いよいよやってきた夢の舞台。
相手はかつて愛したAndy ReidでありTravis Kelceということで心のどこを探っても何の悪意も抱けない相手ではある。
だがここまで来てしまった以上、願う形のシーズンの締め方は1つです。
ではいつも通り進めて参りましょう。
ケガ人情報
PHI
Friday injury report #SBLVII pic.twitter.com/TmYb19hxSX
— Philadelphia Eagles (@Eagles) 2023年2月10日
NFC決勝で傷んだDickersonも問題ないと聞いていたのに直前でCoveyが謎のQuestionable。
シーズン終盤はいいPRだったのにもったいない。
というわけでこの後のTransactionはたぶんここを受けてのもの。
KC
<なし>
全員健康とのこと。
念のために申し上げておくが、AFC決勝後にIR入りしたWR Mecole Hardmanはもちろん出てこない。
痛手と言えばそれぐらい。
Transaction
直前に2件。
- P Arryn SipossがIRから復帰
朗報と言っていいのか微妙なPunterではあるが、とはいえワイヤーに当てるほどのコントロールを持つ代役P Brett Kernよりは余裕でマシ。
だいたい10yds分ぐらいマシ。 - こちらは試合前恒例のPSからの一時昇格。
今回はS Anthony HarrisとWR Greg Wardの2名。
Harrisの昇格はまあいつも通りだが、お久しぶりなのがGreg Ward。
2017のUDFAでのPHI入り以来PSへの出入りを繰り返していたこの小柄なWRは、WR陣が全滅(開幕先発はD-Jax・Jeffery・Agholor…)していた2019シーズン終盤にBoston Scottと共に彗星のごとく現れてチームをプレーオフ進出に導いたPHIのヒーロー。
とはいえ特筆すべきサイズもスピードもなく、DeVontaの加入とQuezが台頭した2021シーズン以降は出番を減らしていた。
リーダーシップは完璧な男なためWRルームでは頼れるリーダーだったようだが、2021シーズンの働き口はGoal前とPRぐらい。
今季は9月にIRして以来PSにいたもの。
Sirianniは実はこの男のGoal前での働きを高く評価していた記憶があり、その証拠に2021シーズンの成績は7キャッチに対して3TDという意味不明な数字。
どうもこのエリアでスペースを見つけるのが上手い、という特徴があるようなので元QBというフットボールIQの高さとも関係があるのでしょう。
まずは堅実なPRとしてCoveyがOUTになった場合の保険だと推察する。
そしてもう一つ。
…
3Q終盤のGoal前Offense。シチュエーションは4th&Goal(敵陣4yd地点)。
アンバランス隊形からスロットWRとしてセットしたWardの近くにはEx OLで入ったJurgensとAJとPascal。
そしてHurtsから早いパスを捕ったのはWard。
大男たちのブロックの後ろをついていくのかと思いきや、Wardは何を思ったか捕ったボールを持ち直す。
そして遠く逆サイドに走りだすHurtsの方を見て…
SB52の"Philly Special"の立役者は元QBのTE Trey Burtonだった。
SB57では元QBのWR Greg Wardがやる。
以上、妄想でした。
マッチアップ
PHI Offense
- 最大の障壁はChris Jones。
Frank Clarkもだが、まあ両OTに任せておけば問題ないでしょう。
最近のMailataの成長には本当に目覚ましいものがあるし。 - SF戦でランが出たのは両DTを想像以上に押し込めたこと。
KCのDefenseも悪くないとはいえあれほどの迫力はなさそうなので期待はしているが、とはいえChris Jonesのところがフン詰まるとすべてが進展しなくなる恐れまである。
というわけでDickersonとSeumaloがこの試合のカギを握る。
両GとCのところでのコンボブロックだが、DTがCに被っていればダブルチームで押し込んでどっちかがLBへ、Gに被っていればGがDTを一枚で取りきってKelceがPull OutしてLBへ、というパターンが多い。
となるとGのところが潰されるとすべての出所が死ぬことになる。
Dickersonがんばれ。Seumaloがんばれ。 - エースRBはこのプレーオフに入ってからKenneth Gainwellに交代しております。
Sandersでも良いんだがとにかくホールを間違えないように。
LBのスピードがSFより落ちるはずなのでビッグゲインには期待している。 - 師匠のReidを差し置いてリングを2つ持っている先方のDC Steve Spagnuoloだが、彼は2Sでのパスカバレッジを好むらしい。
そしてそれを得意とするのがHurts。
あろうことかMahomesの次。
Jalen Hurts completed a league-high +7.4% of his passes over expected against split-safety coverages in the regular season.
