鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2023ドラフティ紹介(Sydney Brown)

OTAが終わった途端もとから少なかったニュースもぱったりと消滅した。

あと1か月以上続く、これがまごうことなきオフ。

 

というわけで宿題をどんどんやっていきましょう。

ドラフティ紹介2人目は待望のSです。

 

 

遍歴

CFLでRBだった父とフィギュアスケーターだった母のもと、5巡でCINに行ったChase Brownと一卵性双生児としてカナダに生まれる。

現在もカナダ国籍を保有しているのだとか。

 

ちびっこの頃からフットボールには夢中だったようだが、その他の興味はレスリング・ボクシング・陸上競技(トラック)と幅広く、特にトラックではなかなかの記録を残している。

 

さすがにカナダにいたままでスポーツでの将来を切り拓くのは難しいと考えたようで、兄弟は2016年にフロリダ州にホームステイ。
そこで高校の最後の2年間を過ごし、2018年に3-StarリクルートとしてSydneyは唯一のパワー5カンファレンスからのオファーだったIllinois大を選択。

 

入学時の評価は同期入学のKerby Joseph(IllinoisのSで一足早くプロ入りし、2022ドラフト3巡でDET入り。Aaron Rodgersから1シーズンで3INTを奪った史上唯一の男。)より少しだけ上だったそう。

 

Chaseのほうは、Indiana・Syracuseからオファーを受けたものの、ホストファーザーに影響を受けてパイロットを志したためにそれ用のプログラムがあったWestern Michiganを選択。

 

 

SydneyはIlliniで初年度から、ほとんどSで、3試合をNickelとして全12試合中ケガでの欠場2試合を除いた合計10試合に出場。

トゥルーフレッシュマンから10試合出場というのは、IllinoisのDBとしてはVontae Davisの11試合に次ぐ偉大な記録。
なんか嫌な名前が出てきたが、立派には違いない。

 

毎年ちょこちょこケガをしてはいたがその後も順調に成長を見せ、転機となったのは2021シーズン。

 

HCがLovie SmithからBret Bielemaに交代し、2023シーズンからPurdue大のHCに就任するRyan WaltersがDCに就任。

 

2020シーズンは2勝(4敗)で1試合平均35失点以上を食らっていた弱小Defenseだったが、BielemaとWaltersの就任で2021シーズンから成績は平均失点が21.9点(FBS29位)に持ち直すなど徐々に回復。

 

迎えた2022シーズンの10月時点では平均失点はFBS最小の8.4点、損失ydsも228.0ydsはFBS3位という素晴らしい成績を残すに至る。

 

 

WaltersのDefenseというのは、ベースではBearフロントの3人のDown Linemenと2人のOLBをフロントに並べ、MLB1人と5DBでその後ろを守るという、現在のPHI Defenseとさほど遠くないスキーム。

 

ディスガイズこそ多いものの、個々人に課された役割、特にマッチアップの相手決めは結構シンプルであり、強調されるのは選手個々人の能力。

 

SydneyはそのDefenseにおいて、通常2人ないしは3人がラインアップするSの一角としてプレー。
仕事の種類としてはTEがいるならTEのマンカバーが多く、TEがいなければSlot WRのカバーもこなし、ヘビーフォーメーションになればBox内に入ってくることもしばしば。

 

得意なのはTEのマンカバーで、運用の問題なのかそもそもルールの規定が違うのか、プロよりは緩いカレッジのコンタクトルールを最大限活かしてベタベタにカバーする姿が印象的。

 

そしてこのWalters Defenseにおいて、Sydneyは2021のAll-BIG10特別賞選出に続き、チームキャプテンを務めた2022シーズンは59タックル 3.5TFL 1.0サック 6INT(全米3位タイ) 7PD 1FF 1FRという見事な成績を残してAll-Big10の1stチーム選出のみならず、USA Todayが選ぶAll-Americanの2ndチームに選ばれるほどのインパクトを残す。

 

そしてSydneyはその後のドラフトプロセスにおいてもSenior Bowlでの高評価を皮切りにコンバインでも優秀な成績を残して高評価を得る。

 

そして前にも書いた通り、その人柄等総合してPHIフロントからは相当に高い評価を得ていたようで、見事に3巡全体66位でのPHI入り。

eagles-nest.hatenablog.com

 

 

プレーと指名順位

Sポジションでの指名順位は、

2-45 DET Brian Branch(Alabama)

2-47 WAS Jartavius Martin(Illinois)

3-66 PHI Sydney Brown(Illinois)

3-87 SF Ji’Air Brown(Penn State)

3-95 CIN Jordan Battle(Alabama)

と3番目。

 

上位2名に文句はないが、気になるのはスルーした下の2人。

Ji'Airは上がりの速さとか獰猛さとか決定力によって評価が高かったし、BattleはSabanのもとでプレーした経験と知性が、スキーム上の使いやすさ的にPHIに非常にフィットすると思っていた。

