが、投げるまでの時間は長い。2017のMVPモードのWentzでも、NGSによるとTT(Time To Throw)は2.72で、下から数えて15番目のリリースまでの時間の長さ。大体全QBの中央値ぐらいの値。
じゃあ2020はどうだったのかというと、Wentzが2.91(128ATT以上のQBで下から6番目)でHurtsが3.11(同最下位)。そりゃサックも増える。
当然これだけ時間がかかればスクランブルする隙は見える。おそらく2017と2020の違いという点では、2017のWentzはストレッチしたD#の緩みを有効に衝いて走れたけど、2020については度重なるケガでスクランブルを自重せざるを得ず、奥を探し続けた結果がサック数の激増と無茶投げINTの積み重ねにつながり、そしてとうとう完全に壊れてしまった、ということではないでしょうか。もちろん、そのコンセプトにあってベースとなるべき、盤石だったOL陣が失われたことも非常に大きな要因となったでしょう。
だけどWentz(というか二人とも)をそんなに責められないのは、「WRが全然空かない」こと。そして二人に共通して責められるべきは「プレーリードが下手(空いていても見つけられない)」なこと。これはダラーっとタテにWRを飛ばせるだけのPedersonのコンセプトの行き詰まりと、WR陣の能力の低さと、QBコーチ周りの指導力のなさの複合要因がなせる業。だからWentz再生というコンセプトが消えたとしても毎年ゴミみたいなアシスタントしか揃えられない、かつ発想が枯渇したように見えたPedersonの解雇は理にかなっていると個人的には思っている次第。(今年のINDで何度か、全く、完全に、一分の狂いもなく、PHIと同じパスパッケージを見てしまったので後任への懸念もなくはない。)
Wentz個人でいうと、どういう事態なのかわからないが、正確性が極端に落ちた。逆リードのボールを何度放っていたことか。バルクアップした身体が原因なのか、度重なる負傷で2017の彼はもう失われてしまって二度と戻ってこないのか。新天地ではいいOCとQBCとWRに出会えるといいね。
どこかで、「同じように2020にQB(Jordan Love)を指名したGBというフランチャイズがあったが、実績を確立して未だ衰えることなくトップクラスに君臨するRodgersと、よく考えたら実績がほとんどないWentzではそのメッセージに対する受け取り方が全く異なる」という記事を読んだ。おっしゃる通りだと思う。だから根本的に、Wentzの不満は“Hurtsを指名した”ところから始まっているのでしょう。だからこれはもう完全にRosemanの失態。
ちなみに、トレードですが、見返りがあるなら何でもいいです。見返りは高い方がいいけど。Goffトレードを見る限り、やはりキャップ処理にはお金を払う必要がありそうだという印象があるので、見返りに指名権があるだけでうれしい。なんならErtzとセットで出してもいいですよ。即使える仕上がったコンビネーションをパッケージで売りつけるという商売、いかがでしょう。これなら1巡1個ぐらいは欲しい。
まあどんな見返りを貰おうがどうせRosemanがしっかり外すんでしょうけどね。スーパー制覇以降3年間で2回プレーオフに出たHCを解雇し、全体2位で指名して3年後に契約延長したQBをその2年後に放出するって組織的な失敗に他ならないように見えるんでしょうが、その責任者はどうするおつもりなんでしょうか
ちなみにWentzのキャップは、一番起こりそうな3月19日までのトレードでいうと、2021のPHIに、NFL新記録となる33.8Mのデッドキャップ(853kのセーブ)で、新チームは4年100.4M(25.4M(全額保証)/22M(15M保証)/27M/26M)のキャップヒットとなるそうな。お互いにとって重いし、PHIは20%のキャップを放棄して2021シーズンを戦うことになり、シンプルに考えると戦力は20%低下。アホらしい。

 