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2023年2月10日
Hurts averaged 8.5 yards per attempt against split-safety coverages this season, trailing only Patrick Mahomes (8.6).#SBLVII | #FlyEaglesFly pic.twitter.com/eV0KjkEh50The Chiefs have used split-safety coverages on 58.1% of dropbacks this season (incl. playoffs), the highest rate of any defense over the last 5 seasons.
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2023年2月10日
Chiefs Split-Safety Coverage Rate (2022):
🔹 Regular Season: 57.0%
🔹 Postseason: 66.7%#SBLVII | #ChiefsKingdom pic.twitter.com/AjX2XefPdKBlitzを入れて2Sにしたら当然広大なスペースが空く。
そうさせないためにCBはWRに対してプレスカバレッジを敷く。
なのでKCはプレスカバレッジがお好き。
そしてそれが大好きなのがHurtsの相棒の彼。A.J. Brown averaged a career-high 4.5 yards per route against press coverage this season, the most in a season in the NGS era (min. 100 routes).
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2023年1月31日
Brown has gained a league-high +572 receiving yards over expected vs press since being drafted in 2019.#SBLVII | #FlyEaglesFly pic.twitter.com/XnMMBxuAiCAJにボールを集めればよい。
プレスカバレッジが増えればDeVontaへのスクリーンはやりにくくなるでしょうが、その代わりはGoedertにやればよろしい。
攻め手はある。
そして一番重要なのはランニングレーンを空けたりHurtsに時間を贈ったりと大忙しなOLの5名。
大舞台でもいつもと同じようないいお仕事をお願いしたい。
PHI Defense
- AFCの猛者たちがこの5年間あらゆる手段を講じてきたMahomes対策。
そしてその膨大な試みのほどんどがあっさり退けられてきたMahomes対策。
一般化されたものはどこにもない。
そんなものを素人が思いつけるかよ。 - だがこれで終わってしまうのはあまりにも寂しいので、この2シーズンで印象的にMahomesをスローダウンさせていた2人の偉人からヒントを得ようというもの。
その2人とは、Lou Anarumo(CIN)とLeslie Frazier(BUF)。
今回の目的はこの2人の方法論を詳細に書くことではないので割愛するが、雑駁に一般化してみるとそれぞれの試みは以下の通り。
- DC Lou Anarumo(CIN)の場合
Blitzを一切気にしないMahomesという巨人に対してこの人が仕掛けたのが、"Game PlanからBlitzという選択肢を排除すること"。
2021シーズンのAFC決勝は、CINのハーフタイムでのアジャストが非常に印象的(Mahomes前半:18/21 220yds 3TD 0INT→Mahomes後半:8/18 55yds 0TD 2INT)だったが、これはAnarumoが8men Drop(3men Rush)の回数を倍増させたことによるものだったらしい。
The #Bengals dropped 8+ defenders in coverage on a season-high 35% of pass plays.
