シーズン中盤以降、"チーム"の存在が消えたDefenseの各ポジションの振り返りに入っていきます。
DLでひとくくりにするのはちょっと難しい気がしているので、DTとEDGEで分けてしまうことにしたいと思いました。
というわけでDT篇です。
開幕前の期待
開幕前の陣容は以下の通り。
OUT:Javon Hargrave('20/UFA→SF)・Linval Joseph('22/Street FA→BUF)・Ndamukong Suh('22/Street FA→所属なし)
Stay:Flether Cox('12/1巡)・Jordan Davis('22/1巡)・Milton Williams('21/3巡)・Marlon Tuipulotu('21/6巡)
IN:Jalen Carter('23/1巡)・Moro Ojomo('23/7巡)・Kentavius Street('23/UFA←SF)
2023シーズン終了後のRosemanの会見によると、"2022シーズン終了後の大量のDefense側のFA全員を引き留められないことはわかっていた。だがOffenseもDefenseも中途半端なことになるのは避けたかった"という発言をしており、これを信じるべきなのはたぶんLBとSのところなのでDTは関係ない。
Hargraveは21M/年×4というRosemanが逆立ちしたって出せなかったであろうお金をもらってSFに。
だからまたしてもドラフトではDTが欲しかったが、まさかこんな大物が落ちてこようとは。
Jalen Carter降臨。
特大の素行リスクにさえ目を瞑ればカレッジ時代の活躍からはAaron Donald越えまで夢想させてくれるほどの出来。
それがPHIに来た。
そして初めてのキャンプまでを何もやらかさずに乗り越えた。
素晴らしい。
その当時の思いが以下の通りです。
DT(7)
名前を言いたくない前任者もそうだったようにDesai DefenseでもNickel隊形が増えるようで、その肝となるのがDTポジション。
そして2年かけてここをテコ入れし、ようやく形になってきたのが以下のメンツ。
#91 Fletcher Cox(Mississippi State)6'4"(193cm)310lbs(141kg)32歳 12年目(5.7M・1/1・12-D1-12)
2022:17試合(先発17試合)43タックル(23ソロ)7.0サック 7TFL 14QBヒット 1FF 1FR
2010年代のオールディケードチーム選出。
数年前からサラリーに見合わない衰え方をしていてストレスのたまる日々だったが、2022シーズンは打って変わって復活。
特にプレーオフなんかはよかった。まだ働けるはず。
Fletch1人をOffenseが見ているような状況ではもう輝けないが、サポートが厚ければまだ十分にやれます。
ただ、まだ働けるとはいえ、プレーオフまで見越すとレギュラーシーズンでは早め多めのローテーションが必要。
2022シーズンが65%のスナップ出場なので、これがもう少し減るとなおいい。
このオフはNYJから声をかけてもらったとのことでだいぶ揺れたようだが、PHIを出て行った先人たちに意見を求めると"あそこは最高だから絶対出ていくな"という助言が多数出てきたとのこと。
本人もいつになくご機嫌にキャンプ以降を過ごしているようで、特にJalen Carterのことは気にかけている様子。
PHIがCarter指名に踏ん切った大きな理由の1つが"DLルームにはFletch・BGという生え抜きの大ベテランがいること"だったようだが、まさにそのチーム首脳からの期待にたがわぬ働きぶり。
プレ最終戦前にはJC・Davis・Sweatと楽しそうに遊んでいたし、JCにはオフの日も含めて毎日電話なりメールなりをしているのだとか。
人見知りで感情を上手に表に出せないと言われているJCも、このFletchからの歓待には感謝していた。
歳も取って最高の教科書として存在しているFletch。
こんな感じならもう少し長く見ていたいものです。
#90 Jordan Davis(Georgia)6'6"(198cm)336lbs(152kg)23歳 2年目(3.9M・2/4/・22-D1-13)
2022:13試合(先発5試合)18タックル(8ソロ)0.0サック 1TFL 0QBヒット
2022シーズンは中盤にHigh Ankle SprainでIR入り。
そしてその時にまざまざと思い知らされたが、Davisが中央にいるのといないのとではランストップに天と地ほどの差が出てくる。
