鷲の巣

NFL フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia EAGLES)の応援ブログ

2021のお仕事振り返り(QB篇)

プレーオフの、特にディビジョナルプレーオフの激闘を目にして、いったいどうやってあの時はSB制覇まで辿り着いたのか思い出したくて20回目ぐらいのSB52フル視聴を敢行した。その結果、Folesのコントロールは抜群だしOLは固いしErtzもAlshonも多少落球するもキレキレだしそりゃ強いわ、という感想でした。Pedersonのプレーコールも絶妙だったし。しかしひと際目に付いたのがBrandon BrooksとLaneの右サイドの強さ。やはり別格であった。寂しいなあ。

Pedersonは無事に就職先が決まったようで。いいQBがいるところなので割と上手くいきそうな気がしているところ。いろいろ話題のGMと上手くやっていけるかは心配ですが、試合中のプレーコールとかにRosemanほど首を突っ込む奴もいないと思いますので大丈夫ではないかと。楽しみが増えた。がんばってくだされ。ちょうどAFCに贔屓を作るのも有りではなかろうかと思っていたところなのでJAXのことも調べてみようか。気が向けば。

あれから4年。無縁となった喧騒を横目に粛々とPHIのシーズン振り返りに着手したいと思います。GMからやったろうかと思いましたが、それをやってしまうと終わってしまいそうな気がしたのでポジション別の振り返りとしたいと思います。

 

■2021開幕前
Stay:Jalen Hurts('20/2巡)
OUT:Carson Wentz('16/1巡)・Nate Sudfeld('17/Street FA)
IN:Joe Flacco('21/FA)・Gardner Minshew('21/Trade←JAX)

昨オフはWentz放出に揺れたQBポジション。半信半疑というか疑念の方が大きかった気がするが、2020に一瞬輝いたかに見えたHurtsを主戦に据える形でオフを過ごす。
さすがに前年に大崩壊した”ケミストリー”をRosemanも気にしたのか、2021ドラフトでは下位でもQB指名なし。UDFAで1名契約した気がするが、春の内には行方不明に。そしてシーズンイン。

その時点での期待値は以下の通り。一度時間をかけてまとめておくと後がラクになるというのは今回の学びです。

QB(3):
#1 Jalen Hurts(Oklahoma) 6-1 223lbs 23歳 2年目(1.4M・2/4)
今年はこの男と心中。Wentzと長期契約を結んだ翌年のドラ2指名であり、その加入経緯的にPHIファンでも心からこいつを応援できない人もいるでしょう。 昨季終盤のデビュー以降、NO戦の番狂わせの印象が強いが、やはり2年目の課題はそのパス精度の改善。 50%近辺ということになるのは本当に困るのでそのあたりの成長が見てみたいところ。 足を中心に攻めるというタイプではなく、スクランブルも武器のひとつとして持つポケットパサー、という印象。 ストイックなリーダーであり、このキャンプではベテラン以下ロッカールームの心を文字通り鷲掴みにし、キャプテンにも就任。 フランチャイズの顔にもなりつつある好青年。本当にあとは結果を残すだけ。 来年のドラフトストックが豊富なだけに、先発就任初年度から勝負の年。

#7 Joe Flacco(Delaware) 6-6 245lbs 36歳 14年目(1.6M・1/1)
FAで新加入。元SBMVPのQB2。昨季のNYJでもなかなかひどい仕上がりだったようで、その彼に対して単年3.5Mは高すぎるということで現地ファンからはブーイングをもって迎えられた男。 ところがキャンプを経てプレ2以降ぐらいから徐々にコンビネーションも確立されてきたようですし、さすがにベテランだけあって引き出しは多く、ロールアウトなんかも器用にこなすようで頼れるバックアップとしてやってくれそう。 去年の低調なパフォーマンスは前年の首のケガが治りきってなかった説に一票。

#10 Gardner Minshew(Washington State) 6-1 225lbs 25歳 3年目(0.9M・3/4)
プレ3後にJAXからトレード加入。ヒゲ。JAXではルーキーイヤーから活躍するも体制変更があったこともあり放出された形。 ちゃんと試合を見たことがないので何とも言えないが、パス精度の高さにはカレッジ時代から定評あり。 もう少しOffenseに馴染めば、Hurtsに不測の事態が発生した場合にはこっちの方がすんなりハマる可能性もあります。

2021最終53名紹介 - 鷲の巣

 

■2021成績
Jalen Hurts
15試合(先発15試合) 265/432 61.3% 3,144yds 16TD 9INT Rating:87.2 Sack:26

Gardner Minshew
2試合(先発2試合) 41/60 68.3% 439yds 4TD 1INT Rating:104.8 Sack:5

シーズン中にQB2だったFlaccoをNYJに放出し、Minshewを昇格させてQB3にReid Sinnettを獲得。SinnettはHurtsと同期の2020UDFAでTB入り。FCSのSan Diego大からのプロ入りということでほぼ情報なし。メカニックとコントロールに問題ありだとか。本当に出番がなくてよかった。

問題のHurtsだが、序盤は酷いものだった。
あの時はカレッジ時代から言われていた”プロテクションはもっているのに勝手にプレッシャーを感じて飛び出してプレッシャーを浴びる”という悪癖が全く改善されておらず、2021の新生OLの完璧なお仕事をフイにする場面も散見された。

