大一番を前にして捌けきれていなかったニュースと、PHI Defenseのルーツ、Fangio Defenseを巡る一つの仮説です。
HCの空席
PHIファンとして最大の関心事。
空席はARI・CAR・DEN・HOU・INDの5席だったが、CARがFrank Reichで決定。
そして腹立たしいことにARI・DEN・INDの有力候補だったDan Quinnが"ここ(DAL)でやり残したことがある"的な発言と共に残留を表明。
キサマそのフランチャイズではその"やり残したこと"は一生達成できんぞ。
早く出ていけ。
意外と揉めているのがDEN。
当初はあっさりSean Paytonで決まるんかと思っていたがどうも雲行きが怪しい。
Sean Payton自身もそもそもどこかに雇われるか微妙っぽくて、まあこのあたりはよくわからないが戻ってこないならそれに越したことはない。
そしてここからがPHI絡み。
Gannonを甚く愛していたと報じられているHOUのHCの席だが、どうやら今を時めくSFのDC DeMeco Ryansが収まりそうだという話。
これはよくない。
このタイミングでGannonが出ていってくれないとVic FangioがDCに来てくれるという夢が霧散することになる。
Fangio自身もReichのCARのDCに、という噂も出つつあるし流れはよくない。
OC Steichen(CAR・HOU・INDのインタビュー実施済み)のほうはまだわからないが、2度目のインタビューに呼ばれたという話は聞かない。
来オフにでもGannonとDennard Wilsonの両抜けみたいなことになったら目も当てられない。
まあDeMeco RyansはGannonより当たりだからHOUにとってはいいと思いますよ。
なにせRyansといえばPHIに在籍していたころ(2012~2015)に被っている選手たちからは未だに軒並み絶大な尊敬を集めている人格者。
Defense(Cox・Graham)だけでなく、関わりが薄いであろうOffense(Kelce・Lane)、あるいはHC選びの目にかけては抜群のものを持っているオーナー・Jeffrey Lurieも彼に惹かれたうちの1人である。
フィールド内ではディテールに厳しいが、チームメイトに困ったことがあればそれがフィールド外のことであっても親身に相談に乗るいいアニキ分だったよう。
ベテランたちは皆懐かしそうに彼との思い出を語っていたのが印象的。
是非AFCで頑張っていただきたい。
ケガ人たち
- 開幕先発の22名のうち、唯一離脱していたAvonte Maddoxが1ヶ月ぶりに復帰予定。
クリスマスイブのDAL戦の途中につま先を傷めて退いていたMaddoxだが、このタイミングで練習に復帰し、現地金曜の試合前最後の練習にはフル参加。
これにて開幕先発が勢ぞろい。
Maddoxの復帰によってBlankenshipの出番が減ることだけが悲しい。
6DBとかやっていいよGannon。 - Divisional Roundの試合終盤にベンチで不満そうにしていたAJ Brownだが、こちらもハムストリング当たりの不調によるものだったらしくて、"Diva"説は払拭。
"100回ボールが飛んで来たら101回目が欲しくなる男だ俺は"と言うAJだが、試合後のロッカールームではいつも通り楽しそうにしていた(複数の現地記者談)ということなので問題はなさそう。
Injury Reportにも掲載されず。 - Laneも大丈夫そうなので、全体としては言い訳無用の健康状態です。
仮説について
ある仮説がある。
現代の名工の1人だと思っているSFのHC Kyle Shanahanだが、彼はある人間の敷くDefenseを本当には攻略できないのではないか、という仮説である。
その人物とは現代NFLのDefense Schemeに多大なる影響を与えている男、Vic Fangioである。
直接対決史
OCもしくはHCのShanahanとDCもしくはHCのFangioの直接対決について、確認できた限りでは3試合。
第1のサンプル:2013シーズンWeek12 WAS@SF
OC Shanahan vs DC Fangio
(ただし、この時はWASのHCがShanahan親父なのでコール等をどっちが担当したかは不明)
結果:WAS 6-27 SF
第2のサンプル:2017シーズンWeek13 CHI@SF
DC Fangio vs HC Shanahan
結果:CHI 14-15 SF
第3のサンプル:2018シーズンWeek16 SF@CHI
HC Shanahan vs DC Fangio
結果:SF 9-14 CHI
この3試合に関して言うと、もちろん双方のロスターのタレント力の差とかいろいろあるので一概には言えないが、Shanahanは対Fangioの3試合合計で衝撃の0TD。
Shanahan自身も"一番攻略が難しいDefenseはFangio D#"と言っているのでその体感に偽りなし。
Fangio Defense
長くなるので簡単に言うと、
- 基本形はDeepに2Sを配置するCov.2("Split Safety")+Box内は軽めの6人(5DB)
- DBのアライメントはCov.2ルックがメインで、プレー開始後に色々変化する。
各DBは"パターンマッチ"と呼ばれる、Offense側のWR・TE・RBの走るルートによってカバーする相手を決める。