パスカバーに優れる現行Defenseスキームにおいて、弱くなりがちな中央を守るためにDavisが必須なのはよくわかった。1巡で獲った価値はあろう。
それはわかる。わかるが、それ以上が見たい。
ということでパスラッシュがんばってください。
0サックはいただけない。
#98 Jalen Carter(Georgia)6'3"(191cm)314lbs(142kg)22歳 ルーキー(4.0M・1/4・23-D1a-9)
2022:なし
言わずと知れた問題児。間違えた希望の星。
プレシーズンでも見せたクイックネスとテクニックとクロージングスピード。 コンディショニングがさえうまくいけばこうですわ。
ようやく出会ったFletchの跡継ぎを張れる若者。
私生活・練習態度等いろいろ懸念はあるが、付き合いも長く彼の出すサインにもよく気付くDavisと、なにかと面倒見のいいFletchがいる間はとりあえず大丈夫そう。
抑えがたいテストステロンはフィールドで発散してください。
DTポジションで初年度から2ケタサックとなると近年はAaron Donaldぐらいしかいないのでさすがにそれは期待しすぎだとして、とりあえず12位で指名されているFletch(5.5サック)は超えてもらいましょう。
目標6サックで。
#93 Milton Williams(Louisiana Tech)6'3"(191cm)290lbs(132kg)24歳 3年目(1.4M・3/4・21-D3-73)
2022:17試合(先発0試合)36タックル(19ソロ)4.0サック 9TFL 6QBヒット 2PD
2年連続でイチオシのブレーク候補。
ドラフト時にはパスラッシュ能力の未完成ぶりがだいぶ懸念されていたが、毎年メキメキ成長中。
2→4と順調に増やしているサック数が次は8になることを期待するのは当然の人情というもの。
サイズ等のカタログ値は去ったHargraveと似ているが、現時点でもランストップは彼より上手いと思っているのでパスラッシュもっと頑張ってください。
足りないのは出番。
Hargraveが去ったところにCarterが来たという不運はあろうが、序盤からFletchを食うぐらいの活躍で出番を増やしていってくれることを期待している。
#72 Moro Ojomo(Texas)6'3"(191cm)292lbs(132kg)22歳 ルーキー(0.8M・1/4・23-D7-249)
2022:なし
7巡ほぼほぼ最下位指名のDTは4度アカデミックALL-BIG12の1stチームに選ばれている優等生。
プレ2で脳震盪を起こしてしまったおかげで最終戦への出場はかなわなかったが、それまでのパフォーマンスもろもろを評価されてロスター入り。
特徴はその長い腕を活かしたランストップ。
体重が軽いわりに、腕が長く先に攻撃を仕掛けられるメリットを最大限活かしてOLの態勢を崩す場面が印象的。
たぶん出足も速いのでプレシーズンでは十分に持ち味を発揮できていた。
パスラッシュが課題だろうがプレシーズンを見た限りは思ってたほど悪くない。
上の層の厚さを考えるとあまり出番は多くないだろうがいろいろ盗んで成長していってほしいものです。
#97 Kentavius Street(North Carolina State)6'2"(188cm)287lbs(130kg)27歳 6年目(1.3M・1/1・23-FA-NO)
2022(NO):17試合(先発0試合)29タックル(13ソロ)3.5サック 5TFL 8QBヒット 1PD
2018ドラフトでSFで4巡指名されたものの、ドラフトプロセスでのACL断裂の影響を受けてルーキーイヤー全休。
結局SFとは契約満了でお別れしてNOにいたのが2022シーズン。
見比べてほしいが、サイズから残した成績までほぼMilton。当然プレーもMiltonと似通っており、苦手なのはランストップ。
あまりにもDTが多いのでカットかと思いきや、しっかりロスター入り。
これまでの経験の少なさを考えると、伸びしろはまだありそう。
PHIをいい踏み台にして、願わくば補償ピックにつながるぐらい活躍してください。
#95 Marlon Tuipulotu(USC)6'2"(188cm)307lbs(139kg)24歳 3年目(1.0M・3/4・21-D6a-189)
2022:9試合(先発1試合) 16タックル(8ソロ)1TFL 1FR
Davis不在時に劇的に出番を増やした2年目だったが、まあストレスがかかる出来だった印象がある。