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2022年1月30日
Patrick Mahomes struggled against 8+ defenders in coverage, completing just 7 of 13 passes for 59 yards & an INT with 2 sacks (-14.4 pass EPA, career-low).#CINvsKC | #RuleTheJungle pic.twitter.com/oGWhaVWx6zThe #Bengals almost doubled their usage of dropping 8+ defenders in coverage in the second half and overtime, and held the Chiefs to only 3 points during that span:
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2022年1月30日
🔸 First Half: 24% of pass plays
🔸 Second Half/OT: 45% of pass plays#CINvsKC | #RuleTheJungleそしてこの試合ではこれだけでなく前半の2Highメインのカバレッジを1Highのカバレッジに変更し、Sを1枚Field中央に上げることによってWR探しの難易度をさらに上げることにも成功したのだとか。
付け加えると、2021レギュラーシーズンでの対戦時には73%だったゾーンカバレッジの比率を、この試合では52%にまで減らしている。
だが、Anarumoの凄みは、この試合を経てからの2022シーズンWeek13の対戦ではまたガラッと変えたDefenseを披露したこと。
この対戦では、前年多用した8men Dropの回数をたった5回にまで激減させたのだそう。
このたった5回でも1/4 6yds 1sackという抑え方なので大したもの。
つまり、Anarumoの方法論は、"Blitzをかけないことだけを基本とし、カバレッジでは臨機応変にMahomesが快適に投げているエリアを消す"というもの。
だからTravis Kelceをブチ切れさせた"Burrow is Mahomes' father"というCincinnati市長の煽りは、根本から認識を誤ったものであった。
あの時点で述べるとしたら、"Anarumo is Mahomes' father"であるべきだった。
まあ煽り文句として弱いのはわかるので政治家の発言としては極めて適切だったと言えよう(どうでもいい)。 - DC Leslie Frazier(BUF)の場合
彼の場合は、Anarumoの成功を下敷きにしてその上に一つの工夫を乗せる。
それが、"厚いパスカバー+プレッシャー"である。
サンプルは2022シーズンWeek6のBUF@KC。
FrazierはこれまでのベースのDefenseを捨て、マンツーマンの比率を増大させる。
従来の15%→34.4%というマンツーマンへの傾倒の仕方なのでMahomesからすると全く別のチームに見えたでしょう。
これが出来るようになった要因の1つが、Tyreek Hillという"絶対に1人で抑えられないバケモノ"がいなくなったこと。
しかし相手からするとKC相手にマンツーマンを敷きにくい理由はもう1つ残る、それがMahomesの脚。
QBに背中を向けているタイミングで広大なスペースに走り込まれる、というのはDefenseにとって悪夢でしかない。
そしてFrazierはこれを解決するために、3-2-6というDefenseを構築。
前の3人がパスラッシュに専念し、後ろの6人はWR+TEにびったり貼り付き、残り2名は何があってもMahomesから目を離さない(Spy)係。
そして彼の手元にはVon Millerという傑出したパスラッシャーに加えて初のAll-Proにも選ばれたMatt MilanoというSpyに最適な運動能力に秀でたLBもいた。
ということでFrazierはとにかくMillerに自由にパスラッシュをかけさせること、そのためにはコンテインという役割も持たせず、とにかく自由にラッシュをかけさせることを重視。
その穴埋めにはDTを投入し、Millerが外からパスラッシュをかけるならDTはMahomesのステップアップのスペースを消し、MillerがインサイドラッシュをかけるならDTはコンテインを守る、というスタンツでMahomesに対抗。
DTはMahomesなんか見なくていい、ただただMillerを見てMahomesをポケット内にとどめるためにどう動くか決めろ、というもの。
人呼んで“Make-Me-Right(俺(Miller)を正当化しろ) Stunt”。
これに加えて、通常のスラントをMillerの逆から入れてMahomesをMillerから逃げさせたところでSpy役のMilanoが待ち受けて仕留める、あるいはそうやってポケットを壊してMahomesを誘導した先に待ち受けるのマンツーマンに見せかけたZone coverageとかだったりで、結局Mahomes &Co.を20得点に制限することに成功。
