毎年毎年なんでこの季節になるたびにWRを探さにゃならんのじゃというのは切実な怒り。
Punterだけを調べていたい。
とはいえ、Slayが言ったようにWR1が2枚揃ったチームにあって、明確に必要なのはWR3の存在。
We don’t have a wr2 🤷🏽♂️ https://t.co/ogEJlA4A51
— Darius Slay (@bigplay24slay) 2023年4月12日
というか、もっと絞るならSlot Receiver。
プロスペクトチェックに先立って、このSlot Receiverというポジションの歴史と役割と求められるスキルセットのおさらいから始めましょう。
Slot Receiverに関する考察
歴史
いまでは見ないプレーのほうが少なくなったSlot Receiverだが、まだまだ各チームがFBを抱えていたひと昔前には明確なパスシチュエーションでしか見なかった気がする。
しかし紐解いてみると歴史は意外に古く、このポジションがNFLで組み込まれるようになったのは1960年頃。
Slot Receiverの思想の基となったのは、革新的なオフェンスマインドを持ち、LA(すぐに移転してSD)Chargers他でHCを務めたHoF Sid Gillman。
彼はJim Brownを筆頭にパワフルなRBがリーグを席巻し、"強力なランオフェンスが勝利への近道"であると信じられていた時代にあって、"ランプレーはボールをコントロールし、味方のDefenseを休ませてくれるが、勝つためにはパスを投げなければならない"という今も全く色褪せない言葉を60年前に残している。
GillmanはSlot Receiverという新たなポジションを確立したわけではないが、WR2名とTEとRB2名の合計5人をレシーバーとしてどんどんフィールドに送り出してDefenseをストレッチさせるようなOffenseを開発。
ランかショートパスしか選択肢がなかったOffenseを新風を吹き込む。
それが1963年のChargers唯一のリーグチャンピオン(SB創設前のAFL王者)に繋がる。
そのGillmanだが、そんな革新的な思想を持っていただけに後世への影響も大きく、孫弟子にはWest Coast Offenseの始祖として知られる、あのBill Walshがいる。
他のコーチングツリーも圧巻のひとことで、Walsh→Holmgren→Andy Reidと今日の一大派閥にまで大きな影響を残した。
まさに現代フットボールの礎となった観のあるGillmanだが、何度も申し上げるがSlot Receiverというポジションを確立したわけではない。
孫弟子のWalshでもない。
Slot Receiverの創始者は別にいる。
では誰なのか。
違和感のある書き方をしたが、WalshはGillmanの指導を直接には受けていない。
師匠は他にいる。
Stanford大でDBコーチを務めていたBill WalshとGillmanを繋ぐのが、Gillmanの下でアシスタントコーチを務め、Walshをプロの世界に招き入れた男。
名をAl Davisという。
1963年にOakland RaidersのHCに就任したAl Davisが、Gillmanの思想を受け継ぎつつ、それを一段昇華させた形が、SlotエリアにWRを1枚置くというあの形。
OffenseのWeak SideのOTとNo.1 Receiverの間に置いたこのReceiverに、彼が求めたのは徹頭徹尾"Defenseをストレッチすること"。
そしてRBと合わせた3人のReceiverで深いところから浅いところまで3つの深さで勝負する、という新たなコンセプトを開発することになる。
未だにTDを量産し続ける、No.1 Receiverの15ydか20ydのスクエアインとSlot ReceiverのGoルートという組み合わせが必殺の武器。
Davis自身がHCの時代には叶わなかったが、このコンセプトをひっさげたOAKは、San Diego State大のコーチ時代にDavisのコンセプトを研究し続けていたJohn MaddenがHCの時代に初のSB制覇を達成。
オーナー兼GMはもちろんAl Davis。
"Just Win ,Baby"という名文句を残した、スピード狂の、独自ドラフトを連発する名物オーナー、という認識ではこの偉人に対する扱いがあまりにも不当な気がしてきた。
しっかり歴史に名を刻まれるべき革命家でしたね。
特徴と求められるスキルセット
OT(もしくはTE)とNo.1 WR(以下、Wideoutとします)の間にセットすることになるSlot Receiverは求められるものがそもそも特徴的。
大きく分けると以下の3つ。
- スロットエリアにセットするReceiverにとって最も重要なのがWRとしての能力。
具体的にはスピード、キャッチ、ルートラン。
まずスピードは、Al Davisの当初のコンセプトからもわかるように、Defense、特にSを奥に追いやることでスペースを空けることを目指すので、爆発的なものが必要。
ただ、それから60年経った今も同じものが求められるかというと微妙かもしれない。