ランストップの要であるDTが何もできないとどうしようもないという事実を噛みしめただけ。
彼の体たらくをみてRosemanはすぐにLinval JosephとNdamukong Suhを獲得したというのがなによりも雄弁な2022のTuipulotu。
あれからいろいろ若手を試したが、彼を超える選手はいなかった様子。
これをもってTuipulotuが合格ということにはならない。
パスラッシュのこと考えて減量とかしなくていいからもうちょっとメシ食いなさい。
53ロスター紹介2023 - 鷲の巣
結果
(数字はレギュラーシーズンのみ)
怪物ルーキーは恐れていた素行の問題も特に起こさず(バイウィーク中に怪しい報道はあったがその後大事になっていないのでたぶんセーフ)パフォーマンス面ではその怪物ぶりを遺憾なく発揮。
序盤は腰を抜かすほど活躍してくれた。
序盤は。
DROY投票ではWill Anderson(HOU)に次ぐ次点止まりだったとのことで勲章を手にすることはできず。
最終スタッツはSFに行ったHargraveとほぼ同等の数字(49プレッシャーはDT全体で14位。Hargraveは52で同12位。)を残しているので、Hargraveの穴をルーキー時点でしっかり埋めたという恐ろしい結果に。
開幕前に勝手に設定した"6サック"というハードルは見事にクリアしたが、とはいえ不満が残るのは、しつこく申し上げるが、その序盤の輝きがとんでもなかったから。
あの時は6サックで終わると思ってなかった。
あれからすると、もう少しスタッツを伸ばしてもおかしくなかったはず。
そういう点でDLC Tracy Rockerの更迭は極めて妥当な判断。
あいつが誰かを育てたのを見たことがない。
基本的にはインサイドムーブ一本の選手だと思っており、彼に必要なのは技の引き出しを増やすこと。
"インサイドムーブ一本"という日本語はなにやらネガティブになってしまったので個人的な思いを補足しておくと、ルーキー時点でプロで充分通用してしまう武器が1つあるということはめちゃくちゃ素晴らしいことです。
困ったときにはそれに頼ればいい。それを見せ球にして使えるなにかをこれから増やしていけばもっと恐ろしい何かになってくれるでしょう。
むしろそうなってくれないと困ります。
最初のオフはめちゃくちゃ重要。
しっかり節制してフットボールに集中してください。パーティ行くなよ。
怪物ルーキーが横に来た恩恵を真っ向から受けたのがFletch。
2019とか2020とか、まだ20代だったころのように輝いていたというのは言い過ぎだろうか。全然言い過ぎてないと思うが。
長年の宿敵・Zack Martinを簡単に動かしてDakからボールを奪ってCarterのScoop-6をアシストしたシーンなんか最高の肴なのである。
Fletcher Cox still making plays in Year 12 🔥
— NFL (@NFL) 2023年12月11日
📺: #PHIvsDAL on NBC
📱: Stream on #NFLPlus https://t.co/YCEDNi5Ozb pic.twitter.com/9XVMCHHL3s
来季ももし仮に残るのであれば、今季の延長線上としてしっかり出場スナップ数を減らすことは必要になるが、まだいける気しかしない。
こちらも序盤輝いたのが、キャリア初を含む2.5サックと躍進したJordan Davis。
ただし、彼も以降は完全に失速。最後のサックはWeek7 MIA戦である。10月の出来事であった。
なんと寂しいことか。
これは今季のパスラッシュ全般への不満なのだが、スタンツが少なすぎやしないか。
そう思って調べると、以下のようなデータに出くわした。
NFL End-of-Season Blitz/Stunt Rates
— Cody Alexander (@The_Coach_A) 2024年1月13日
1st = Week 8
2nd = 2023
3rd - 2022
**Via PFF#ArtofX pic.twitter.com/VCKCNxdi7h
2つ目の表右側が2023シーズンのスタンツ率。
パスラッシュでのスタンツ率はリーグ平均27.3%に対してPHIは21.6%。
やっぱり少ないな、と思っていたら3つ目の表が出てきた。これは2022シーズンのデータ。
それによると、2022シーズンは13.9%でもっと少なかったようです。
感覚っていうのはアテになりませんな。
なんでこんなにパスラッシュが機能しなくなったかの謎は解明できないままだが、Davisに関して言うならパスラッシュはちょっとだけ改善した。