この2人を押しのけるほどの何かを見たのか。


というか2-45のBranch以外はこのあたりじゃまだ早すぎると思っていたのが実態。

 

まあ66位では"Sを獲る"と決めていたわけではなく、Sydneyがいたから彼を獲った、ということなんだろうが、ファンとしてはその選択が正解だったかはスルーした2人を見ながら決めていくことになるんでしょう。
これは怖い勝負。

 

期待が高いのは、その人柄と運動能力とパスカバーのうまさとバーサタリティ。

 

1つ目と2つ目は"Red Star"が付与されたほどなのでわかりやすいが、特にそのフットボールに向き合う姿勢は、OTAでも先輩S Terrell Edmundsが、

"あいつはハードワーカーだ。あまり口数も多くなくいつもニコニコしているけど、あいつは学ぶことを厭わず、そしてフットボールが大好きなんだ。あいつは毎日110%の力を出している。しばらくはこのリーグで活躍する選手になるだろう。"

と絶賛する程度には素晴らしいらしい。

 

うむ。期待しかない。

 

運動能力は以下の通り。

 

若干背は低いが、そのRBのようながっしりした体躯に秘められたエネルギーは映像からも伝わってくる。

シングルハイのSも務められる程度には優れた身体能力。

 

そして3つ目のパスカバーだが、LaPortaを完封した映像からもわかるが、PFFが客観的に算出したデータによると、カバーしていた相手へのパスを不成功に追い込んだ数はカレッジ全体で8番目に多いそうで、そしてマンカバレッジで残した89.9という指数は全米のSで1位。

 

バーサタリティについても、軽い隊形で構えてたのにヘビー隊形が来た、みたいな時にはBox内に入るなど前述したスキームにおいてDefense側のメンツのしわを取る役割を任されていたはずなので、シングルハイやSlot CBからLBまで経験済みという頼れる存在。

 

 

懸念があるとすると以下2点。

 

1つ目が、とんでもない率を記録したミスタックル

カレッジ5年間で3,168スナップでプレーし、そのうちミスタックルは70。

 

その率、脅威の17.8%

 

最終5年次はさすがに改善した。
さすがに改善したが、ミスタックル率はそれでも16.8%という異次元の数字を残している。

 

まあこのテのスタッツは判定者(PFF)の嗜好にもだいぶ影響されるしプロの数字と一概に比べられるものではないが、あの悪夢の2021のEric WilsonでもPHI在籍時のミスタックル率が6.8%(こちらはPro Football Reference)でしかなかったことを考えるとその数字のヤバさの一端がご想像いただけるのではないでしょうか。

 

 

ミスタックルのタイプ的には魚雷型。
追尾まではできるが、ラップアップ(Wrap Up:腕を回すこと)をしないのでその場で弾き飛ばせない限りはミスタックルになってしまうという悲しき人間魚雷。

 

そしてその追尾ルートもやや微妙。
もう少しいい位置取りができればタックル自体が改善しなくてもタックルミスは減るはず。

 

というか、Sという守備位置を考えると現状のままでは致命傷になりかねないので早急な改善を求める。
プロのコーチ陣よ。
仕事をしてください。

 

あれだけラップアップしない映像を見せつけられると"単なるビビりなのでは?"という疑念が頭をもたげてくるが、言葉にするのはあと1年ぐらい我慢したい。

 

 

2つ目が、上でも書いたが、パスカバーにおけるお触りが結構激しいところ。
もちろんクリーンにカバーしている場面も多いのであまり心配はしていないが、Illegal Contactの反則が延々取られるようでは困るのでこちらもしっかり適合していただきたく。

 

とはいえ1つ目の懸念と比べたらこの懸念は結構かすむ。
とにかくタックル練習をいっぱいやってくださいませ。

 

 

期待

ファンクラブに入りたい。

まあなにせカッコいいんだ。こちらはもうしっかり惚れている。

 

男前だし性格もいいらしいし。

彼がPHIのフロントオフィスにとってどれだけの意味を持つ男だったのかは過去に書いたので繰り返さないが、ルーキーミニキャンプおよびOTAからもすでに評判は爆発中。

 

なんならあの口うるさい現地記者たちも軒並み彼には惚れてしまっている。
特にすごいプレー映像を残したわけでもないのに、OTA後の"印象に残った選手"みたいな記事にはほぼ確実にノミネートされている。

 

Sの3巡指名というとPHIからすると、一刻も早く忘れたい未来永劫聞きたくない2011ドラフト(伝説の消防士回)におけるJaiquawn Jarrett(2巡54位)以来となる12年ぶりの高額投資。

 

53ロスター入りへの心配なんかしていない。
ゆくゆくはPolamaluの後を追って…という期待は過ぎるにしても、一刻も早く先発になり、10年にわたってチームの顔になっていただきたいと、強く願っている。

 

とにかくプレシーズンが楽しみでならない。

 

男前よ、がんばれ。

 

 

GO BIRDS!!