パッチワーク補強の限界をまざまざと見せつけられたポジションについての振り返りです。
開幕前の期待
開幕前の陣容は以下の通り。
OUT:T.J. Edwards('19/UDFA→CHI)・Kyzir White('22/UFA)
Stay:Nakobe Dean('22/3巡)・Shaun Bradley('20/6巡)・Christian Elliss('21/Street FA)
IN:Zach Cunningham('23/UFA)・Nicholas Morrow('23/UFA)
<途中加入>Shaquille Leonard('23/Street FA)
T.J.とWhiteという両先発の流出。
寂しさはあったがまあ2022ドラフトでのDean獲得もあったので既定路線っぽい動き。
Deanの相方候補としては、FAで早めにNicholas Morrowを確保。
確保はしてみたものの、キャンプの間にやはり不安は募ったのか、実績豊富なベテラン・Cunningham(と、すぐに消えたMyles Jack)を獲得。
案の定Morrowはプレシーズンが微妙でファイナルカットで脱落してPS入り。
むしろCunninghamが想像以上に素晴らしかったため、Deanの相方はCunninghamで決定。
そして契約最終年を迎えていたSTエースのBradleyがプレシーズン初戦でアキレス腱断裂のケガでシーズンエンド。
そんな陣容でのシーズンイン。
Off-Ball LB(3)
EDGEと比較するとこちらは一貫して最低限の投資しかしていないポジション。
T.J. Edwards・Kyzir Whiteという先発を両方失ったが長期的に安定する礎はできているはずです。
#17 Nakobe Dean(Georgia)5'11"(180cm)231lbs(105kg)22歳 2年目(1.2M・2/4・22-D3-83)
2022:17試合(先発0試合)6タックル(5ソロ)1TFL
前年34スナップしか出場していないのにキャンプからLB1。
アンダーサイズではあるが、そのスピードと思い切りは大したもの。
DT補強も完了したのでOLがあまり漏れてこないと思うのであればこの小ささも気にはならない。
アンダーサイズゆえに全力プレーにならざるを得ない面があり、それがケガにつながることだけないようにお願いしたいところ。
SBでの敗戦後すぐにGeorgiaに戻って学士修了に向けて機械工学のクラスにでて単位をとるという現実家。
浮ついたところは一つもない。
映像を見ていると、やはりGeorgia若手軍団の頼れる兄貴はDeanである様子。
自身のプレーだけでなく後輩の面倒を見るというのは先発1年目の選手にとってなかなかハードな気はするが、彼なら大丈夫。
まずは全試合出場を目標にがんばっていただきたいところ。
#52 Zach Cunningham(Vanderbilt)6'3"(191cm)238lbs(108kg)28歳 7年目(1.3M・1/1・23-SFA)
2022(TEN):6試合(先発6試合)23タックル(14ソロ)1PD
かつてのリーグのタックル王はベテランミニマムでの加入。
やはりというか、プレシーズンゲームでは貫禄の出来。
堅実なタックルと、いい読みをお持ち。
長くいる選手ではないんだろうが、ぜひキャリアを立て直す活躍をみたいものです。
#53 Christian Elliss(Idaho)6'3"(191cm)231lbs(105kg)24歳 3年目(0.9M・3/3・21-SFA)
2022:6試合(先発0試合)7タックル(5ソロ)
春から評価がうなぎ上りの若者はあっさりロスター入り。
LBとして特に不満な点は見当たらず、まあ敢えて挙げるとしたらパスカバーのスピードなんだがこんなものは満足できるほうが難しいし、読みが磨かれればもう少しましにはなるでしょう。
当面はSTでの活躍をがんばってください。
53ロスター紹介2023 - 鷲の巣
結果
(数字はレギュラーシーズンのみ)
蓋を開けてみると、ここが全ポジション最大のクソパフォーマンスだったのである。
Cunninghamは序盤から安定していたが、ハムストリングのケガで離脱してからはケガの箇所が箇所だけにあまり輝けず。
特に後半はミスタックルが異常に多かったのがストレスであったと記憶している。
念のためPSに入れていたMorrowが最多スナップを記録するという体たらく。