【2021への願望とか】
このゴミみたいな2020シーズン、スタッツ的にはほぼ同じ二人だったが、それでも勝利への期待感という意味では段違いでHurts先発時のほうが高かったのは事実。
それは多分に彼の若さによる錯覚。ではなかったと信じたい。
初先発時もチームメイトが軒並み「落ち着いていた」と評価した彼の人間性。そして大学時代からずっと全米のトップにいた場慣れ感。そういう無形の部分をこそ評価したい。Wentzでの失敗は、最終的にフランチャイズQBに一番重要なのは人格、という結論を出したくなっているところ、フィールド外の地域貢献活動にも熱心なこの男に2021は託したい、と個人的には思う。
技術的には、Zone Read以外のパサーとしての能力は、実はOU時代の2019から本格的に磨かれているのではないかと勝手に推測しているところ、2021年のコーチ陣は少なくとも2020年よりは期待できそうなので、伸びシロはありそう。Hurts個人とのつながりが強いQBCも来たわけですし。
現時点では、NFLトップ10QBに入れそうな能力とか、一人でスーパーボウルまでチームを導けそうな力については片鱗も見せていないが、だからと言ってWentzトレードでの見返りと今ある全体6位あるいは将来の指名権まで注ぎ込んでトレードアップして今年のQB狙いに行くのはやめてほしい。なぜならまだサンプルは4試合分。今はこのボロボロのロスター全体を若返らせていくところに注力してほしい。もちろんQBから始めないといけないという気持ちもわかるが、このキャップ地獄にあっては、今のうちに若い戦力をかき集める方がいいような気がする。せっかく新首脳陣も若いことですし。

その他、SudfeldがUFA。あのweek17の出来では再契約はなし。そうなるとQBがHurts一人になるので、できればMcCownばりのベテランQBが欲しい。もう一人ドラ外で誰か指名してほしいけど。
もしかしたらHurtsまでサヨナラとなる可能性もあるため、考えたくもないが、Wentzの後釜を2021ドラフトで探すとなった場合、絶対にWentzの後輩であるNDSUのTrey Lanceだけはやめてください。それだけはナシでお願いします。

新コーチ陣と悲しい別れ

LARは一体Goffとそのキャップをどうやりくりするのか。同じ2016大量投資組としてそのハンドリングには興味津々です。
さてHC就任から1週間経って組閣がほぼ完了したのでお知らせします。
このメンツを見る限り、INDとLACのフィルムを見ることが不可欠。
見たところで何かわかることがあるのかと問い詰められても微妙ですが、まあおいおい見ていこうと思います。しかしなによりも優先しなければいけないはずのPHIのフィルムを観るのが全く捗らない。ほぼ12敗したチームのフィルムを観るのがこんなに苦行だとは思いませんでした。

 

【新コーチ陣】
Head coach:Nick Sirianni
(前職:IND OC)
前回出し切ったため割愛

Offensive coordinator:Shane Steichen(前職:LAC OC)
前任者不在だったために2年ぶりのOC。Sirianniの旧SD時代の同僚という誼。
LACのオフェンスという文脈で気になるのは、今年のルーキーQB Herbertの成功。期待できるのかと思いきや、現地LACのファンの反応は「出ていってくれてよかった」というもの。
理由は2つ。1つに、Herbertの成功は、QBCであったPep Hamiltonの手腕によるものが大きく、もう1つはプレーコールが全く効率的でなかったRun Offenseに極端に偏ったものであり不満だったから。というもの。
この人事がどういう結果になるかはわからないが、敢えて異論を唱えるのであれば、まず1つ目、Pep Hamiltonという人はStanford⇒INDでAndrew Luckという才能を開花させた人間として評価が高いが、じゃあそれ以外に何か実績がありましたっけ。というもの。INDの後はCLE・Michigan・XFL・LACという歩みだが、この間だれか育てられたのか。とは聞きたい。語弊はあるかもしれないが、目立った実績は最終年度のHerbertだけである。となると、Steichenがうまいことやった可能性だって十分にある。そしてそもそもPepがそれほどにスーパーなのであれば、新天地が泥沼のHOUのQBCというのも今一つ解せない。こんなことをいうとHOUファンの気分を害してしまうかもしれないが、もっと引っ張りだこで、もっと魅力的な職場があっていいのではないかと思う。だから、重ねてSteichenがうまいことやった可能性はあると思う。
そしてもう1つ、プレーコールという点。ここにも擁護の余地はあると思っていて、Steichenに全権限があったかというと実はそうでもなく、RB出身のHCであったAnthony Lynnから“Run優先でいくように”との圧がかかっていたという証言もあるため、それをどこまで信じるか。もっというと、実はランが効果的でないなかであってもプレーアクションは非常に効果的だったようで、“Defense-adjusted Value Over Average”という”Football Outsiders”の補正後指標でいうと、LACのパスオフェンスは7位とのこと。挙げるまでもないがPHIのこの指標は29位。結局誰が来てもPHIの2020よりはマシになる。問題はその程度の話。
何よりPHIではおそらくプレーコールを担当することはないと思われるのでその点心配はしていない。思う存分QB育成に勤しんでください。