加えて要求されたミッションもなかなか高度なもので。つまり、”OLとRBとQBのラッシング能力が強み”だというSirianniの判断により、Run Pass Opiton(通称RPO)がメイン。
”D#のキーの選手のセット位置や動きに合わせてハンドオフかQBキープかパスかを決める”というパッケージのプレーにはなるが、ここまででお分かりになるように、その判断の出所は全てHurtsのプレスナップリードとその後の判断に依る。これはHurts最大の課題であり、Offenseスナップの90%ぐらいをHurtsが判断しないといけないプレーにした結果、Offenseは著しく停滞。それがWeek2からWeek7ぐらいまで続いた。その間の勝敗は1勝5敗。

その後SirianniもHurtsに出来ることと出来ないことがようやくわかったのか、最大の強みと目されていたOLに責任を全乗せしたデザインランを多用。Run Game CoordinatorとしてのStoutland先生の持つ引き出しの多彩さも相俟ってようやくここからOffenseは安定。

Howardを多用するこの形についてはシーズン序盤から渇望していた記憶があるが、ここからWeek8 DET戦を皮切りに7試合連続でラン175yds以上という偏ったOffense。この間5勝2敗。相手のレベルの問題ももちろんあったが、3TEを多用する極端な隊形が多かったため、D#のカバレッジもそれなりに限定できたのがこの間のOffenseが好調だった要因の一つにはなっているはず。そしてHurtsもそれに応じる形で成長を見せてくれた。

Hurtsのベストゲームは恐らくWeek10の@DEN。70%近い成功率と1INTはあったもののDeVontaへの2TDも、Goedertが退場となったパスも本当に見事であった。
この試合で目を惹いたのは、そのポケットワーク。非常に美しい。

レシーバーがカバーされている状況では敢えてポケットから出ることでタイミングとルートを崩してパスを通す、という場面も散見された。はっきり申し上げて、開幕前もしくはシーズン序盤最悪の時期からの期待値と比較すると、非常に成長したシーズンだったと言えるのではないでしょうか。

QB2のMinshewにとって重要なのは、先発の出番が与えられたWeek13のNYJ戦でしっかり勝てたということ。期待以上の働きは見せてくれたが、同時に肩の強さを含む身体能力という点で天井もしっかり見せてくれたシーズンであった。
Sirianniが何と言おうとこのポジションだけは競争が要らないところだと個人的には思っているので、よほどのことがない限りQB1論争が起こりえないこの体制は良いのではないのでしょうか。

 

■2022への願望とか
<2022契約関係整理>
QB1 Jalen Hurts:2023まで。キャップヒット1.6M
QB2 Gardner Minshew:最終年。キャップヒット2.5M
QB3 Reid Sinnett:最終年。キャップヒット0.8M

QB3の入れ替えはいつでも歓迎だが、まあ非常にお安いユニットですしこのオフにどうこうは起きないものと思っております。フロントも賢くなったのでHurtsを残したままドラフト上位でのQB指名はない見込みですしトレードするなら全ての話は変わってくる。

2022のQBへの願望は、プレーオフ進出決定以降個人的にはずっとはっきりしている。
それが、Hurtsのさらなる成長。これだけ。

ワイルドカードプレーオフにてTBのD#のコーチ陣に”あいつはリードができない”と言われていた以下映像が戦後に話題になったが、彼に一番改善してほしいところがここ。プレスナップおよびポストスナップにおけるプレーリード。

Week6のTB戦のHurtsは、プレッシャーにも負けずタイトウィンドウに通したナイスなプレーが見られたものの、スタッツ的にはパス成功率46%で1TD1INTの115yds獲得という全く褒められないものだった。特にLBとDBにディスガイズされると、実は逆サイドのカバーは結構緩いのにD#が網を張っているタイトウィンドウ(タイトカバレッジしか用意されていないところ)に”果敢に”投げざるを得なくなるという場面がよく見られた。これが、ワイルドカードでも同じようにTodd Bowles先生に用意された宿題。そして全くクリアできず。
以下の映像は恐らく上記の典型例。

TB戦は言わずもがなであるが、Week12の対戦で3INTを喫したNYGも同タイプであったので、この点が課題なのは間違いないところ。こういう背景もあってNYGからDC Patrick GrahamがLVに行ってくれたのは非常に朗報であった。なんか似たようなタイプがNYGにまた来そうで嫌ではあるが。

とはいえHurtsの下で団結してプレーオフに進めたことは事実。その過程でチームを一つにまとめたリーダーとしてのこの男にはまだまだ期待がある。
我々PHIファンはWentzから得難い教訓を学んだのである。QBにとって重要なのは無形のものであると。

なので、繰り返すがこのプレーリードの部分の改善を早急に頼む。
Hurtsにとってはカレッジ入りした2016以来初めてとなる”2年連続同じスキーム”でのプレーとなる予定の2022シーズン。

ここで確たるものを見せてくれなければ個人的にどれだけ惚れていようがたぶんサヨナラとならざるを得ない。
飛躍への期待を見せつけられてシーズンインするものの蓋を開ければ後退してました、という例も枚挙に暇がない世界である。
努力の人だということに疑いはない。是非頼む。