さっさとドラフトに全力投入するべく、振り返りを始めていきます。
とはいえ、順番的に最初にせざるを得ないこのポジション、選手個人というより運用者への愚痴で埋まってしまっております。
だってHurtsが悪いとは思えない。
開幕前の期待
2022シーズンのHurtsが予想をはるかに超えるいい出来栄えで2巡指名の3年目が終わったので、まあ早めに契約延長しとかないとBurrowとHerbertがいるんでとんでもない額になる急げRosemanと思っていたところ、早々に契約を延長。
とはいえその内容50M/年のメガディールになるなんて思ってもみなかった。
本当にもっと安いと思っていた。
こうなると、"あの買い物は間違いでした"なんてそう簡単には言えない。
いや、過去にWentzとかいうのでそうなった記憶はあるけどね。
そんな、すがるような開幕直前の想い。
QB(3)
ようやく答えが出たポジション。
願わくば去年のパフォーマンスがフロックでなかったことを証明してくだされ。
#1 Jalen Hurts(Oklahoma) 6'1"(185cm)223lbs(101kg)25歳 4年目(6.2M・0/5・20-D2-53)
2022:15試合(先発15試合) 306/460 66.5% 3,701yds 22TD 6INT Rating:101.5 Sack:38 *All-Pro 2ndチーム/プロボウル
ついに見つけた俺たちのフランチャイズQB。俺たちのリーダーであり未来。
このオフに待望の新契約にサイン。
5年255Mで延長し、旧契約の最終年も合わせて30歳で迎える2028シーズンまでの囲い込みに成功。
2022シーズンの飛躍はA.J.という相棒の加入もあったが、見逃せないのがHurtsにとって高校卒業後初となる同一スキームでの2年連続プレーとなったこと。
Steichenは去ったがSirianniが健在な限りまだまだ成長は見込める。
課題は左へのロールアウト時のパスと中央奥のコントロール。
これとて"やや不満"ぐらいなのでとにかく2022のパフォーマンスを上回れるところがあればそれだけでうれしい。
あとはケガだけしないように。
Sirianniは"(高額契約を結んだからと言って)Hurtsの役割を減らそうとは思わない"と言っているので今期もガンガン走るはず。
彼のケガは常にパスプレーの時なのでランでは大丈夫だと思っているが、それでもお気をつけくださいませ。
ちびっ子リーグのフットボールコーチだった父に厳格に育てられ、エージェント含むサポートチームを全員女性で構成するように仕向けた賢明な母に見守らている男。
付き合っている女性もAlabama時代からの仲でIBMとかいうクソが付くほどの一流企業に勤める自立した人だそう。
このオフにはOklahomaで修士号もとった。
人間性については一切心配していない。
パフォーマンスについても申し分ない。 足りないものはほんの少しの歌唱力とリングだけ。
前者は無理でも後者はそう遠くないところにある。
今期も心の底から期待している。
#8 Marcus Mariota(Oregon)6'4"(193cm) 223lbs(101kg)29歳 9年目(1.9M・1/1・23-SFA)
2022(ATL):13試合(先発13試合) 184/300 61.3% 2,219yds 15TD 9INT Rating:88.2 Sack:28
待ち人来るとも遅し(おみくじ風)
Chipの下にいたOregon時代にハイズマン賞を獲得するなど大活躍。
そのためにChipがHCだった2015ドラフト前には、Mariotaを獲得すべくCox等を含む大型トレードをPHIが全体2位を持っていたTENに持ち掛けたという話もあった。
現実にはその話はまとまらず、TENはMariotaをすんなり指名、PHIはNelson Agholorを指名。
結果的に両選手は両チームにとってバストに近い存在になり、そしてChipは2015シーズン途中に解雇されるという、登場人物が全員負けたという全然おもしろくないおとぎ話に。