Defensive coordinator:Jonathan Gannon(前職:IND DBC
2020までのSirianniの同僚ということでそっちの筋。2014~17までMINのAssistant DBCそこから3年間INDのDBC
もう少し待てば、「チャンピオンシップで3つもターンオーバーを奪ったのにそれをOffenseが活かせなかったせいでクビになった」でお馴染みのGBのDCペティンみたいな大物も落ちてきた可能性まであったが、そんなことは読めなかったんでしょうから致し方なし。惜しいけど。
2020にINDの試合を何試合か流し見したD#の印象としては、あのとんでもない破壊力のIDL(Buckner目当てに観ていたのにNTのGrover Stewartに目が釘付けになった記憶がある。ああいう選手が欲しい)をベースに、スーパーLBを置いているのであまり策を弄することなく全体をまとめられているな、という印象があった。そしてDungy以来の伝統のTampa風Cov.2。個人的には非常に好ましい。MIN⇒INDという経歴を見るに、4-2のベースが継続される可能性が高いと思っており、戦力構成をあまりいじらなくて済むのは再建にあたって大きい。大体似たような嗜好だったPHI D#を率いるにあたり、あまり違和感なく移行できるのではないかと思っているところ。うちにはINDのLBのAll Proじゃないほうにも勝てないメンツしかいませんが。(しかし!このLB問題への希望は後述)
全体の話はこの程度にして、前職がDBCということで、パスカバーとDB問題。
2020のPHI D#最大の課題は、vs No.3WRとTE。本当はNo.1にも派手にやられてたけど失点力という点ではBox近辺のパスカバーのほうが致命的。特にNCBとLBのパスカバー。Gannonは”CB developer”としての評価は高いと聞いているので、彼に期待しているのはこの点。シーズン中から何度も申し上げていたが、PHIにはCBがSlay一人しかいない。一方で、CB2としてはボロボロだったMaddoxもNCBとしてならやれる可能性があるんじゃないかと思っており、そっちで期待したい。残ったCB2はドラフトになるのか、MIN以来のつながりで2020にGannonの下でバウンスバックシーズンを過ごしたといわれているXavier Rhodesを獲ってくるのか。あんまりFAにお金はかけられませんが何とか縁故採用というところで安く収めたいところ。
そもそもSchwartzの下ではヘビーマンツーマンD#だったところのつらさが結構出ていたと理解しているところ、ゾーンカバーが増えるところがどう転ぶかは結構楽しみにしていたい。そしてIND D#は実はCov.2というよりSEA風のCov.3に移行しようとしていたという噂への期待もあり、そちらの文脈は後述。