後述するルートも格段に複雑化している状況下では、この"スピード"が指すニュアンスは、"40ydのタイムが良い"ということもあるんだろうが、"ブレイク後の加速が良い"ということも考慮する必要がありそうだと思っておく。
そしてキャッチだが、Defenseも人が多いスロットエリアにセットするということは、Wideoutと異なり、人が多いエリアを主戦場とすることになる。
TEまではいかないだろうが、コンテストキャッチに勝てる集中力と手の技術は絶対に必要。
最後にルートラン。
これも前述した密集地帯でのお仕事、という部分と被るが、WideoutのようにCBとの勝負に勝てば良い(これが簡単だと言いたいわけでなく)というものではなく、人が多い分Defenseのカバレッジをしっかり読み、適切なアジャストが出来なければならない。
そして、サイドラインが迫っていることで使えるエリアが少ないがために走るルートが少なくて済むWideoutとの大きな違いとして、Slot Receiverには広いフィールドが用意されているため、走るルートも多彩。
これに関連して、Wideoutの能力としてどうしても必要なのが"リリース"の能力だが、Slot Receiverにあってはここは控えめで結構。
理由は簡単で、スロットエリアかつ2線目にセットしているから。
マッチアップのCBとの間にスペースが出来ているし、リリースに必要なフィールドも広い。
加えてモーションと組み合わせることもできるのでここはそんなに重視しなくてよい。
まあ下手すぎるとタイミングが合わなくなるので考えものですが。 - ボールに近いところにセットする分、ランプレーの際にはブロッカーとしての能力が、Wideoutよりも問われることになる。
PHIのようにRPO(optionなので、結果がランプレーになってもWRは全員ルートに出ている)が多いチームにあっても時折Slotに入ってたPascalのブロックには何度か助けられた記憶がある。
時代が下っても要らないとは言えない能力。 - 先にチラッと触れたが、2線目にセットしていることでプレスナップでモーションさせることが可能。
そうなればBox内に入っていってボールキャリアを務める機会が増えるのでRBとしての能力も問われる。
以上がざっくりとした特徴とか必要なスキルセットとか。
どこをどれだけ重視するかの塩梅にもよるが、パスハッピーな現代NFLでは1.→3.→2.の順に重視されることになるのでしょうか。
考えれば考えるほどDeeboとCMCのどっちかが理想のSlot Receiverということになるんでしょうな。
さすが名門ツリーの一員としてAl Davis→Bill Walshの思想はShanahanの中にしっかり息づいているようで。
PHIでのニーズ
これが今回Slot Receiverについて調べた原因。
AJ・DeVontaとWR1は2人もいるのにWR3というかSlotがいない。
AJにも充分務まるが、専任が欲しいところ。
2022の布陣だとこの役割は3年目のQuez Watkinsのお仕事だったが、とにかく物足りないことが判明したシーズンだった。
Watkinsについては以下の通り受け止めております。
ないもの・出来ないこと
- スピード
40yds4.3台だったはずだしMaddenでは現代Slot Receiverの理想形であるTyreek Hill に次ぐ評価を貰っていたはずなんだがそれに相応しいプレースピードを拝んだことがない。 - ルートラン
CHI戦だったかがとにかく酷くてタテに走るのが長すぎるカット切るのが遅すぎるというのが何度もあった。
この分野は完全に落第。 - キャッチ
最悪なのがここ。
人が周りにいるととにかくボールを捕れないという病気に罹っているのでコンテストキャッチというものには微塵も期待できない。
SBでも派手な落球があったが、あれでも遣い手としては工夫した方である。
最悪だったのがWeek16のDAL戦でBox内で本格的に使ってみたらコンテストキャッチ全負けで2INTの要因を作ったのがこの男。 - ボールキャリー
スピードがあるなら早めに持たせればいいじゃない、という主張はわかるが、Kick Offのリターナーをクビになっていることからもわかるように、この男はブロックが読めない。
持たせても何も起きません。
ガリガリのDeVontaのほうがはるかに有能なRBになるでしょう。
あるもの・出来ること
- カタログスピード
40yds4.35です。 - 若さ
この6月に誕生日を迎えますが、プロ3年が経過して、まだ24歳です。 - トレードの弾
上の2項目は売り込みでした。
31チーム各位へ。
どうでしょう。欲しくなりませんか?
ルーキー契約があと1年残ってるのでお安いですよ。
5巡で結構です。
オーナーミーティングのときにSirianniはWatkinsを擁護してたが、それは当たり前のリップサービスの範疇。
FAでは頼れる存在だったPascalまで流出した。
現在ロスターに残っているのはPSレベルを除くと、A.J.・DeVonta・Ward・Watkinsの4名である。
さすがにこれはなにかドラフトでそこそこ補強してくれるでしょう。
期待しているよRoseman。
本当はプロスペクト調査まで行きたかったのですが、思いの外Al Davisにテンションが上がってしまったので時間切れです。
GO BIRDS!!