PHIが待ち望んだ形とは違ったが、それでも昨季バリバリにスターターを張っていたキャリア74先発の経験とそのプレースタイルは現行のHurts OffenseのバックアップQBとして理想的な存在。
プレシーズンを見る限りまだまだ脚は健在だしプロテクションさえもてばパスもそれなりに機能しそう。
ちょいちょいケガするHurtsだけにバックアップQBは重要な存在。
QBCのAlex TanneyはTEN時代のMariotaの控えだしTECのJason Michaelは同じくTEN時代のQBCでありOCだった人。
A.J.とも1年だけではあるが被っているしSTCのMichael ClayとはOregon時代のチームメイト。 なんやかやとつながりはあるので悪くない環境ではあるはず。
出番は望まないが、あればその経験を存分に活かしていただきたい。
#19 Tanner McKee(Stanford)6'6"(198cm)231lbs(105kg)23歳 1年目(0.8M・1/4・22-D6-188)
2022:なし
16歳の時に重い皮膚がんを患うが見事に克服した苦労人。
この経験が信仰心を増幅したのか、2018・19の2年間はそっち系の何かでブラジルに行っておりフットボールを離れている。
カレッジ選びをしていた2017にAlabamaを訪問したときのホストがHurtsという縁。
PHI首脳陣は早くから彼に惚れ込んでいたようで、6巡で指名したときもことのほか喜んでいた。
プレー面は、鈍足のっそりフットワークから目が覚めるようなボールを投げるちょっと古めのポケットパサー。
プレシーズンではMariotaを抜いてQB2だろ、という声が多数上がるほどにはいいパフォーマンスだった。
細かいコントロールが若干粗いのは気になるが、とにかくWRに仕事をさせるところに投げるというか、INTという最悪の事態は起こりにくいが、WR的には相当頑張らないといけない、というところに投げていた印象で、もしかするとわりかしサディストかもしれない。
Hurts Offenseを継続するのはなかなか難しそうだがさてどうなることでしょう。 今後が楽しみな選手ではあります。
53ロスター紹介2023 - 鷲の巣
結果
一切姿を拝めなかったMcKeeはもちろんMariotaはお察しの通りあまり出番もなかったので措く。
問題は50M男 Jalen Hurts。
数字はだいぶ2022シーズンから落とした。
正直に申し上げて、現地もそうだが、プレーオフまでの最後7試合を1勝6敗という全体5位ぐらいの指名権が欲しくなるほど弱かったチームなのに、そこの主戦QBへの批判は筋違いでしかないし、そしてそんな声は恐ろしいほど聞こえない。
客観的なデータを探してとりあえずたどり着いたのが、以下Next Gen StatsのHurtsのチャート。
2023シーズンの全パスをエリアで区切ってスタッツを細分化したものになるが、見て驚いた。
驚いたのが、中央の20ydsまでのエリアにおける成績の良さ。
ここ、今季観戦中にずっと"もっと使え"と思っていたエリアである。
なぜ驚くのかというと、あまりにも使われないこのエリアが、"Hurtsが下手だから使わない"のだとずっと思っていたことによる。
"下手だろうが散らさないとWRが空かないんだから使いなさいよ"と思っていた。
だがそうでは全然なかった。
むしろ上手いのに使ってもらってなかったとは。
別の出典にはなるが、PHI Offenseがこのエリアのターゲットにパスを使った比率は"11%"である。もちろんリーグ最少。
ちなみに多いほうから順に、HOU(26%)・DET(25%)・SF/TB/BAL(24%)となっている。
4回に1回はこのエリアに投げるのがDivisional Roundに進んだ、最先端を行くチームの考え。
9回に1回しかここを使わないのが弱小チームの考え。さてあなたはどちらが正しいと思いますか。
あとは対プレッシャーのところ。
Blitzに限らず、PFFは、2023のHurtsを、"QB由来のプレッシャーを最も受けている人"という認定をしている。
"OLはがんばってるのに投げるのが遅くてプレッシャーになった"とかそういう類のもの。
