鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2020シーズン査定(RB編)

SB観戦の大きな目的が、「Devin Whiteの全体5位指名は妥当だったのか」の確認だった。個人的には、プレミアポジションと呼ばれるQB・LT・パスラッシャー(DEでもOLBでも)・CBあたりの、スキームではどうしようもないタレントが要求されるポジション(最近はWRも入りつつある)以外でTop10Pickを使うことにちょっとした抵抗があるというマイナー宗教に帰依しており、現代NFLにおいてILBがゲームに与えうる支配力に比してTop10Pickというのは過剰な投資なのではないかと思っていた。しかし、ポストシーズンを観戦するにしたがい、TBの強力D#におけるWhiteの神出鬼没ぶりに触れるにつれ、己の世界観に対してどうも疑問を抱きつつあったところ、昨夜、帰宅後に問題のSBを観戦し、とうとう宗旨替えに至った。Hill対策にDBを多く割いて深くまで押し下げておき、パスラッシュはほぼ4menを割くことでがっぽりと空いたあのスペースをLavonte Davidと2人でとはいえあれだけ綺麗に消してしまうとは。なんて素敵なんでしょう。Runに対しても反応は素早いし、そもそもKC相手にはRPOはPassからリアクションすればいいんですね。なんていいD#なんだ。ただし、このD#にはやっぱりLavonteの存在が欠かせませんね。願わくばWhiteにはKuechly(2012全体9位)ぐらい1人で試合を支配するぐらいになってほしい。
というわけで、長々と申し上げましたが、結論というか収穫は1つだけ。「全体6位でMicah Parsonsはアリ」。GannonがILBにDarius Leonardを求めるならなおさら。だけど2-37でJabril Coxでももしかしたらいいかもしれない。本当はDALにCaleb Farleyが落ちるのは嫌だしどっちかでCB行きたいけど。だけどFAでRhoseが取れるなら当面のニーズは下がるかな。逸れました。

 

【2020開幕前】
Stay
:Miles Sanders(19/2)・ Boston Scott(18/PS/NO)・Corey Clement(17/UDFA)
OUT:Jordan Howard(⇒MIA⇒11月にwaiver、PHI再加入)・Elijah Holyfield(⇒PS)
Retire:Darren Sproles(14/T/NO)
IN:Jason Huntley(20/Street FA)・Adrian Killins(20/UDFA)

確かこんな感じだったはず。出入りが激しすぎて漏れがあるかもしれませんが総括においてはメンツのチェックが一番難しいのでご寛恕ください。

2019シーズン後半から、当初はエースだったHowardの負傷による出番減少とルーキーSandersの台頭が重なり、Sandersの出来もよかったことから、独り立ちが期待された2020。既に使い減り感が出ていた新人契約切れのHowardをそのまま放流(MIAへ)し、FAでも補強をせず、ドラフトもUDFA以外手当をせずに迎えたキャンプ。チームのSandersにかける期待の大きさを感じていた。
こちらとしても、Sandersの「ペンステートで『1学年上の』Saquonの控えだった」という経歴は、彼の実力がSaquon以下であるということの証明にはならず、いまだに天井は見えていないと思っていた。そして、SandersというかMilesの素晴らしいところは、キャリー以外の小技というか基本的な部分の出来。ここはSaquonもなかなかやるが、パスキャッチも抜群(2019はターゲット時80%程度のキャッチ率。素敵。前回のWRどもの数字を思い出していただきたい。)であったこと、そして、地味ではあるがパスプロテクションは絶品であった。もう絶品としか言いようがない。この点、レジェンドOBであるTiki BarberやHCのJoe Judgeに「パスプロテクションがソフトである」という批判というか指摘を受けているSaquonに対してはもはや圧勝であった。(というかSaquonの弱点はたぶんここだけ)
そしてこの、大エースへの一歩目を順調に踏み出したように見えた若者を大黒柱に据え、周りを“NYGキラー”として名を馳せた器用なBoston Scott、SB52のスーパーレシービングTDが記憶に新しい(というかこれ以外あまり記憶なし)、唯一といっていいパワー系のCorey Clement、その他、で固めた若干控えが心配な陣容でスタート。
そしてキャンプではMilesが負傷し、開幕戦は間に合わずとの報道。

 

【2020成績】
Miles Sanders
12試合(先発11試合) 164回 867yds(avg. 5.3yds)6TD LNG 82yds/52ターゲット28捕球 197yds 0TD/4Fmb 2FL
Boston Scott
16試合(先発4試合)80回 374yds(avg. 4.7yds)1TD LNG 56yds/36ターゲット25捕球 212yds 1TD/2Fmb 0FL
Corey Clement
15試合(先発0試合)21回 75yds(avg. 3.6yds)1TD LNG 7yds/6ターゲット5捕球 25yds 0TD/0Fmb 0FL
Jordan Howard
2試合(先発1試合)7回 27yds(avg. 3.5yds)0TD LNG 11yds/0Fmb 0FL
Jason Huntley
5試合(先発0試合)5回 19yds(avg. 3.8yds)0TD LNG 10yds/2ターゲット1捕球 0yds 0TD/0Fmb 0FL
Adrian Killins
1試合(先発0試合)1回 -12yds(avg. -12.0yds)0TD LNG -12yds/1ターゲット1捕球 2yds 0TD/0Fmb 0FL