Special teams coordinator: Michael Clay(前職:SF Assistant STC)
ゴミだと思っていた前任のDave Fippに対するDETからのインタビューリクエストをPHIが断ったという噂があり失神しそうになったが、SirianniがHCに決まったのちに、そのリクエストを許可。見事放流という流れに。その後、PHIよりもひどいスタッツを残していたGBのSTCにインタビューという話があって脳卒中になりかけたが、そちらを採用することはなく、Clayさんを採用という流れ。正直STCについては結果でしか語れないところがある。期待としてはPuntリターンでもっとReagorを積極的に使ってほしいというところと、Kick offのリターンはScott以外でお願いしたいということと、イップス気味のKのElliottの治療と、新punterの発掘。並べてみると注文が多い。ぜひやり遂げてください。

Quarterbacks coach:Brian Johnson(前職:Florida OC兼QBC)
今回の組閣において2番目のビッグネーム。そしてもしかしたら火薬庫になるかもしれない存在。
私は存じ上げませんでしたが、現役時代をご存じの方も多いはず。ユタ大出身の元カレッジのスターQB。現在33歳。2009 Sugar BowlのMVPにして“Madden”のカレッジ版である“NCAA Football”においてカバーを飾ったこともある御仁。プロでは鳴かず飛ばずだったが、コーチに転身して大成。2014~16のMississippi StateのQBC時代にはDak Prescottを育成。その後2017にはHouston大でOC兼QBC(D'Eriq King)。2018からFlorida大に移り、QBCを2年務めて2020はOC兼任に(Kyle Trask)。このオフにはSouth CarolinaやBoise stのHC面談を受けていたこともあるような有望株。
火薬庫と述べたのは、Hurtsとの関係が非常に深いこと。Johnson自身が高校時代にHurtsの親父のチームに所属。Jalenのことは4歳から知っている関係。Hurtsが大学に進むときも、結局Alabamaを選んだものの、Johnsonは当時所属していたMississippi stに勧誘したとか。さて、そんなHurtsとの濃厚な関係が見える男のいうことを、Wentzくんはちゃんと聞くことができるのでしょうか?という意味での火薬庫。
腕には期待しているので、育成成功するのがHurtsであっても全く文句ありません。

Pass game coordinator:Kevin Patullo(前職:IND Pass Game Specialist)
Tight ends:Jason Michael(前職:IND TEC)
この二人は明確にSirianni閥。INDから獲ってくるならRun Gameのスペシャリストがよかったけど、Passにするのね?じゃあOCは評判が悪かったRun Gameの構築をメインにやるのかね?それは嫌だよ。
そしてTECとしてはErtz・Goedertの育成に功があったJustin Peelleを本当に変える必要があったのか。ここは疑問。

Offensive line:Jeff Stoutland(続投)
今オフ最大の補強。一瞬BAMA行きが囁かれて絶望に陥ったが、最終的には収まるべきところに収まってくれた。彼の復帰は最大の朗報。どれだけ下位指名の選手をかき集めても最終的にはしっかり戦力に仕上げてくれるこの名コーチの存在は非常に大きい。Kelceの引退リスクもちょっと減ったのではないでしょうか。今オフにCまで補強している余裕はないので。いよいよ2021はMailataをプロボウラーに仕上げるという重責が待っております。変わらず期待しております。