この事実をベースに、そこに試合を見た私見を濃い目の調味料として加えると、"全然WRが空かないから投げるところを簡単に見つけられなかったかわいそうなQB"像が浮かび上がってくる。
一事が万事こんな体たらくなので都度挙げていくのもストレスにしかならないのだが、明確にこの1年で数値を落としたエリアに、Deep Zoneが挙げられる。
20yd以上をDeepだと捉えると、ここのレーティングは12TD3INTの106.7から9TD8INTの82.9まで下落している。
プレーオフ進出チームのQBでこれより悪いのは8TD9INTで77.6となっているJosh Allen(BUF)ぐらいである。
これも感想と一致する。
少ないWRを、馬鹿の一つ覚えみたいに長い時間をかけて毎回奥にばかり飛ばすんだからDefense側も工夫なく守れますわな。
それでプレッシャーを頻繁に浴びるからってスクリーンパスですか。
使ってるの、サイドスクリーンばっかりでしたよね?それがプレッシャーに対する緩急になると思うのかね。
2022シーズンにそれ系のスクリーンでブロッカーとして重宝したPascalはあっさり放出したしね。
意味が分かりません。
他チーム見てるともう少しTEうまく使ってBlitz対策やらプレッシャー対策やらを実行してる気がするんだが、ああいうのすらできないのかね。
MichiganのほうがよほどいいOffenseしてたぞ。
あと少しつけ加えるなら、モーションの少なさおよび機能しなさによるスナップ前にDefenseの動きを読み取る機会の少なさとDefenseを動かす思想のなさ、ホットルートが組み込まれていないという手抜きにもほどがあるパスパッケージ、手前でターゲットが空いていたとしてもそれに気づけないプログレッションに関するクソ指導、そしてOLのプロテクション設計とQBのフットワークあるいはドロップバックが合っていない全体最適化の欠如。
ぐらいでしょうか。
どれをとってもコーチングの責任。
それが足りないHCの頭から出てきたもののせいで天井に当たっているんだから救いようがないし、だから辞めろと言っている。
この願いが届かないなら、せめてまっとうなOCを選んでください。本当に心の底からお願いします。
来季に向けた展望
Mariotaとの契約は今季限り。
どうするかわからないが、まだ顔も見ぬ新Coordinatorのご意向に任せればよい。
現状、Sirianni体制続行となった場合のOC第一希望は解体がありえそうなWASから現OCのEric Bieniemyさんをお迎えすることなんだが、これには彼が解雇されない限りにおいてWASの許可も必要になることだし先方のHCの人選ももう少しプレーオフが進んで脱落者が増えるまで読めないところがあってここに賭けるのはなかなかにリスキー。
急に名前が挙がりだした、現IND OCのJim Bob CooterにしてもINDの許可が必要なのは同様。各種記事はこのハードルをどう超えるかについて語ってくれないのでまあ望みは薄そう。
その他は、ご老体のJim Caldwell(現CAR Special Adviser)とかの名前がちょこちょこ挙がっているが、まあよくわからぬ。
もう少し現実的になってから検討しましょう。
絶対に避けてほしいのは、現状維持あるいは内部昇格です。
それは本当に最悪なのでどうぞそれ以外でお願いします。
まあLurieという男は2020シーズンオフにPedersonが持ってきた新Coordinator体制リストが気に入らんということでHCもろともカットした実績があるのでこのあたりの目は確かなはず。
以下が当面のQBルームにおけるキャップヒットになります。()はデッドマネーです。
ここにはまだ見ぬMcKeeがいることもあってドラフトニーズも一切ない。毛ほどもない。
課題は、Hurtsをどう復活させるか、というかPass Offense、ひいてはOffense全体をどう復活させるか、に尽きる。
そういう意味ではCoordinatorとCoachがとても重要。
なんならそれがすべて。
そういえば、何をやったか一切見えない現QBCのAlex Tanneyはカットでいいですよ。