Frazierの方法論は、"Blitzをかけないことを基本とし、カバレッジを厚めにして簡単にWR(orTE)をフリーにさせず、Mahomesをポケットから追い出してMillerないしMilanoが仕留める"というもの。
Millerが故障して以降のBUFが苦戦したのがやっと理解できた。
- DC Lou Anarumo(CIN)の場合
- 以上が偉人のやり方。
さてGannonさんはどうするのでしょう。
両CBのところは安心できるしMaddoxもそれなりにいいのでやはりいつも通りBlitzは少なめ、パスラッシュはスタンツメインということになるのだろうしそれでいいと思います。
Mahomes相手には"変わり映えしない"というのが致命傷になりそうなので、もうひと工夫が欲しい。
思いつかないが。 - 工夫するならパスカバレッジのところでしょう。
2021シーズンWeek4では信じられないぐらい下がった2SFとLBの間の荒野を衝かれ続けて42失点。
さすがにGannonも同じことを続けるバカではなかろう。
避けるべきは浅いところをパトロールするTravis Kelceにストレスなくボールを届けられ続ける状況。
Spyの適任がKyzir Whiteだと思うと、Kelce番を誰にするのか。
MaddoxにするのかCJGJにするのか、あるいはもっと意外な誰かか。
希望はBradberry。
結局は双方がKelceのチーム。
DL特にDTが規律正しいパスラッシュをしてMahomesにストレスを与え続け、誰かがちゃんとKelceを消すのだ。
そんなことできるか知らないが、できなければ勝てない。 - Isiah Pacheco / Jerick McKinnonはみんなでなんとかしよう。
怖いのがスクリーンプレーでの彼らだが、そういうのは全員で集まって何とかするしかない。
両LBとDLは一生懸命走るのです。
がんばってください。
展望
- Hurtsの肩は大丈夫なのか。
復帰以来めっきりDeepの精度が悪くなった印象。
2週間あったし大丈夫だと思いたいがこればっかりは蓋を開けるまでなんとも。
届けこの祈り。 - 勝利のために必須なのが、Offenseが点を取り続けること。
僥倖に恵まれて仮にDefenseがMahomesを制限することに成功した場合でも、Tommy Townsendとパントの蹴り合いになったらKernだったら論外だしSipossであっても10ydsずつは押し込まれる。
そんな昭和な勝負をしてはいけない。
相手は並のチームじゃない。
10秒かそこらでTDが獲れちゃうチームです。
だからこそリスク上等で攻めつづけてくれ。
もちろんSirianniには心配していないので今まで通りアグレッシブな判断でTDだけを獲りに行っていただければ結構。 - 見どころはやはりトレンチ。
OLがvs Jonesを何とかしてランを出せるか。
ランさえ出れば、LBが食いつくだろうしそうなればGoedertが活きて手数は最大になる。
というかまあOffenseはあまり心配していないが、問題はDefense。
期待通りReddickがやってくれるか、Orlando Brownと対峙するSweatが予想以上の活躍をしてくれるか、ここが勝負のポイント。
ここが上手くいってMahomesにプレッシャーをかけられればCJGJかBradberryがやってくれる。
INTよろしく。
願い
- 勝敗よりも、この最高だったチームがこれで終わってしまうことがなによりつらい。
CoxとBrandon Grahamという長きにわたりフランチャイズの顔を務めてチームの文化を作り上げてきた大男たちとか、頼れるアニキ Slayが"My man"と呼び続けて愛し、胸中を代弁してNYGに誰よりも怒っていたBradberryとか、落ち着いた雰囲気を醸すBradberryをハゲネタだけで延々イジり続ける落ち着きがない愛すべき末っ子CJGJとか、思慮は足りないしファンブルはするが明るくて無邪気で憎めないSandersとか、サックはすれどリーグからは過小評価されつづけたHargraveとか、ケガが治ってみればド安定でOLのラストピースとなったSeumaloとか、無類の努力家として這い上がってきたEppsとか、キャンプ中のひと夏をチーム施設の駐車場で改造した囚人用バスで過ごした個性爆発のMinshewとか、一流に仕立てあげたHurtsを置き土産にINDに行ってしまいそうなSteichenに至るまで、全員についてはとても書ききれないが、この最高だったチームが終わってしまうことがなによりつらい。
本当につらい。 - 勝っても負けても、まさかこんな楽しいシーズンを見せてくれたこのチームには本当に感謝しかないし笑顔と共に振り返るシーズンになることは間違いない。
そしてだからこそ強く思うが、勝っておくれ。
世界から疑われつづけたSirianniやHurtsが体現するこのチームを、俺たちが知っている最高のこのチームを、見せつけてやってくれ。
"It's A Philly Thing" - 健闘を祈る。
願わくば、大輪の花が咲きますように。
Take it from the top#SBLVII | #FlyEaglesFly pic.twitter.com/gTOFKSSMLP
— Philadelphia Eagles (@Eagles) 2023年2月9日
GO BIRDS!!