だがこの人の課題は常に同じ。
一貫性である。
シーズン終盤にはかのBrian Baldingerさんまでもが"明らかに太ってパフォーマンスを落としている。あのパシュートとパスラッシュのやる気のなさはいただけない"という厳しい声を上げるほどの体たらく。
開幕直後のパフォーマンスが良かっただけに本当にもったいない。
もう少し絞ってシーズンインしましょう。
そしてシーズン中はLaneに弟子入りしてオフの日もつきまとうように。
それは言い過ぎにしても、何らかを変えないと何もないままに4年が過ぎてしまいますよ。
来季は勝負の3年目。
ビッグマネーを手にできるかはひとえにご自身の成長具合と努力を継続できるかどうかにかかっている。
肝に銘じていただきたく。
2022よりスナップ数を増やしたMilton。
個人的には悪くないシーズンだったと思います。
しかしまさかその小ささでランストッパー方面に成長していくとは夢にも思っていなかった。
Defense全般がそうなんだが、特にこの人はミスタックルをだいぶ増やしたのでそのあたりを改善していただきたい。
DLCも替わるし、パスラッシュを頑張ってください。
Tuipulotuも悪くなかったはず。
Davisの控えNT要員もだいぶ板についてきた。何もできなかった最初の2年間とは見違えるほどの良さでしたね。
サック数もキャリアハイ。おめでとう。
成長する方向としてはもっとランストップを磨いていただければ、というところでしょうか。
ルーキーのOjomoは及第点。
出番が少なすぎたのはあるが、その中でもランストップできらりと光るものは一瞬見えたはずです。
しかしわかってはいたがパスラッシュなにもできなかったね。
リーチの長さだけでやっていけるほどプロの世界は甘くないということでしょうか。
もう少しパワーをつければなんとかなる気がしなくもない。がんばってください。
StreetはATLに行った。
そしてATLもプレーオフの望みが消えるとStreetをアクティブ登録しなくなったので結局"6試合"というConditional Pickの要件は満たせず。
なのでたぶんATLのオリジナル6巡ピックがもらえるという結論のはず。
まあベテランミニマムが6巡に替わったと思ったらありか。
ありがとうございました。
来季に向けた展望
さてFletchをどうするんだろうか。
契約が難しすぎて"2024まで契約あり"みたいな書き方にせざるを得なかったが、実際は2023の単年契約だったので2024以降の身柄はフリー。
そして今季のパフォーマンスができるのであれば、正直また帰ってきてほしい気持ちが強い。
というかほかのユニフォーム着てるイメージがこんなに湧かない選手もなかなかいない。
ただ、チームとして契約をどうこうという話以前に"引退するかも"という観測もまことしやかに流れているのが現状。
まあこんなシーズンを終えたら多少なりとも感傷的になるのが人情というもの。
一時の気の迷いでしょう。
彼に関する希望は、現役続行&再契約です。
そしてFletchを囲ってしまうことが出来れば、あとはドラフトで1枚獲るか、FAでStreetのような選手を獲ってくるでも良し。
一番大事なのは、選手を成長させられるコーチ。
そういう意味でHurttさんへの期待はだいぶ高い。
Miltonが伸びそうで伸び切らないのとかを何とかしていただけると非常にありがたい。
毎年毎年ニーズになっているこのポジションだが、今ドラフトについてはあまり調査できていないところ。
SeniorBowlではBrandon Dorlus(Oregon)・Michael Hall(Ohio State)・Justin Eboigbe(Alabama)が良かったという話が入ってきている。
信じたいと思う。
そしてこのなかだと一番興奮するのはもしかしたらJustin Eboigbe。
3-4のDEでのプレーがメインなのでEDGE呼びするのが正解かもしれないが、主戦場が3~5テクのあの92番は好きです。
292lbs(132kg)あるから中に移っても問題ないはず。
現状だと3日目ぐらいの評価なはず。
いいと思いますよ。
たとえFletchが抜けても、Davis・Carter・Miltonと先発において不満がないのは3枚揃っているという認識。
ただ、LBの脆弱さを考慮するとここへの投資は飽きることなく続けていくしかない。
やっぱりドラフトで1巡はいかないまでもそれなりの高位指名権を突っ込むしかないんでしょうね。
そしてFletchさん戻ってきてください。