いつの間にかSandersは劣化していた。やはりケガが多く4試合の離脱。
2つのファンブルロストはいずれのゴール前のクラッチな場面。そしてドロップ。これもTDパスをフリー落球した場面まであった。ターゲット時の捕球率も79.4%⇒53.8%に急降下。何を思ったか絶品であったパスプロテクションまでが非常にしょっぱい出来に。なんなんだこの2年目は。
ラッシングのアベレージは5.3ydsという立派なものだったが、50ydsを超えるぶち抜きのゲインが非常に多かったのも特徴で、長距離砲としての期待は十分に持てるが、「この3ydsが欲しい」という場面や明確なショートヤードではこんなこと言いたくないが、完全な期待外れ。PHI現地は「もっとMilesに持たせろ」の大合唱であったが、Offenseの軸に据えるにはなにか足りなかったのではないかとPedersonの心中を察してみる。ショートヤードの弱さは確かにちょっと使いづらそうではあった。
なぜか。
彼のランでの獲得ヤードはNFL14位であったが、この近辺のRBと比較したときにMilesのスタッツで突出しているのが、「相手D#がBox内に8men以上で構えている率」というもの(Next Gen Stats参照)。例えば2,000yds以上を獲得したOPOYのTEN Henryでいうと、その率は27.78%になる。ランヘビーなOffenseを展開したCLEのChubb & HuntやBALのGus Edwardsでは30%を超えてくる。そのスタッツが、なんとMilesの場合は“8.54%”にとどまる。つまり、Milesは、WRをワイドに配置することでD#のBOX内の人数を極力減らしてOffenseを展開していくRPOをベースとしたPederson Offenseに非常によく適応したRBであるということ。これはRBにとどまらず、OLについても機動力を重視したロスター構成になっているのだから、例えばショートヤードをゴリゴリ取っていきたい、という場面で結果が残せないのは実は当然の話。Zone blockingでのDTやLBの処理では老いてもなお未だにNFLトップに君臨していると思っているC Kelceも、非常に小柄なこともあり、ショートヤードではDTにしっかり押し込まれている場面も散見された。
ではSirianni体制でどうなるか考えると、参考になるのはやはりINDのスタッツ。NFL3位のラッシングヤードを獲得したJonathan Taylorの同スタッツは29.74%。ちなみにOCとなったShane Steichenの古巣であるLACのEkelerの場合は9.48%であり、こっちの要素が入るとちょっと期待はできる。とはいえLARのランオフェンスは機能していない部類に入るので、期待しているのは非常に効率的だったとされているプレーアクションのほう。こっちの方面でなんとかMilesを機能させる方法を見つけていただきたい。
ここまで並べるともう言わずもがなかもしれませんが、Sirianni Offenseへの適応が非常に懸念される。数少ないOffenseの武器であるためMilesの戦力は最大化させたいが、来年以降はこれまでのスタイルでは難しいことになるか、大幅なスタイル変更が求められそう。しかしこのスタイルに合わせてドラフトされているのだからなかなか厳しいものもあるのではなかろうか。ただし、どんな考察をしてみてもあのクラッチファンブルロストとクラッチ(というかコンスタント)ドロップについては擁護できるものでもないので改善を要求します。とにかくまずはパスキャッチをもう一度立て直すところから始めていただきたい。SirianniはRBへのパスを好むようですので。Milesは地味にキーマンかもしれない。

その他、BostonはやはりNYG戦では燃える様子。week7のホームでのNYG戦では決勝レシーブTDをほとんど視野が取れなかったであろう角度から曲芸のようなキャッチで挙げるなどランも含めて大活躍。やはりショートヤードのキャリーは物足りなかったがMilesの離脱時にはしっかりと穴を埋めていた印象。

HowardとかClementにはMilesに欠けているショートヤードに期待していたところはあったが、まあ期待通りにはいかず。この点がPedersonのOffenseで2020に一番苦労していたところに見えたのでパワー系のRBが欲しかったが、結局機能しなかったのは残念。

 

【2021への願望とか】
RBCは2020まで2年間CINにいたJamal Sigletonに決定。Assistant HCの肩書とともに招聘。1月にケンタッキー大のRBCに就任したばかりの引き抜き。
CINの前にはOAK(現LV)・IND等に所属。INDにいたのは2016-17だったのでSirianniとのラップはなし。ちなみにCINでは「なんでSingletonを放流したのか本当にわからない」と言われるぐらい惜しまれていたようなので期待は大きい。ただし、しつこいようだが前述のスタッツでいうと、CINのJoe Mixon・Giovani BernardはいずれもMilesと似たような数字を残しているので、Sirianniのスタイルへの順応はコーチという点からも不明。まあ有能そうなので期待しておきましょう。

なにやら展望というか願望というか、そういうものはほとんど前段で書いてしまっているようなので、さらっといきます。
現陣容でいうと、BostonがRFA、ClementとHowardがUFAとなる。後ろの二人はリリースでいいとして、Bostonに2巡のテンダーオファーを出して残そうとするかが焦点。
現時点でエースであるMilesがようわからん成績を残してくれたため、ドラフトニーズとしても実は上がっていると言わざるを得ない。今オフのRBの舵取りは本当に微妙。

 

そして、ここまで掘ってみて気づいたけど、Milesの2年目の下降を止められなかったDuceは本当に有能だったのか。好きな男ではあったが、RBCとしては本当に有能だったのかがよくわからなくなった。DETに行ったからにはどんな作品を作り上げるのか注視しておきたい。