Shanahan・McVayツリーが愛用するDeep Post+Crosserのような対Cov.2のパッケージは非常に危険なので、たまにCrosserをピックする目的で1Highのカバレッジを敷いたりすることもある。
(Deep Post+Crosserっぽいパッケージの参考映像)
Thought the #Eagles really set the tone early on offense. Play 2 went 40 yards over the top to DeVonta Smith. So much you have to respect in this offense and they had the #Giants running in circles. 4 TDs in the first 5 drives #FlyEaglesFly pic.twitter.com/A1OS3z3hR1
— Fran Duffy (@EaglesXOs) 2023年1月24日 - ライトなBoxを守る必要があるDLは、
ペネトレート命の1Gapテクニックでも、
腕力命の2Gapテクニックでもなく、
"プライマリー"な責任Gap+αを守る"Gap & Half"と呼ばれる1.5Gapっぽいテクニック(プライマリーGapを守ることを優先するが、RBのレーン次第でもう1つのGapにも緩い責任)で守る。
目的はDLがRBをその場で刺し殺すものではなく、RBを外にハネさせ、深いところにいるDBがタックルしにくる時間を稼ぐ、というもの。
ハイブリッドではあるものの、Boxを軽くしている分DTのランへの負担は増える。
Jordan Davisという有能なランスタッファーを指名したことはこのスキームへの移行において不可欠なものだったということのよう。
そして恐らくNakobe Deanという軽量快速LBの獲得も同様。
悲しいかなTJは放流かな…というのは脱線。 - 思想としてはランである程度出されることはやむなし。
ただ、Offenseにビッグプレーは決めさせない。
そしてQBを混乱に陥れ、INTを狙う。
以上が雑な概要。
2.のところがQBにとってリードを非常に難しくしているようで、スナップ前後の絵が思っていたものと異なることが多いのが最大の特徴とのこと。
これにいろいろなディスガイズを組み合わせると、熟練のAaron Rodgersから2INTを奪うという快挙にもつながる。
The #FlyEaglesFly defense did an outstanding job in creating two INTs against Aaron Rodgers on Sunday night - and the use of 'disguise' was a big reason why pic.twitter.com/xfkGifooTv
— Fran Duffy (@EaglesXOs) 2022年11月28日
如何に賢いとはいえPurdyもルーキー。
カバレッジが難解すぎてパニックになる、というシーンが見てみたいものです。
一見するとランがちょいちょい出るしアンダーニースはガラ空きなのでRBへのパスが延々通るしで退屈極まりないGannon Defenseだが、裏にはこういった高尚な思想が隠されているそうです。
そして、これでおわかりいただけたように、この高尚なスキームを完璧に運用できたのは、Patrick Willis・NaVorro Bowman・Roquan Smithといった異次元の守備範囲を誇るLBを抱えたときのFangio自身のほかは、恐らくAaron Donaldという異常値をDLに抱えていたLAR DC時代のBrandon Staleyのみ。
まあ、いろいろ書いてきましたが、Staleyに対してShanahanはしっかり点を取って勝っているので、Fangioが苦手だっただけでFangioの弟子たちに対しての苦手意識はあまりなさそうだという悲しい結論です。
裏返しの恐怖
希望だけを積み上げてみたところで立ち止まって自問することになる。
そういえばSF Defenseは?
そう、残念ながらこちらにも十分Fangioエッセンスは入っている。
もとはRobert Saleh(現NYJ HC)がSFのDC時代に扶植したスキームをほぼDeMeco Ryansが踏襲しているものと思っているが、SalehスキームがまさにFangioの影響を受けているそうです。
もともとSEA(Pete Carroll)流のCov.3信奉者だったSalehだが、いまやPete Carroll自身が1 High偏重Defenseを捨てたように、Cov.2をメインにしたFangioのエッセンスを、どこで仕入れたか知らないがしっかりと入れており、結果としてPHI Defenseと似通ってあまりBlitzは多くなくディスガイズが多めのDefenseに仕上がっている。
加えて、先方にはFred Warner・Dre Greenlawという快速LBに加えてTalanoa Hufangaという守備範囲がやたら広いSまでいる。
参りましたね。
Hurts頼んだ。
スキームは似ている。
最大の違いはロスターの構成。
LBを揃えたSFに対して、CBを揃えたPHI。
さて正解はどっちだったのでしょう。
見たいような見たくないような、そんな答え合わせになりそうです。