そして最大のがっかりポイントは2年目の飛躍を期待されていたDeanの出来。
ランストップは想像の5倍ぐらい良かったが、一方でできるだろうと思っていたパスカバーが今ひとつ。
そしてそれに加えて襲ってきたケガの数々。
リスフラン靱帯という足の指を束ねる?靱帯を2度にわたって負傷。それぞれIR入り。
この靱帯、ケガするとめちゃくちゃ、めちゃくちゃ痛いらしいです。
2度目のIRからは結局復活できず、いつの間にかシーズン終了。最終的にはたった5試合の出場。
原因はこれまで愛用していたスパイクが生産終了になったため新作を履いていたらそれが足に合わなかったということらしいが、残念なことに3年目に期待していいのかもわからないまま2年目を終えた。評価できない、というのが最悪。
序盤良くなかったパスカバーに関してもシーズンが深まれば良くなる可能性はあっただけに何とも歯がゆい結果となった。
ケガ人続出のこのポジションを救うべくシーズン終盤にはStreetに転がっていた元INDのAll Pro常連であるShaquille Leonardを拾ってきたが、さすがにシーズン中にカットされていたのも納得の出来。
なんの役にも立たなかった。
しかもLeonardの枠を空けるために、確かに先発した試合はクソだったが、Christian Ellissを放出するという意味不明なムーブまで演じたことで将来的な楽しみまで奪われた。
開幕時にはPSにいたUDFAルーキーのVanSumerenとLeonardが先発コンビを組むなんていう試合まで発生する惨状。
話がややこしいのは、その試合(vsNYG)には勝ってしまったこと。
まあ結局DCというかあいつらがアレだったので本当に彼らが悪かったのかもよくわからないんですけどね。
とかくストレスの種にしかならないポジションであった。
コーチも替わるし2024シーズンはあんなことにならないでしょう。
来季に向けた展望
いやあひどい。
ここへの補強の願望は何度か垂れ流しているが、さすがにここまで放置しすぎるのもいかがなものか。
シーズン終盤に流れてきた、"T.J.はPHIに残りたかったのにPHIからはオファーがなかった"というニュースには呆れるしかなかった。
さすがに今オフはちゃんと長期的な補強を行ってくれると期待しておきます。
今季をずっとIRで過ごしたBradleyもルーキー契約が切れ、現状はDeanとVanSumerenの2名だけが来季の確定戦力。
PS(Reserve/Future Contract)にはBrandon SmithとTerrell Lewisの2名がいるが、これとて試合で見ていないので何とも言えない。
というかVanSumeren以下は全員かつてのBradley、つまりはST要員だろう。
DefenseでStarterを任せられる力はないはずだし、ないと思って動きなさい。
とりあえFAで一旦の陣容は整えにいくはず。
この時に気になるのが、"Deanをどれぐらい戦力として計算しているのか"というところ。
もしDeanを諦めたのであれば、柱としての戦力が必要になるはずで、その場合は大物を複数年。
まだDeanへの期待を捨てないもしくはどこまで行ってもOff-Ball LBなんか安くていいということであれば、これまで通りベテランミニマムを2名ぐらい。
前者なのであれば、Fangio特有のこのポジションにおけるレンジの広さを考えると、筆頭はDrue Tranquill(KC)。
ランへの弱さが個人的趣向と全く合致しないがパスカバーの有能さはKCにて実証済み。
Tranquillより若干カバレッジ能力は落ちるが、万能タイプとしては新LBC Bobby KingがTENで1年指導したAzeez Al-Shaairも候補。
つなぎとして1年、ということであればCunninghamとの再契約でも良い。
第一希望は、さすがにベテランミニマムというわけにはいかなかろうがもはやそれほど高くならなそうなBobby Wagner(SEA)ですけどね。
いずれにしてもドラフトは重要。
毎年毎年このポジションのプロスペクトをチェックしないといけないのは本当にめんどくさいのである(嘘ですすごく楽しいです)。
現時点での調査結果は以下の通りでございます。
LB1 Edgerrin Cooper(Texas A&M)6'3"(191cm)230lbs(104kg)
万能。
サイズもスピードもあってプレースピードもある。
ランストップ・OL処理はやや不安だが、守備範囲の広さという魅力には抗しがたい。