Defensive line:Tracy Rocker(前職:South Carolina DLC
今回の組閣において最大のビッグネーム。Auburn大出身で、カレッジ最優秀選手賞であるLombardi Awardと、カレッジの最優秀インテリアラインマン賞であるOutland Trophyをはじめとして様々な栄誉を獲得した名選手。80年代Auburn界隈ではあのBo Jacksonと並び称される、まごうことなきレジェンド。2004年にはカレッジフットボールの殿堂入り、2005にはAlabama州のスポーツの殿堂入り、2018にはGeorgia州でもスポーツの殿堂入りを果たすなど、この上なく輝かしい経歴の持ち主。プロには1989の3巡でWAS入り。オールルーキーチームにも選ばれたが、膝のケガもあって2年でNFLの舞台からは退場。その後はAlabama・Tennessee・Mississippi・Georgia・South Carolina等の南部諸州を中心にコーチとして活躍。当然南部では有名人でリクルートにだいぶ影響力があるそうな。一度OhioにあるCincinnati大でコーチしているのでそれ以来の北進。
基本的にカレッジ畑の人で、プロでは2011~13のTEN以来2回目となるDLC
指導した名選手みたいなのまで調べてはいないが、少なくともMississippi出身のCoxにとってはだいぶ心躍る人事なのではないかと想像でき、彼が師事することでDLは全員一丸となることが期待できそう。
そして、彼の就任には副産物があり、実はこっちの影響がでかいのではないかと。それが、全く処遇が発表されていないDLC Matt Burkeの扱い。LBCであったKen Flajoleが戻らないことはすでにアナウンスされているのでそこに横滑りするのではないかという噂。
2009~13までDETのLBCとしてTulloch, Levy, Durant, FooteなどいまのPHIからするとキラキラした名前の選手を育成し、2014・15はCINでVincent Reyのキャリアベストイヤーを演出、ほかにはMaualuga, Burfictなどを育成。実はこっちが本職と思われ、彼がここに収まってくれるならもうちょっと改善が見込めるかもしれない。まああっさり外からLBCを呼んでくる可能性はありますが。

Defensive backs:Dennard Wilson(前職:NYJ Passing Game Coordinator & DBC
ここがよく読めないけど、Gannonのところで述べたように、SEA風のcov.3を目指すなら、という意味では若干首をかしげながらまあこの人もそういう文脈か、という納得をせざるを得ない。
LARのDBCを経て2017からNYJのDBC。2017以降のNYJのPass D#は以下の通り。
2017:21位
2018:24位(ここまでTodd Bowles)
2019:17位
2020:28位(ここまでAdam GaseというかGregg Williams)
実に成績はひどいものの、BowlesとWilliamsという過去の上司二人がアグレッシブD#の信奉者であることが見て取れる。そしてそこで重要になるDBのメンツという点で、彼の指導歴における主な選手はJamal Adams, Janoris Jenkins, Rodney McLeod, Trumaine Johnson, LaMarcus Joyner, Morris Clayborne。さて、このメンツは一体どう映るのでしょうか。個人的には、Jamal AdamsからSEAのにおいを嗅ぎ取っておりますので、cov.3への移行というか、まあ単純なcov.2だけをやるつもりはないのかな、とGannonの腹の内を推察しているところ。この辺りはドラフトへの影響もあるのでしょうし、時間があれば掘っていきたいところ。多分やらないんでしょうけど。

さて、長々と述べましたこのコーチ陣。個人的には非常に高い期待値を持っております。現時点では。

 

【去り行く人々】
個人的には、2020までの陣容が酷すぎたこともあり、今回はじき出された人間の中ではTECのPeelleぐらいしか疑問符が浮かぶ人間はいなかったが、ひとりだけ。
HCインタビューを受けながらまたも昇格できなかったことで心配していたDuce Staley。結局RBC兼AHCという現状と同じ肩書でDETに行くことに。
RB育成という点では信用できるコーチだったし、OBとしてもロッカールームでは大きな働きをしていたようで選手からの信頼も厚かったところ、今回の移籍は残念でならない。というか非常に悲しい。
Pedersonがコロナ感染した際も代役をきっちり果たしたことで本人としてもHCへの意欲が高まったのか。やはり本人がHCをやりたくて、その目がもうないところにはいられないということであれば快く送り出すしかない。DETでもいいRBを育ててください。


残るポジションコーチはRB・WR・LBぐらい。明確に人がいないのはRB。
WRはMooreheadの残留かもしれませんが、WR育成に定評がある新HCがどう評価するかは気になるところ。Mooreheadのコーチとしての能力はまだよく見えていないところもあってなんとも言えませんが、少なくとも2020ドラフト時にJeffersonよりRegorを高く評価していたという点は失点として記憶しておりますので放出となってもやむを得ないと思っているところ。
さて、ようやく組閣が大体終わってなんとなく方向性が見えてきたのでそろそろ本気で2020の振り返りに取り掛かっていきたいと思います。気は重いけど。