タックルもちゃんとできる。
2巡にはなろうが、たぶんOff-Ball LB最速指名はこの男。
LB2 Jeremiah Trotter Jr.(Clemson)6'0"(183cm)230lbs(104kg)
サイズという懸念はどうしてもつきまとうが、PHI的には最高の遺伝子を持つ男。
充分なプレースピードを持ち、なにより嗅覚がそこらの選手とは別格。特にパスカバーでこの嗅覚は生きる。
若干タックルが甘いのが玉に瑕。というか致命傷になりかねない。
Deanと並べるとちっさすぎるコンビになることと、このタックルの微妙さが大本命に推せない理由。
親父を超えろ。
LB3 Payton Wilson(NC State)6'4"(193cm)238lbs(108kg)
ケガの前歴が豊富なため前2名を超えることはできなかろうが、サイズもスピードもあるし、パスカバーのレンジも広い。
とてもいい。
ハイモーターなのがなによりいい。本当に延々パシュートしていらっしゃる。
ランストップはやっぱりちょっと微妙だが、3巡が妥当なラインになるんでしょう。
ケガのことはちゃんと調査してくださいませ。
LB4 Cedric Gray(North Carolina)6'1"(185cm)232lbs(105kg)
小さかろうがこれほどスピードがあれば問題ないでしょう。
プレースピードは速いのひとこと。
そのスピードがOLにもしっかりパワーとしてぶつけられているところも見えるのが非常に好ましい。
マンカバーもお上手に見受けられる。
Deanとスピードコンビを組ませるのもありですね。
LB5 Trevin Wallace(Kentucky)6'2"(188cm)241lbs(109kg)
一見えらいもっさりして見えるが、狙いを定めてからは相当にお早い。
ややタックルが不安なので2日目に届くかどうかぐらいでしょうが、いいものはお持ちのはず。
パスカバーもえらい滑らかに下がっていくし、待つのではなく前に出て仕留められるのも魅力的。
vs OLさえ上達すればスターターまで余裕であると思います。
ここまでが2日目のボーダーラインかとお見受けした次第。
LB6 JD Bertrand(Notre Dame)6'1"(185cm)233lbs(106kg)
本当はLB1に推したいのが彼。
ランストップの切れ味というか嗅覚というか肚の座り方が最高。
こういう地味だが堅実な男がDefenseの中央に鎮座すると、全体が安定することでしょう。
懸念はサイズの小ささと、パスカバーにおける長い距離のスピード不足。
どうしてもFergusonやWallerといった連中をカバーしてもらおうとすると、小さい+スピード面の不安というのは恐怖にしかならないのが悲しいところ。
SeniorBowlの試合でもとんでもない切れ味を見せていましたね。
LB7 Junior Colson(Michigan)6'3"(191cm)247lbs(112kg)
全米王者Michiganのエース。
世間的にはもう少し高い評価なのだろうが、タックルも甘そうに見えるしプレースピードもあまり感じられないしでこんなところに置くしかなかった。
バランスはいいんだと思います。
いい選手なんだと思います。
ただ個人的趣向にハマらなかったために興奮しなかっただけです。
LB8 Aaron Casey(Indiana)6'2"(188cm)235lbs(107kg)
Tranquillのような選手をFA補強するなら、これほど面白い選手はいない。
ランストップ完全特化型。
スピードはある。相当にある。それが全部前に進むときにだけ活かされる。
パスカバー?そんなものは知らない。
前時代的、というよりむしろ動物を思い起こさせる戦闘能力である。
大好きなのだが、パス全盛の今の時代に合うかは知らない。
凄くほしい。
LB9 Nathaniel Watson(Mississippi State)6'2"(188cm)244lbs(111kg)
我らがFran Duffyさんが推していたので拝見したが、あまりにも何も伝わってこなかったので寝落ちしてしまいました。
いかにSeniorBowlの練習で輝こうが、対人がこれほど当たれないとなるとちょっと時間がかかりそうですね。
ドラフトで2枚抜きなんかしてくれれば最高なんだが果たしてどうなるでしょうか。
さすがにこのオフはここの補強もしっかりやってくれるだろうとRosemanには期待しているところです。